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トップ > 刊行物 > びぶろす > 76号(平成29年4月)

びぶろす-Biblos

76号(平成29年4月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412
2. 政府情報の多様化とアクセス保障

天理大学人間学部教授 古賀 崇

1.「政府情報の多様化」をめぐる現状:オープンデータを中心に

政府(以下、自治体等も含むものとする)の活動、あるいはより広い社会活動の電子化・ネットワーク化に伴い、多くの国々で「政府情報の多様化」が進んでいる。その一例はウェブサイトによる情報発信の進展で、かつては「灰色文献」と呼ばれた政府系の報告書や審議会議事録などもウェブでの公開が進む一方、日々のお知らせなど「動的」なコンテンツが増え、動画など形態面でも多様化が進んでいる。また、政府内部の業務のために、あるいは外部とのやり取りに用いる公文書も電子化が進み、「電子メールをいかに公文書として取り扱うか」という点などが各国で議論され、電子公文書をめぐる制度化も進行している。さらに近年の動向としては「政府からのオープンデータの提供」の取組も各国で進行しており、これは市民参加なども含めた「オープンガバメント施策」の一環と位置づけられる場合もある1

こうした動向を【図】として提示してみたい。まず、政府情報の共有―政府内部であれ、政府の外の国民・住民・団体等に向けてであれ―のためには、形態や内容の「編集・加工」という作業を要する場合が多く、そうしたものを「二次情報」ないし「二次資料」と呼ぶことができる2 。これは様々な政府刊行物や、その延長としての各省庁等のウェブサイトが当てはまり、日本では図書館での収集対象、また国立国会図書館の「インターネット資料収集保存事業(WARP)」や「オンライン資料収集制度(具体的には「国立国会図書館デジタルコレクション」の「電子書籍・電子雑誌」のカテゴリーに該当)」で扱われる対象となっている。

【図】政府情報の多様化(筆者作成)

一方、政府の業務をそのまま反映した公文書などは「編集・加工」が成される手前の段階にあり、「一次情報」ないし「一次資料」と位置づけられる。一次情報は政府の外部との「共有」を第一義にはしていないため、狭義の「情報公開」すなわち「開示請求に基づく情報(公文書)開示」の対象にはなるものの、一定のカテゴリーに属するもの―具体的には情報公開の法律や条例などに明記される―であれば開示請求が退けられる。ただしそうしたものであっても、「時の経過」によって公文書館での公開対象になる場合、また「復刻・翻刻」として出版される場合、最近では「デジタル・アーカイブ」としてウェブで公開される場合がある。

ただし、近年の「政府情報の多様化」においては、前述のような「一次情報」と「二次情報」との境目が曖昧となっている。特にそれを体現するのがオープンデータである。この「大元」になるのは、政府がその活動や、国民 ・企業などとの関わり合い(例:統計調査)などを通じて保有している、様々な種類の「生データ」である。従来はこの生データが一定のフォーマットのもとで編集・加工され政府の内外で利用されてきた。ところが、近年の「オープンデータ」 の潮流の中では、この「生データ」をあえて政府の側では編集・加工を行わず―あるいは、「機械可読」な方式で加工し―、「見てわかる」形での編集・加工を政府外部の利用者のほうに委ねることが意図されている。言い換えれば、編集・加工の手前の「一次資料」としての性質を残しつつ、政府が積極的に公開し、政府の外にいる人々・団体等による利用を促す、というのが、オープンデータの位置づけと言える。

日本のオープンデータをめぐる国レベルでの政策については、内閣の「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)」が中心的な役割を担っている。特に、このウェブサイトの「決定事項」の欄では、「世界最先端IT国家創造宣言」3など、オープンデータの構築・利用など主要な政策がまとめられている。また、自治体での推進策も含めた政策動向を知るには、総務省の「オープンデータ戦略の推進」のウェブページも分かりやすい。

国レベルでのオープンデータ提供の中心となるのは、データカタログサイト「Data.go.jp」であるが、この運用をめぐる出来事については後述する。

2.「多様化する政府情報」とアクセス保障の課題

さて、オープンデータを含め、政府情報の「多様化」が進む中で、それへのアクセスをいかにして保障できるだろうか。ここでの「アクセス」とは、単に「今ここにある政府情報」を、「ビッグデータ」といった形で活用するだけでなく、「政府活動の遡及的検証」につなげるための長期的保存と長期的利用の保障を意味するものとしたい。

まず考えるべきなのは、「従来の刊行物や公文書の枠に収まらないものの扱い」である。これはまさにオープンデータに当てはまるものであるが、「従来の刊行物や公文書の枠に収まらないもの」を、図書館や公文書館、あるいは類似した施設や機能4での業務・サービスにいかに適用していくか、という検討が、今後は求められていくだろう。

ここで、オープンデータの提供をめぐる二つの出来事を簡単に紹介しておきたい。一つ目は、2013年10月に米国において、連邦議会内の対立によって暫定予算に関する議案が議会を通過せず、米国連邦政府の一部閉鎖(partial government shutdown)が起きた件である。これにより、政府オープンデータ提供サイトの世界的な先駆と言える「Data.gov」ほか、政府データのサービスサイトの停止へと至り、提供元の機関の対応を含め批判を引き起こした5

二つ目は、日本では前述のData.go.jpが「正式公開」(2014年10月)となる前の2014年4月に、予算執行の事情(前年度分の予算しか確保していなかった)で1か月半ほど停止という事態となった件である。ただし、これについてはオープンデータに携わる国内団体が、データのライセンスに基づいてミラーサイトを公開し、Data.go.jpの代替として機能した6

大向はこれらの事例を踏まえ、既に運用されている学術研究用の電子ジャーナルのバックアップの仕組みのような「アーカイブの持ち合い」の体制を構築し、データの永続性を担保することが、図書館コミュニティには求められるのではないか、と提言している7。図書館以外のコミュニティが保存に携わる必要性・可能性もあるだろうが、前述の「WARP」などの役割も含め、「多様化する政府情報」をめぐり短期(緊急措置含め)・長期の双方での保存・アーカイブのしくみを構築する必要は一層増すはずである8

また保存だけでなく、ウェブ上の多様な政府情報を探しやすくすること、またレファレンスサービスや情報の利活用などの「利用者支援」の取組も必要である9。ただし日本の現状では、そもそも政府情報の検索の仕組みが行き届いていないことも指摘しなければならない。一つの例は、井上が実際に図書館でのレファレンスサービスの事例として紹介したことである10。すなわち、スウェーデンの中学校教師の給与に関する行政での議論を確認したい、という問い合わせに対し、井上は「"文部科学省""委託調査"を検索語にして、"filetype:pdf"で絞り込んで検索してみて」とアドバイスし、問合せ事項に即した報告書の発見につなげることができた11。井上はこの事例を踏まえ、日本の政府の報告書は「ウェブに置いてあるだけ」で見つけづらいのが現状であり、これらにメタデータを付与して、「国立国会図書館サーチ」などから容易に探し出せるようにする必要がある、と提言している12。こうした点も、国立国会図書館、支部図書館、また国の各省庁として取り組むべき課題として挙げておきたい。

そして、特にオープンデータに関して言えば、政府が発信するデータだけではなく、それを用いた政府および民間のアプリケーションについても、図書館ないし類縁機関での保存や、利用者へのアクセス提供の対象として考えるべきかもしれない。なぜならBertotらが示唆しているように、データは刊行物や公文書のような「完成品」ではなく、データを用いた「新たな知識の形」こそが、政府活動やその影響を受けた様々な活動の「遡及的検証」のために必要となり得るからである13

3.アメリカ連邦政府での実践事例

本稿の主題に関連して、アメリカ連邦政府での取組にも簡単に触れておきたい。詳しくは別稿を御参照いただきたい14

一つは国立公文書記録管理院(NARA)の取組で、国立公文書館としてのNARAへの移管対象となる「電子記録フォーマット」に関する「ガイダンス」を、連邦政府の各機関に向けて発信している。このガイダンスの特色として挙げられるのは、移管対象となるフォーマットについて、大きくは10のカテゴリーに分けていることで、図面用のCADデータや、オープンデータと関わりの深い「構造化されたデータのフォーマット」などが含まれる。また、これらのカテゴリーごとに、「推奨されるフォーマット」「受け入れ可能なフォーマット」「緊急時に受け入れ可能なフォーマット」の区分を明示している。この区分においては、「プロプライエタリ(知的財産の面でオープンではなく、特定の業者等の権利に結びつく)」なものよりもオープンなフォーマットが、スムーズな保存・アクセス保障を可能にする点で推奨されている。

もう一つは政府出版局(GPO)の取組で、ここは前述のような「アーカイブの持ち合い」と言える「連邦政府刊行物寄託図書館制度(FDLP)」を運営しており、また連邦政府機関のウェブサイトについてもWeb Archivingの取組を進めている。GPOによる電子的な政府刊行物の発信、及び真正性保障の仕組みとして、1994年開設のGPO Accessを引き継ぎ、2009年よりFDSysを運営している。特にオープンデータとの関わりとしては、FDSysの中に「XML Bulk Data Repository」のカテゴリーを設け、法令・法案や連邦政府官報(Federal Register)などを「バルク(ひとまとめ)」でダウンロードできるようにしている。なお、GPOの政府刊行物等の発信用サイトとしては「三代目」となるGovinfoというサイトが、2016年2月にベータ版として公開されており、将来的にはFDSysを置き換える予定である。

4.おわりに

本稿では「多様化する政府情報」について、国民によるアクセス、および政府の業務上のアクセスをいかに保障するか、という点を論じた。特に筆者が重要と考えるのは、対外交渉の側面も含め、政府情報が内包する「証拠としての価値」をいかに保持するか、ということである。国立国会図書館、支部図書館、また国立公文書館ほか類縁機関、そして政府全体による積極的な取組を、国民の一人として期待し要望したい。


(参考文献)
古賀崇「オープンデータ時代における政府情報アクセスの変容をめぐる試論:Frank Upwardらの「レコードキーピング情報学」を意識しつつ」『レコード・マネジメント』記録管理学会,(67),2014,p.104-115[請求記号:Z21-1889]
『行政&情報システム』行政情報システム研究所[請求記号:Z2-123]

※本稿はJSPS科研費JP16K00454による成果の一部である。

(編集部注:本稿は、平成28年12月12日に開催された「平成28年度国立国会図書館長と行政・司法各部門支部図書館長との懇談会」での講演を元に執筆いただきました。講演時は天理大学人間学部准教授)

(こが たかし)

  1. 「オープンデータ」と「オープンガバメント」との相違点を論じた例として、下記を参照。本田正美「公共情報の公開と利用:オープンデータ推進による公共情報の再発見」『第12回情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集』情報科学技術協会編,情報科学技術協会,2015.12,p.103-107[国立国会図書館請求記号:M111-L31]
  2. 「(二次・一次)情報・資料」という表記について補足しておく。図書館・文書館などで従来扱ってきた資料という意味では「資料」ということばが理解しやすいと思われるが、オープンデータなど「館の資料」の枠に収まらないものが増えているため、「(二次・一次)情報」ということばを、ここでは用いている。
  3. 平成25年6月14日 閣議決定。平成26年6月24日、平成27年6月30日、平成28年5月20日にそれぞれ変更(改定)。
  4. 後述の米国GPOの取組を参照。
  5. 解説の例として下記を参照。「米国における政府シャットダウンの影響」『世界のITトレンドを読む“Global IT Reports”』株式会社NTTデータ, 2014.11.21.
  6. 解説の例として下記を参照。「まだ再開できず?休止した日本政府のサイト「DATA.GO.JP」、応急策に民間ミラーサイト」インターネットコム, 2014.4.15. 林雅之「日本政府のデータカタログサイト(試行版)「data.go.jp」の閉鎖に伴う仮サイト「datago.jp」の開設と今後(『ビジネス2.0』の視点)」オルタナティブ・ブログ(ITmedia), 2014.4.10.
  7. 大向一輝「オープンデータと図書館」『カレントアウェアネス』国立国会図書館,(320),2014.6,p.14-16[請求記号:Z21-1007]
  8. 理論と実践の双方から電子記録の保存・管理の方向性を論じた下記も参照。橋本陽「電子記録をどう整理するか:インターパレスとイタリア・アーカイブズ学における知見に依拠して」『レコード・マネジメント』記録管理学会,(71),2016.12,p.24-38[請求記号:Z21-1889]
  9. 前掲7も参照。
  10. 中山正樹・井上真琴ほか「シンポジウム「見たことのない図書館を考える」」『同志社大学図書館学年報』同志社大学図書館司書課程,(40),2015.3,p.31-64[請求記号:Z21-629]
  11. 下記が当該報告書だと推測される。『諸外国の教員給与に関する調査研究報告書』(平成18年度文部科学省委託調査研究)諸外国教員給与研究会,2007.3[請求記号:FC25-H32]
  12. 前掲10
  13. Bertot, John Carlo, et al. “Big Data, Libraries, and the Information Policies of the Obama Administration.” Library and Book Trade Almanac. (59),2014,p.5-23[請求記号:Z65-A117]. あわせて下記も参照。古賀崇「米国連邦政府におけるウェブ上の情報の多様化とその管理・保存をめぐる現状と課題 : オープンデータの扱いを中心に」『レコード・マネジメント』記録管理学会,(69),2015.12,p.67-86[請求記号:Z21-1889]
  14. 古賀, 前掲13

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