びぶろす-Biblos
平成16年7月号(電子化25号)
- NATIONAL DIET LIBRARY
- 発行/国立国会図書館総務部
- ISSN 1344-8412
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はじめに
『びぶろす』は、昭和25年4月に創刊し、以後行政・司法各部門の支部図書館と専門図書館の連絡情報誌として今日に至っております。より広い範囲への提供を考え、平成10年8月号で冊子体を停止し、10月から国立国会図書館ホームページで公開しています。刊行形態は異なりましたが、今後も当館、支部図書館および専門図書館の折々の状況を掲載して行きます。
*本誌に掲載された記事を全文または長文にわたり抜粋して掲載される場合は、サイトポリシーをご覧いただき、事前にご連絡ください。
目次
- 支部図書館時代を振り返って
- 東京アメリカンセンター・レファレンス資料室について
- 最先端技術の礎−電子図書館:NHK放送技術研究所研究資料室見学会に参加して
- 第16回保存フォーラム「災害と情報ネットワーク」に参加して
- 日誌
支部図書館勤務を振り返って
檜山邦雄
1.はじめに
私は、平成16年3月末をもって財務省を定年退職し42年間の公務員生活を終えました。
最後の職場として国立国会図書館支部財務省図書館で、平成3年7月から12年余の間図書館業務を務めてまいりました。その前は、国有財産の管理処分、コンピュータ関係の業務を行ってきました。図書館は高等学校時代に図書委員だった程度の素人でした。財務省図書館(旧大蔵省文庫)は、大正7年以来の由緒ある図書館で16万冊の蔵書を擁し利用度も高く、素人の私としては不安もありました。しかし、国立国会図書館の司書業務研修、各地区図書館等調査研究等を通じて基礎的な知識を得るとともに、先輩方の指導を受けながら務めてきました。
その間の事柄を思い出しながら少し述べさせていただきます。
2.図書館業務
新規受入資料の選定については、利用者の希望、新刊案内、出版社のホームページ、新聞や雑誌の書評・広告等を参考にして行ったが、組織内のニーズに適切に応えることの難しさを痛感しました。特に、所管行政に基づく分野については、内部の担当部局が最も詳しく知っている事であり、図書館が提供すべき資料の選定には迷いました。また、年報類や雑誌は、継続性が重要ですが在任中に省庁再編、独立行政法人化が行われ資料の継続性の維持に苦労しました。
平成12年4月から「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」が施行されたが、国立国会図書館支部図書館の位置付けについて所蔵資料の性格、保存期限など私も考察を重ねていましたが、国立国会図書館支部図書館課が総務庁(当時)との協議を行ったうえ、各支部図書館への説明会を開催する等して周知を図ってもらえたことは有難かったと思っています。
レファレンスについては、当初、基礎知識不足、所蔵資料に不案内等もあって戸惑うことがありましたが、研修などでは「質問者が本当に知りたいことは何なのか」を理解することが大切だと教わりました。私は、前職のコンピュータ部門で多くの業務電算化に接していたので、いろんな部門の用語や考え方を知ることができました。そのことがレファレンスを受けるうえで、質問者の真意を推測することに役立ったことは幸いであったと思っています。
蔵書の整理では、受入資料の増加のほか官公庁資料のA4サイズ化もあって書庫スペース不足が深刻化し、資料の廃棄や書庫再配置を数回行い、同僚の職員と共にホコリまみれになったり資料を詰めた重い箱を運んだりして、図書館でこんなに汚れたり力仕事をすることは思いもよらず大変でした。

閲覧カウンターにて
3.電子化の進展
私の在任中は、行政機関の情報化、電子化が急速に進んだ時期でした。財務省図書館においても、業務の機械化を図るため平成8年度予算でコンピュータシステムの導入経費を措置し、汎用パッケージによる業務の電算化に着手しました。時を同じくして、国立国会図書館が中心となって「国立国会図書館中央館・支部図書館電子化推進基本計画」(第一次)が策定され、政府の方針にも沿ったかたちで支部図書館の機械化、電子化が急速に進展しました。
財務省図書館は、平成9年度からシステムが本番稼動を開始し、6年をかけて書誌データの遡及入力を実施しました。外部委託することで楽にできると思っていましたが、官庁資料の古いものには奥付がないものもあり書誌情報が不明確な図書、破損図書や不明図書への対処のため意外に手が掛かりました。また、平成12年度から省内LANからの図書検索機能も提供し、おおむね初期の目的を達成できたと思っています。
国立国会図書館の計画については、計画当初からネットワーク検討会の委員の委嘱を受け微力ながら協力させていただきました。支部図書館全体をカバーするうえで、各図書館の規模(蔵書、職員数等)運営方法の違い等、困難な問題もありましたが、全館の協力の下で各図書館の電子化の促進及び中央館・支部図書館ネットワークが構築されました。納本関係のオンライン機能で応答速度や操作性に問題点も発生しましたが、その後改良が進められ計画を順調に推進できたことは大きな成功であったと思います。
平成16年度からはより高度で使い易い新たな総合システムがスタートしたとのこと、今後も更に発展することを願っています。
4.おわりに
私は、12年の間に兼任司書等の会議、各地区図書館等調査研究、懇親忘年会等を通じて、多くの支部図書館の方と親交がありました。そのことは、レファレンス、選書や規則の制定等の意見交換、照会をするうえで顔の見える応答ができて非常に役に立ちました。中には10年以上経った今も会合をもっている方々もあります。
着任当初、支部図書館制度は世界にもまれな制度だと聞きました。中央館・支部図書館ネットワーク等の技術的ネットワークは急速に進歩していますが、貴重な支部図書館制度を最大限に機能させるためには、人的ネットワークをしっかり築くことが大切だと思います。
図書館をとりまく環境は大きく変わりつつあります。情報の電子化、情報公開制度、インターネットの普及等により、収集しづらかった灰色文献の公開、各種ホームページの様々な情報提供等これまで図書館が果たしてきた役割が変わりつつあります。今後、支部図書館が担う役割や在り方を変えてゆくうえで、支部図書館制度の活用が大きな力になると思われます。国立国会図書館中央館及び各支部図書館の皆様のご活躍を期待しています。
(元財務省図書館)
東京アメリカンセンター・レファレンス資料室について
鈴木佐和子
1.はじめに
アメリカンセンター・レファレンス資料室(AmericanCenterReferenceService)は、アメリカ大使館の広報・文化交流部の一部として活動しており、親機関は米国務省の国際情報プログラム室(InternationalInformationPrograms)である。アメリカのことを世界各国に理解してもらい、二国間同士が良好な関係を築くことができるように、適切な資料や情報を提供することが私たちの仕事である。現在私たちのような資料室が世界に約140ヶ所あるが、日本では東京以外に札幌、名古屋、大阪、福岡の4ヵ所(領事館のあるところ)に設置されており、それぞれ1〜3名のスタッフがいる。

資料室(東京)
簡単に活動の歴史を見てみると、1945年の第二次世界大戦終結後、アメリカの連合軍総司令部GHQが日本に置かれた際、その民間情報教育局(CivilInformationandEducationSection)が全国23ヶ所に設置した「CIEライブラリー」が始まりである。その後日米講和条約締結にともない、管轄は軍から一旦国務省を経て1953年に新設された米国広報文化交流庁(USIA:U.S.InformationAgency)に移った。しかし1999年クリントン政権下の行政改革でUSIAは廃止され、再び国務省の一部となり現在に至っている。この間「アメリカ文化センター」や「アメリカン・センター」(1972-)という名称で親しまれてきたが、ライブラリーは1992年に貸出をやめ、レファレンス資料中心の資料室に変わった。多くの人が海外の情報を得やすくなった今、私たち資料室スタッフの仕事は、レファレンス・サービスとアウトリーチ・サービスに重点がおかれている。以下に、東京アメリカンセンターが現在所蔵しているコレクションの内容と、主なサービスについて紹介したい。
2.コレクション
アメリカの政治・外交・経済・社会などの社会科学分野が主で、アメリカの政府出版物(主に行政府、議会資料)や一般のレファレンスブック、雑誌・新聞、データベースなどがある。また現代のアメリカが中心なので、法律や外交文書、条約集などは例外だが、一般的に10年以上前の文献・資料は持っていない。所蔵図書目録(OPAC)や定期刊行物のリスト、さらに契約している商業データベースなどについては、資料室のホームページ(以下HP)で確認できるようになっている。(米国大使館アメリカンセンター・レファレンス資料室)
書籍のほかに、政府各省庁から出版されるレポートやシンクタンクの調査報告書などは、主題別にパンフレットとして入れている。それらについても過去3年間の受け入れ分がHPで見られるようになっている。またウェブ上で入手可能なものについてはリンクも張られている。(カレント・レポート)
特色のある資料としては、米国連邦議会の公聴会記録などを収めたCISマイクロフィッシュ(1981年-)、国務省外交文書『ForeignRelationsoftheUnitedStates』(1901年-)、新聞『NewYorkTimes』(1972年-)、『WashingtonPost』(1978年-)、商務省統計局の統計年鑑『StatisticalAbstractoftheU.S.』(1961年-)などがある。また新聞雑誌の記事・論文を調べるデータベースProQuestやEBSCOHost(インターネット版)に加え、学位論文の抄録を調べる『DissertationAbstracts』(1993年-)や電話帳、官報『FederalRegister』(1990年-)のCD-ROMなどもよく利用される。国会図書館や大学図書館で所蔵されているものも多いが、一般の利用者にとっては気軽にアクセスでき、コピーもセルフサービスで簡単にできることなどが便利な点であろう。(コピー・プリント料金は1枚20円)
3.レファレンス・サービス
現在、レファレンスの質問は月曜日から金曜日の開館時(午後のみ)に、来館、電話、Faxなどで受けているが、HPを通じての受付はしていない。ただし後で述べるE-mailによる情報サービスや、国内のアメリカ研究メーリングリストで当室のE-mailアドレスを公開しているので、それらを通じてレファレンスを受けることもある。
レファレンスの質問内容はさまざまである。小中学校の生徒の総合学習や国際理解の授業に関連したものから、新聞・テレビなど報道関係者から時事的な問題に関するもの、調査機関から統計について、国会の事務局や議員秘書からアメリカの法律や制度について、企業から製品を輸出する際の米国の法律やレギュレーションについて、研究者や学生から国内で入手困難な雑誌論文についてなど多種多様である。私たちが解決できない難問については、ワシントン本部の国際情報プログラム室のレファレンス部門にE-mailで問い合わせる。大抵の場合24時間以内に何らかの回答を得られるので非常に心強い。
一般的によく尋ねられる質問、なかでも国旗・国歌や通貨、大統領に関してなどウェブ上で答えの出るものは、当室のHPにまとめてある。(アメリカ社会についての情報源)
4.アウトリーチ・サービス
レファレンスの他にスタッフの時間の多くを割いているのが、E-mailによる情報案内サービスである。(1)国際政治・防衛(全般)(2)国際政治・防衛(アジア地域)(3)国際経済・貿易(4)米国国内政治(5)米国国内経済(6)米国社会(7)グローバル問題(8)情報・通信の8つの分野について、インターネット上で発信された米政府高官スピーチ、政府報告書、各種研究機関レポートあるいは雑誌論文などの電子出版情報の中からなるべく新しいトピックを選び、そのサイトのアドレスやフルテキストを案内するサービスである。現在500人余りの登録者がいるが、メディア関係者と大学の研究者が50%以上を占めており、ほかは政府機関、シンクタンク、ビジネス、専門団体からの登録者がそれぞれ10%ほどである。分野別では国際政治・防衛問題の配信を希望する人が約30%、国際経済・貿易、米国内政治がそれに続く(それぞれ約16%)。東京アメリカンセンターの場合は3人のスタッフでこれらの主題分野の担当を決めている。下記は最近送信した一例である。

現在はリストサーブ用の専用プラグラムを使用していないので、登録者のアドレス変更や管理などはスタッフが手作業で行なっており、あまり登録者を増やせない状況であるが、これらの情報をより多くの人に使ってもらいたいので、E-mailで発信した内容を資料室のHPに掲載している。ファイル名をSELECTとし、過去1年分を主題別に公開している。(SELECT時事情報)
その他のアウトリーチ・サービスとしては、ファックスによる新着雑誌のTOC(TableofContents)サービスがある。インターネットやデータベースで目次や抄録はもちろんフルテキストが入手可能な場合もあるが、印刷体は今だに根強い人気があるのでこのサービスを続行している。現在80数名の登録者がある。また、国内のアメリカ研究メーリングリストに新着CRS(米議会調査局)レポートのリストを紹介したり、アメリカンセンターが主催する政治・経済関係のセミナーや講演会の会場で関係資料を展示したり、参考文献リストを作成して出席者に配布したりしている。最近では新しいサービスの一環として、資料室のスタッフがパワーポイント・スライドを使ったプレゼンテーションを行なうことを試みている。例えば「アメリカの選挙制度について」、「政府・研究情報の入手方法」、「アメリカの政治・社会についての資料の探し方」などの題で、アメリカンセンター内で行なったり、外部の機関や大学のゼミ教室に出かけプレゼンテーションを行なう「出張サービス」も実施している。
東京以外のアメリカンセンターでもスタッフの数が1人、2人と少ないにも関わらず、それぞれの地域のニーズに合ったアウトリーチ・サービスを行なっている。また大使館内の情報リソース部(スタッフ4人)の仕事についても触れておきたい。この部門では全国5ヶ所のアメリカンセンター資料室の資料の発注・受入、目録作成・管理、大使館内部のレファレンス受付を行なっている。それに加え最近では大使館オフィサーや職員へのアウトリーチとして、毎日のアメリカの主要新聞から日米関係に重要と思われる記事をピックアップし、"WebWatch"としてE-mail配信を行なっている。そのほか国務省国際情報プログラム室の英文刊行物の中から、日本国内で要望の多そうなものを選び、その翻訳(外部委託)をインターネット上に掲載するなどのプロジェクトも進めている。
5.おわりに
今まで述べてきたように、私たちの仕事はアメリカ大使館の広報部という枠組みの中で行なわれているので、一般的な「資料室」また「司書・ライブラリアン」という言葉が持つイメージからは少し離れているかもしれない。組織内、また外部へのアウトリーチの必要性が高まり、それに社会全体の情報化の波もあり、このように発信型のサービスの割合が増えてきた。発信する内容としてはアメリカの政策を伝えることはもちろんだが、それとともにさまざまな国際社会の動きや議論を、なるべく公平にかつ偏らず多くの人に紹介したいというのが私たちの願いである。
パンフレット
「アメリカン・センターレファレンス資料室のご案内」パンフレット
(アメリカンセンター・レファレンス資料室)
最先端技術の礎−電子図書館:NHK放送技術研究所研究資料室見学会に参加して
井上敬浩
1.はじめに
1月27日(火)、国立国会図書館の平成15年度行政・司法各部門支部図書館職員特別研修の一環として、NHK放送技術研究所研究資料室の見学会が開催された。
利用者としてしか知らなかった図書館の世界であるが、平成15年4月に現職を拝命して以来、図書館員としての基本的なスキル・識見を高めるべく、機会があればその都度他の図書館、図書室あるいは資料室などの見学会には参加させて頂いている。ただ今回は、2003年12月1日から始まった地上デジタル放送の技術を下支えしているものとは一体どんなものなのだろうかとの興味もあって、今まで以上に期待が高まっていた。
2.エントランス
国立国会図書館に参加者が集合し、マイクロバスで世田谷の砧へと向かったが、首都高速で事故が発生しているということで、「一般道を使います。もしかすると講堂のところはカットとなるかもしれません」との担当の方の声…一同、動揺。立体ハイビジョンはどうなるのか?!・・・心配したのも束の間、ほぼ時間どおりに到着した。
技術研究所は意外にも開放的なエントランスだった。だが広報という顔も持っているせいか、研究所という性なのか、やはり整然としていた。そしてやはり地上デジタル放送、ハイビジョンの展示・PRが大々的に行われていた。
中に入って左に進むと、セキュリティが厳しくなった。防衛庁に所属する者として、セキュリティレベルはどのくらいで、どの程度の監視や警備体制がとられているのかというところに着眼が移ってしまうのであるが…技術の研究所というと高レベルのセキュリティを要するものである。エレベータに乗っても降りられないフロアがあるなど、このあたりは当然なのだろう。ただどこを見ても整然としている。研究者にとってはこういった整然とした環境が必須なのだろうか。防衛庁にも全国何カ所か技術研究所が所在しているのだが、そこに似た研究者の息づかいの空気をここでも感じ取ることとなって、何か緊張した。
概要説明のために案内された講堂では、眼前に大きなスクリーンが広がっていた。ミニシアターのような独特の雰囲気を持つ。それでも400人の収容能力がある立派な施設である。初め遠慮して後方の椅子に座って判ったのだが、それぞれの椅子は前列に座る人の頭の影が気にならない程度に高くなっている。座ると椅子の上端がスクリーンの下端と一致した。人間工学的によく考えられたのだろう。
その後、広報ビデオによる放送技術研究所の紹介となった。ここでは、「ISDB(統合デジタル放送)の高度化」「コンテンツ制作技術」「将来の放送サービスと基盤技術」という大きな3つの研究分野の説明があった。流石にアナウンサーを擁する放送局の広報ビデオだけあって、何か『クローズアップ現代』のような番組を見ているようなまとめ方に感心する。また、NHKがラジオ放送の開始まもない頃からテレビジョン技術、カラーテレビ技術、衛星放送技術そしてデジタル放送技術へと縷々発展してきた歴史を理解するとともに、ここが世界最先端の技術を創出する地であるという自負の感じられる映像であった。
3.立体ハイビジョンの体験
ビデオ紹介に続いて、広報の一つの核であろう立体ハイビジョンの放映となった。立体ハイビジョン用の眼鏡を掛け、しばらく冬季オリンピックを撮影したものを鑑賞した。
立体映像というと、もう20年程以前に北海道で行われた国際映画祭か何かの催し物で、赤と青の簡易眼鏡を掛けて体験したことがある。技術的にも未成熟だったのだと思うが、何か扇形のとてつもなく大きなスクリーンの前で、赤と青の透明フィルムが施された眼鏡を装着して映像を見ると、何かのキャラクターがちょこちょこと間近に迫ってきて、これはおもしろいと感じた反面、眼球が異常に疲れたことを記憶している。
今回の立体ハイビジョンは、1台の特殊なカメラで撮影したということであるが、実に奥行きのある映像で、何の変哲もない平面のスクリーンに映し出される『臨場感溢れる映像』というのはこういうことなのだ。残念ながら、一見に如かずであって、ことばで表現するのはとても難しい。見ていただくに限る。
4.技術成果の紹介
講堂を出て、オープンスペースへ移動した。既に始まっている地上デジタル放送を実際に見た。コミュニケーションは1対1から、1対多のマスコミュニケーションへと発展し、さらに双方向へと発展したということが言われて久しいが、ホームサーバという機器を利用した最新の放送技術に接することができた。アナログ方式のテレビがこの先10年もたたないうちに粗大ゴミになってしまうという批判話ばかりが先行しているような気がしてならないが、小学校からパソコンを習う時代、情報リテラシーの時代、デジタル家電として当たり前になってゆくのだろう。
また別の部屋では、まだ模型の段階だが、紙のように薄い『折りたためるテレビ』の開発の過程に触れた。「機械はなるべくシンプルな構造の方が壊れにくい」とのお話があったが、全ては半導体をはじめとするナノテクノロジーにかかっているという。仕事として身近ではないにせよ、ライブラリアンとしては読書端末や電子書籍といったコンテンツの電子化には注視しているところであるが、技術の進歩はめざましい。遅れないようにしなければ。
5.研究資料室の見学
- (1)概要
- いよいよ見学会のメインである研究資料室の見学である。2002年に新棟移転したNHK技研図書室は、研究資料室と改称された。スタッフは宮本チーフをはじめ4人である。この見学会の前半で研究・技術の高度さに圧倒された後なので、どんなに凄い資料室なのかと思っていたためにスタッフが4人というのは意外な人数だったが、その答えはすぐわかった。
- 研究資料室は、殆ど電子図書館として特化されている。図書館員として奉職して以来筆者が今まで見てきたどのタイプの図書館でもない、まさしく電子図書館だった。技術の最先端を走るNHK放送技術研究所の資料室らしく、図書館における利用者への情報提供という点においても最先端を行く。したがって、いわゆる閲覧を主体とした資料室ではないため、閲覧スペースは少なく、1日あたりの来室者もあまり多くはない。利用者の殆どはLANを辿って資料室にアクセスしているのだった。人が人と直接接するサービスは、従来型の閲覧・貸出などではなく、情報入手の調査補助を主体としたレファレンスなので、スタッフが4人でも対応可能ということだった。

- 受付カウンター・事務スペース
- NHK技研では、インターネットが普及する以前から、独自のイントラネット技術を用いて所内LANを構築し、種々の研究情報を電子化した研究支援システムを運用していた。資料室でも、他に先駆けて資料管理業務の電子化を行い、新着資料案内や製本作業などの周知は、社内メールを通して行っていた。そして、インターネットが普及しはじめ、対応する機器が開発されると同時に、システムのWeb化に着手したという。政府がIT化を国策として掲げ、電子政府として国民の利便性を図ると言い始めるずっと前から行われている。技術を生み出すのみならず、既にある技術の有効な使い方を知り、それを習得して十分に活用するノウハウ、先見の眼にはただただ感服するのみである。
- (2)書架
- 資料室に入ると、学術雑誌の種類の多さに圧倒された。筆者のいる防衛庁図書館では学術雑誌は殆どないので余計にそう思ったのかもしれない。
- 学術雑誌というのはもっとも電子化が進んでいる分野であるという認識を持っているが、紙の媒体もはずせないのだという。電子ジャーナルは速報性に優れ、紙媒体はブラウジング効果が高く、保存の観点でも信頼性が高い。それでも数多くある学術雑誌は徐々に電子ジャーナルへと特化しつつある流れの中で、利用される資料のウェイトも徐々に移行していくのだろう。

- 閲覧スペース・学会誌別置スペース

- 左:固定書架/右:電動式集密書架
- 雑誌の奥には参考図書、新聞、一般図書と続く。放送技術、あるいは電気・通信の基礎工学の一般図書が網羅的に収集されている。我が防衛庁図書館も、平成12年に統合した旧防衛施設庁図書館から引き継いだ工学の図書が相当数あるが、ここは更に放送・通信に特化している。
- (3)電子資料
- ISIのデータベースWebofScience(約6,000誌収録)をはじめ、240誌もの電子ジャーナルがオンラインで見られるようになっている。電子ジャーナルの有用性はいわれて久しいが、普段殆ど利用することがないだけに240誌といわれてもどの程度なのかは判りかねる。
- 電子ジャーナルの特徴は、なんといっても関連する事項間のリンクづけがされていることであるというイメージを筆者は持っている。個々の電子ジャーナルがまとまると巨大なデータベースになる。検索語を入れると何件もヒットし、絞り込み、閲覧し、関連(たとえば引用した論文、あるいは引用されている論文)を調査し…紙ベースでは多大な労力を要する作業を、居ながらにして可能にする。研究者にとっては喉から手の出るツールなのだろう。ここからまた新しい技術が生まれていくに違いない。

- 左:電子データ閲覧コーナー/右:新着雑誌書架
- (4)研究資料室のホームページ
- この資料室がもっとも力を入れているサービスであり、CAIRS(カイルス=NHKSTRLCAtalogue&ImageinformationRetrievalSystem:資料検索システム)という愛称を持っている。ここでは資料室がアーカイビングしている資料の検索と、外部データベースの利用(一部技術研究所限定)ができる。このホームページのサービス対象は、NHK全局ということである。技術研究所だけでは300人余りだが、全局ということになると相当アクセス数も多いのだろう。
- この建物に入ってからというもの先程から感動、感服してばかりなのだが、このホームページは、市販のホームページ作成ソフトを使わず、スタッフが自分で全てHTML(:HyperTextMarkupLanguage)言語で記述しているのである。
- この研究資料室のスタッフの皆さんはこれらを自由自在に操って、ホームページを通じて情報を提供しているのである。なぜならば、外部に委託すると、その分迅速性が失われる。自分たちで、しっかりと情報を構築し、どんな情報を自分たちが提供しているのかという自己把握がなければならないのだという。しかも、情報の完全性(誤りがなく正確なこと。)を確保するために必ず入力データのダブルチェックをするという。図書館員はよく利用者に精通し(利用者がどんな情報を求めているかを知っている)、資料に精通していなければならないということは図書館情報サービスの理念としてよく説かれるところであるが、これほどまでに自己完結、徹底し、実践している現場に出会うことができたのは、この見学会の一番大きな成果であろうと思料する。
- (5)資料室のサービスを担う人びと
- 前後するが、資料室に入室する前に、チーフの宮本さんからブリーフィングを受けた内容について特記しておく必要がある。
- 宮本チーフは、次のように説かれた−当室は、閲覧を中心とせず、電子図書館として、レファレンス資料室の性格を持っている。情報の充実というものに当然力点が置いているが、それを支えるのは、司書である人である。人材こそが図書館の要である。
- 学問としての図書館学あるいは図書館経営論として、図書館の資源ということが説かれ、それを構成するのは人、資料、施設の三要素である。いかに豊富で充実した資料があり、いかに利用するための充実した空間を持つ施設を持つとも、運用する司書の存在なくしてライブラリーは機能しない。
- ここにいらっしゃる4人のスタッフのうち、NHK職員は宮本チーフのみで、2名はNHKの関連団体の常勤職員、1名は非常勤職員の方であるが、全員司書としての資格を持ち、人材こそが要との宮本チーフがこの3人に全幅の信頼を置いているとのお話をいただいた。個が最大限の努力をし、また個々の連係をもって職務を遂行している。その努力とは、資料をよく知ることであり、そのために自分で正確な情報を作ることであり、その下支えである知識を習得、研鑽していくことである。
- 司書の育成には10年の歳月を要すると言われている。スタッフの皆さんの姿を目の当たりにすると、プロとなるにはたゆまぬ努力が必要であることを実感させられる。また、図書館の司書が博物館の学芸員のごとく専門的職員として社会的に認知されるに至るまでには、司書の更なる努力が必要であることは各方面で論じられているところではあるが、成熟し、かつ発展している資料室の姿は大いに励みとなる。
6.さいごに
電子図書館という概念はいわれ始めて久しく、書架を持たない図書館の出現もどこかで聞いたことがある。しかし数が少ないので実際に見学したことはなかった。
旧来の姿の図書館に身を置く者として、全ての資料・文献が電子化されている姿を想像するのは困難である。また紙の媒体を持つ資料が全くなくなるということもないと言われているので余計に難しい。
今回、NHK技研研究資料室を見学させていただいたことにより、時代の趨勢として、あるいは資料の恒久的な保存という図書館の使命から来る時代の要請として、アナログ放送がデジタル放送化されるように、図書館における革命的な資料形態の変換もそう遠くはないのであろうという認識を新たにした次第である。筆者の属する図書館はまだ施設自体が新しいため、保存のためのスペースの問題が喫緊の課題というわけではないが、当然直面する問題だけに、今から考えておかなければならないと感ずるところである。
図書館員1年生として、図書館とはどのようなところかといった根本的な問いから、図書館の経営、運用の問題は何か、本質は何か、と色々な図書館へ足を運ぶ折に触れ考察してきたつもりであるが、また新たに勉強させていただいた。
貴重なお時間を見学のために割いていただいた宮本チーフはじめ研究資料室の皆さまに、感謝申しあげる次第である。
(元支部防衛庁図書館)
第16回保存フォーラム「災害と情報ネットワーク」に参加して
植田知明
平成16年2月27日に国立国会図書館東京館新館3階大会議室で行われた第16回保存フォーラムは、全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(以下全史料協)資料保存委員会委員長である小松芳郎松本市文書館長を講師にお迎えし開催された。
まず全史料協及び関係機関・会員等有志の方々が行った鳥取県西部地震・芸予地震等の地震による被災史料の救済活動を例に詳細な説明が行われた。
活動内容は単なる被災史料の一時的な避難のみならず、巡回調査、史料の修復、分類整理までも行っている。これらの活動は、歴史資料や文化財の保全・救出が、被災者である所蔵者の生活復興をケアする一環であることを前提にしたものである。被災直後に現地の全史料協会員に災害状況の情報提供を求め、今後の活動の方向性を検討する点は特筆される。また、会員からの情報提供の記録(連絡年月日・会員(機関)名・被災状況等)も正確に記載されており、インターネットを通じ外部に情報公開されている点も注目できる。
個々の事例として、水害・放水等により資料の水濡れ等が起きた場合に、凍結処理等の対応を行うこと、災害の際には近隣組織と連携する必要性を訴えられた。最近、というよりこれから起こると想定される人為的な史料破壊として市町村合併による大量の公文書等の散逸・廃棄が挙げられ、全史料協として各市町村・総務省に公文書の適切な保全を働きかけるとともに、公文書等の適切な保存・利用のための施設として地方自治体に「公文書館」の設置を呼びかけている。
私が勤務する農林水産政策研究所図書館は農業に関する経済・法律・社会学等にまたがる分野の図書資料を有する専門図書館である。資料保存に関しては劣化処理を中心に行っているが、火災・水害等の天災への対応はさほど行われておらず、今回のフォーラムは危機管理という面で参考になった。但し、全史料協で対応した被災史料の救助活動が当方、というより私個人として図書館で行えるかといえば疑問である。史料=原資料と定義できるのであれば、当図書館で収書されているものはコレクション・古文書の類を除くと大半が大量に複製された印刷物であり、希少性が乏しいが故に、図書館間で資料保存の連携が取れるかどうか疑わしい。また、全史料協の会員は概して特定の分野におけるエキスパートであり、被災史料をケアする優先順位等を選別できるが、私どもの図書館では収書対象が広すぎる故に保護する優先順位を確定するには難がある。結局破損状況・利用頻度等を勘案し、ケアする対象を選別する以外の方策は考えられない。この場合、当研究所の研究者と連携をとりながら選別することとなる。全史料協での手法とはいささか異なる対処となるが当図書館では最も有効な手段であろう。
平成の市町村合併に伴い、公文書等歴史資料が廃棄される可能性が高い今日、アーカイブズに関する一般の方々の認識が深まれば史料の廃棄が防げるが、そのためには全史料協が行う活動が最適であり、地道であるが着実に成果を挙げることができると実感した次第である。
(支部農林水産省図書館農林水産政策研究所分館)
日誌(平成16年4月〜平成16年6月)
| 4月1日 |
|
|---|---|
| 5月7日 | 平成16年度国立国会図書館行政・司法各部門支部図書館新規配属職員研修 21館39名 |
| 21日 | 平成16年度第1回中央館・支部図書館協議会幹事会 |
| 22日 | 平成16年度中央館のデータベースのオンライン検索講習会「国会会議録検索システムの検索法」 8館10名 |
| 24日 | 平成16年度第1回中央館・支部図書館協議会 |
| 28日 | 平成16年度中央館のデータベースのオンライン検索講習会「NDL-OPACの検索講習会」 10館14名 |
| 6月22日 | 支部図書館長異動 支部経済産業省図書館長 仲田雄作(前 小紫正樹) |
| 25日 | 平成16年度行政・司法各部門支部図書館職員特別研修「国立国会図書館中央館・支部図書館総合システムの紹介」 13館18名 |


