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トップ > 刊行物 > びぶろす > 75号(平成29年1月)

びぶろす-Biblos

75号(平成29年1月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412
5. 【特集:レファレンスインタビュー】
人文系レファレンスの際、インタビューで気を付けていること

国立国会図書館利用者サービス部人文課 小林 昌樹

1.Q&A=トランザクション

対面カウンター、電話などでのレファレンス質問と回答を、米国図書館界では「レファレンス・トランザクション」(reference transaction)と呼んでいる。トランザクションは、工学的には「処理」と訳されるが、一般には「交渉」や「取引」を意味する言葉で、レファレンス質問を受ける際の「やりとり」(ここでは「レファレンス対応」と呼ぶ)を上手く概念化した言葉だと思う。

答えの所属ジャンルが明確な質問(例えば、遺言について知りたい→法学、といった単線的なもの)であっても、てっとり早く最低限知りたいのか、とことん知りたいのかといったユーザのニーズの強度・切迫度、あるいは図書館側のコレクションや人員のスキル、閉館時間が迫っているかなどで担当の対応も自然、異なってくる。

レファレンス対応とは、双方が当座、動員できる資源(時間、手間、情報源)を相互に知らせながら、その時点での最適解を出していくという点で、まさしく取引であり、相互アクションであるからだ。

2.人文系でのインタビュー中、有効と思われる手法いくつか

レファレンスインタビューについての論文をいくつか読むと、(現場の)経験論からのもの、相互作用(コミュニケーション)論からもの、認知論的なものの3つのアプローチがあるという1。現時点では理論的な研究の材料を持たないので、ここでは経験論の延長上で述べたい。体系的ではないが、人文総合情報室のカウンターにおける筆者の経験を元に、インタビュー遂行上気を付けているいくつかの事柄について人文系固有と思われる側面を書き出しておく。


○人文系では質問は長めに転がす

他ジャンルではいざ知らず、質問はやや長めに転がすようにしている。

ユーザ:「小林鉄次郎という人物について知りたいのだけれど…」
担当者:「(人物資料の棚に向かいながら)何をしていた方ですか?」
ユーザ:「よく分からないけど、道具屋って聞いたナァ」
担当者:「聞いた、というと、もしかするとご先祖さまですか?」

ここで重要なのは、「小林鉄次郎」という固有名でも「道具屋」という職業でも実はない(もちろんレファレンスツールを参照する際には重要)。重要なのは「聞いた」という表現に兆した、ユーザの情報源の暗示である。


○単線的に処理するとゼロ回答が量産されるジャンル→人文系

これが人名だから人名辞典ないし紳士録、道具屋だから商工便覧、といった論理的に正しすぎるツールへ単線的に直結させてしまうと、人文系では「見当たりませんでした」という「ゼロ回答」が量産されてしまう。

「聞いたナァ」という言葉尻から、ユーザがルーツ探し・先祖調べをしている可能性を推測し、ならば、人物調査の三類型(有名人、無名人、限定的有名人)2の「無名人」(市井人)ではと想定し、「無名なら『家系図の作り方』といった文献紹介もありだなぁ」と考えながら、人名辞典の棚へゆっくり歩いていくのである。

やや雑談っぽく長めに話すことで、自然とユーザの質問の文脈が判ってくれば、人文系で行き詰まった場合有効な、「いったん広めの参照枠組みに当該事物を置き直して探索戦略を練り直す」という作業をするための周辺情報が得られるようになる。


○何をしているのか独り言ふうに説明する(特にPC操作中)

調べもののメディアが紙しかない時代がごく最近まであった。インターネットが普及した1995年以降、PCを用いた調べものの歴史はまだ浅く、それを100%使い切るノウハウは必ずしも普及していない(例えば、GoogleブックスをGoogleと別のものと認識し、それを「きちんと」3使っている司書はどれだけいるだろう)。

紙の時代、司書がユーザの目の前で行った「電話帳を繰る」、「地図帳のグリッド線をたどる」、といった参照行為は、それを見ているユーザにも直観的に理解できるものであった。つまり、「自分でもできそう」とか「急ぎではないから今日はあきらめよう」などといった判断材料をユーザに自然と与えていたのだ。レファレンス・トランザクションにおいて探索方法によるコストを示し、それを当座、負担できそうか考えるということは、時間などに制約がある両者にとって重要だ。もちろん一番良いのは司書が目の前で演じる参照作業をユーザが観察・まねして自身で実行すること4であり、司書の「実演」5はユーザ向けの「利用者教育」的機能をも持ち合わせていると思う。

けれど現在、調べものに不可欠なPCをカチャカチャ操作する行為は、たとえそれが探索戦略上正しいものであったとしても、ユーザ側に「見え」ても理解されづらい。

ユーザ:「○○という本を探しているんですが。NDL-OPACに出ません……。」
担当者:「ああ、そういった一般書なら、NDLサーチを引きましょう。これは都道府県立図書館の所蔵分も出ますからね。〔カチャカチャ〕あれ……。出ないなぁ。もっと軟らかい娯楽本なら「日本の古本屋」じゃないと出ないかも。それ引いてみますか。〔カチャカチャ〕」

といったように、自分がPC操作に没入してしまわず、メタレベルでの説明をしたほうが良いと思う。

レファレンス・カウンター(orエンカウンター)で起きて(起こして)いるのはトランザクションなので、ユーザにもなるべく情報を与えるべきだろう。なにより人文系質問の場合、最初のキーワードを別の形に変換することで答えが出てくる場合が多いので、ユーザの納得を得るためにもどのような理路でキーワードが違う言葉に置き換わったのかPC画面を見せるだけでなく、適宜説明すべきだろう。もちろんこれには、ユーザが単に代行サービスを受けている気分にならないようにする副次的効果もあろう。


○メモは取るべきか

「ユーザを委縮させてしまうので目の前ではメモは取るべきでない」といった意見が図書館界にあるようだ。しかし、日本語は、話し言葉と書き言葉に相当な乖離があり、人名においてそれが顕著なので、ユーザに「人名などの漢字形を聞く」ような形でのメモは良いのではなかろうか。何を「文字列」として検索システムに投げているのか明示することにもなる。


○困難度の予測をなるべく言う

前述のように、人文系の質問は、書庫資料の通覧に時間をかけたり、間接的な探し方をして答えが出るケースが他ジャンルより多い傾向がある。自分の中に、様々な参照スキルやレファレンス経験が形成されていけば、質問類型ごとの困難さがなんとなく予測できるようになるので、困難度の当たりがつけば、「これはかなり難しいですよ」とか「じっくり調べれば分かるかもしれません」と言った方が良いだろう。もちろん、手間をかけても見つからないことが経験的に分かっていれば(例えば江戸幕府の御家人クラスの人物を調べる)、「これは無理」と言っても良いだろう。


○行き詰まったら、また相談

人文系の調べものでは、ある方向でしばらく調べて見つからなかったら、違う方向へ探索戦略を練り直さなければ答えが出ないということがある。利用者は、こちらが示した探索戦略を実行して見つからなかったら、それで「答えがない」と諦めてしまいがちだが、実は利用者が調べた副次的情報や、あるいはその方向で出ないこと自体から別の探索戦略が立つ6ことがある。経験的に答えが出ないことが分かっている主題でなければ、「行き詰まったら、また相談しましょう」と言っておくのも良いだろう。

3.最後に

レファレンスにおけるインタビューは、ユーザへ司書が問い返すことであり、ある種のネゴシエーション(交渉)であると米国図書館学では言われてきた7。では実態としてどのように問い返されているか、質問の種類(ないしジャンル)ごとに有効・無効な問い返しはあるのかないのか、といった論考や研究は、こと日本語では少ないように思う。その一方で、米国の大学図書館ではレファレンス担当司書自体がいなくなるのではと言われている8。レファレンス担当司書が持っていたノウハウやコツを可視化しておくことは、日本でも来るべき変動に備えることになるだろう。

(こばやし まさき)

  1. 池谷のぞみ「レファレンス・プロセス研究の諸アプローチとその統合:レファレンス・インタビュー研究を中心として」『Library and information science』30,1992,p.43-58[国立国会図書館請求記号:Z21-2]
  2. レファレンス研修. 平成24年度』電子書籍・電子雑誌,国立国会図書館, 2012.11 の「人文科学分野のレファレンス事例解説とツール紹介. 事例集」p.5にある「豆知識3 人物調査の三類型」
  3. フレーズ検索で使う、年代順にソートする、被索引文献、特に雑誌巻号を特定する、など。
  4. 小林昌樹「「参照」してもらうのがレファレンスサービス:インダイレクトこそサービスの本態」『図書館は市民と本・情報をむすぶ』池谷のぞみほか編,勁草書房,2015.3,p.178-187[請求記号:UL11-L23]
  5. レファレンス対応は代行業ではないと当館内でよく言われ、一般にも、「依頼者の仕事の肩代わり」ならば回数制限などの形で謝絶する(『問題解決のためのレファレンスサービス.新版』長澤雅男・石黒祐子,日本図書館協会,2007,p.56[請求記号:UL731-H33])というが、最初の1回は代行行為をするのが現場ではむしろ普通である。その代行に意味があるとすれば、ツールを使う実演としての意味を持たせるべきだろう。
  6. 人文系の探索プロセスで発揮される「ノウハウ」や「コツ」の正体については、「レファレンスの事例分析から汎用スキルを抽出する試み」として『図書館雑誌』日本図書館協会図書館雑誌編集委員会 編,2017年2月号に掲載予定。[請求記号:Z21-130]
  7. 岸美雪「レファレンス・インタビューと資料探索」『びぶろす』38(6), 国立国会図書館図書館協力部編, 1987.6,p.124-130[請求記号:Z21-114]
  8. 石松久幸「今、アメリカの大学でライブラリアンと呼ばれる職業が絶滅しつつある:デジタル化がもたらしたもの?」『出版ニュース』出版ニュース社,2187, 2009.9下旬,p.6-10[請求記号:Z21-164]

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