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トップ > 刊行物 > びぶろす > 72号(平成28年4月)

びぶろす-Biblos

72号(平成28年4月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412
4. 【特集:図書館のお引っ越し】
東京商工会議所広報経済資料センターの果たす役割 ~類縁機関の活用と今後の動き~

東京商工会議所広報部経済資料センター 渡邊 浩江

Ⅰ.設立と3度の休館について

東京商工会議所広報経済資料センター(以下「当センター」といいます。)はかつて「商業図書館」と呼ばれていました。「商業図書館」という記載が初めて登場しましたのは、1901(明治34)年11月7日付けの渋沢栄一・東京商工会議所初代会頭が農商務大臣に宛てた東京商業会議所条例改正建議文中です1。渋沢栄一は商工業者に正確でタイムリーな知識を提供する手段として、企業活動の専門性に特化した資料や社史など、一般には入手困難な関連資料を蔵書構成とした専門図書館設立を考えていたのかもしれません。

しかし、設立までの道のりは平たんではなく関東大震災のために計画が遅れたこともあり、25年後の1926(大正15)年4月に当センターの前身である「商工図書館」が設立されました2

その後、商工図書館は3度の休館をしました。1回目は1945(昭和20)年、戦災により蔵書の一部を焼失し閲覧室を閉鎖、2回目は1958(昭和33)年、通称「赤レンガビル」を取り壊し「昭和期ビル」建設のために休館、そして3回目の今回(2014年~)のビル建替えのための休館です。現在、仮事務所を近くに設け事務や開館のための準備をしています。

蔵書の一時保管場所は、1回目は不明、2回目は京橋および深川の両区立図書館に保管3。今回(3回目)は専用倉庫と契約し全図書を保管しています。

Ⅱ.書籍の検診センターへ

休館中とはいえ、今回、図書館としての活動を全く行っていないわけではありません。既に「休館」と告知していますので、問合せに対しても「休館中で対応できません」とお断りすることは容易いです。

しかし、レファレンスであれば、正確な知識を求める利用者のニーズに応えることができるので、求める資料を所蔵していそうな他館を案内するなど、できる限り対応しています。幸いなことに東京都千代田区周辺は図書館が点在しているので、どの図書館を利用するかを利用者自身の意思で選択できるように複数の図書館をご案内しています。この“選択を利用者に委ねる”ことがとても大切だと感じています。そして最後のよりどころは国立国会図書館です。

その一環としてHPには経験上当センターの資料者の求める資料を所蔵していることの多い図書館をリストアップして紹介するなどもさせていただいています。

現在、資料閲覧が物理的に無理な状況のため、少しでも有効な情報を複数提案し、利用者に寄り添うことを主眼に業務を行っています。

レファレンス業務は、医師が患者に問診する行為と似ているところがあります。「どこがどう痛いか」、「何時から痛いか」→書籍名・著者名・出版年等確認、「いままでにどんな病気をしたことがあるか」→ご自身で調べられた資料の確認、「ご家族はどんな病気を経験しているか」→具体的にそれを知って何をしたいか(社史をつくるため等、目的を差支えない程度に伺う)、等のように、図書館は適切な案内をするために、利用者に判断の参考となる事項を尋ねます。

そういう意味で当センターは、様々な医療機関(総合病院・専門病院・診療所など)がある中で、「(書籍の)検診センター」といえるでしょうか。受診者を問診し、専門医を紹介するという心積りでご案内しています。

そして、紹介状をもって診察に行く医療機関を選択するのは本人であるように、紹介した複数の図書館からどの図書館を選択するかは利用者です。ただ、その判断ができるだけ的確にできるよう、探している情報の裏付け資料として複数の文献を案内するように努めています。

なお、休館中でもレファレンスを行っていく中、書誌の取り方にも工夫を加えました。レファレンスの際、推測される単語をあらかじめ書誌に入力しています。例えば「東商新聞4の場合、記事の見出し、写真の説明文等を入力します。こういう情報は、休館に伴いサービスの重点をレファレンスに置いて検索する人の立場に立つ必要性が増したことから、通常の書誌入力プラスαとして付加しています。

その際、蓄積しているレファレンス結果一覧より複数回出現する単語や文献に写真はないか(その文献当時の)という、従来にはあまり問合せの無かった「画像情報」等を追加して書誌入力します。

書籍の内容を把握していない新人でも直接書籍を確認することなくレファレンスに対応できるように、特にベテラン職員の暗黙知を文字化することにより、利用者が当センターOPACを検索する際、ダイレクトに目指す文献にヒットする仕組みが大切です。

近年、正しい知識を得る方法が多彩になっており、特に内容によってはネット公開されている情報も多くなりました。

その例として、遠方の大学関係者から東京商工会議所の昭和2年度事業報告書が見たいという要望に対して、国立国会図書館デジタルコレクション5で公開されているのをご案内し「このような利用方法があるとは知らなかった」というメールを頂戴しました。

また、未上場企業の過去の企業概要を知りたいという要望にはインターネットアーカイブ(Internet Archive)で、現在の企業HPアドレスを入力し、過去の特定日を指定して検索により会社概要を入手できる方法をご案内しました。

Ⅲ.アメリカの現状から

今回の閉館中、新たな視点から業務を展開したことを契機に、再開後の当センターの運営についても、今後の戦略を含めて検討していくこととなりました。そこで、その参考にするため、2015年6月23日~29日まで「ALA6・米国図書館研修2015」に参加しました。視察先は公共図書館(2館)、大学図書館(3校)、企業内図書館(1社)でした。その中で特に印象に残った企業内図書館について述べていきます。

視察をした企業図書館の蔵書はこの研修で視察したスタンフォード大学の「Terman engineering Library7より少ない印象を受けました。そして館内には資料とともに工作室があり、多様な発想を構築できる場所を提供していました。


3Dプリンタ等があり工作もできる

また、社員向け電子掲示板で、役員がスピーチで引用した書籍を紹介するコンテンツもありました。企業のトップが聴衆の心に入り込むツールとして書籍を積極活用していることが窺われます。

企業内図書館で司書の方に紙媒体について伺ったところ、「表出の方法が進化していき、例えば文字が腕や眼鏡に浮かぶようになり、文字にアクセスする方法は変化していくだろう。」という、提供媒体の変化についての示唆に富んだ回答でした。

アメリカで視察した図書館の印象は、書籍を閲覧する人よりPCで情報収集している人が圧倒的に多く、状況の変化を感じました。

Ⅳ.伝統と革新

書籍はどこで利用しても同じです。ではなぜ当センターに来るのか?理由は訊いてみないとわかりませんが、時間調整の場所として、気になる雑誌や新聞の閲覧、ネットで探せなかった資料を求めて等、当センターへの来館の目的は、従来の知識取得に収まらず、その範疇を拡大していると考えられます。

当センターについては1926(大正15)年に商工図書館として開設し、1995(平成7)年に「東京商工会議所経済資料センター」と名称変更した経緯を踏まえつつ、情報発信場所としての積極的な役割が求められていると思います。

今後については現在検討中のため、ご紹介することが出来ません。ひとつだけ申し上げますとお客様が満足していただけるサービスを発信すること。伝統として後世に書籍を継承する業務とともに、革新として22世紀を見据えた知的ツール展開を目指して進化していくことができればと考えております。

(わたなべ ひろえ)

  1. 「官庁往復書類 乙号」261コマ目(明治31~35年)東京商業会議所編【製本冊子】『全国商工会議所関係資料 東京商工会議所(経済資料センター)所蔵 第1期』東京商工会議所,2010,[国立国会図書館請求記号:YH251-J329]
  2. 「東京商工会議所商工図書館あんない-1963-」(1963)東京商工会議所編
  3. 「東京商工会議所創立80周年新築落成記念式典関係書類1」(昭和35年1月5日)建築委員会経過報告【製本冊子】
  4. 東京商工会議所の機関誌で月2回発行。同会議所の活動報告のほか、経営者インタビューや経済解説、東商事業ガイドなども掲載しており、経営情報紙として活用されている。
  5. 公開範囲が「インターネット公開(保護期間満了)」となっている資料については、インターネット環境が整っていれば、自宅での閲覧だけでなく打ち出しも可能。(編集補記)。
  6. American Library Association, アメリカ合衆国に本拠をおき、図書館と図書館教育を国際的に振興する団体。構成員は64,600名を数え、世界最古にして最大の図書館協会である。
  7. 2010年8月開館。図書を開架スペースからなくし、利用者用端末を設置して電子リソースを利用できる取り組みをしている。紙の本がない図書館として日本でも話題になった。

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