びぶろす-Biblos
平成18年1月号 (電子化31号)
- NATIONAL DIET LIBRARY
- 発行/国立国会図書館総務部
- ISSN 1344-8412
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はじめに
『びぶろす』は、昭和25年4月に創刊し、以後行政・司法各部門の支部図書館と専門図書館の連絡情報誌として今日に至っております。より広い範囲への提供を考え、平成10年8月号で冊子体を停止し、10月から国立国会図書館ホームページで公開しています。刊行形態は異なりましたが、今後も当館、支部図書館および専門図書館の折々の状況を掲載して行きます。
*本誌に掲載された記事を全文または長文にわたり抜粋して掲載される場合は、サイトポリシーをご覧いただき、事前にご連絡ください。
目次
- 総務省統計図書館の思い出
- 農林水産技術会議事務局筑波事務所分館のレファレンス事情
- 日本経団連レファレンスライブラリーの活動
- 東京都品川区立図書館におけるビジネス支援図書館の取組み
− 「ものづくり支援」 「中小企業支援」を核として − - WLIC2005(IFLA年次大会)参加報告
- 平成17年度全国図書館大会について
- 日誌
総務省統計図書館の思い出
板垣克男
1.まえがき
私にとって、公務員生活最後の2年間を統計図書館に奉職できたことは、幸せなことでした。
図書館業務の経験のない私が、無事に勤めることができたのは、主事をはじめ、職員の方々の支えと、国立国会図書館支部図書館課(現、支部図書館・協力課)のご指導があったからこそです。在任中の様々な思い出を胸に去ることができたことを感謝しています。
今回、「びぶろす」からお声をかけていただきましたので、統計図書館の役割を紹介しながら、思い出などに触れてみたいと思います。

(図書が並ぶ閲覧室にて)
2.統計図書館の変遷と役割
統計図書館の歴史は、明治14年6月、太政官統計院の中に「書籍掛」が置かれたのが始まりで、創設から今年で125年を数えます。その後、幾度かの組織・所属の変遷を経て、現在は、統計に関する図書を中心に和・洋書合わせて26万5千冊を所蔵する、わが国唯一の統計の専門図書館として、統計研修所や統計局はじめ、各行政機関、大学、一般国民など幅広く利活用されているところです。昭和23年の8月からは、国立国会図書館法によって国立国会図書館の支部図書館として、重要な役割も担っています。
統計図書館は、総務省統計研修所の一組織として位置づけられ、図書の受入・閲覧・貸与などの図書館としての通常の役割と、統計研修の企画・実施を行う企画課、統計技術の研究を行う研究官室、「日本統計年鑑」、「日本の統計」、「世界の統計」などの総合統計書の編集・刊行を行う統計データセンターの各業務と相互に連携し、統計研修所の業務を推進する組織として大きな役割を担っています。
また、統計の利用の便宜を図るため、昭和21年から統計相談室を設けて、統計調査の結果や統計データの案内などの統計情報に関する相談業務、統計知識の啓発・普及することを目的とした「統計資料館」や「とうけいプラザ」の運営管理、情報公開の窓口など、多様なサービスを提供しています。これは統計図書館の大きな特徴ではないかと思います。

(統計相談室における相談風景)
3.思い出など
統計図書館長(国立国会図書館支部総務省統計図書館長)の職は併任で、総務省統計研修所管理課長の職が本務でした。在任中は自分なりに努力をしたつもりですが、二足の草鞋を上手に履くことは難しく、職員には迷惑をかけたこともあったように思います。
図書館職員とは、よく酒を飲みました。暑気払い、忘年会、出張報告会など様々な名目で飲み会には積極的に参加させていただきました。室町時代の狂言「餅酒(もちざけ)」の中に「酒の十徳」というのがあります。そのうちの3つの徳に「万人を和合す」、「労をいとう」、「人と親しむ」という言葉があります。根っからの酒好きということもありましたが、併任ということもあって日ごろ職員と接する時間が少ない分、「酒は朋友の徳あり」の言葉どおり職員とのコミュニケーションを大事にすることに心がけました。仕事を離れ普段の職員の素顔、人となりの一面をみることができ、親しみや新鮮味を感じることができました。

(統計図書館閲覧室における閲覧風景)
在任中、国立国会図書館関西館に出張する機会を得、図書館の職員と勉強をしてきました。関西館のあるところには、国土庁(現、国土交通省)に勤務していた時に訪れたことがありましたが、今は関西文化学術研究都市として大学、研究機関などが立地し、学術研究の拠点として頭脳集積団地に変貌していました。当時は確か「けいはんな学術研究都市」(京都、大阪、奈良の三県にまたがることから京(けい)・阪(はん)・奈(な))と称して、国土庁の事業として基盤整備をしている時期だったと記憶しています。この地に関西館が設置されていたことを知ったのは図書館勤務になってからでした。
総ガラス張りの近代建築物は少し怖さを感じましたが、建物の中に入ってみると、地下1階にある閲覧室などの採光に工夫を凝らしていることが分かりました。建物全体が光と緑と水を組み合わせた開放感のある造りで、閲覧室は明るく圧迫感がなく、広いスペースには最新の検索・閲覧用端末などの電子機器を備え、蔵書を検索したり、オンラインでの複写もできる、まさに情報通信を駆使した図書館サービスを提供していました。図書を収蔵する書庫は、最新機器を活用した図書管理機能を備え、職員が安全で作業しやすいように配慮された環境設備が整っており、関西館は正にITを活用した情報化時代の近代的な図書館という印象でした。高度情報化社会に対応する図書館としてますます発展することを期待しているところです。
4.諸事雑感
近年、図書館をとりまく状況は大きく変化してきています。これまでの情報は紙媒体が中心でしたが、電子情報へと移行しつつある中で、図書館の整備は財政的に厳しい状況にある一方、情報社会への新たな展開が必要となってきています。劣化しつつある貴重な統計古資料をデジタル保存化し、全国どこにでもその内容を還元・提供できるIT図書館の整備など、統計の専門図書館として、果たすべき役割、機能について見直し、電子情報化時代にふさわしい図書館サービスに努めていただき、利用する側に立った図書館として整備・発展することを陰ながら応援したいと思います。
現在は団体職員として勤務していますが、一般戦災の史実調査などで、戦災を受けた都市の県立・市立の公共図書館を利用する機会が多く、これまで図書館の運営管理をしていた立場から、利用する側の立場で、「探す」、「調べる」、「知る」、「学ぶ」を実践しているところです。図書館は、古い資料を掘り当てる楽しみと、新しいことを発見できる場所であり、正に知識が蓄積された宝庫として、改めてその使命と役割の大切さについて考えさせられています。また、どこの公共図書館においても市民に対する図書館サービスの創意工夫が見られることと、親切・丁寧で的確な対応にはいつも感心しているところです。
5.むすび
先日、団体主催で「戦災と平和展」を和歌山県海南市下津町で開催しました。そして、その昔、往年の時代劇スターの東千代之助、片岡知恵蔵ほか有名な時代劇俳優が下津町ロケのときに宿泊したという歴史ある「喜久屋旅館」に1週間滞在する機会を得、贅沢なほど静かな夜の空間で、統計図書館勤務時代のことを思い起こしながらこの原稿を書くことが出来ました。また展示会会場の市民交流センターには、図書館が併設されており、図書を携えた親子連れの姿を見るたびに、何故か安堵感を覚えました。
雄大な海と、豊かな緑に囲まれ、万葉歌人達の心をとらえたという、ロマンあふれる海南の地で起稿できたことは、統計図書館での思い出とともに、いつまでも心に残ることでしょう。
統計図書館URL:http://www.stat.go.jp/training/toshokan/4.htm
(元総務省統計図書館長)
農林水産技術会議事務局筑波事務所分館のレファレンス事情
林賢紀
1.はじめに
支部農林水産省図書館農林水産技術会議事務局筑波事務所分館(農林水産研究情報センター、以下「筑波事務所分館」とします。)では、国立国会図書館分館としての業務のほか、農林水産省が所管する試験研究を業務とする独立行政法人をはじめとする農林水産関係試験研究機関などに対し、農学情報資源システム (AGROPEDIA,http://www.affrc.go.jp/Agropedia/)による各種データベースの提供など、試験研究に必要な各種の情報サービスを展開しています。また、農林水産省が推進する研究開発などについてのレファレンスも寄せられ、これらにも対応しています。
今回は、いくつかのレファレンス事例や、米国議会図書館(Library of Congress)と OCLC の主導による国際的な協同レファレンスサービスであるQuestionPointを利用したレファレンスについてご紹介いたします。
2.レファレンスサービスの現状
筑波事務所分館では、年間約700件前後のレファレンスを処理しています。平成16年のレファレンス件数について、表1に示します。
| 文献紹介 | 簡易な 事実調査 |
書誌的 事項調査 |
所蔵調査 | 所蔵機関 調査 |
利用案内 | その他 | 計 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 文書回答 | 19 | 23 | 30 | 157 | 314 | 10 | 1 | 554 |
| 電話回答 | 1 | 1 | 0 | 8 | 11 | 2 | 0 | 23 |
| 口頭回答 | 3 | 5 | 16 | 24 | 37 | 32 | 1 | 118 |
| 計 | 23 | 29 | 46 | 189 | 362 | 44 | 2 | 695 |
(平成16年度支部図書館業務年報より)
レファレンスの大半を占めるのは、植物防疫所など省内関係機関から文献複写を受け付けた際の所蔵機関調査などですが、電子メールなどで寄せられる事実調査や書誌事項調査も無視できません。
電子メールによるレファレンスの受付と回答については、1994年に筑波事務所分館としてWebサイトを開設しここに電子メールアドレスを明記したことで、事実上省内外からの受付を開始しました。この当時は、インターネット上の情報資源について有用な検索エンジンやディレクトリがまだ少なく、また情報自体も少なかったことから、基礎的な統計や資料類の所在、発表されているプレスリリースの詳細、その他農林水産省の所管と思われる事項などについての問い合わせが多くありました。
例えば、海外より頂いたレファレンスでは、以下のようなものがありました。
- 今度日本に行くのだが、ヘビを連れて行っても大丈夫だろうか。毒はなく、おとなしいヘビです(回答:ヘビについては、入国時の動物検疫はありません。)。
このレファレンスに対しては、筑波事務所分館の所蔵資料で調査したほか、動物検疫所に確認をした後回答をいたしました。なお、動物の出入国に関する情報については、動物検疫所のWebサイト(http://www.maff-aqs.go.jp/ryoko/index_3.htm)をご参照ください。
現在は、農林水産省各機関でもWebサイトを開設し上記のような各種の情報、統計類を掲載しているほか、筑波事務所分館において農林水産関係試験研究機関総合目録(ALIS WebOPAC http://library.affrc.go.jp/)による図書資料類の所在情報を公開したことなどにより、このような問い合わせは減少しています。
現在、筑波事務所分館に寄せられる事実調査については、主に公表している資料、データベースに掲載されている情報の詳細など多岐にわたり、例えば、
- 研究成果情報(http://www.affrc.go.jp/ja/db/seika/index.html)に引用文献として記されている文献の所在について
- 「有機野菜」の定義について教えてほしい(回答:「有機農産物の日本農林規格」(http://www.maff.go.jp/soshiki/syokuhin/heya/yuuki-nousannbutukikaku.pdf)に定められています。)。
- 「バナピー」という黄色の長円形のピーマンがあるようだが、特徴が知りたい(回答:いわゆる「バナナピーマン」を指し、北海道立上川農業試験場の研究成果「カラーピーマンの品種特性」(http://www.affrc.go.jp/ja/db/seika/data_cryo/h12/cryo00053.html)によると、品種の特性として「収量、食味がやや劣り、糖度がやや低い。」とされています。)。
- いつも花見に行っている農林研究団地(つくば市)の桜並木の状態が気になる。病気ではないか(回答:森林総合研究所など専門家の支援を得て、筑波事務所にて「てんぐ巣病」の防除対策を実施。農林研究団地は桜の名所となっています。ぜひ一度おいでください。)。
などです。研究成果の詳細など、筑波事務所分館では調査しきれないレファレンスについては、関係の研究機関に回答を依頼することもあります。
3.QuestionPointの導入と利用
筑波事務所分館及び農林水産省所管試験研究機関のレファレンスの電子化と事例の共有による業務の効率化を図るため、これに必要なアプリケーションを試行していましたが、
- 質問の送信、受付と回答までの一連の処理がWebをプラットフォームとして電子化されている
- 全世界の加盟館を通じた、また自館のみの事例データベースが構築、利用できる
- 他の加盟館への質問の転送などを通じ、他館との国際的な連携協力が可能
など、多くの利点を有しレファレンスサービスの向上が可能と考えられた、QuestionPointを2003年から導入しています。
QuestionPointを経由した問い合わせの窓口として、省内向け農学情報資源システム及び農林水産関係試験研究機関総合目録にリンクを設け、図1のようなフォームを用意しています。また、図2がこのフォームから寄せられたレファレンスに対する回答の入力フォームです。

図1.QuestionPointによる質問入力フォーム

図2.質問への回答入力フォーム
現在、QuestionPointによるレファレンスの受付は省内に限っており、寄せられたレファレンスについては適宜筑波事務所分館で回答しています。また、問い合わせの中には、電子ジャーナルの購読状況や文献複写の再依頼など、所属機関でないと回答できない事項もあるため、必要に応じて利用者の所属する研究機関などに転送し回答を依頼しています。
このように、レファレンスのほか、情報サービスの利用そのものについての問い合わせなどもQuestionPointで受け付けていますが、海外の図書館に問い合わせをし無事資料を入手できた事例をご紹介します。
ある研究機関の図書室を通じ、筑波事務所分館にレファレンスの依頼が寄せられました。研究者より「中国でのウズラの生産量が知りたい」との依頼があり、所属の図書室で農林水産省内の関係部署やアジア経済研究所等に問い合わせたが資料が無いとのことでした。こちらでも調査をしましたがやはり資料がなく、考えた末QuestionPointを通じて質問を行うこととしました。
QuestionPointでは参加館向けに質問を登録する際、質問の内容に応じた分類や使用言語、回答までの期限等に応じて回答可能と考えられる館に自動的に質問が転送されますが、今回は中国と限定されているため、参加していた北京大学に問い合わせを行いました。数日後、「市内での統計ですが」と断りがありましたが、先方にて作成して頂いた資料を入手することができ、要望があった研究者からもお礼の言葉を頂きました。
並行して、韓国からは日本国内の科学技術文献の入手方法など数回に渡り問い合わせを頂くなど、国際的なレファレンスツールとしての可能性を感じました。
4.おわりに
このように、筑波事務所分館においては、国内のみならず海外からも多様なレファレンスを受け付けており、時に中央館の手助けを得ながらも利用者の要望に応えています。
また、QuestionPointについては、インターフェース等が日本語に対応していないなど、幾つかの問題点もあります。しかし、OCLCのスタッフが中心となり、各国の図書館員とオンラインでのミーティングやメーリングリストでの議論を元にシステムを日々改善し、運用されてゆく過程を見ると、単なる協同レファレンスサービスを越えた国際的な協同関係が形作られていることを感じます。
筑波事務所分館においても、中央館が運用しているレファレンス協同データベース事業に微力ながら参加しておりますが、事例の集積等を通じて、この事業が国内の図書館間で同様の協同関係を築くための一助となればと願うところです。
- 参考文献:
- QuestionPoint:米国議会図書館とOCLCの共同--最新情報/Kresh Diane;Gottesman Laura;高木和子 訳,情報管理.47(8) [2004年11月]
- CDRSから発展型デジタルレファレンスサービスへ--QuestionPointの開始/浅見 文絵,カレントアウェアネス.(274) [2002年12月20日]
(支部農林水産省図書館農林水産技術会議事務局筑波事務所分館)
日本経団連レファレンスライブラリーの活動
関野陽一
1.沿革
(社)日本経済団体連合会(日本経団連)は2002年5月に、(社)経済団体連合会〔経団連〕と日本経営者団体連盟〔日経連〕が統合して発足した総合経済団体である。経団連は1946年、日経連は1948年に誕生し、双方とも会員や事務局を対象とした図書館活動を継続してきた。現在の日本経団連レファレンスライブラリーの前身となる経団連図書館は、1966年の経団連会館の竣工と同時に開館した。
経団連図書館の時代には経済、産業分野の専門図書館として、経団連会員や事務局に向けて各種の資料・情報提供サービスを実施した。利用者向けサービスとして特長があるものには、資料展示会の開催があげられる。これは、特定のテーマについての資料類を網羅的に収集して展示会を開催し、来場者の参考に供するとともに、図書館資料の充実を狙いとしたものである。
| テーマ | 開催年 |
|---|---|
| 経済団体刊行物展示会 | 1972年 |
| 社史・経済団体史展示会 | 1973年 |
| 企業の社会的責任展示会 | 1974年 |
| 資源エネルギー資料展示会 | 1976年 |
| 広報資料展示会、社史展 | 1978年 |
| 日本および日本人論展 | 1979年 |
| 経済産業雑誌と記事情報検索展 | 1981年 |
| 企業と文化−企業の文化活動資料展示会 | 1986年 |
| 国際文化交流に関する資料展 | 1988年 |
| ファイランスロピー展 | 1991年 |
また、専門図書館間の相互協力にも力を注ぎ、専門図書館協議会、大手町資料室連絡会といった組織の活動に参加、協力した。さらに、経済・産業分野の雑誌記事データベース(JOINT)を共同構築するために設立した経済文献研究会の事務局を務めるなどの活動を行った。また、企業の博物館やアーカイブズ活動の支援を目的とした、企業史料協議会の設立にも尽力した。
1994年に事務局オフィスのリニューアル実施に伴い、現在のフロアに移転し、名称も経団連レファレンスライブラリーと改めた。移転に際して、図書館業務全般を見直し、新たな時代に適応する図書館サービスの実現を目指した。レファレンスサービスを図書館業務の中心に位置づけ、本格的にコンピュータを導入するとともに、資料収集もレファレンスサービスの充実という視点から大幅に見直した。
この時期は、インターネットの普及期とも重なり、経団連としての情報発信活動の一環としての経団連ホームページの構築に参画し、中心的な役割を果たした。
さらに、経団連創立50周年に合わせて「経済団体連合会50年史」の刊行が企画され、ライブラリーのスタッフが責任者として編集を担当した。
2002年の統合に伴い、ライブラリー部分のレイアウト変更が行われ、東京経営者協会情報資料室と併設される現状の姿になった。
2.日本経団連レファレンスライブラリーの活動概要

(日本経団連レファレンスライブラリー閲覧室)
現在の日本経団連レファレンスライブラリーの概要は以下のとおりである。
- (1)所蔵資料
- 図書
- 約36,000冊(和33,000冊、洋3,000冊)
- 雑誌
- 717種(和635種、洋82種)
- 小冊子
- 2,236冊
- 電子資料
- 135点
- 新聞
- 13種(和9種、洋4種)
経済、産業分野等の基本図書、参考図書および統計などを収集するとともに、社史、経済団体史、財界人著作・伝記については重点収集している。これらの資料は流通が限られ入手が困難なものが多いので、ユニークなコレクションとなっている。現在、社史・経済団体史を約3,900冊、財界人著作・伝記を約 1,200冊所蔵している。

(社史、経済団体史コレクション)
また、日本経団連が刊行・公表した資料や日本経団連に関する図書・資料を収集展示した日本経団連コーナーを設けて、日本経団連のことを調べる際の便宜を図っている。
(2)サービス内容
ライブラリーのサービス対象は、日本経団連の会員団体・企業等の役職員と事務局職員である。そして、専門図書館協議会加盟図書館や大学図書館等との図書館相互協力を行っている。実施しているサービスは、以下のようなものである。
- 会員向けサービス
-
- 閲覧、複写、レファレンスサービス
- 様々な相談、依頼に対応(資料情報部門の設立・運営、資料の移管先探し、社史編纂等)
- 社史フォーラムの開催
- このうち、会員への情報サービスとしての社史フォーラムは2004年2月より、現在までの間に3回開催した。このフォーラムの特色は、わが国を代表する経営者が自らの社史への思いを語る講演が行われるとともに、社史作成のポイントを各分野の専門家が解説し、好評を博している。
- 事務局向けサービス
-
- 閲覧、貸出し、レファレンス、代行検索サービス、購入リクエスト受付、SDIサービス
- イントラネットの構築と運用(所蔵資料検索、レファレンスガイド、リンク先一覧等)
- ガイダンスの開催(新人研修、ライブラリーセミナー等)
- といったものであり、近年、電子化への対応の比重が高まっている。
(3)電子化の進展への対応
業務処理の電子化の進展やインターネットの普及などにより、会員、事務局職員ともライブラリーの利用形態が大幅に変化している。最近では、日常業務はパソコンで処理するのが当たり前になり、インターネットや電子メールを情報収集に活用しないと仕事が進まなくなっている。これは、ライブラリーの利用にも大きく影響を及ぼしている。
このような動きへの対応策として、イントラネットの構築に力を入れている。導入している図書館システムである「情報館」の機能を活用して、事務局内での所蔵資料検索を可能にするとともに、受入図書や雑誌についての内容紹介をきめ細かく実施するなどしている。さらに、インターネット情報源へのリンク集も充実を図っている。
外部の情報提供機関等によって提供されるデータベースはライブラリー活動にとって必要不可欠のものになっている。現在利用しているサービスは、G- Search、日経テレコン、日外ASIST、EL-NET、factivaなどであり、ライブラリーでのレファレンスサービス用として活用するとともに、一部のサービスは事務局職員に開放し、利用者が直接検索する体制を採用している。
アーカイブズ機能の拡充の一環として、日本経団連が創立以来発表した意見書のデータベース化にも取り組んでいる。『経済団体連合会50年史』にはCD-ROM版があり、これを利用することで意見書の検索が可能だが、より広く利用できるようにするために、ホームページでの公開を目指して、作業を継続している。
3. 今後のライブラリーの運営
日本経団連では2009年3月竣工の予定で新会館の建設を予定している。これは大手町地域の再開発プロジェクトの一環として実施されるもので、現在の場所から少し離れた所に新会館ができる予定である。そこに新たなライブラリーが設置されることになっており、現在そのあり方を検討している。まだ最終決定しておらず、今後変更される可能性があるが、現時点での基本的な考え方を紹介したい。
まず最近のオフィスビルはセキュリティの確保が要求され、職員以外の人々が出入りするライブラリーのような施設の設置には様々な制約を受ける。また、今後ますます情報流通の電子化が進むことは確実であり、資料のデジタル化はさらに加速されるので、それへの対応とともに、急激に紙媒体の資料が減少することは考えられないので、両者の間のバランスをいかにとるかが課題になる。
とくに、ライブラリーには先端的なデジタル化した情報だけでなく、デジタル化されない紙媒体等のアナログ情報の保存、提供も求められる。最近注目される、組織の記憶の保存のためのアーカイブズ機能も、今後ライブラリーが果たすべき役割の一つと考えられる。このような条件の中で、新たなライブラリーは以下のような基本方針の基づきそのあり方の検討を進めている。
- 日本経団連の政策提言活動をサポートするための情報資料の提供
- 企業ならびに企業家に関する情報センター機能の実現
- 情報技術の進歩に対応したハイブリッド化の実現(デジタルとアナログの長所を生かしたライブラリー運営)
ライブラリーのサービスの原点は設置母体である日本経団連の政策提言活動を情報・資料面からサポートすることなので、今後もその面での活動を一層充実させる必要がある。
会員向けのサービスについては、従来どおりの来館型サービスを継続する意義を再検討する必要があり、新たな時代のサービス体制を構築することが求められる。その一つとして、これまで蓄積してきた社史・経済団体史や財界人著作・伝記などをベースにして、企業や企業家に関する情報センターとしての機能を果たすことが考えられる。
さらに、デジタル情報とアナログ情報とのバランスをとりながら、いかにその融合を図るかも今後のライブラリー運営の重要な課題となる。
そして、専門図書館、大学図書館、公共図書館等との相互協力も新たな時代にふさわしい関係のあり方を確立する必要がある。
設置母体の業務を円滑に推進するために必要な情報を収集し、提供するという専門図書館の根本の機能は変わらないであろうが、その手法は大きく変わろうとしており、この流れを乗り切るための努力が求められている。
(社団法人日本経済団体連合会社会本部)
東京都品川区立図書館におけるビジネス支援図書館の取組み−「ものづくり支援」「中小企業支援」を核として−
工藤俊一
1.品川区の概要
品川区は、東京南部に位置し、東京湾に面した臨海部と山の手に続く台地からなり、古くは東海道の宿場として栄えた町である。京浜工業地帯を形成する町であるが、現在は東京副都心に位置付けられる大崎や天王洲を始め大規模な再開発により都市軸が形成されており、古くからの町並みと共存した新たな都市の魅力を作り出している。区内には鉄道駅が26駅あり、都心部の中でも交通網が整備され、近年は都心回帰とあいまって人口が増加している。
2.大崎ビジネス支援図書館について
(1)開設までの経過
中小企業のものづくりにおいては、それぞれの企業が課題をいち早くサーチし、最新の情報で問題を解決することが重要である。さらに企業同士の交流、研鑚の場があれば、企業活動が活発になるものと期待される。区内中小企業支援は、その重要度が増す中で、中小企業が特に弱いとされる情報基盤整備が課題となっている。
一方、生涯学習を支援する図書館においても、従来の図書館サービスからより実践的なサービスの実現が求められており、この解決のためにアメリカで行われているビジネス支援サービスに取組むことが、有効な施策と考えられた。
大崎図書館は品川区の大規模再開発地域に隣接するとともに、品川のものづくり発祥の地にあり、「ものづくり」という点で、重要な地域に位置している。
このようなことから、大崎図書館2階に「ものづくり支援」「中小企業支援」をコンセプトとした「ビジネス支援図書館」を開設することとし、区内製造業の約六割を占める「電気・機械・金属」関係の図書や雑誌、データベースの収集・提供、産業振興課との協働による講座や講習会の開催およびものづくり支援型 NPOによる相談事業の実施等、奥行きのある産業支援を行っていくこととした。
ところで、日本におけるビジネス支援図書館の活動は始まったばかりである。従って、大崎ビジネス支援図書館の計画段階においては、図書館側の基本コンセプトがかたまっていたわけではなく、産業振興課と協議していく中で、具体的な事業の検討を進めた。
このような検討を経るなかで、区内中小企業に製造業が多い点に着目し、ものづくりに重点を置いた実践的なビジネス支援をおこなう図書館という内容に絞り込んだ。
さらに産業振興課・ものづくり関連のNPOとの連携を模索していく中でNPOからの提案・意見等も参考にして具体的な相談事業内容などを確定した。
また、ものづくり関連の資料やデータベースの選定と収集については、都立中央図書館の特別支援チームにより、多大なご支援をいただいた。また開館前には当館職員に対するレファレンス研修の実施、開館直後にも、都立中央図書館職員を派遣していただいた。そうしたことにより、開設にあたっては万全の体制をとることができた。
運営については、ものづくり関連のレファレンスやデータベース利用支援などを考慮し、窓口に民間事業者の専門スタッフを配置することとした。
(2)ビジネス支援図書館の概要
- 資料および施設について
- 資料構成について
資料構成は、ものづくりのなかでも、区内製造業の六割を占める「電気・機械・金属」関係の図書や新聞・雑誌を中心に収集し、あわせて有料データベース、インターネットを利用できる環境を整備した。最終蔵書数は約5,000冊の予定。現有資料数は、平成16年度末で、図書約3,400冊、新聞22紙、雑誌56誌。また、データベースは、特許情報(パトリス)、JDream、日経テレコンなど8種類を配備。その他、区内製造企業を中心にした製品カタログも収集。 - 施設および設備について
- 閲覧室:約130m2。ここには図書、雑誌、新聞等の資料をはじめ、資料の貸出、相談等に応じるカウンター、データベースやインターネット利用のためのパソコン4台、持ち込みパソコンが利用できる閲覧席8席を設けてある。また新聞・雑誌バックナンバーは、専用コーナーを設け、2年分程度を保管し、閲覧及び貸出を可能にしている。
- 講習室:約50m2。講習会等で使用しない場合は、20席程度の閲覧室として提供。
- 相談室:12m2。
- ビジネス支援室:18m2。
なお、ビジネス支援図書館フロアは公衆無線LANを使える環境となっている。
- 資料構成について
- 産業振興課、NPOとの協働
産業振興課からは、図書館に対し週一回事業の調整役としてコーディネーターが派遣されている。このコーディネーターは、各種の相談を具体的に解決していくための支援メニューの決定等も行っている。また、講座等を開催し、企業同士の交流、研鑚の場となるよう努めている。具体的には以下のとおり。- 「定例講座」は、産業振興課とコーディネーターが、内容を決定、講師などの調整も行う。毎月1回開催している。
- 「ビジネスよろず相談会」は、産業振興課がNPOに委託している。内容は中小製造業者を対象にした各種相談会で、相談に応じるのは、NPOコアネット(上場企業の退職役員などが参加)。様々な経験を積んだスタッフが、中小製造業者の悩み事に対応する。相談内容は、具体的な製品作りから経営支援にいたるまで、毎月4回定例開催している。
- 「大崎ものづくり道場」は、NPO「品川ものづくり宿」が中心となって、同じ問題意識を持つ経営者・技術者同士が自由に意見を交換し、交流する場を提供する。月1回程度開催している。
- ホームページとメールマガジンの活用
情報を発信する手段の一つとして、ホームページを作成した。このホームページの維持管理は、職員の手により行われており、大崎ビジネス支援図書館の概要をPRするとともに、産業振興課の各種施策や中小企業の役に立つ様々な情報を提供している。またメールマガジンを月2回発行している。
4.事業の成果
開館は、16年7月21日で、平成16年度の各事業の実績は、以下のとおり。
講座は、オープン記念講座を含め16回を開催し、240名の参加であった。また、相談会は、8月からのスタートであったが、31件の相談を受け付けた。相談内容は、起業・創業、販路開拓、新規事業展開、店舗相続、知的財産、品質向上など多岐に渡っている。ものづくり道場は、8回開催で、延べ参加は45名であった。
図書館サービスでは、貸出冊数は2,400冊余、レファレンス件数1,100件余であった。パソコン利用は1,700件程度であるが、その8割はインターネット利用である。
この数値がいかなる成果を現しているのかは一概に言えない。大崎ビジネス支援図書館の事業成果の指標は、品川区のものづくり関連中小企業の活性化にある。厳しい経営環境が続く中で、依然として品川区の中小製造業の廃業指数は高い。
ただ、平成17年度に入り、図書館サービス部分の利用状況、相談業務とも大幅な増加を見せている。少しずつ事業が認知され始めたものと思われる。
5.今後の課題と展望
図書館のビジネス支援機能は、大人への図書館サービスであり、アメリカでは、ごく当たり前の図書館機能である。今後日本の公共図書館でもこうしたサービスを行っていくところが増えていくことになると思われる。それにより、企業活動の支援や起業・労務を含む情報・資料の提供機能の強化、相談業務に応じるための職員のスキル・レファレンス能力の向上、NPOなどとの協働により自らの足りない部分を補うなど、柔軟でかつ応用力の高い図書館経営が求められていくことになろう。
まだ、開設して一年半でしかない。現在の利用状況は、区内中小企業の皆様に使いこなしていただくまでになっていない。これが課題である。とにかくPRにつとめるほか、イベントなどを含め、中小企業の皆様が馴染める図書館づくりを進め、中小企業の皆様のサロンとなっていくよう努力していく。
品川区立図書館では、この事業により、他課・NPOと連携した事業展開、さらには図書館が中小企業対策という区政の政策課題を担うことができるということも経験できた。こうした事業展開は、図書館そのもののあり方を変容させていくものであり、従来の図書館サービスの一層のレベルアップを求められている。
ビジネス支援図書館は、いまだ模索状態から脱していないが、様々な試行錯誤を積み上げながら、一層区民・市民のニーズにあったサービスが各地域の特性にあわせて進展していくものと確信している。
(品川区立品川図書館長)
WLIC2005(IFLA年次大会)参加報告
磯部庄三
1.はじめに
専門図書館協議会から平成17年度「若手育成基金」の助成を受けて、2005年8月14日から18日まで、オスロで開催されたIFLAの年次大会WLIC1)(世界図書館・情報大会)に参加し、世界の図書館システムやサービスについて動向調査を行った。会議プログラムの聴講では、ナレッジマネジメント、著作権法、情報サービス、書誌データ交換といったホットな話題について各国の状況を伺い知ることができた。また、展示会では、ホスト国ノルウェーをはじめヨーロッパの優れた機器やシステムを見聞できた。
以下に、WLIC参加で得た知見などを報告する。なお、本稿は専門図書館協議会への報告2)を一部要約したものであり、筆者コメント等の詳細は上記報告を参照されたい。
2.IFLAとWLIC
IFLA(国際図書館連盟)は、各国の図書館協会、国立図書館、公共・大学図書館、研究調査機関などを会員とし、8部会(DIVISION)の下、47分科会(SECTION)に分かれて図書館活動や情報サービス分野における国際協力や研究活動を幅広く推進している3)。
今年のWLICへの参加者は北欧などヨーロッパを中心に約3900名で、日本からは40名弱が参加した。来年のWLICは韓国のソウルで開催される。
大会期間の前後は各分科会のビジネスミーティングも行われた。IFLAは基本的に分科会単位で活動しているので、特にWLICでの発表を希望する方は分科会に積極的に参加して、活動状況を把握しておくのがよいと思う。
3.会議プログラム
情報サービスやシステムを中心に聴講したうち、5セッションでの発表内容を述べる。
- [15日午前]
- (1) ナレッジマネジメント(Knowledge Management)
- ナレッジマネジメント(以下、KM)とライブラリアンとの関係がメインテーマだった。 英米のKM技術者サイドからの発表が3件あり、1)KMサイクル(知識の発見、共有、活用、創造)の実現に向けてライブラリアンは情報の構造化(すなわち知識化)に寄与すべき、2)異なる文化(語彙、意味、価値)を持つコミュニティ間の架け橋となるようなKMシステムの構築が重要、4)エクストラネットでの外部知識獲得においてライブラリアンはKM設計や標準化など戦略的役割を果たすチャンスである、という内容だった。2)で「KMシステムができたらライブラリアンの存在価値は低下するのか?」との聴衆の質問には、「教育や啓蒙活動といった、より高度なサービスに専念すればよい」と回答していた。
- 他の2件はともにシンガポールの発表で、3)「知は力なり」の精神が情報提供者に雇用機会を奪われる恐れを抱かせ、国家政策による知識共有促進の妨げになっている、5)電子図書館利用のKM教育ではビジネス図書館との連携を大切にすべきという内容だった。
- (2) 著作権と法律問題(Copyright and other Legal Matters)
- 図書館とWIPO(世界知的所有権機関)の将来方向性がテーマだった。IFLAはコア活動の一つが図書館業界における“自由な知識獲得や表現”の保護であり、WIPOにも働きかけをしている。昨年のWLICでチリが「IP(知的所有権)保護の例外に図書館を含める」よう提案したことをうけ、IFLA側と WIPO側の双方から、最近の活動紹介と今後の方針が示された。
- WIPO側からは、技術革新とIP保護のバランスを重視した、緩やかな法律によるガイドラインを作成していくとの概要方針が提示された。著作物の複製などIP保護の例外として教育目的に加え図書館での利用も含める内容だったが、IFLAへのリップサービスの意味合いもあったようで、ガイドラインが実行されるまでには紆余曲折が予想される。
- [15日午後]
- (3) 国立図書館(National Libraries)
- 世界各地域での文化活動ネットワークがテーマで、各地域の現状と方針が発表された。
- アジア・オセアニア地域とヨーロッパ地域からは、文化遺産保存プロジェクトでの域内連携への取り組みが述べられ、ともにリーダーシップ国の不在と電子化のための基金不足が課題に挙げられていた。上記地域に限らず、国立図書館や主要大学図書館がリーダーシップをとって国間連携を進めていくべきという意見が多かった。
- アジア事情の紹介もあり、シンガポールやマレーシアは国を挙げて電子化を推進し、韓国も国立図書館主導で公共・大学図書館と連携を図っている一方、日本は中国や台湾と同様、独自の優れたインフラを持ってはいるが、国や地域間の連携はこれから、とのこと。
- [16日午前]
- (4) 情報技術(Information Technology with University Libraries and other General Research Libraries)
- 大学におけるe-Learningシステムと電子図書館の融合がテーマだった。3件の発表内容を総合すると、e-Learningシステムは電子図書館としては使い勝手が不十分で統合は困難なため、フロントエンドをe-Learningシステム、バックエンドを電子図書館とする使い分けが現実的では、という結論だった。
- [16日午後]
- (5) 相互貸借(Document Delivery and Resource Sharing)
- 電子的な文書配信と著作権法との関係がテーマだった。1)Secure PDFを使ったアクセス権管理、2)図書館間リンキングシステムへの取り組み、3)ドイツの著作権法の紹介が発表された。ドイツは伝統的に著作権法が緩く、2000年までは「図書館は世界中のエンドユーザに著作物の複製を送信してよい」という法律であった。さすがに、国内出版社、米国や英国からの反対で昨年に法律を改正し、「出版社が電子的な配信サービスをしていない場合に限り」と条件付きになったとのこと。著作権法は世界共通と思っていたので、この発表は衝撃的だった。

(著作権と法律問題セッション)
4.展示会
展示会は大会期間中、常時開催されていた。以下は、注目すべきシステム動向である。
- ICタグ、機器、システム
TAGSYS Folio RFID Tags(フランス;TAGSYS社)、LIBRA(シンガポール;WAVEXTECHNOLOGIES 社)、Mark3,4,10(ノルウェー; Codeco社)、BiblioBar(スウェーデン;BBR Lib AB 社)など、数多くのICタグシステムの製品が展示されていた。今年のトレンドはバーコード−ICタグのハイブリッドシステムであり、特にシンガポール、北欧ベンチャーの優れたシステムが印象に残った。 - 文献複写装置
CopiBook(フランス;iS2社)をはじめ、冊子の完全自動複写デモが何件かあった。 - 蔵書自動返却装置
TOR In(ノルウェー; AXIELL社)など、自動仕分けを行うデモが何件かあった。 - 電子ジャーナル検索ソフト
VTLS(フランス; VTLS Europe社)、BOOK-IT(ノルウェー; AXIELL社)、AMS(英国; SerialsSolutions社)、QuestionPoint(米国; OCLC)、e-Resource Manager(ドイツ; TDmet社)などのデモが印象に残った。今年のトレンドは、(1)統合(メタデータ標準化や多言語対応)、(2)安価(ジャーナルのパッケージ化)、 (3)賢い(ナレッジ対応)、である。
日本では知名度が低いが、優れた製品が特にヨーロッパに多いと感じた。

(展示会に出展されたノルウェー製蔵書自動返却装置)
5.ポスターセッション
16日、17日の2日間、展示会場の一角で開催され、かなりの盛況だった。全体の発表を概観した後、鶴見大学の長塚教授らによるe-Learningシステムの発表を見学した。

(ポスターセッション会場の様子)
6.図書館訪問(ライブラリーツアー)
オスロ大学の数学・自然科学・情報学図書館(Faculty of Mathematics and Natural Sciences,the Informatics Library)の見学ツアー(17日午前)に参加した。
この図書館は歴史ある図書室といった風情で、図書管理はこれといった特徴はなかったものの、利用する学生や教官のレベルは大変に高く、館内にフィールズ賞受賞者の写真や板書が飾ってあったりした。Strange館長のナレッジマネジメント講演を聴いた後、テラスで昼食をご馳走になりながら参加者と意見交換を楽しんだ。
なお、レセプション会場脇の人文社会学図書館も同日夕方に案内される機会に恵まれた。館内の至るところで芸術的工夫が凝らされていて、文化の担い手といった風格が感じられた。カウンタ脇に設置された蔵書自動返却装置は、返却された蔵書の分類情報を読み取り、目にも留まらぬスピードでカートへ自動分配するので、学内の人気者とのこと。
7.レセプションなど
WLICではホスト国の文化の紹介を兼ねて各種催し物が企画される。今年は、ノルウェー国王も御出席になられた“開会式”(14日午前)、国立図書館の開館を記念した“開幕式”(15日夕方)、民族衣装が華やかな“Cultural Evening”(16日夕方)、オスロ市長による“レセプション”(17日夕方)が行われた。(“閉会式”は帰国日のため不参加。)
また、日本図書館協会とオスロ大学が事務局となり、“ノルウェー日本専門家と日本人参加者の懇親会”が17日の午後に企画された。これらの企画に参加することで、自然にホスト国の文化・精神や図書館事情を理解、堪能することができた。

(開会式のフィナーレ)

(ノルウェー日本専門家と日本人参加者の懇親会)
8.大会の感想など
大会参加で特に印象に残ったのは、図書館事情は国によって様々であり、日本で当たり前と思っていることが必ずしもそうではない、ということである。
北欧では“知識の獲得”、“表現の自由”を人権問題と捉え、図書館はこれらを保護する中枢、というリベラルな捉え方をしている。これは自由と連携を重んじるIFLAの活動方針にも合致していて、ややもすると著作権を盾に電子ジャーナルの価格高騰を招きがちな市場原理一辺倒の考え方とは一線を画すものである。
IFLAは方向付けをするだけで個別の案件についての議決機関として課題が多いと思うが、ライブラリアン、管理者、技術者、教育者、機器業者などあらゆるミッションを持った図書館関係者が一堂に会して情報交換する“場”としてのポテンシャルは大変高く、他の業界でも類がないものとなっている。
本稿が、今後WLICへの参加を予定する方々、世界の図書館事情や図書館システムの動向を知りたい方々にとって、何らかの参考になれば望外の喜びである。
- 参考文献
-
- WLIC http://www.ifla.org/IV/index.htm
- 磯部庄三,“「若手育成基金」による会議参加報告 2005年WLIC(IFLA年次大会)参加報告”,専門図書館, No.214,2005,pp.30-35
- IFLAのコア活動 http://www.ifla.org/act-serv.htm
((株)東芝研究開発センター図書館)
平成17年度全国図書館大会について
原田明子
平成17年10月26日から28日の3日間、茨城県水戸市で第91回全国図書館大会が開催された。以下は全体会と私が出席した第8分科会の講演等の概要紹介である。
1. 全体会
基調報告 日本図書館協会理事長 塩見昇氏
前回の大会以降の1年の概観を主に3点報告された。(別紙資料)
- (1) 文字・活字文化振興法の制定(2005年7月)
- 法案の提案を受け、日本図書館協会(以下協会)は要望書を提出した。
趣旨には共感するが、関係者による検討と充分な議論が必要である。そして活字文化を支えるには基盤が脆弱で、公立図書館は未だ足りない、資料費が少ない、図書館に専任の専門職員を置く必要があるという現状を伝えた。
しかし審議はほとんどないまま法は施行された。協会では同法を実効あるものにするための政策提案、要求をまとめる予定なので11月30日までに素案に対する意見、提案を募集した。
クリックすると拡大します。
- (2)船橋市西図書館蔵書廃棄事件の最高裁判決(2005.7.14)が投じたもの
- 船橋市西図書館の職員が閲覧に供されている一部特定図書について除籍・廃棄を行い、著者らがこれに関わった職員および船橋市に損害賠償請求をした事件の判決について協会は支持を表明。最高裁の判断としてこれまでになく踏み込んだ判断であり、「図書館の自由に関する宣言」等で常に主張してきた考えや図書館のあり方が支持されたものである。だが、不公正な廃棄により著作者が、著作物によって思想、意見等を公衆に伝達する利益を不当に損なうという判断は、自分たちの思想等を図書館を通して反映させようとする著作者から、自分の思想等を人々に伝える権利を図書館が侵害していると受け止められるような事態が生じる可能性がある。今回のような事件が起きたことは図書館自体の責任を真摯に受けとめる必要がある。
- (3)指定管理者制度の適用
- 制度の改正により管理の民営化が可能になったが、協会はこの制度に対するスタンスを表明した。この制度の創設の目的として、効率的効果的達成、民間活力の活用、住民サービスの向上、経費節減が挙げられる。すでに導入している自治体と導入しない旨を表明した自治体があるが、子細に検討すると公立図書館になじまない制度であると思われる。公の施設の管理の外注化については地方自治法で「公の施設の設置目的を効果的に達成するために必要があると認めるとき」と明確になっているが制度の適用を迫られているのが現状である。各自治体で導入の可否について検討して欲しいということなので協会では8月以降緊急図書館経営セミナーを開催している。今後も要望があれば開催していきたい。
- 記念講演「ヒトのことば動物のことば〜コミュニケーションの原点を探る〜」
ミュージアムパーク茨城県自然博物館名誉館長 中川志郎氏 - 氏は長年動物園獣医として勤務された。今回も色々な動物のコミュニケーションの実例を交えて講演された。
- 図書館は知的な集積をまとめて次代に継承するものであり、博物館は物の集積をまとめて次代に継承するものである。両者はとても近しい関係にあり共に文化を扱っている。
- 文化はコミュニケーションがなければ縦にも横にも繋がらないものである。コミュニケーションは不可欠であるが人間だけでなく言語を持たない動物もさまざまなコミュニケーションの方法があり、それにより種の歴史を支えている。
- ゲノム(生物学的遺伝子)とミーム(文化的遺伝子)の2つがバランス良く発達して人間として完成された生き方が出来る。
- 図書館も博物館もミームを扱うものの責務を自覚し共に文化を支えてゆくものとしてエールを送りたい。
2. 分科会 第8分科会 著作権 「著作権問題の最近の動向と館界の対応」
現在図書館における著作権問題は、法改正により解決をはかるものは「文化庁文化審議会著作権分科会」で、権利者との協議で合意を得て解決をはかるものは「図書館における著作物の利用に関する当事者協議会」で行っている。今回は分科会と協議会、そして世界の著作権についての動向についての報告とパネルディスカッションが行われた。
報告1「文化庁文化審議会著作権分科会および法制問題小委員会の審議について」
日本図書館協会事務局次長 常世田良 氏
2004年8月文化庁文化審議会著作権分科会のもとに置かれていた小委員会の構成に変更があった。法制問題小委員会、契約・流通小委員会、国際小委員会の3委員会になり、今期から小委員会は当事者を除いた研究者を中心としたものになったことから分科会のみに参加している。
図書館関係の権利制限について論点整理を行った結果は2003年の「文化審議会著作権分科会審議経過報告」に記載された。法改正を行う方向とすべき事項3点、「意思表示」システム等により対応すべき事項3点、引き続き関係者間の協議が行われる事項4点である。
「権利制限」(これは作家等権利者側の権利を抑えることである)が法制問題小委員会の主要検討課題になり、2004年8月から法改正に関する聞き取りが関係団体、省庁で行われた。図書館に関わる要望は6点。(日本図書館協会からは5点要望を提出した。)
- 著作権法第31条の「図書資料」に、他の図書館から借り受けた図書館資料を含めること
- 図書館等において、調査研究の目的でインターネット上の情報をプリントアウトすること
- 「再生手段」の入手が困難である図書館資料を保存のため例外的に許諾を得ずに複製すること
- 図書館における官公庁作成広報資料および報告書等の全部分の複写による提供
- 著作権法第37条第3項について、複製の方法を録音に限定しないこと、利用者を視聴覚障害者に限定しないこと、対象施設を視覚障害者福祉施設に限定しないこと、視覚障害者を含む読書に障害を持つ人の利用に供するために公表された著作物の公衆送信等を認めること
- 図書館等の間においてファクシミリ、電子メール等を利用して著作物の複製物を送付すること
その後、(1)については権利制限を認めるのが適当であるとする意見が多数だが、その他の論点については引き続き検討を必要とすると言う意見が多数と報告がされ、同報告「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議の経過」に対するパブリックコメントが行われ、コメント結果を集計中である。
報告2「『図書館における著作物の利用に関する当事者協議会の』現状」
東京大学附属図書館情報サービス課長 友光健二 氏
権利者と図書館の協議会は、平成13年文化審議会著作権分科会に「図書館における著作物等の利用に関するワーキング・グループ」が設置されたことに始まる。その後も形、名称を変え協議を継続してきた。
平成16年6月から新たな覚書を交わし新しい体制になった。名称も「図書館における著作物の利用に関する協議会」とし、各団体は協議会に委員1名を派遣することとし、各団体の代表であることを明確に規定した。構成団体も図書館側は従来の団体に「全国学校図書館協議会」を加え5団体、権利者側は「日本著作権出版権管理システム」、「日本複写権センター」を加え6団体になった。
協議内容として図書館側、権利者側からそれぞれ5点要望事項が出されている。2005年9月までに8回協議を行っているが、問題の解決が出来そうなものから具体的な検討に入り、そのうち図書館側の要望した2点、
- 図書館間相互貸借で借り受けた図書等を著作権第31条1号により複写することが出来るようにすること
- 著作権法第31条の解釈・運用についてのガイドラインを作成すること。(事典の一項目全部の複写や和歌等の全部の複写)
については11月中にまとまっていくものと思われる。
報告3「『図書館と著作権』関連の世界的動向」
山梨英和大学教授 前園主計 氏
著作権に関わる世界的動向を知るにはWIPO(世界知的所有権機関)の動きを見るのが一番の早道といえる。
2004年9月WIPOは全加盟国が参加する第40回総会を開催した。結果は9月29日に「WIPOの将来に関するジュネーブ宣言」として公表された。この宣言の趣旨は、知る自由の保障や開発途上国への配慮の必要性とともに、過大な権利保護による弊害の指摘、WIPOの政策転換が盛り込まれている。
この会議の前にジェームズ・ボイルの「WIPOについてのマニフェストと知的所有権の将来」という論文が書かれ会議でも議論されたが、その中に「著作権は私的権利であり、公共の権利とのバランスを考えて行うべき」とある。
会議の前にIFLA-CLM(国際図書館連盟-著作権・法律問題小委員会)は知る権利について要望を織り込む活動を行ったが、これはジュネーブ宣言には入っていなかったため、すぐに声明を出した。
- 知的所有権は法制はアンバランスなままである。
- 情報の独占が続いている。
- 技術的保護手段問題は解決していない。
- デジタルデバイドは広がりつつある。
- 自由貿易協定の余地が狭い。
ジュネーブ宣言後にはアメリカ図書館協会、アメリカ法律図書館協会、アメリカ医学図書館協会、アメリカ専門図書館協会、IFLAが共同で作成した「WIPOの国際的展開に考慮されるべき図書館関係の基本原則」が発表された。
WIPOは図書館関係者からは政策転換をせまられている。
3.おわりに
日頃目先の日常業務にばかり目を向けている私にとって、大会に参加して電子化、著作権、新立法等図書館界を取り巻く大きな流れを知る事は、図書館はまさに転換の時にいるのだと実感出来た良い機会でした。
今大会のスローガンは「常陸国から図書館の未来を探る」ですが、図書館を巡る国内外の動き、将来的な事も視野に入れ、それを日常業務にも反映させていけたらと思いました。
(支部会計検査院図書館)
日誌(平成18年7月〜平成18年9月)
| 10月4日 |
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|---|---|
| 10月7日 |
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| 10月11日 |
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| 10月12日 | 平成17年度第1回兼任司書会議 |
| 10月14日 |
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| 10月19日 |
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| 10月31日 | 平成17年度第2回中央館・支部図書館協議会幹事会 |
| 11月1日 |
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| 11月8日 |
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| 11月9日 | 平成17年度第2回中央館・支部図書館協議会 |
| 11月11日 |
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| 11月15日 |
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| 11月29日 | 平成17年度国立国会図書館長と行政・司法各部門支部図書館長との懇談会 |
| 12月9日 | 特別研修「見学会:品川区立大崎図書館ビジネス支援図書館」 |


