びぶろす-Biblos
平成10年12月号(電子化2号)
- NATIONAL DIET LIBRARY
- 発行/国立国会図書館総務部
- ISSN 1344-8412
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はじめに
『びぶろす』は、昭和25年4月に創刊し、以後行政・司法各部門の支部図書館と専門図書館の連絡情報誌として今日に至っております。より広い範囲への提供を考え、平成10年8月号で冊子体を停止し、10月から国立国会図書館ホームページで公開しています。刊行形態は異なりましたが、今後も当館、支部図書館および専門図書館の折々の状況を掲載して行きます。
*本誌に掲載された記事を全文または長文にわたり抜粋して掲載される場合は、サイトポリシーをご覧いただき、事前にご連絡ください。
目次
国立国会図書館支部図書館制度50周年記念シンポジウム
「政府情報の流通と管理」

支部図書館制度50周年を記念して、「政府情報の流通と管理」をめぐるシンポジウムが、11月27日午後当館新館講堂において開催された。
行政情報の電子化の流れと情報へのアクセスについて、米国印刷局政府刊行物管理局のフランシス・バックリー(Francis J.Buckley,Jr.)局長、行政情報システム研究所の百崎英理事長、関西大学総合情報学部の名和小太郎教授の三氏が講演した。以下はその要旨である。

最初に登壇したバックリー局長は、「米国の政府情報の提供」という題で、米国における政府情報電子化と、米国印刷局(GPO)の新しい役割に関して講演した。
GPOは、100年以上前から米連邦政府の刊行物の印刷、配布を集中的に管理し、全米1360館の寄託図書館制度を通して国民に無償で提供して来た。アメリカ最古の「情報の自由」プログラムといえる。 しかし近年、政府情報の電子化が進み、文書を作成した各政府機関がそれぞればらばらに直接インターネットで公開するようになっている。電子情報の保存も新たな課題である。
そのような中で、GPOは政府情報の電子化を支援するため、1994年に独自のインターネットサービスGPO Access(http://www.access.gpo.gov/su_docs/)を開始し、電子情報の所在案内、全文データへの無料アクセス(1998年10月現在約13万タイトル)等をおこなっている。 今後情報が電子化されれば、政府情報へのアクセスの責務は寄託図書館から、各政府機関へと移って行くであろうが、GPOは、寄託図書館の電子化、インターネットでの情報提供、関係諸機関との連携などにより、国民に対する政府情報のなるべく完全なコレクションの提供という任務を今後も果たしていく所存である。

次いで、百崎理事長が「行政における電子情報流通の現状と課題」について講演した。
これまで我が国では、各省庁でまちまちな文書管理がおこなわれてきた。しかし近年、情報公開が大きな政策課題となり、情報の電子化が進行し、これまでの制度・システムの抜本的見直しが必要となっている。 政府の行政情報化推進基本計画が、平成9年に改定され、現在それにもとづいて、電子文書を含む行政文書の作成、入手、決裁、施行、保存、利用、廃棄を統一的に管理するための指針が、政府部内で検討されている。統一的管理のためには、文書目録と文書のデータベース化の推進が重要である。
また、今後情報化を進める上で、国民に対するサービス向上という視点が必要であり、許認可の申請、届出等行政手続きの電子化に際しては、行政サイドの利便で作られたこれまでのシステムに対して、国民の利便を重視した新しいシステムが求められている。

名和教授は、「行政情報の電子化とネットワーク化ーその公開と商用化」というタイトルで、行政情報の電子化と、それにともない現在の行政情報流通経路が直面する諸問題について講演した。
これまで、行政情報の流通経路として(A)政府から直接ユーザーに情報公開(B)政府から図書館に納本し、図書館でユーザーが閲覧(C)政府から直接ユーザーに販売(D)政府から事業者に販売し、事業者が付加価値を付けてユーザーに販売、の4つのルートがあったが、行政情報が電子化されれば、このような流通経路も変化していくであろう。 それぞれのルートの協力関係と競合関係の今後の展望が分析された。
国立国会図書館による電子情報の提供についても触れられ、今後解決すべき課題として、図書館の無料原則を守るのか、あるいは民間との競合を避けて有料化するのか? また、日本の著作権法で国有財産とされている政府情報の著作権をどう扱うのか? などいくつかの点が指摘された。
三氏の講演後、電子情報の保存の問題、政府情報提供における公的機関と民間の役割分担などについて多くの質問が寄せられ、シンポジウムは予定時間をオーバーして終了した。 なお、このシンポジウムの記録は日本図書館協会より刊行の予定である。
(文責:国際協力課 松下さや子)
第46回行政・司法各支部図書館職員
兵庫県・大阪地区図書館調査研究
復興の街、神戸・大阪の図書館を訪ねて
平成10年10月27日〜10月30日
行政・司法各支部図書館職員が、国内の都道府県議会図書室、都道府県立図書館、大学図書館等を訪問して、各図書館の機能・運営・相互協力等について調査を行う今年度の「地区研究」は、神戸・大阪の各機関を対象に、10月27日から30日までの4日間行われ、初日を除いて秋晴れのなか、各支部図書館から20名、国立国会図書館から2名の計22名が、次の図書館を見学し、担当の職員の概要説明に熱心に耳を傾けるとともに、活発な意見交換を行った。
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兵庫県議会図書室/大阪府議会図書室
今回、議会図書室では、兵庫県議会と大阪府議会の2つの図書室を訪れた。

兵庫県議会全景(写真 上)
中央は議事堂 右の建物の1階に議会図書室はある。

大阪府議会(写真 下)
一行22名は、議会事務職員から、業務の概要について説明を受けた。
ホームページアドレス:
http://www.pref.osaka.jp/osaka-pref/gikai
【兵庫県議会図書室】
兵庫県議会図書室は、平成2年の新庁舎完成とともに移転し、議員用閲覧席の増設や移動式書架の導入、視聴覚席の設置などを行って、図書室長以下5名の職員が、議事録検索システムや図書検索システムを使ったサービスを展開している。閲覧、貸出とも事務局職員の利用が多く、議事録検索システムでは、昭和61年からのものに限定されるが、定例・臨時会会議録や予算・決算特別委員会会議録等が見やすい画面で簡単に検索でき、議員の質問準備等に役立っているとのことであった。
兵庫県では、平成8年10月に、大震災の教訓を生かした「兵庫県災害対応総合情報ネットワークシステム」の防災支援端末による庁内LANが設置され、これにより各部局の行政情報の収集やインターネットによる外部情報の収集も可能となっており、これらの動きを念頭に入れた今後のサービスの在り方が注目される。
【大阪府議会図書室】
一方、大阪府議会図書室は、図書室長以下7名で運営されているが、うち3名は議会史編纂業務に携わっており、4名が非常勤職員である。こちらも事務局職員の利用が圧倒的に多い。平成7年4月から府庁内LANが稼動し、平成9年9月からは議会関係者に議会LANが開かれ、今年6月からは議会ホームページも公開されて、情報化が進んでいる。その影響で図書室の利用も減少傾向にある。図書室長からは、図書資料の専門化を図るなどの取り組みが必要であるとの認識が示されていた。
両県とも議場の見学があり、とくに全国の都道府県のなかで最も古い歴史をもつ大阪府議会議事堂は、伝統の重みと風格とを参加者に印象づけた。
神戸市立中央図書館/神戸大学附属図書館
【神戸市立中央図書館】

今回の見学・調査では、神戸市立中央図書館と神戸大学附属図書館との見学を通じて、平成7年1月の阪神・淡路大震災が図書館に与えた痛手と影響の大きさを、改めて感じた。とくに中央図書館の震災関連資料展示室では、当時の状況を知る上で貴重な資料が提示され、見ていて復興に取り組まれた関係者の方々の情熱に感銘を受けた。また復興当初の航空写真は、震災による神戸の街の大きな痛手を物語っており、胸がつまった。
中央図書館には、平成元年のふるさと創生資金1億円を基礎に市費1億円を加えて設置した「神戸ふるさと文庫コーナー」があり、神戸に関するあらゆる資料を収集・展示しており、また、特別コレクションとして、元新日本汽船社長松本一郎氏が収集した港湾・海運・貿易を中心とした洋書を含む松本海事文庫、中国文学者吉川幸次郎氏の集書で、文学・経学部門では国内屈指といわれる吉川文庫、朝鮮史関係資料の青丘文庫などがある。
また、AV資料ではCDなどが事務室集中管理で利用に供されており、図書館における図書以外の資料の閲覧・管理を考える上で参考になろう。
【神戸大学附属図書館】
分室を加えると7つの図書館から成る神戸大学附属図書館では、管理棟のある一番大きな図書館である人文・社会科学系図書館を見学し、説明等をうかがったが、階段を上ったところにある受付カウンターや、震災にも耐え得た書庫の鉄製書架、木製の大机が並び、大きな窓と高い天井、ステンドグラスが美しい大閲覧室が印象的だった。
附属図書館には、災害復興や地震研究・防災対策等に役立つ震災関係のあらゆる資料を収集し、全国に向けて広く提供する(貸出は不可)「震災文庫」が設置されており、狭いコーナーにあふれるほどの関連文献・資料が並べられていた。関連の出版物そのものが一応落ち着いてきたこと、現在は副本も多数あることなどから、大幅な増加は予想されないが、今後の蔵書構築の展開には工夫が必要となろう。写真資料等の電子化も進められている。
『震災文庫』コーナ
被災の混乱時にいち早く資料の飛散を防ぐ方策がたてられて収集された貴重な資料は、全国に公開されている。貸し出しはしないが、インターネットで資料のリストを見たり検索が出来る。
ホームページアドレス:
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/eqb

『震災文庫』入り口を入る(写真:左)
神戸大学/人文・社会科学図書館(六甲台)

資料は公刊されたものから、文集、チラシ、レジュメ等震災関係資料であり、集中的に収集整理している。(写真:左)
大阪府立中央図書館/府立中之島図書館
【大阪府立中央図書館】

大阪では、平成8年5月に開館した府立中央図書館と、歴史的建造物である府立中之島図書館を見学した。府立中央図書館は、「世界都市大阪の文化を象徴する時代のモニュメントになりうる教育・文化施設」を謳っているだけあって、すべてが広々としており、交通の便を除いては、環境的にも整っている。ほとんど気付かないほどの勾配の障害者対応スロープや、30万冊の大規模開架室、音響・映像ブースを備えたオーディオ・ビジュアル室、CD-ROM資料の提供など、目をみはるものが多いが、設計段階から現場の司書が加わって検討を積み重ねてつくったということであり、納得させるものがあった。日曜日には出納した図書を積んだ2台の自転車が書庫内をベルを鳴らしながら走行しているという。
また、交通の便の悪さから現状では平日の利用の少ない付設のホールも400名の中規模ホールながら設備は大ホール並みの立派なものであり、図書館と文化芸術活動をつなぐ生涯学習の場を提供していくという図書館の方針をうかがわせた。
パンフレットより

【府立中之島図書館】

中之島図書館は、大阪関係資料のセンターとして、また、近世和漢書のセンターとして、中央図書館との協力体制のもと、図書館サービスを展開しているが、長い間、総合図書館として親しまれてきたことに加え、中之島という立地条件の良さから、公共図書館としての基本的なサービスは今後も担い続けていくものと思われる。
国の重要文化財に指定されているその建物は、よき時代の図書館を彷彿とさせ、中央の螺旋階段やごく自然にかけられた浅井忠の絵や、8賢人の彫像やドームのステンドグラスなどが、すばらしい読書環境と文化の香りに充ちた雰囲気を醸し出していたのが印象的だった。
