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トップ > 刊行物 > びぶろす > 73号(平成28年7月)

びぶろす-Biblos

73号(平成28年7月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412
2. 【特集:公文書を探索する】
公文書館の国際的動向をめぐって

学習院大学文学部教授 保坂裕興

世界各国における公文書館制度は独自な歴史的経験とエートスを背景に持ち、同じものが1つとして存在しないような固有の縄をなってきた。その視線を地方や町村に伸ばせば、さらに独自の幾筋もの縄が見出される。そのため、公文書館の国際動向の紹介は一筋縄ではいかない。以下では、近代アーカイブズ(公文書館)の嚆矢として、3つの事例を紹介するとともに、現代におけるアーカイブズの進化と多様化の例として、3つの事例に触れる。


1.近代アーカイブズ(公文書館)の嚆矢

(1)アメリカ

イギリスの植民地であった時代を背景に持つアメリカ東部13州は、1776年「アメリカ独立宣言」1の中で、イギリス国王が各地の立法機関を不便で公文書保管所から離れた場所に設けたため、その煩労により国王の暴政に従うほかないことを苦情の一つに数え上げていた。この独立宣言起草にも加わったジョン・アダムズやベンジャミン・フランクリンらがいたマサチューセッツ州は、1780年に制定する州の憲法2の中にこの苦い経験に基づいた自らの公文書論を刻み込む。立法過程における異議申立は文書によって行い、議会の採決で法案や決議を決した際には議員の名前を州の公文書に記録することとし(第1章第1節第2条)、州の記録は国務長官が事務所において保存し、自らの行動を説明できるようにするとともに、記録が必要とされる上院・下院等各種会議に出席しなければならないとした(第2章第4節第2条)。アメリカは新しい国、州政府をスタートさせるに際し、その苦い経験のゆえに、公文書の保存・活用を政府運営方法の中核に位置付けていたのである。


(2)スウェーデン

スウェーデンは、1766年、「著述と出版の自由に関する国王勅令」、いわゆる出版自由法を憲法の一部分として成立させ、全ての国民はあらゆることに関し自らの考えを制約されることなく述べる自由を持ち、それは著述や出版にも適用されると規定した(第5章)。その上で、議会、行政府、司法府、王立委員会等の公的機関のあらゆる公文書は印刷が許可されるとし、次のように述べる(第10章)。

それを行うためには、全てのアーカイブズに対して自由にアクセスすることが許されるべきである。つまり、それを持つ場所で当該文書を写したり、認証された写しを取得したりすることができる3

当時、王権を制限し「議会の時代」に突入したスウェーデンでは、与党が日々盛んになる新聞報道や出版活動に検閲制度を敷き、多くの著作、新聞等を発行不許可としてきた。しかし二大政党が競う中で逆に言論・出版の自由を積極的に論じるようになる。その中心議員ノルデンクランツの主張は、議会を適切に運営するためには、公文書等を印刷配布することによって、議事の内容や動機についても知識を共有すべきというものであった。これが基軸となり、より民主的で有効な議会制度が追求される中で、<表現の自由>とともに、その重要な情報源たる<公文書閲覧制度>が産み落とされたのであった4。スウェーデンや当時同国に併合されていたフィンランドの公文書館にとっては、<表現の自由>とそれに寄与する情報公開、すなわち当時の<公文書閲覧制度>こそが、活動の精神的支柱となってきた5


(3)フランス

一方フランスでは、革命末期、1794年法令により世界で最初の中央統制型国家アーカイブズ体制を出現させた。国家中央アーカイブズは、封建時代の土地所有権証書等を破棄する一方、議会文書、選挙結果、国印・貨幣・標準器、公的財産・借金証書、外交文書、人口統計、土地登記証等を所蔵することとなった。そして同法令第37条は、やはり世界で最初とされる<市民の公文書閲覧権>を次のように規定する。

すべての市民は、定められた日時に、全ての文書保管所において、所蔵する資料の閲覧を請求することができる。この閲覧は、無料で、かつ内容を変えることなく、ただし適切な監視による予防措置のもとで許可される6

ではなぜ、このような体制と権利が打ち立てられたのか。近年の研究では革命政府がこれらを政治支配の道具として利用したことを指摘するものがあり7、一面の真実を捉えるが、世界のアーカイブズ・コミュニティは、フランス革命におけるより本質的で構造的な意義を認めてきた。8 9

というのは、1789年8月、革命のさなかに採択された「人間と市民の権利宣言」は、国民主権を明記しただけではなく、市民が法律の制定や租税の設定等に直接参加する権利等を持つとした。アーカイブズ体制と<市民の公文書閲覧権>は、少なくとも構造上、主権者である国民が公文書を閲覧して、法律の制定や租税の設定等に参加する民主的回路を開くものであったのである。これに影響を受けたヨーロッパ各国は、1850年頃までに中央統制型国家アーカイブズ体制と<市民の公文書閲覧権>を取り入れつつ、独自な発展を遂げていくのであった10


上記では18世紀後半に起源を持つわずかな事例に触れたのみだが、それでも近代アーカイブズは政府の運営方法、統治方法、情報公開・共有の方法、政府活動への市民参加の方法として位置付けられることがあったことがわかる。これらの特徴はその後の年月を経る中で、多種多様に練り上げられ、新しい要素が加えられ、研ぎ澄まされてきた。世界の公文書館活動の中でどんなことが今の時代を切り拓いているのか、3つの例を挙げたい。


2.現代における進化と多様化

(1)イギリスのアーカイブズ

第1に、長期にわたり継続的かつ斬新な改革を推進してきたイギリスの公文書館を紹介し、それが何をもたらしたのかを見る。同国政府が記録委員会を設置したのは1800年であり、当時はロンドン塔やウェストミンスター寺院ほか数カ所に公文書等が散在していたが、1838年の公記録館法とともにその本格的な管理が始まり、1856年にはロンドンのチャンスリーレーンに本拠地となる公記録館(Public Record Office: PRO)を開館した。以後、1877年と1898年の法改正では公記録の廃棄ルール等が定められ、第二次世界大戦後、1954年のグリッグ・レポート「行政機関の記録に関する委員会報告書」を受けた1958年の公記録法では、行政機関への記録管理官(Departmental Record Officer: DRO)配置、作成から5年後と25年後の二段階による記録評価選別法、PROによるその監督・指導、50年原則による公開等が定められた。1967年の同法改正では30年原則が、そして2010年の法改正で20年原則が定められ、2013年からは20年原則の実現に着手している11。1997年にはロンドン郊外のキューに全面移転し、2003年には王立歴史手稿資料委員会(Royal Commission on Historical Manuscripts)ほかと合併し、The National Archives(TNA)へと名称変更を行うなど、種々の改革を行ってきたのであった。12

これらの成果はいかほどか、アーカイブズ資料の利用状況により見てみたい。年次報告書13によれば、TNAへの来館利用件数が年間約65万件、オンラインによる利用が年間約2億件で、過去4年で前者は12%、後者は55%の増加率を示している。65万件という数字は、1人で1日に10件を閲覧する利用者が、仮に365日開館として、1日に178人来館する勘定となる。オンラインの利用件数は、同様に計算すれば1日に54,794人が利用していることになる。14

職員数の推移を見ると、1838年に38名でスタートし、1878年には100名の大台に乗る。第二次世界大戦後には記録の急激な増加と利用要求の増大に伴い、顕著な増加傾向を示し、1979年には436名に至る。その後約20年は増減を繰り返すが、上述の合併・名称変更の後、2005年には548名に達し、2015年現在、614名を擁する。

以上から、このようなアーカイブズ利用の文化は一日にして成ったものではないことがわかるだろう。こうしてみると、イギリスのアーカイブズ制度は、随分昔から、あるいは遅くとも第二次世界大戦後からは<知識情報社会>を先駆けて拓くように、知的資源の整備・公開に努めてきた様子がうかがえる。イギリスのみならず、欧米の主要国が、日本と同じ人口規模を持つとすれば、いずれも1千名を超える公文書館職員を擁し15、かつ多種多様にして多数の利用者がいる実態は、その契機やエートスに違いはあっても、長期にわたる公文書館制度改革の産物であると見るべきだろう。


(2)カリフォルニア州アーカイブズ

第2に取り上げるカリフォルニア州アーカイブズ(California State Archives: CSA)は、一方で州全域を対象とするアーカイブズ資料等の統合データベースOnline Archive of California(OAC)に目録情報等を提供する関係を持ちつつ、他方で州政府の記録管理の透明性を高めることに独自な工夫を凝らした事例である。CSAは2種類のオンライン・データベースを独自に稼働させている。1つはMINERVAであり、収蔵資料の基本目録兼リッチコンテンツ提供ツールである。OACから提供される情報との違いは、州政府当局から移管されたばかりの歴史公文書等について、タイトルの横に「受け入れました(accessioned)」と記して速やかに基本情報を登載することである。もう1つは、2012年に運用が開始された州政府現用記録の保持スケジュール・データベースATHENAである。すなわち、ある現用記録のシリーズやファイルが何年までどの部局で保管され、何年に移管/廃棄されるのかを確定した個票をPDFファイルで見ることができるのである。これら両者がワンセットで運用されることにより、アーカイブズ/記録管理の透明性を高め、オープンガバメントを促進していることが注目される。また、OACを通して公文書館、図書館、博物館等の記録資料等にアクセスした利用者がMINERVA、そしてATHENAへと遡れば、州政府の関連する政策・方針や補助金行政等に関連するアーカイブズ/記録にまでアプローチできるのであり、文化・学術から政治・行政までの一つながりの回路が開かれたこととなる。これらデータベース群は、21世紀における情報資源管理の新しい可能性や創造性を示すのではないか。


(3)ニュージーランド国家アーカイブズ

第3に紹介するのは、ニュージーランド国家アーカイブズ(Archives New Zealand: ANZ)が運営するThe Community Archive(TCA)である。公文書館が当該管轄域におけるアーカイブズ資料の所在を把握し、その保存・利用に一定の協力をすることはしばしば行われてきたことで、ANZも1979年以来、アーキビスト協会や国立図書館と協力して、国家アーカイブズ・手稿資料登録簿(NRAM)を運用してきた。TCAはその事業を受け継ぐものだが、対象を個人、学校、企業、自治体を含む全てのコミュニティに拡大し、基本目録情報と可能な場合にはデジタル・コンテンツを登録してもらうデジタル・アーカイブ・システムとして2009年に再出発したものである。現在、369の提供者(団体)があり、サイト上ではこれをめぐる意見・情報交換が盛んに行われている。

一見したところ、対象範囲やサービスのあり方の点で先のOACに類似しているが、ANZが対象をあらゆるコミュニティに拡大した背景には、先住者マオリの人々及びその遺産を保護し、そのために関連コミュニティ・アーカイブズの保存支援を行うという課題と責任が存在した16。この意味でTCAは、国家・社会による人間の尊厳の回復と多様性の尊重のための一方策として現出したと言えよう。


おわりに

わずか3つの事例によるものであるが、アーカイブズが、知識情報社会を成熟させるように、記録情報管理の透明性を高めデジタル情報社会の新しい可能性を開くように、そして国家・社会の困難な課題に応えるように発展してきた姿をみた。

2009年、日本で成立した「公文書等の管理に関する法律」は、国及び独立行政法人等の公文書等は健全な民主主義の根幹を支える知的資源であり、国民が利用できるものと位置付けた上で、行政が適正かつ効率的に運用されるようにし、現在及び将来の国民への説明責任が全うされるようにする、とした。

しかし残念ながら現在のところ、日本に住む人々の多くは、この法律の趣旨が実現されるということがどのようなことなのかを知らない一方、国等の説明責任/情報公開について及第点を付けることにためらいを覚えるのではないか。

先に挙げた現代の3事例では、人口比やGDP比を考慮すると日本より小さな公的組織(国・地域)でありながら、公文書等管理のための制度やシステムの改善・充実に精力的に取り組んできた。その理由は、長期にわたり改ざんされることなく体系的に保存された<確かな証拠>としてのアーカイブズ(特定された重要な公文書等)に依拠しなければ解決できないような困難な課題があり、またアーカイブズに拠らなければ実現できないような希望と未来があるからである。そのような困難な課題と、課題を克服しようとする将来への期待は日本においても憲法論議、国際協議、TPP協議、東日本大震災からの復興、人口減少問題等、枚挙にいとまがないであろう。このような取り組みに公文書等管理、公文書館活動が組み込まれていくとき、日本の、地域の、特定領域の固有な縄がなわれ、掛け替えのないアーカイブズが人々の前に姿を現すのではないか。

(ほさか ひろおき)

  1. Declaration of Independence, July 4, 1776
  2. Constitution of Massachusetts, 1780
  3. Hogg,Peter. (trans.) "His Majesty’s Gracious Ordinance Relating to Freedom of Writing and of the Press(1766)”. The World's First Freedom of Information Act. Anders Chydenius Foundation, 2006. pp.8-17.
  4. 柳沢伸司「スウェーデン『一七六六年出版自由法』成立過程」『新聞学評論』37,1988,pp.131-141.[当館請求記号Z21-85](編集注:以下、請求記号は国立国会図書館の請求記号)
  5. Justrell,Börje. What is This Thing We Call Archival Science?, The National Archives of Sweden, 1999.
  6. Loi du 7 messidor an II (25 juin 1794), Bulletin des lois 12, N°58
  7. Pomian, Krzysztof. «Les Archives». Les Lieux de mémoire. tome.3 Les France. vol.3 De l'archive à l'emblème. Gallimard, 1992. pp.162-233.
  8. Wagner, Alfred. The Policy of access to archives: from restriction to liberalization, Unesco Bulletin for Libraries, vol. 24 no. 2, (1970.3-4),pp.73-76.[請求記号:Z55-A151]
  9. Panitch,Judith M. Liberty, Equality, Posterity?: Some Archival Lessons from the Case of the French Revolution, American Archivist, Vol. 59 no.1(Winter 1996),pp.30-47.[請求記号:Z55-C99]
  10. 注5に同じ。
  11. Cantwell,John D. The Public Record Office 1838-1958, HMSO, 1991.
  12. History of the Public Records Acts, The National Archives
  13. Annual Report and Accounts of The National Archives 2014-15, 2015.7, The National Archives.
  14. 同前、また注11のThe Public Record Office 1838-1958による。
  15. 「資料1 平成27年度公文書管理の在り方に関する調査」、内閣府公文書管理委員会、2016年6月
  16. Annual Report 2008/09, Archives New Zealand

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