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トップ > 刊行物 > びぶろす > 73号(平成28年7月)

びぶろす-Biblos

73号(平成28年7月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412
8. ニュージーランド図書館訪問記:国立図書館、市立図書館、議会図書館

国立国会図書館総務部支部図書館・協力課 横田志帆子

筆者は平成28年3月にアジア・オセアニア地域国立図書館長会議1に参加するためにニュージーランドのウェリントン市を訪れ、同地にある図書館3館を訪問しました。本稿では、筆者が訪れた国立図書館、市立図書館、議会図書館という館種が異なる3つの図書館について、写真を交えて紹介します。

1.ニュージーランド国立図書館

ニュージーランド国立図書館(以下、「NLNZ」といいます。)は、1965年に国立図書館法に基づき設立されました。NLNZには3つの源流があり、一つはニュージーランド議会図書館(後述)、二つ目は1918年に国に遺贈された個人コレクションに基づくアレクサンダー・ターンブル図書館、そして1945年に最初の国立図書館長の就任とともに設立された国立図書館サービスです。現在の建物は1987年に開館、改修を経て2012年に再開館したもので、ニュージーランドの首都ウェリントンに位置します。蔵書は納本制度によって収集される国内出版物のほか、音楽・映像資料、手稿、写真、アジア・オセアニア地域関係資料等によって構成されています。

NLNZの使命は「(1)資料、特にニュージーランドに関するものについて、文書遺産ないしtaonga(マオリ語で『宝物』の意味)としての在り方に応じた方法で収集、保存及び保護し、あらゆる国民がアクセスできるようにすること、(2)国内の他の図書館の活動を補佐し、促進すること、(3)国際的な図書館コミュニティの成員を含め、類似する目的を持った他機関と連携すること、の3点を通じて国民の文化的・経済的生活及び他国との交流を豊かにすること」2と国立図書館法に規定されています。他方、ニュージーランド住民の社会参加を可能にするためのリテラシー向上や、資料を通じてニュージーランドの記憶を語り直すことにより過去を知り未来のことを考える機会と場を提供する等の取組みも行われています。


NLNZ外観

NLNZの1階は特別な手続きなしに利用ができ、共用のワークスペース(“net.work”)や展示室、カフェ等があります。入口付近のインフォメーションカウンターはカヌーを模しており、NLNZへやってくる人々がそれぞれの目的に向けて漕ぎ出すイメージを反映しています。net.workではWi-FiやPC、3Dプリンターが無料で提供され、来館者が自由に活用している様子が見て取れました。こうした意匠や施設には、多種多様なルーツを持つ移民が多く集まるニュージーランドという国にあって、NLNZがあらゆる人が機会を見つけられるような場であろうという意図が込められているように感じました。


1階、左に見えるのがインフォメーションカウンター

2階は登録利用者用の閲覧スペースとなっています。以前は1階、2階、地下にわたって合計12の閲覧室があったそうですが、2009年に行った大規模アンケートの結果を受け、2012年の再開館を機に“General Reading Room”(総合閲覧室)ですべての蔵書の資料請求及びレファレンスを受け付けることが可能になりました3。閲覧室を統合したおかげで共有スペースを広く取ることができ、より外に向けて開かれた印象がもたらされたとのことです。開架されている資料の中には、マオリの歴史に関する資料、個人や家族のルーツを探るための資料、写真コレクション等があります。


2階総合閲覧室

NLNZでは資料を長期にわたり保存するための予防的対策として、収蔵する資料の種類によって書庫の温度が個別に設定されています。例えば紙資料の書庫は14℃、写真のネガの保存書庫は-29℃に設定されています。湿度は44~55%に保たれています。このような厳重な温湿度管理は停電時でも電力供給が可能なシステムによって維持されています。また、紙媒体の資料は直接ラベルを貼らなくても良いように箱に入れて保管されていました。


書庫

一方で、NLNZに持ち込まれた時点で傷んでいた資料等については、専用の部屋で修復作業を行います。図書、手稿、写真、芸術品等の種別それぞれに専門のスタッフが割り当てられています。筆者が見学した際には、土手の泥の中から見つかった資料の土を落とす作業が行われており、様々な道具で除去を試みた結果、電動の消しゴムが紙を傷めずにこびりついた土を落とすのに最適だとわかったことを教えてもらいました。手稿の修復には日本製の和紙(典具帖紙(てんぐじょうし)、国立国会図書館でも新聞の修復等に用いられているもの4)が活用されており、成田から飛行機で片道14時間という遠い街で思いがけず見知った顔に会ったような心地でした。


資料修復作業室

2.ウェリントン市立中央図書館

ウェリントン市内には12の市立図書館があり、中央図書館はその中で最大の蔵書数を誇ります。ウェリントン市立図書館の歴史は古く、1869年に公共図書館法が制定され、1893年に最初の図書館が設立されました。現在の中央図書館の建物は1991年に建てられたものです。広々とした館内には児童・ヤングアダルト向けの資料、雑誌、政府関係資料(法令資料)、地域資料、家族及び個人の歴史に関する資料、車やバイクのマニュアル、マオリに関する資料等が開架されていました。

中央図書館を含む市立図書館はニュージーランド在住者であれば誰でも利用者登録をすることができます。

ホームページ上には移民向けの図書館利用ガイドがアラビア語、中国語、フランス語、フィジー語、サモア語、トンガ語等の計25言語で提供されています5。日本語のページを参照してみると、「ウェリントンのくらしに役立つ情報」として住宅情報、公衆衛生情報、求人情報等も掲載されていました。また、児童向けの学習教材はもちろんのこと、第二言語として英語を学習するための教材や、履歴書の書き方、応募書類の作成、面接のテクニック等、就職活動に関する資料が提供されていることも、海外からの移住者が多いニュージーランドにおけるニーズを反映しているのだと感じました。


ウェリントン市立中央図書館

3.ニュージーランド議会図書館

ニュージーランド議会図書館の前身(General Assembly Library)は、1858年に設立されました。当時ニュージーランドの首都はオークランド市であり、1865年の遷都の際に議会はウェリントン市に移動することになりました。図書館の建物は1899年に建てられました。ニュージーランドで最初に納本制度が定められたのは1903年ですが、当時国立図書館は存在しておらず、この議会図書館が納本図書館としての役割を担っていました。その後、1965年に国立図書館法(前述)の制定により、議会図書館、アレクサンダー・ターンブル図書館と政府の国立図書館サービスを統合してNLNZが設立され納本図書館となりました。1985年に議会図書館が分離しましたが、納本図書館の機能は受け継がれませんでした。

ニュージーランド議会図書館では55名のスタッフが年間約1万件の調査依頼への回答を行っています。かつては約60万点の蔵書を抱えていたそうですが、現在はインターネット上の政府刊行物等から事実情報、基本的情報を入手し、電子ジャーナル(EBSCO、ProQuest等)で学術的情報を入手して裏付けを行い、必要最低限の18万点の所蔵資料で不足分を補完する調査体制を取っているとのことです。

ニュージーランドでは、1993年の選挙制度改革によって小選挙区制から小選挙区比例代表併用制への転換がありました。これによって、以前より移民を含む人種的マイノリティ等のコミュニティを代表する小政党が議席を獲得できるようになり、議会図書館にも幅広い内容の依頼が寄せられるようになったそうです。


ニュージーランド議会図書館 閲覧スペース

4.おわりに

今回ニュージーランドに滞在したのは4日間という短い期間でしたが、運営主体やサービス対象が異なる3つの図書館の訪問を通じて、資料保存の取組みや議会へのサービス等の自館と共通する部分について親近感を覚えると同時に、異なる部分に目を向けることでそれが根差す社会的・文化的背景についても知ることができました。

いずれの館でも移民を念頭に置いたサービスが行われていましたが、ニュージーランドでは、過去30年間で移民の数が1.5倍にも増えたそうで、3館ともそれぞれに社会の変化に伴うニーズの変化を的確にくみ取ってサービスに反映しているのだとわかりました。

最後に、忙しい合間を縫って見学案内に対応してくださったNLNZ、ウェリントン市立中央図書館及びニュージーランド議会図書館の皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。


ウェリントンの街並み

(よこた しほこ)

  1. 通称CDNLAO (Conference of Directors of National Libraries in Asia and Oceania)会議。アジア・オセアニア地域の図書館の情報共有、相互協力を目指し、今年はニュージーランド国立図書館が主催で第24回会議が開催されました。
  2. New Zealand Legislation “National Library of New Zealand (Te Puna Mātauranga o Aotearoa) Act 2003”(平成28年5月26日閲覧)
  3. 特別なコレクションに関してはKatherine Mansfield Reading RoomかCharles Heaphy Reading Roomの2つの特別閲覧室での閲覧となる場合があります。
  4. 和紙、大活躍!!図書館資料を和紙でなおす」『国立国会図書館月報』, 国立国会図書館,(654),2015.10,p.9-14
  5. Wellington City Libraries Te matapihi ki te ao nui “Migrant Communities Library Guide”(平成28年5月26日閲覧)

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