びぶろす-Biblos
平成17年7月号(電子化29号)
- NATIONAL DIET LIBRARY
- 発行/国立国会図書館総務部
- ISSN 1344-8412
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はじめに
『びぶろす』は、昭和25年4月に創刊し、以後行政・司法各部門の支部図書館と専門図書館の連絡情報誌として今日に至っております。より広い範囲への提供を考え、平成10年8月号で冊子体を停止し、10月から国立国会図書館ホームページで公開しています。刊行形態は異なりましたが、今後も当館、支部図書館および専門図書館の折々の状況を掲載して行きます。
*本誌に掲載された記事を全文または長文にわたり抜粋して掲載される場合は、サイトポリシーをご覧いただき、事前にご連絡ください。
目次
- 内閣府図書館を去るにあたって
- 林野庁図書館の思い出
- 著作権制度の概要について
- 図書館における著作権
- 法律図書館連絡会から−法律関係専門図書館の現在の取組み
- 平成17年度関東地区公共図書館協議会総会・研究発表大会報告
- 日誌
内閣府図書館を去るにあたって
佐々木勝
今年に入って、国会図書館から私に「“内閣府図書館を去るにあたって”と題して内閣府図書館の役割・現状・課題を含めて就任中に感じたことを『びぶろす』に執筆いただきたい」との依頼がありました。3月に定年退職をむかえる私としては、自分が国立国会図書館の支部図書館に席を置いていたという証を残しておくと共に、内閣府図書館を広く皆さんに知っていただく機会をいただいたことに感謝し、快諾しました。
本稿は、まず始めに私が内閣府図書館の2年間にどんなことをしたかを書きました。次に内閣府図書館の現状を紹介し、最後に内閣府図書館が現在抱えている課題をまとめてみました。
本稿により、皆さんに内閣府図書館の一端を知っていただけたら幸いです。

四号館図書館の開架書庫にて
1.内閣府図書館の2年
私が国立国会図書館支部内閣府図書館長を拝命したのは平成15年4月1日でした。図書館業務については全くの素人の私でしたが、とにかく職員の皆さんが気持ち良く利用出来る図書館運営を念頭に置き着任したことを、今でもハッキリと覚えております。
現在の内閣府図書館は平成13年の省庁再編で、これまでの経済企画庁図書館(現四号館図書館)と国立公文書館内閣文庫の総理府庁舎分室(現本府図書館)が統合してできたものです(詳細は後述2.を参照)。立派な図書館としてここまで整備していただきました諸先輩方には敬意を表する次第でありますが、ここで私に課せられた任務は、図書館業務をよりスムーズにするための各種規程類の見直し(新規作成、図書館長の公印の作成及びその利用規程を含む)を行うことと、未だやり残している図書館としての体裁を整えることにより、より良い図書館に仕上げることだと考えました。
各種規程類の見直しと新規作成は、国会図書館や各支部図書館のものを参考にしながら粛々と行いました。しかし、四号館図書館を内閣府図書館の本館とし、本府図書館をその分室にする「国立国会図書館支部内閣府図書館管理・運営規則」の改正は困難を極め、どうにもならず矛を収めざるを得ませんでした。やはり、本府庁舎にある図書館を分室にするということは適わなかったのです。そのため、内閣府図書館は未だに四号館図書館と本府図書館の2館からなっているのです。また、国立国会図書館支部内閣府図書館長の公印は比較的容易に作れたものの、その利用の仕方では悪戦苦闘しました。それは内閣府には組織上『図書館長』という職名がないからなのです。図書館長が決裁文書の専決者にはなれないし、図書館の文書番号も使えないのです。現に私の辞令は「大臣官房企画調整課勤務」となっています。
図書館としての体裁を整えることは、ほとんどが本府図書館のことでした。まず本府図書館の事務室を改装し、これまで置いてあった作業用のテーブルを事務用机に取り替え、内線専用だった電話を直通電話に替えました。その他にもいくつかのことを試みましたが、それらは実現できませんでした。ところが3月になって本府図書館の書架1列の増設が認められ、これが私の最後の仕事となりました。
それからもう一つ図書館長としての重要な任務がありました。内閣府図書館としては、毎月貸出期限の切れた人に督促状を出していますが、このうち6カ月を超えた延滞者には図書館長が直接督促することになっているとのことでした。着任早々その役割が私のところに回ってきました。この交渉は結構根気を要することでした。これについては、エピソードとして残るような体験談がいくつかあります。

閉架書庫
2.内閣府図書館の現状
内閣府図書館は、平成13年1月の省庁再編で国立公文書館内閣文庫と旧経済企画庁図書館が統合し、国立公文書館の所掌のもとに設置されました。その後、同年4月に国立公文書館が独立行政法人となったため、国立公文書館内閣文庫の旧総理府庁舎分室と旧経済企画庁図書館が残り、大臣官房企画調整課の所掌のもとに再編され、現在は内閣府本府庁舎にある本府図書館と第4合同庁舎にある四号館図書館の2つからなっています。なお、専有面積、蔵書数等からみて、四号館図書館の方が本府図書館を凌いでいるため、四号館図書館が実質的には内閣府図書館の本館の機能を持っており、本府図書館はその分室のような位置付けとなっております。
| 専有面積 | 閲覧席数 | 蔵書数 | |
|---|---|---|---|
| 四号館図書館 | 351m2 | 9席 | 81,100冊 |
| 本府図書館 | 144m2 | 12席 | 18,838冊 |
| 合計 | 495m2 | 21席 | 99,938冊 |
内閣府図書館の利用については、「内閣府図書館利用規程」により、概要は以下のようになっております。
- 利用者:
- 内閣府及び内閣官房職員
- 国立国会図書館中央館及び支部図書館
- 並びに専門図書館協議会加盟諸機関の職員
- 上記以外の一般利用希望者については館内閲覧のみ可
- 利用時間:
- 9時30分〜12時、13時〜17時
- 但し、内閣府及び内閣官房職員は12時〜13時も可
以上のような利用規程のなか、内閣府図書館の利用状況は次のようになっております。
| 入館者数 | 貸出者数 | 貸出冊数 | |
|---|---|---|---|
| 四号館図書館 | 9,485人 | 4,519人 | 12,282冊 |
| 本府図書館 | 7,338人 | 1,030人 | 1,927冊 |
| 合計 | 16,823人 | 5,549人 | 14,209冊 |
これらの数値を年を追って見てみますと、四号館図書館は減少傾向にあり、本府図書館は増加傾向にあります。一般的に見て最近の図書館の利用状況は、インターネットの普及の増加により、これらの数値は減少傾向にありますので、四号館図書館はその趨勢に乗っていると思われますが、本府図書館は未だ普及の発展過程にあるものと考えられます。

本府図書館の入り口
3.内閣府図書館の課題
- 蔵書構成を如何にしていくか
内閣府は平成13年の省庁再編により、いくつかの省庁が統合してできた新しい組織であり、所掌する仕事の分野は広範囲にわたっております。しかし内閣府図書館は、前述のとおり2つの図書館が統合してできたものなので、蔵書構成は必ずしも内閣府の仕事を全てカバーする状況にはなっておりません。今後この蔵書構成をどのようにしていくかが、現在内閣府図書館に求められている最大の課題であります。 - 四号館図書館と本府図書館の役割及び相互の連携を如何にしていくか
内閣府は現在9か所(迎賓館及び沖縄総合事務局を除く)の庁舎に分散しています。これらの庁舎に勤務する職員は、四号館図書館もしくは本府図書館を利用することになりますが、まずは自分の庁舎に近い方の図書館を利用するのが一般的でしょう(但し、現在は各職員の机上にある端末でも蔵書検索が出来ることになっていますので、事前に検索をしてから利用図書館を決める人もいるでしょう)。そうなると、四号館図書館と本府図書館それぞれの役割や、求められる蔵書構成も自ずから決まってくることになり、図書館としてはそれを見定めて、各館の運営を行っていくことになります。
それから、四号館図書館と本府図書館、それぞれの図書館を利用する人は、その図書館で他の図書館の蔵書を利用出来るようになることを求めているはずです。これについては、四号館図書館と本府図書館相互の連絡を密にすると共に、両館の間に連絡便を設けることで可能となると考えられますので、早期の実現が望まれます。 - 利用者への啓蒙活動の強化
「内閣府図書館利用規程」を守らないとか、国会図書館中央館や各支部図書館を利用するに際して、それぞれの機関のルールを守らない利用者がいることは、我々図書館側にとっては頭の痛い問題です。しかし、利用者側からみると、もっとフレキシブルに利用したいと考えるでしょうから、その接点の調整は難しいことであります。
これについては、利用者の資質・モラルの向上に期待することが大でありますが、我々図書館側も引き続き粘り強く啓蒙活動を行っていくことが必要であると考えています。
(前支部内閣府図書館長)
(2005年3月現在)
林野庁図書館の思い出
大野秀雄
1.はじめに
林野庁図書館は、歴史の浅い図書館でありますが、約7万冊の蔵書を擁し、主として森林、林業、木材産業の図書資料を収集し、林業の研究に役立つようにと設置されました。
私は、平成17年3月末日に林野庁を定年退職しました。私の今までの図書館のイメージは、専ら娯楽のための図書の貸出しを受けるためのもの、また、静かに読書するところと言う程度の認識しか持っておりませんでしたし、自分が図書館員の一員として業務に関わることはないと思っていました。
図書館勤務以前は、同じ企画課内で統計調査業務に携わりました。この仕事が後になって非常に役立つこととなりましたが、行政に携わる者として図書館勤務は異質な感じであり、当然私には初めての勤務で、司書の資格のある前任者からの引き継ぎを受けたときは、今後の不安だけが先に来ておりました。しかし、国立国会図書館中央館の研修並びに先輩方からのご指導等により無事図書館勤務を終えることができました。
2.図書館業務
図書館業務といえば、受付業務、図書の選定、集書、登録等多岐にわたります。なかでも、受付業務は、図書館の知識もないまま受付をしなければならないときは大変でした。受付カウンターで、苦虫をつぶしたような顔をしていては、利用者に対し非礼を欠くこととなることから、努めて笑顔で接することに努力したつもりです。受付当番の日は、今日一日どんな利用者がやってくるであろうか、何人くらいか、何を調べに来るであろうかなどといろいろ想像してみたりしていました。当館は、常に一人で対応しているので、一度に2〜3人が入館されると、各人ごとにそれぞれ手続きをしてからの閲覧、貸出しとなりますので慌しくなります。この図書を、あの資料を借りたい、閲覧したいなど、また、開架となっているもの、閉架となっているものと区分されていますので、一人で対応できないときは他の職員の応援をしてもらいました。
平成15年7月からインターネットによる目録検索が稼働したところ、利用者に変化が見受けられるようになりました。従前は利用者が来館の上、パソコンで検索してからメモにより、これを閲覧したいと申し出ていたものが、昨今は、利用者があらかじめ閲覧したい図書資料をインターネットで検索の上、メモ書きを持参して受付へ閲覧したいと申し出る人が多くなりました。
レファレンスは、当初、不慣れや基礎知識の不足などもあって迅速に対応することが出来ませんでした。しかし、前に経験した統計調査業務や研修で教わったことは、「利用者が何を知りたいのか、必要としているものは何か、個別具体的に」ということでしたので、これを手本にして対応してきました。レファレンスでは、特に統計に関する事項が多くありました。また、次のようなこともありました。利用者が「どこの図書館にもなかったので」と言って来たときに、当図書館に所蔵してあったり、また、探し求めていた図書資料が検索で一目瞭然に判明したときなどは、利用者から感謝され図書館員冥利につきました。図書館員が司書の資格の有無にかかわらず、森林、林業行政全般的に精通していれば迅速に対応できると思いました。
電子化が進んでいる今日、書誌情報についてはその都度登録してデータベース化を積極的に図ってきましたが、目次情報の遡及入力に当たっては過去何年間となく入力をしている中、なかなか進行しなかったことから、スピードアップと簡素化を図る観点でスキャナーを利用した目次情報入力を平成16年から実施しました。「緊急に入力するもの」については、初期の目的を達成することができました。図書資料の整理については、毎日受け入れ資料が増加する一方であり、書庫のスペースに限りがあることなどから、図書資料の廃棄も必要であり、庁舎の一部の配置換えの際に、不要となった図書資料を段ボール箱に詰めて毎週木曜日の自動車便で何回かにわたり国立国会図書館中央館に受け取って頂いたことがありました。このときは大変有り難かったと思っております。
3.図書館電子化の整備
私が着任した平成11年は、農林水産省図書館と林野庁図書館の「図書等」の同時検索ができるようになったときでした。翌平成12年に林野庁図書館単独で検索できるようになりました。第1次基本計画内で計画通り機器の整備等終了しました。平成13年に第2次基本計画が定められ、それに基づき平成15年にインターネットへの接続、平成16年に霞ヶ関WANを通じた国立国会図書館中央館及び各支部図書館間との情報の共用、書誌情報の検索ができるようになり、図書館サービスが高度情報化時代の利用者の情報ニーズにあったものとしてきました。図書館の情報化、電子化の進展はめざましいものがあります。専門図書館としての役割を果すためには、今後も引き続き電子化の整備等が必要となりますので、これから大いに期待したいと思っております。
4.おわりに
図書館勤務の中で、専門図書館全国研究集会や全国図書館大会に出席し、プロと素人の意識の差、プロの人々が図書館をよりよく発展させるために、また、利用してもらう場合の苦悩など、様々な形で鋭意努力している姿をみて大変参考になりました。そして、形態の違う図書館の貴重な体験談を聞いたり見たりしたことは、私の図書館業務の大きな礎となりました。行政最後の仕事として図書館勤務する機会に恵まれ職務を全うできたことに大変満足しております。
世界に例のない支部図書館制度の下で勤務したことを誇りに思いつつ、国立国会図書館中央館及び各支部図書館の発展と皆様のご活躍をお祈り致しております。
(元林野庁図書館)
著作権制度の概要について
大和淳
1.はじめに
近年、日本をはじめ多くの国々で著作権制度の整備・充実について、急速に新しい動きが進んでいる。それは、情報の伝達・記録技術の発達に伴うインターネットの普及が契機となっている。
インターネットは、例えば、出版、放送などの分野でも、従来のコンテンツ流通の常識を大きく転換させる可能性を秘めている。また、家庭や事務所が、コピー工場や放送局に類似するサービスを提供できることになるという点でも、重大な課題を含んでいる。すなわち、デジタル化されて情報が流通する場合、インターネットを活用してコピーされたり発信されたりするコンテンツの質は、オリジナル製品と変わらない高品質のものとなりうるのである。
確かに、インターネットなどの新たなメディアによって、小説、音楽、映画、学術論文、地図などの情報が容易に入手できることは、国民一般にとっては歓迎すべきことである。
しかし、このような新たなメディアによるコンテンツの流通が無秩序に行われると、創作者に対する精神的あるいは経済的な還元がなくなり、創作意欲も減退することになりかねない。
書籍やDVD、CDのようなパッケージメディアはもとより、インターネットなどのノン・パッケージメディアについても、適切な法的ルールを設け、創作者〜流通事業者〜消費者の三者の間のよりよいサイクルを構築していくことが、世界的にも求められている。
2.著作権制度の保護対象
著作権制度の保護対象の中心は、「著作物」であり、それは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」と定義されている。法律における例示を整理すると表1のとおりである。
| 種類 | 具体例 |
|---|---|
| 言語の著作物 | 小説、脚本、論文、講演、詩歌など |
| 舞踊又は無言劇の著作物 | 日本舞踊、バレエ、ダンスの振り付けなど |
| 音楽の著作物 | 楽曲、楽曲を伴う歌詞 |
| 映画の著作物 | 劇場用映画、ビデオ、ゲームソフトの映像など |
| 美術の著作物 | 絵画、版画、彫刻、書など |
| 建築の著作物 | 芸術的な建築物 |
| 写真の著作物 | 肖像写真、記録写真など |
| 地図又は学術的な性質を有する図形の著作物 | 地図、設計図、図面、図表、模型など |
| プログラムの著作物 | 事務処理用アプリケーションソフト、業務用ソフト、ゲームソフトなど |
なお、著作物として保護を受けるための要件として「物への固定」が限定されていないため、その場で消えてなくなる講演や即興演奏のようなものについても保護される。
ところで、出版物の中には、単独の作品のみを書籍にしたもののほか、例えば、新聞、雑誌のように多数の著作物を編集して一冊のものとして発行するものもある。この場合、掲載された個々の作品が著作物であるのは当然であるが、それらの作品を素材とした選択方法や配列方法の創作性に着目して、編集物全体も著作物と捉えることとしており、これを編集著作物という。したがって、小説や写真、イラストなど複数の著作物がまとめられた雑誌を一冊丸ごとコピーする場合には、小説家、写真家、イラストレーターに許諾を得るだけでなく、それらを選択し配列した雑誌編集者の許諾も得る必要がある。
また、例えば、英語の小説を日本語に翻訳した場合のように、ある原作の著作物に依拠しつつ、それとは表現形式が異なるものの原作の本質的な特徴を直接感得することができるように創作されたものを二次的著作物という。したがって、二次的著作物をコピーする場合には、当該二次的著作物の作者の許諾と同時に、その原作の作者の許諾を得る必要がある。
(なお、著作権制度においては、著作物のほか、実演、レコード、放送及び有線放送についてもそれらの利用に係る権利を定めているが、本稿では省略する。)
3.著作者の権利
著作者が享有する権利の内容については表2のとおりであり、これらの権利は、著作者が著作物を創作した時点で発生する(これを無方式主義という)。
| 著作者人格権 | 公表権 |
|---|---|
| 氏名表示権 | |
| 同一性保持権 | |
| 財産権としての著作権 | 複製権 |
| 上演権・演奏権 | |
| 上映権 | |
| 公衆送信権等 | |
| 口述権 | |
| 展示権 | |
| 頒布権 | |
| 譲渡権 | |
| 貸与権 | |
| 翻訳権、翻案権等 | |
| 二次的著作物の利用権 |
この表の権利のうち「財産権としての著作権」として規定されている権利に係る行為を行おうとする者は、その作品の著作権者(1)から許諾を得なければならない。
これらの権利のうち主なものについてその概要を説明すると、まず、代表的な権利として「複製権」とは、著作物を有形的に再製する行為に係る権利である。出版、CD化、DVD化などのほか、文献複写機器や録音・録画機器等により複写や録音・録画すること、インターネット上でデータ化されている著作物をサーバや記録メディアに蓄積することなども、原則として著作権者の権利が及ぶ行為である。
「公衆送信権」とは、放送や有線放送のほか、作品がデジタル化されたものをインターネット上で公衆が受信できるように発信するなどの行為に係る権利である。例えば、ホームページに他人が作成した著作物を音楽ファイル、静止画ファイル、動画ファイルなどにして貼り付け、アップロードすることや、メール機能を用いて著作物を公衆に発信することなどが含まれる。(2)このような行為により発信された情報は、受信者がパソコンなどにコピーすれば、オリジナルと同品質のものを入手できることになるため、発信できるようにする(求めがあれば送信できるような状態に置く)段階で著作権者の許諾を得るようにしているものである。
「貸与権」とは、書籍やCD、コンピュータ・ソフトなどの著作物の複製物を公衆に貸与する行為に係る権利であり、「頒布権」とは、ビデオ、DVDなど映画の著作物の複製物を公衆に譲渡又は貸与する行為に係る権利である。
「譲渡権」とは、印刷物や録音物のような著作物の複製物を第三者に譲渡する行為に係る権利である。ただし、最初の適法な譲渡によりこの権利は消滅することとしており、正規品であればこの権利を意識することなく円滑に流通させることができるようになっている。この権利は、例えば、インターネット等を通じて著作権者に無断で複製された物が転々と譲渡される場合に、その過程で無断複製物の流通を差止めたいときなどに有効である。
4.著作権の存続期間
著作権の存続期間とは、例えば、出版事業者の場合、ある作品を書籍にして出版するときに、著作権者の許諾を得なければならない期間である。
著作権法では、原則として、著作物の創作の時から著作者の死後50年後までを著作権の存続期間としており(3)、この期間内にある著作物は、著作権者に無断でコピー、演奏、放送等をすることはできない。しかし、この期間を経過したものは、社会全体の共有財産として自由に利用できることとなる。
- 通常は著作者が著作権者であるが、財産権としての著作権は譲渡することが可能であるため、そのような権利移転契約があった場合には、著作者ではなく権利を譲り受けた著作権者の許諾を得ることになる。
- メールの場合のうち、受信者が特定少数である場合には公衆に対する行為ではないため、公衆送信権は及ばない。
- 公表の際に著作者名が表示されていない著作物や法人が著作者である著作物などについては、公表後50年後までが著作権の存続期間となる。
5.著作権の制限
上記1に述べた著作者の権利が及ぶ行為を行う場合には、原則として著作権者の許諾を得ることが必要であるが、利用の態様等によって著作物の公正で円滑な利用を図るため、一定の要件を満たした場合に限り、著作権者が権利行使をすることができないことが定められている。
具体的には、教育や福祉などの公益的な利用、報道等のために必要な利用などの観点から、表3に掲げるような規定が定められている。
| 規定の区分 | 許諾を得ずに行える行為の例 |
|---|---|
| 私的使用のための複製 | 個人的に楽しむために音楽や映画などを録音・録画することができる |
| 図書館等における複製 | 図書館利用者に対するコピーサービスなどが行える |
| 引用 | 論文などに他人の論文の一節を引用することができる |
| 教科用図書等への掲載 | 検定教科書に文芸作品や音楽作品などを掲載することができる |
| 教科用拡大図書等の作成のための複製 | 弱視児童等のために教科書の拡大図書を作成することができる |
| 学校教育番組の放送等 | 学校向け放送番組として文芸作品や音楽を放送することができる |
| 学校その他の教育機関における複製等 | 授業のための教材として文芸作品などを複製したり、遠隔授業で著作物を送信したりすることができる |
| 試験問題としての複製等 | 試験問題に新聞記事や論文を用いることができる |
| 点字による複製等 | 視覚障害者のために小説などの点字本や録音テープを作成することができる |
| 聴覚障害者のための自動公衆送信 | 聴覚障害者のために放送番組の字幕を作成し送信することができる |
| 営利を目的としない上演等 | 非営利・無料・無報酬であれば音楽の演奏や脚本の上演等ができる非営利・無料であれば図書、CD、ビデオ等の貸与ができる |
| 時事問題に関する論説の転載等 | 社説等を他の新聞等に転載することができる |
| 政治上の演説等の利用 | 公開の政治演説を利用することができる |
| 時事の事件の報道のための利用 | 事件報道のために著作物を利用することができる |
| 裁判手続等における複製 | 裁判手続や立法・行政の内部利用のために著作物を複製することができる |
| 行政機関情報公開法等による開示のための利用 | 情報公開法の開示手続のために著作物の複製等をすることができる |
| 放送事業者等による一時的固定 | 放送のための録音物・録画物を作成することができる |
| 美術の著作物等の原作品の所有者による展示 | 絵画や彫刻の所有者自身が展示することができる |
| 公開の美術の著作物等の利用 | 公園などに設置されている彫刻などを撮影したり放送したりすることができる |
| 美術の著作物等の展示に伴う複製 | 展覧会のパンフレットに展示作品の複製をすることができる |
| プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等 | プログラムのバックアップコピーやバージョンアップなどをすることができる |
なお、これらの規定の適用に当たっては、その利用主体や利用態様等について条件が付されていたり、著作権者に対する補償金の支払いの義務が課されていたりする場合もある。
6.著作権侵害の法的責任
自己の著作物が無断で利用された場合に、どのような法的責任を追及しうるかについては、まず民事的責任としては、差止め請求、損害賠償請求、不当利得返還請求及び名誉回復等措置請求が可能である。
また、悪質な権利侵害者に対しては、刑事責任を問うことができる。著作権侵害についての刑罰は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金であり、法人が著作権侵害を行った場合、1億5000万円以下の罰金となる。これらの刑事責任については、著作者等の告訴により裁判が提起される。
7.おわりに
産業、学術、教育、文化、エンターテインメントなど様々な分野において知的財産の創造、保護及び活用の促進を図る機運が高まりつつあるなかで、著作権制度への関心も高まっている。それらの分野の情報を横断的に国民に提供する役割を果たす図書館関係者においてもその例外ではなく、デジタル化、ネットワーク化が進展する社会において、技術を活用したよりよいサービスを提供していくために、権利の制限規定に関する理解や合理的な契約方法の工夫などを含め、権利の保護に関する認識をより一層高めていくことが求められているのではないかと考える。
(横浜国立大学大学院国際社会科学研究科 助教授)
図書館における著作権
高三潴美穂
近年著作権に対する一般の認識が高まるに伴い、多くの著作物を利用者にサービスする図書館においても著作権に対する知識を前提とした上でのサービスが今まで以上に重要になってきました。
そこで、ここでは図書館のサービスと著作権について述べてまいります。
1.著作権とは
まず、著作権とはなにかということですが、一言でいいますと“無断で著作物を利用されない権利”で、原則として著作物を苦労して創作した人(“著作者”といいます)に認められたものです。図書館での著作物利用にあたる部分の著作権は著作権のうちでも「著作権(財産権)」の部分です。著作権でいう「利用」には著作物を貸すことや複製することも含まれるため、図書館のサービスと大きく関わってくることになります。
この著作権について規定している法律が著作権法です(以下「法」とあるのは著作権法のことです)。法律は大体始めにどうしてこの法律を作ったかということを示して、その後の条文でその目的のためにこういうことはいいですよ、だめですよ、などと記すことになります。ですので、著作権法で図書館のサービスについてどのように規定しているかを理解するには、著作権法がどういう目的で制定されたのかをおさえておくと便利です。
(著作権等に関し、)著作者の権利(中略)を定め、著作物の文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする(法第1条)
とあります。
目的は文化の発展に寄与すること、別の言葉でいえばどんどん著作物を生み出すことです。その環境を整えるために、著作物を保護することで著作者等に正当な利益を与える、また、著作物の公正な利用を図る、という手段をとることを後半で示しています。
すでに著作物を創作した人は言ってみれば、また新しい著作物を生み出す可能性の高い人ですので、そういう新しい著作物を生み出してくれる可能性の高い人の権利を守ることでさらにやる気をだして新しい著作物を創ってもらう環境を整えるために前者の手段をとります。ただ、著作権があまりに強すぎると著作物の利用が困難となってしまい、却って文化の発展(=その著作物を利用しての新しい著作物の創作)を阻害するおそれがありますので、ある一定のルールの下で著作権を制限する後者の手段をとる場合があります。
そのため、前者を踏まえつつ、後者の手段をとることになりますが、図書館での著作物の利用もこのルールに基づく中で行われることになります。
なお、著作権によって守られるものは著作物ですが、これは「思想または感情を(1)創作的に(2)表現されたもの(3)で、文学、学術、美術または音楽の範囲に属するもの(4)」を意味しますので、(1)〜(4)の要件を満たしていないもの、例えば目次や五十音順に並べられた索引など客観的なデータの集積物は著作物ではありません。ですので、全ての図書館資料=著作物である訳ではないので、図書館の資料であろうと、著作権法の対象でない資料もあることになります。
また、著作権は表現された途端に申請などしなくても自然と発生する権利ですので(要件②に「表現された」とあります)、著作権を有するのは基本的に創作者である著作者ですが、「著作権(財産権)」は譲渡できるため、創作者でない権利者もいます。こういう権利者を“著作権者”といい、苦労して著作物を創作した著作者とは区別しています。
2.保護期間について
ところで、著作権の特色のひとつとして、期間限定の権利であることがあります。
権利が保護される期間(“保護期間”といいます)は、著作権法の目的である作品をどんどん生み出す手段として著作物の公正な利用を図るために設けられています。所有権と同様にいつまでも権利が主張できる場合、たとえば紫式部の源氏物語に対する権利が土地に対する所有権のように子孫に代々受け継がれるとなった場合、1000年後の現在子孫の許諾を得るのは(まずもって所在を突き止めることが)非常に困難です。源氏物語を題材として映画や翻案小説、漫画等、この十年でも多くの著作物が源氏物語を利用して生み出されましたが、もし紫式部(および子孫)の著作権が保護されている状態では、こういうあらたな著作物を生み出すことができません。ひとつの著作物に関する権利を守り続けることで却って多くの新しい著作物が生み出されることが阻害されるのでは、著作権法の趣旨を生かせないことになります。そこで、著作権法では著作権については保護期間を設けることで、期間を過ぎた著作物については皆で自由に利用して、さらに多くの著作物が生み出されるよう環境を整えています。
保護期間は原則として著作者の死後50年(法第51条)です。著作物を創るのに苦労した著作者の死後50年であって、権利を譲られた著作権者の死後50年ではありません。著作者は自分の生きている間と死後も50年権利が守られますが、権利を譲られた著作権者は自分の生存中に権利が消滅することもあるわけです。
なお、著作者の死後50年が原則ですが、無名の著作物、変名の著作物(著名でない変名)、団体著作物などは、その著作物が最初に公表されてから50年が原則です(なお、映画のみは平成16年からは公表後70年に保護期間が延長されました)。
3.図書館と著作権
(1)許諾を必要としない利用
著作権は無断で著作物を利用されない権利ですので、逆に利用する側からすれば著作物を利用する場合は著作者(あるいは著作権者)の許諾を得る必要がある、許諾を得れば許諾を得た利用(複写であったり上演であったり)ができることになります。
ところが、実際は許諾なしでも自由に著作物が利用できる場合があります。
- 保護期間が切れている場合
- 日本で保護されていない著作物である場合
- 著作権が制限されている場合
です。
- 保護期間が切れている場合は、前述のとおりです。著作権が期間限定の権利ですので、著作者の死後50年を経た著作物については皆が自由に利用できます。
- 日本で保護されていない著作物には二種類あります。一つは法令、通達、判決等で、著作者の権利を保護するよりも自由に利用してもらうほうが公益に見合うと判断されている著作物です(法第13条)。もう一つは日本と著作権の条約関係にない国の著作物である場合です。条約関係にある場合、基本的に相手国の著作物に対しては自国の著作物と同様の保護を与えることになります(このことを「内国民待遇」といいます)。つまり他国の著作物であろうと、条約関係にある国の著作物に対しては、わが国の著作権法によって保護することになります。逆にいえば条約関係にないということはこのような保護を与えないでよいことになります。わが国と上記条約関係にない国としては、台湾、アフガニスタン、イラクなどがあります。
- 著作権が制限されている場合にはいくつかありますが、いずれも条文でどの利用方法についてどのような要件を満たした場合なのかなどが具体的に定められています。このような規定を権利者が本来有している権利を制限する規定ということで“権利制限規定”といいます。その理由は公益上の理由であったり、他の権利との兼ね合いであったり、社会慣行として妥当なためだったりしますが、広く多くの人々に自由に利用されるべきであると考えられる場合にその限度において制限されています(法第30条〜47条の3)。
その内容は様々ですが、図書館サービスに関係する主なものとして以下のものがあります。- 営利を目的とせず、料金をとらない上映、演奏、口述、貸与
- 一定の要件を満たした図書館での複製
- 行政・立法目的での内部利用または裁判手続きのための複製
(2)図書館サービスと著作権
では、著作権法上図書館サービス、その中でも主たるサービスである貸出と複写のサービスはどのような範囲でおこなえるのでしょうか。
まず、貸出ですが、営利を目的とせず料金をとらない貸与ですから、現在は自由に行うことができます(閲覧のための館内での貸付は著作権法上貸与に該当しませんので、法の対象外です)。
片や複写はそこまで簡単ではありません。複写ができる場合には二つの場合があります。資料が著作権法の保護の対象でない場合と一定の要件を満たした場合です。
前者の資料が著作権法の保護の対象でない場合は、1)著作権の保護期間を過ぎた著作物である場合、2)法令や判決であったり、条約関係にない国の著作物であった場合、そして、3)資料が著作物でない場合(たとえば目次です)です。この場合は自由に利用できますので、図書館も利用者の求めるとおりに複写のサービスを提供できます。
それに対し、後者の場合は一定の範囲内でしか複写サービスを提供できない場合、いいかえれば利用者の求める全てのサービスを提供できないこともありえます。
このうち、行政・立法目的での内部利用または裁判手続きを目的とする複写は、必要と認められる限度で複写サービスを提供できます。特に図書館に限らずに認められています。
一方、指定された図書館に限って一定の要件のもとで複写が認められる場合があります(法第31条)。 第31条のうち、利用者への複写サービスに関係するのは第1項です。第1項では指定された図書館に限って以下の要件を満たした場合に、保護期間内の新しい著作物であっても著作権者の許諾がなくても複写サービスを提供することができます。
- 利用者の求めに応じて行うこと
- 利用者の調査研究の用に供するためであること
- 公表された著作物であること
たとえ利用者の求めでも、たとえば娯楽の用に供するためでは認められません。第31条は本来著作権者が有する無断で複製されない権利を制限する規定ですが、それは調査研究目的の利用者であれば、その成果物としてあらたな著作物を生み出してくれる可能性があるからです。
また、1)〜3)の要件を満たせば、無条件で利用者の求めに応じた複写サービスが提供できるわけでもありません。提供できる範囲は、著作物の一部分であること(文化庁等の見解で実質上半分までです)、かつ、利用者1人につき1部のみの提供であること、とされています。ただし、「発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個個の著作物」、たとえば1年前の月刊誌などに掲載されている記事、論文などは全部複写することができます。
以上が、第31条によって通常ならば許諾なしには提供できない部分の複写を利用者に提供する際の要件となりますが、各図書館がサービスを提供するにあたってその具体的範囲等は各図書館の特色に添うよう個別に判断をしてください、というのが実際の状況です。例えば当館の特色としては納本図書館であることがあります。発行後相当期間を経過していない定期刊行物については個個の著作物の全部は提供できないが、一部分なら提供できるとするのが文化庁の見解ですが、当館では発行後相当期間を経過していないと判断する定期刊行物については一切の複写の提供を行っておりません。これは、当館が納本いただくことで利用者に提供する資料群を充実させている図書館である以上、納本いただく出版社等に安心してより多くの資料を納本いただく体制をとる方が、最終的に多くの資料を利用者に提供できると判断しているからです。ですので、当館の複写サービスの内容が全ての図書館の特質と合致するものではありません。
なお、第31条でもうひとつご注意いただきたいのは、第31条が対象としている利用方法は“複写”のみだということです。ですので、図書館であれば第31条の要件さえ満たせばあらゆるサービスを利用者に提供できることにはなりません。たとえば、利用者から電話で申し込みを受けてファックスで複写物を送信することまではできません。
(3)最近の法改正の動き
ところで、さきほど資料の貸出サービスについて、「現在は自由に行うことができます」と述べました。ご存知の方もおいでのことと思いますが、実は今、この部分が変化し始めています。
貸与権(無断で著作物を貸与されない権利)は1984年に貸レコード業が盛んになりレコード業界が経済的打撃をこうむったことを契機に新たに設けられた権利です。ただし、貸本屋や図書館で本を借りて読む形式が生活の中で根付いていた社会慣行や経済的影響の少なさを勘案して、書籍類については他の著作物と異なり、貸与権を当面及ぼさないとされました(附則4条の2)。
著作者における著作権の意識の高まり、出版業界の不況、そしてレンタルコミック業の台頭などにより、主に著作者団体から書籍類に対しても何らかの権利主張を行わなければあまりに権利侵害が大きすぎると主張された結果、平成16年の著作権法改正の際に附則4条の2は削除されました。
併せて著作者側から図書館の貸出に対して、映画(ビデオ)と同様補償金制度を設けてほしいとの主張がされています。現在文化庁としては、著作者側と図書館側の当事者間で行われる補償金制度の検討を待って法改正を行う方針ですが、具体的な話し合いには至っていません。
また、貸出ではありませんが、図書館など公共施設での非営利・無料のビデオ上映(視聴覚ブース等で視聴させることも含められています)なども法改正の検討の俎上に上っています。
従来図書館はその公共的奉仕機能ゆえに、著作物を利用して様々なサービスを提供できるよう配慮されてきました。しかし、著作権者の意識の高まり、機器類の急速な進歩、著作物の経済的価値の増大など、著作物を取り囲む状況は急激な変化にさらされており、図書館もそれに対応しつつサービスを展開していく必要が生じています。
以上、図書館の利用者サービスとの関係で著作権を述べさせていただきました。
最後になりましたが、文化庁のHPには「著作権Q&A〜なるほど質問箱」が設けられており、ここに「図書館・視聴覚ライブラリーにおける利用について教えてください。」として、複写サービス、図書館資料保存のための複製、その他の3つの項目にわけて、具体的な事例に対しての文化庁の回答があります(http://www.bunka.go.jp/new_fr4.html)。文化庁HPでもQ&Aの搭載は新しい部分のようですので、ご紹介させていただき、終わりといたします。
(国立国会図書館)
法律図書館連絡会から−法律関係専門図書館の現在の取組み
丸本操
1.法律図書館連絡会の概要とこれまでの主な出版物の紹介
法律図書館連絡会は1953年(昭和29年)法律専門図書館職員の研鑽と情報交換などを目的として設立され、同年法務図書館、国立国会図書館、最高裁判所図書館、司法研修所図書館などが参加し「法律専門図書館総合目録第一集 加除式法令集の部」を作成するなどの活動を開始し、2004年(平成16年)11月時点の加盟館は71館(国立機関、国立大、その他の機関図書館24館、私立大学47館)となっている。2005年5月現在、常任幹事館は国立国会図書館と中央大学図書館となっており、その他11館で幹事会を構成しその運営にあたっている。その他の出版活動として、かつては「外国法令集総合目録」「邦文法律関係記念論文集総合目録」「新収外国雑誌・高額図書リスト」などを作成してきた団体である。
更に、最近までの主な出版物をたどると、1988年「邦文法律関係記念論文集総合目録」(国立国会図書館発行)がある。
同書については、巻頭の辞から引用すれば「これまでに刊行されてきた記念論文集の検索とともに、個々の論文の検索にも役立つ」という評価を得たものである。1997年「法学文献の調べ方」これは、ビデオで法律文献(判例編)の調べ方を案内するという当時の主流である記録媒体を活用した出版で、好評を博したものであった。また2000年には、「法律図書館ユーザーズマニュアル」の全訂版を刊行した。この冊子は、1995年に刊行された同書第2版を全面的に改訂し、よりユーザーにとって使いやすい冊子になるよう意図し編集されたものである。なお2003年に刊行された「リーガル・リサーチ」(いしかわまりこ、村井のり子、藤井康子共著・日本評論社)という図書では、本団体の関係者が執筆に名を連ねており、文字通りリーガル・リサーチの入門書としてこれから法律を学ぶ者にとって最適の文献案内書といえるだろう。さらに法学専門雑誌「法学セミナー」(2005年4月号・日本評論社)の附属CD-ROM「スタディ-ナビ」においても関係者の名がうかがえ、そのCD-ROMから直接、紹介のホームページにアクセスできるなど、より具体的に法律文献の調べ方を学べるという重宝なものである。この試みは、先の冊子「リーガル・リサーチ」の内容をより具体的にCD-ROMを通じ表現したものでもある。
注)同CDの中で、「はじめてのリーガル・リサーチ」(國學院大学法科大学院ローライブラリー・島亜紀氏)の記載あり。
また例年開催されている総会については、1955年(昭和30年)に第1回総会を開催し、以後基本的には毎年1回秋に開催している。場所については、関東で2回、関西で1回の順で開催しており、この10年間の開催館は1995年(平成7年)の学習院大学より、大阪市立大、弁護士会図書館、専修大、龍谷大、創価大、早大、阪大、成城大となり、昨年は東京経済大で開催されている。最近は加盟館の概ね40〜45機関より70〜90人前後が参加し、総会、講演会、研究会、懇親会の他、展示会、見学会などを行っている。
最近の研究会、パネルディスカッション、講演会の内容を紹介すると、
2001年は、研究会1「法律図書館連絡会のホームページについて」、研究会パート2「21世紀の法律図書館連絡会」、講演会「法律学の研究と図書資料」(於:早稲田大)
2002年は、研究会1「法律図書館の今・未来」研究会パート2「学術情報の出版・流通の現状と課題」講演会「グランド・ツアーからピクチャレスの旅へ—イギリス国民意識の覚醒—」(於:大阪大)
2003年は、研究会「法律図書館に何が求められ、これにどう応えるか」講演会「法情報提供環境の整備—中央図書館と法律図書館の関係—」(於:成城大)がそれぞれの総会で取り上げられたテーマであった。
2.本会の各委員会について
本会では常任幹事館、幹事館の意向やアドバイス等を踏まえ委員会が、定期的な活動を行っており、「法図連通信」等編集委員会、定例研究運営委員会、ビデオ製作委員会、調査刊行準備委員会、ホームページ委員会から構成されている。また機関誌等については、機関誌「法図連通信(年刊)」のほか、法律図書館情報誌「法図連ニュースレター(年2回刊)」を発行している。
ちなみに定例研究運営委員会の最近の活動では研究会は、「英米法の調べ方」というテーマで企画・開講され、その内容は、
- 英米法の基礎(中央大法学部・井上彰教授)
- 英米法オンラインデータベースの効果的な利用のために(尚美学園大学総合政策部・佐藤信行教授)で構成され、2003年12月3日実施。参加者は18名。
会場は、トムソンコーポレーション(株)であった。
また「法律図書館基礎講座」(新人研修)の企画は、
- 総論—法律図書館員に求められるもの(國學院大学法科大学院ローライブラリー・村井のり子氏)
- 日本の法令(国立国会図書館調査及び立法考査局議会官庁資料課・加藤眞吾氏)
- 判例について(大宮法科大学院図書館・藤井康子氏)
- 法学文献とデータベースの基礎(法律情報室 —やさしい法律の調べ方—主宰・いしかわまりこ氏)
以上の構成で2004年7月2日実施。参加33名。会場は専修大学神田校舎であった。このような法律資料に特化した図書館員の研修を、例年継続して実施している点も本団体の特色である。

総会(パネルディスカッション)の様子
3.第47回総会報告
これら委員会活動とともにいわば本会の両輪をなしているのが、毎年一回開催される全国総会である。第47回法律図書館連絡会総会は、去る平成16年10月15日(金)に東京経済大学6号館7階大会議室を主会場として開催された。この総会への参加は、69加盟館から43機関のほか、オブザーバーとして2機関と1個人、賛助員5名を含む75名の参加者を数えた。
総会と並行して書店、データベース業者10社に協力いただき法律関係資料の展示会が開催された。当日は、開会挨拶を常任幹事館の国立国会図書館・江澤和雄氏、会場校・東京経済大図書館長・久木田重和教授がおこない、総会での講演は「法化社会における人材育成と法学部教育」(東京経済大現代法学部長・島田和夫教授)、パネルディスカッションは、「法科大学院図書館の現状と課題」(コーディネーターは、創価大図書館事務長・田中敏朗氏、パネラーは國學院大學・村井のり子、大阪大・笠学、大宮法科大学院・藤井康子、中央大・加藤裕子の各氏)などテーマとしては法学教育で今日の関心の「的」である「法科大学院」を中心として展開された。午後の総会議事では、東大・笠原昌一郎氏を議長とし、幹事会、各委員会報告に続き、新規加盟を願い出た4館について審議・承認された。新規加盟館のうち出席していた大宮法科大学院・藤井康子氏、東京都立大(現首都大学東京)我妻学教授から挨拶があった。なお次回は50周年の記念総会にあたり、立命館大学・衣笠校舎での開催予定が紹介され、立命館大・高橋千穂里、村山喜代美両氏から開催引受の挨拶があった。

法律関係データベースのデモと展示会
4.今後の活動
本会が組織する各委員会が活動の中心であるが、幹事会においては、各委員会の動向を把握し、適切なアドバイスを与えている。それぞれの委員会の具体的な活動として、まずホームページ委員会では、2001年に総会の研究会において発表したことを踏まえつつも、公開に向けての準備、具体的に当会のページを公開し、関係者に意見を求め調整を図っている段階にある。次にビデオ制作委員会では、このホームページの一部としてホームページでの「法律資料の調べ方」のページ制作などを検討している。具体的な動きとしてはホームページを開設した後の事業となる予定である。定例研究会運営委員会は、今後も継続して企画が実施される「研究会」と「基礎講座」(新人研修)を並行して運営し、開催していく予定である。これはローライブラリアンが確立されていないわが国においては、当団体が開催する貴重な研修である。また、調査刊行準備委員会では、本連絡会50周年を記念し、記念誌刊行準備を推進している。このように各委員会の活動や総会開催を実施し、今後もますます不可欠の存在となってきている。まだ本会に加盟されてない法律・法学系図書館においては、ぜひともこの記事の閲覧を契機として加盟される事をお願いしたい。
(東京経済大学図書館)
平成17年度関東地区公共図書館協議会総会・研究発表大会報告
石原眞理
はじめに
平成17年5月26日(木)から27日にかけて、神奈川県横浜市において、同協議会の総会・研究発表大会が開催された。以下は、慶應義塾大学文学部教授上田修一氏による基調講演と、その後に行われた5つの研究発表の内容をまとめたものである。
1.基調講演「日本の情報検索の歴史」
講師:上田修一氏(慶應義塾大学文学部教授)
情報検索は、1950年代のアメリカでIBMのルーンやコーネル大学のサルトンらにより始まった。コンピュータの最初の目的であった科学計算、自動翻訳、文献検索のうち文献検索が主に英語圏で情報検索へと発展した。現在情報検索は、目録検索(OPAC)、サーチエンジンによる検索等日常生活に定着している。インターネットの普及により「情報検索」という言葉自体も一般の人々の身近な存在となった。図書館にもCD-ROMや目録検索、データベース検索などサービスの基盤として情報検索が存在しているが、一般の人々にとって情報検索と図書館を関連してイメージすることは少ないであろう。しかし、今後図書館が専門的な情報提供を行っていくのであれば、情報検索、特に主題探索の方法や手段について理解を深める必要がある。
日本には情報検索の前に、UDC(国際十進分類法)を使って分類し検索するドキュメンテーションという活動が存在していた。ドキュメンテーションの推進者達は、パンチカードによる記録・検索から、磁気テープによる蓄積を経てコンピュータによるバッチ処理へ発展すると考えたが、情報検索の発祥地であるアメリカではUDCはほとんど使われず、もっぱら単語の組み合わせによる索引法が研究されていた。コンピュータの著しい発展により単語による検索が実用化されたため、ドキュメンテーションは情報検索にほとんど影響を与えることなく消えていった。
単語の組み合わせによる索引法には、自然語の持つ不安定性による弱点があったため、有効な情報検索のためにシソーラスが不可欠とされ、MEDLINEやERICなど大規模なシソーラスを用いた検索システムが出現した。シソーラスは研究的な要素も持っており、ある種のブームとなったが、編成に手間と経費がかかるため、主題による検索ができるオンライン検索システムへと関心は移っていった。
オンライン検索システムは、1957年のスプートニクショックにより、米国が科学技術、教育の振興に乗り出したことを背景に発展した。時間がかからず、その場で自分で答えを探すことができるオンライン検索システムに対し人々の期待は高まった。1970年代初めにロッキード社のDIALOGやSDCサーチサービスなどの商用オンライン検索サービスが現れたことで情報検索は大きく変化した。情報検索においては、個別にデータベースや検索システムを用意する必要がないこと、情報検索サービスが有料化できること、集中化されたシステムの方が効率がよいことが判明し、急速に発展したのである。
日本のオンライン検索は1970年代初めにスタートした。しかしオンライン検索サービスは使用料が高く、個人利用が難しいため、1985年に検索を代行するサーチャー(情報検索技術者)が出現し、1989年には科学技術庁認定資格となった。しかし、サーチャーは情報検索の検索段階にだけにしか関わらないため、エンドユーザーの直接利用が広まるにつれてその役割を終え、2001年に科学技術庁と文部省の合併と同時に認定制度もなくなった。
商用オンライン検索サービスは長く優位を保ち1980年代に最盛期を迎えた。しかし、1990年代に入りインターネットが普及すると、情報検索はウェブベースへ移っていった。国立国会図書館の雑誌記事索引に代表されるような無料検索サービスが増加し、これまで商用データベースを利用できなかった個人、つまりエンドユーザーの利用が可能となり、情報検索の日常化が進んでいった。
インターネットの普及により、個人が文献データベースを自由に利用できる環境が実現しつつある。現在のオンライン検索では、大規模なデータベースの遡及検索や、一つのデータベースを協同で利用することでコストを抑えるなどの工夫がなされている。一方商用データベースは一般的に高価であるといえる。
個人が情報検索システムを自分で利用できるようになって、利便性は格段に向上したが、その一方で、データベースの構造や検索システムを理解しなくても利用が可能なため、網羅的な調査ができずに回答を得てしまうなどの問題もある。また、図書館目録やオンライン検索サービスの出力結果には順位付けがされていないため、インターネットの検索エンジンに慣れた利用者にとっては、違いに気がついたとしても利便性は劣る。このように、誰でもが直接に情報検索を行うようになった状況を図書館はよく認識した上で、各種のデータベースを提供することが今後必要となろう。
2.研究発表(1)「東京都立中央図書館の医療情報サービス」
講師:中山康子氏(東京都立中央図書館サービス部情報サービス課自然科学係長)
都立中央図書館では平成16年6月末に自然科学室に「医療情報コーナー」を開設し、「医療情報サービス」を始めた。サービス実施の背景として、患者・市民が医療情報を必要とする社会状況が生じたことがある。治療法や医療機関の選択などの場面で、患者自身の自己判断・自己責任が重視され、医療事故訴訟、インフォームドコンセントなどへの注目も高まっている。しかし患者・市民が、膨大な情報を的確に検索・入手できる場はまだ未整備である。こうした患者・市民の医療情報ニーズに応えるのは、「地域の情報拠点」として公共図書館の果たすべき役割である。
都立中央図書館は、医学分野の図書・年鑑約4万冊と、公共図書館としては大規模な医学資料を所蔵し、利用も自然科学室の資料群の中で最大であった。サービスをはじめるあたって、名称について検討した。その結果、アメリカのConsumerHealthInformationServiceに対応する言葉として「医療情報サービス」となった。
実際にサービスをして感じることは、利用者の求める情報のレベルは多様であるということである。「わかりやすいものがほしい」という利用者も、専門的な情報を求める利用者もいる。今後は、利用者ニーズの把握が最も大きな課題である。レファレンス記録をさらに分析し、アンケート調査を実施して利用者全体のプロフィールと情報ニーズを把握する必要がある。その結果を収集方針にフィードバックするとともに、サービス向上に活かしていきたい。また、これまで公共図書館が行ってこなかったサービスに取り組むことで、都立図書館の存在意義も訴えていきたい。
《質疑応答》
- Q:収集の際に治療法などの分野で信憑性に疑問があるような内容の資料の判断をどうしているか。
- A:医学の専門出版社などから購入をしており、質問にあるような資料群からは少し手を引いているような状態である。
3.研究発表(2)「調布市立中央図書館のビジネス支援への取組み」
講師:斎木孝夫氏(調布市立中央図書館主任司書)
調布市立中央図書館は、平成7年10月のリニューアルにともない転機を迎えることとなった。面積が600m2から4300m2に大幅増、それに伴い開架冊数も4万から10万冊へ増え、貸出しや利用も伸びた。量のみならず、質的変化も見られた。それまでの文学・雑誌中心の利用から参考図書やビジネス関係資料の利用が増え、ビジネスマン利用者が多く見られるようになった。サービスを形として目に見えるようアピールすべきという方針の下、平成15年9月に中央図書館参考図書室内にビジネス支援コーナーを設置された。ビジネス支援コーナーを参考図書室内に設けたことには狙いがあった。まず、職員が常にいて質問等に応えられること、そして、インターネット等の機器類が置かれており参考図書と合わせての情報提供ができることである。
データベースについては、導入当初は「日経テレコン21」「聞蔵(きくぞう)」であったが、固定客もつき、レファレンスにも利用できるということで増強を目指した。予算的には厳しい面もあるが、ビジネス支援サービスは財政当局にも受けがよく、逐次刊行物の購入を削るという条件で導入が認められた。現在、「ヨミダス文書館」等、7つのデータベースを利用している。
ビジネスコーナーでの活動に加え、平成16年度には調布市商工会と共催でビジネス支援の連続講座を実施した。市内で会社を営み、「マジ軽ライト」で発明賞を受賞した社長や、市内を対象にフリーペーパーを発行するベンチャー企業を起業した社長を講師に迎えた。参加者からは非常に好評であり、記録を残すべきという声や、継続を望む声も多くあった。また、平成17年2月に開館した市民プラザに産業振興センターが入り、スモールオフィスやチャレンジショップ、午前9時から午後8時まで相談員が在駐し、特許や融資等に関する相談に応じる相談コーナーがおかれた。図書館としては、レフェラルサービスとして利用者に紹介するなど活用している。産業振興センターのオープンに合わせて、最寄りの分館でもビジネス支援コーナーを設置し、中央館から関係資料をまとめて貸出したところ、非常に利用が多かった。
平成17年2月から、ホームページ上にレファレンス事例紹介を掲載している。まだ、ビジネス関係の事例は少ないが、今後はそれらについても事例を紹介していきたいと考えている。
《質疑応答》
- Q:ビジネス支援コーナーは参考図書室内というが、展示資料は貸出しをしているのか。
- A:館内に分散した資料をテーマで串刺すると意外と量が多い。それらの一般図書は貸出するが、参考図書は貸出しない。
- Q:インターネットのプリントアウトはどのようにサービスしているのか。
- A:データベースは業者との契約で、プリントアウト可能範囲が設定されている。コピー機のような課金式で、表示された金額を入れるとプリントアウトできる。インターネットのプリントアウトサービスは行っていない。
4.研究発表(3)アメリカ図書館事情
講師:山崎隆志氏(神奈川県立図書館主任司書)
平成16年9月28日から10月14日にかけてアメリカ国務省が主催するインターナショナル・ビジター・プログラムに参加し、24の図書館および組織を訪問した。インターナショナル・ビジター・プログラムは世界各国のさまざまな部門の専門家をアメリカに招き、アメリカの専門家と知識の共有・情報交換をすること、アメリカ文化について学ぶことを目的として50年以上行われているものである。日本からも多くの人材が招待されているが、図書館情報学分野に関しては、昨年が始めての招聘であり、公共図書館2名、大学図書館2名、専門図書館2名のメンバーで参加した。
アメリカの公共図書館は州がそれぞれ図書館法を定め、設立主体ひとつとっても一様ではない。今回訪問した公共図書館に共通して感じたことは、日本の公民館と図書館を足した活動を行い、地域の課題・関心に応じた様々な催し物や集会を行っていることだった。
ニューヨーク市の図書館システムの一つである、クイーンズ区公共図書館では、様々な催し物のチラシを用意していたが、例えば、スペイン語を母国語とし英語をほとんど話せない親に向けたニューヨーク市の学校システムについての説明会のチラシ、ニューヨークのアンダーグラウンドで活動するコメディアンのショーのチラシ等があった。
また、先端技術を図書館サービスに導入する取り組みも盛んだった。平成16年の5月に新中央図書館を開館させたシアトル公共図書館が顕著で、利用者用だけで400台あり、館内どこでも無線LANを通してインターネットにアクセスすることが可能という環境だった。蔵書はすべてICタグを使って管理され、ICタグにより貸出・返却等の処理だけでなく、返却ポスト等から1箇所に集められ、分館・本館や本館内のフロアなど別に自動的に仕分けられるシステムが導入されていた。
ニューヨーク公共図書館のSIBLの活動が紹介されるなど、日本でも図書館のビジネス支援サービスが話題になることが多いが、ビジネス支援の一環として紹介されることの多い、求人情報の提供などは移民の多い地域、児童生徒の多い地域などによって、様々なバリエーションがある。ビジネス支援サービスそのものも、連邦政府がスモールビジネスの振興を進めているという側面もあるものの、地域の課題の一つというスタンスで行われている。
5.研究発表(4)「子どもたちの豊かな心と学びを育てる学校図書館作りへの支援−千葉県市川市「公共図書館と学校とを結ぶネットワーク事業」−」
講師:小林路子氏(市川市教育センター指導主事)
市川市教育センターは、本来は学校の教職員への研修会、教育相談、学校へのコンピュータ導入等の事業を行っている部署である。「図書館ネットワーク事業」は、平成元年の教育センター「ネットワーク事業研究員会議」発足以降、市川市中央図書館(教育センターは図書館建物の3階部分に位置している)の開館を経て進展を続けている。
市川市が目指す学校図書館は、「読書生活を支える図書館」「学習を支える図書館」「研究を支える図書館」である。その実現のためには、学校図書館の3つの諸機能が必要だと考えている。第1には、いつでもだれでも自由に使える図書館であること、第2に、多様な資料、外部機関と結ばれた図書館学習・情報センター機能としての充実すること、第3に、地域とともに歩む図書館であることである。
市川市では、学校図書館相互の連携を特に重点的に進めている。昭和54年から学校図書館に専任職員(学校司書)が配置され始め、各校で学校図書館の利用が進み、図書を活用した多くの活動がおこなわれるようになった。平成10年以降は、規模にかかわらず全校に司書教諭が配置されている。公共図書館では8名の専任司書が、学校図書館からの年間1,000件以上の依頼に対応するほか、ネットワーク専用図書の確保、図書館全蔵書を対象とする貸出を実施している。
図書館ネットワーク事業のもっとも特色ある核の一つとして、物流ネットワークの運営があげられる。公共図書館を起点として、上りと下りの2台の配送車が全校66ケ所を一巡している。物流による移動冊数は、年間約60,000冊となっており、公共図書館からが35%、学校間が65%となっている。
今後の課題としては、幼稚園、小学校、中学校、高等学校等の異校種間の交流や、中学校学区単位での幼・小・中連携の強化があげられる。関係諸機関が協力することにより、各校の学校図書館がより充実・活性化することをめざしている。
6.研究発表(5)「市町村合併とネットワーク」
講師:神宮寺隆氏(笛吹市石和図書館主査)
石和町は平成16年10月12日に合併して笛吹市になった。合併後の図書館の運営に関しては、石和町立図書館、御坂町農村センター図書室、一宮町立図書館、八代町立図書館、境川村総合会館図書室、春日居ふるさと図書館(春日居町)の6館が、平成15年5月から「合併協議会図書館部会」で話し合いを行った。構成員は各館から1名ずつと町村の合併協議会(事務局)1名の計7名であったが、社会教育の枠組みの中ではなく、図書館だけの組織ができたことが良かったのか悪かったのか判断できない。
図書館条例から手をつけ始めたが、図書館サービスの現状にあまりにも格差があり、公平なサービスをするにはどうしたら良いか苦慮した。開館時間・休館日もバラバラ、正職員は少なく、勤務体制も違い、資料費も格差があり、何よりも、図書館に対する考え方が違っていた。そうした中で、統一した図書館管理システムによるネットワークを組むという点と、現行の図書館事業は守っていくという点を基本にした。
市町村合併は、合併しないと地方交付税が減らされ財政難に陥るので、特例債で何とか切り抜けようという理由で行われることが多く、職員削減によるサービス低下などの良くない話も聞く。せめて図書館だけでも合併メリットが表に現れるようでないと住民は納得しない。住民の要望を一番感じ取れるのは現場の司書である。それぞれが小規模なので、市内に「6館」ではなく「1館6カウンター」だと考えることによってやっと蔵書28万冊の一つの図書館になれた。平成17年度の資料費は全館で約4千万と厳しいが、各館の創設時からのコレクションや地域資料も少ないながらある。これらを生かして特色ある地域密着型の図書館にしていきたい。現在、1枚の図書館カードで6館どこでも貸出・返却ができ、1日待てば取り寄せも可能となったが、利用者が少ない館もあり、これからが勝負だと思っている。
(神奈川県立図書館調査部協力課)
日誌(平成17年4月〜平成17年6月)
| 4月1日 |
|
|---|---|
| 4月1日 | 日本学術会議図書館が総務省から内閣府へ移管 |
| 5月13日 | 「平成17年度国立国会図書館行政・司法各部門支部図書館新規配属職員研修I」 19館42名 |
| 5月17日 、20日 |
「平成17年度国立国会図書館行政・司法各部門支部図書館新規配属職員研修II」 16館33名 |
| 5月23日 | 平成17年度第1回中央館・支部図書館協議会幹事会 |
| 5月26日 | 平成17年度第1回中央館・支部図書館協議会 |
| 5月27日 | 平成17年度国立国会図書館データベースの検索講習会」
|
| 6月17日 | 特別研修「国立国会図書館の電子図書館サービス -DnaviとWARPを中心に-」 18館22名 |
| 6月24日 | 支部図書館長異動 公正取引委員会図書館長 松尾勝(前 山田務) |
