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トップ > 刊行物 > びぶろす > 72号(平成28年4月)

びぶろす-Biblos

72号(平成28年4月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412
7. 【平成27年度国立国会図書館長と行政・司法各部門支部図書館長との懇談会】
「図書館の保存環境整備に関する基礎知識」~佐野千絵氏特別講演要旨~

国立国会図書館総務部支部図書館・協力課

1 はじめに

平成27年12月7日、国立国会図書館(東京本館)(以下、「当館」という。)において、標記懇談会が実施された。大滝国立国会図書館長の挨拶の後、当館から1件、支部図書館から2件の報告を行い、休憩を挟んで特別講演、その後質疑応答を行った。

当館からは、田中電子情報部長から、デジタル化の現況、今年度実施している災害対応力強化に資する分野の資料のデジタル化事業、デジタル情報の長期保存や更なる利活用の取組などが報告された。

支部文部科学省図書館からは、柳図書館長から、図書館の概要と最近の主な取組みとして書庫資料のカビ除去作業1、文部科学省リポジトリ2について報告がされた。

支部気象庁図書館からは、大林図書館長から、図書館の概要と資料電子化及び広報活動等の取組について報告がされた。

独立行政法人国立文化財機構保存修復科学センター副センター長から、「図書館の保存環境整備に関する基礎知識」と題した講演が行われた。

以下にその要旨と質疑応答を紹介する。


2 特別講演要旨

1)図書館資料の特徴

図書館資料の保存は、文化財と比較して①材料・種類・サイズが多様で一括りの対応が難しい、②専門家の助力を得ることが難しい、③活用方法も期待される保存年限も多岐にわたることから、総体での管理が必要である。そこで、「保存環境つくり」3の考え方に基づき、できるだけ傷まないように保存していく。

図書館資料を取り扱う上での基本方針としては、資料の多様性を念頭において、材料や製造技術を知り、各館が分量・人手・スペース等の状況に応じて、移し替え・デジタル化・写真撮影等のもっとも効率的な対策を選択する。その際、どれだけ傷みが激しくなっていても、原本(オリジナル)は、内容情報のほか、材質、印刷技術や製本技術といった原情報が100%詰まっているため、原則として永年保存の対象とする。あわせて、資料の取扱いルールを定め、資料リストに劣化状況調書を蓄積することが望ましい。

どの資料をどれだけの費用・スペース・人手をかけて保存する価値があるかを判断する主体は人間であることから、人間が利用可能な状態、つまり、空気(酸素・水・二酸化炭素)があり、居住環境の温度帯での保存環境設計が重要である。その中で保存の必要性の高いものに積極的に投資して、保存していく。

2)立地と保存環境つくり

保存環境設計において最も重要な点は、立地条件と周辺環境である。立地条件・周辺環境に合わせた設備・建物を用意し、その上で、管理体制・経済状況等のコストを計算して人手をかけるのか、機械を設置するのか等を判断していく必要がある。

被害は様々な要因で発生するが、「各要因の被害の大きさ×事象の発生確率=危険度」と考え、最も危険度が高い地震、水害等から守る手立てを講じると良い。

資料に悪影響を与えるもの(熱・光・大気汚染・害虫)は外部から波及するため、長期保存のための空間は設備の中の方に作る、ゾーニングの考え方が重要である。区画(危険地帯・緩衝地帯・管理区画)を分けて防衛し、収蔵区画は外周より内部になるようにする。

3)フィルムの保存

材質に応じて、TACベースとPETベースとで保存条件が異なる4ため、購入年月によりいずれの材質かを判断し、対応が必要な物量を把握して、棚のみ・部屋ごと・建物全体等、適切な規模で管理することで保存にかかるコストを下げる。例えば、中性紙箱の中に市販の調湿剤を入れて済むのであれば、棚の規模で管理する。TACベースの劣化(加水分解によるビネガーシンドローム)は温度に依存するため、相対湿度17~40%RHを基準として、少しでも低温・低湿・清浄な空間に収蔵する。

4)資料保存の基本

【温度湿度の制御と管理】

温湿度管理は、資料管理の基本である。

温度湿度測定器(データロガー)は部屋に一つは揃えていただきたい。データロガーを用いて計測を行い、温湿度は必ず管理する。機器の設置に際しては、高さは床から70~120cmの高さを目安として風の当たらない場所を選ぶ。制御にあたっては、湿度を優先的に制御し、急激な温湿度変化は避ける。例えば、送風機で湿気だまりを解消し、また、隣接区画との温度ムラを作らないようにして結露を避ける。なお、湿度の絶対値は63%RH以下、40%RH以上とし、季節変化に伴って環境条件の設定値を変化させると効率的である(変温恒湿制御)。

【照明の制御と管理】

光線については質と量を考える5。不可視光線(紫外線・赤外線)を除去し、可視光線は照度を制御する。照明については、水俣条約による水銀添加製品の規制や政府の省エネルギー基準の統一方針により大きな転換期にある。特に2017年までに、事実上、蛍光灯の重要部品(ランプハウス)の製造が終了しLEDへの交換が促進されるため、あらかじめ予算措置を講じておく必要がある。部屋ごと替えていくことになるので、交換の優先順位等を検討しておく。

【空気汚染の制御と管理】

人間が深呼吸でき、心地よく1時間程度作業できる状態を保つ。塵埃堆積の抑止や、化学物質による変質の防止にあたり、保管方法の工夫や汚染物質発生源の特定による対策が有効である。相対湿度を50%以下に抑えれば、(資料の)変質は発生しない。粉塵に対しては、外気の遮断が最も有効である。空気清浄器は目の細かいフィルターでろ過するタイプを選ぶ。繰り返しの清掃が有効で、壁・天井も10年に1度は掃除するとよい。

【生物被害の防止-特にカビ対策について】

IPM(総合的有害生物(害虫)管理)6の考え方に基づき、「害虫を入れない、持ち込まない」を基本に、水分・温度・光・栄養分等(特に水分)をコントロールする。定期的に施設・展示ケースの清掃や資料点検を行い、清浄な空気環境の維持や、温湿度モニタリングによる管理を行う。

【まとめ】

持続可能な環境管理として、資料と人にやさしい環境を作る必要がある。図書館資料の保存年限についても検討すると良い。「手をかけ、目をかけ」資料を大事に思う心が資料をまもる。

3 質疑応答

講演の後、参加者と講演者との間で活発な質疑が行われた。以下に、主な内容について紹介する。(Q.:参加者、A.:特別講演者)

Q.当館の建物は非常に古い建物で、湿度の問題はない。念のため今年の4月から計測を行っているが、現況は温度・湿度ともに問題なしである。その一方で、書庫内の塵埃の問題があり、埃に関しては図書館員が自力で取り除くことが難しいため、3~4年に一度、予算が獲得できた時に外部に委託して除去作業を行っている。(作業の周期等の)基準があれば、ご教示いただきたい。

A.相対湿度が65%の空間においても、約10年間はカビが生えないということが実験結果として判明している。繰り返しの清掃は確かに有効だが、10年に一度、壁・天井を含めた除塵清掃(専門家による吸引清掃)をしているところは、(長期に渡り)カビの被害はほとんど出ていない。全体が10年に一度全てきれいになるという状態が作れるよう、計画を立てれば良い。

Q.床から30cm以内には資料を置かないようにという話があったが、当館の書架の最下段は床から10cmほどの高さである。書架の配置については、間隔を空けて壁面から離すように配列しており、湿気がたまりにくいようにしているが、それでも床から30cm以内には資料を配置してはいけないのか。

A.床から70~120cmくらいの高さで湿度を計った場合に60%であれば、床付近で計ると65%くらいになる。概ねどこの建物でも、床近くの湿気だまりの中で計ると湿度は高くなる。実測するのが一番確実で、最下段付近の湿度が63%を超えているようであれば、配置換えをした方が良い。カビが一度発生すると対処にはとても手がかかる。カビが生えないというところを一つの目安とし、最下段の湿度計測により対応を検討すると良い。


(しぶとしょかん・きょうりょくか)

  1. 松家久美「利用のための資料保存~カビ除去作業の外注について~」『びぶろす』66号(平成26年10月【特集:大切な資料を守れ!-資料保存】)参照。
  2. 電子的にデータを集積・保存・提供するデータベースシステム。所蔵する文部科学省(旧文部省、旧科学技術庁を含む)発行物をデジタル化いて保存・公開するシステム。
  3. Preventive Conservation 予防的保存、予防保守ともいう。1990年代から欧米を中心に始まった考え方。資料が傷む前に保存環境を整えて、資料が傷まないようにしようというもので、修理の経費等がかからず、相対的にコストを抑えられるという意味で有益である。
  4. 1950年代に登場したTAC(三酢酸セルロース:トリアセチルセルロース)ベースのフィルムは21℃以下、1993年頃に切り替わったPET(ポリエチレンテレフタレート)ベースのフィルムは26℃以下での保存が望ましい。
  5. 量は総量で考える。例えば、100 ルクス(ルクス=光測単位)の光を5時間あてることと500ルクスの光を1時間あてることは同じ。
  6. Integrated Pest Management 農林水産の分野で生まれた考え方で、適切な手段を総合的に組み合わせて、被害が出ない範囲で有害生物の個体数を管理する予防中心の手法。文化財保護に応用されるようになった。詳細については、三浦定俊「図書館でのIPM(総合的有害生物管理)について」『びぶろす』前掲参照。

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