• 利用案内
  • サービス概要
  • 東京本館
  • 関西館
  • 国際子ども図書館
  • アクセス
  • 複写サービス
  • 登録利用者制度
  • オンラインサービス
  • オンラインサービス一覧
  • 国会関連情報
  • 蔵書検索
  • 電子図書館
  • 調べ方案内
  • 電子展示会

トップ > 刊行物 > びぶろす > 74号(平成28年10月)

びぶろす-Biblos

74号(平成28年10月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412
2. 【特集:専門職への利用ガイダンス】
専門職業人の情報収集を支援するガイダンス

中央大学入学センター入試課 梅澤貴典

1.はじめに

専門職業人1には、玉石混交のWeb情報に頼ることなく「発信元と責任の所在を辿れる情報源を豊富に持ち、必要に応じて的確に選択して引き出せる能力(情報リテラシー)」が求められる。

これまで専門図書館が提供してきた資料には、いわゆる灰色文献など一般には手に入らないものも多く、また図書館が有償契約しているために利用できるデータベース(以下「DB」という。)もあるが、これらが「図書館があるからこそ特権的に手に入る情報」であることについては、必ずしも認識されていない。「どんな情報でもWebから無料で手に入る」との誤解が、利用者のみならず予算と人的資源の配分に権限を持つ親機関の長にも及んでいる場合、図書館の存在意義が過小評価され、存続の危機に晒される恐れもある。

本稿では、専門図書館が持っている「資料・情報」と「職員の支援力」の有用性が利用者に正しく認識されておらず、それゆえに運営者からも存在意義が過小評価されている問題に着目し、解決策を考察する。そこで、価値を利用者に直接伝えられるガイダンスを例に挙げて、情報収集スキル習得の効果を上げることによって、「有用性の認知度拡大」さらには「評価の向上」を目指す。

ビジネス分野向け講習のアンケートを例に、専門職業人にとって「資料・情報に関わる知識・スキル」(以下「図書館スキル」という。)の伝授がいかに高く評価されるか、さらに図書館スキルを土台として「支援対象が専門とする知識」(以下「主題知識」という。)に関する分野のDB利用法を組み合わせてガイダンスを行うことにより、いずれの分野にも応用が可能であることを解説する。

本稿で用いたアンケート(受講者コメントを含む)は、働きながら経営修士学位(MBA)取得を目指す大学院であるビジネススクールの在学生を対象として筆者がおこなった情報収集法講習会(120分間)のものである(受講者数51・有効回答数46)。受講後に「紹介した情報ツールやデータベースについて、どのくらい知っていたか/使っていたか」に加えて「講習が役立つと感じた度合い」を訊ね、さらに自由記述コメントを求めた。開催は入学とほぼ同時(4月最初の土曜日)であったため、受講者は「企業等の最前線で活躍しながらも、まだアカデミックな目的での情報収集の経験はほとんど無い」という、Web時代におけるビジネスパーソンとしては一般的な層であった。ただし職務に問題意識を持ち、その解決策として大学院を選択しているところに、専門図書館の支援対象との共通点(高度な主題知識を持ち、責任ある情報を必要としている等)が多いと考えられる。

2.専門職業人にとっての図書館スキル修得の価値

特に専門図書館や大学図書館では、利用者が特定の専門分野に関する高度な主題知識を持っているために、講習で取り上げるDB等の選択と内容の構成は難しく、「あまりにも基礎的な内容では、プロフェッショナルにとって役に立たない(図書館の利用方法などは、既に深く理解している)のではないか」という心配や、「図書館員の側にも高度な主題知識がなければ、専門分野には立ち入れない(専門分野のDBを取り扱う自信がなく、躊躇してしまう)」という遠慮もあり、その相反する2つの要素の板挟みとなっていたケースも多いのではないだろうか。

そこで「図書館スキル」と「主題知識」を分けて考えてみたい。まず図書館スキルのうち、ごく基礎的なものでさえも、利用者にはあまり認識されていないことがアンケートから分かった2。図書館を利用する上で最も基礎的なツールである、蔵書検索システム(OPAC)について、「よく使う」という回答は全体の僅か1割程度に過ぎず、17.8%が「全く知らなかった」と回答している。「予想していた」3を加えると「OPACを知らなかった」利用者が40%に達しており、自身の問題を解決する情報収集の手段としては図書館そのものを使って来なかったことが伺える。もっとも、大学院入学前の社会人にとっては、所属組織に専門図書館が無い限りは、図書館と言えば市民向けの公共図書館が想定されるため(実際には公共図書館でもビジネス支援をおこなっているケースも多いが、あまり認識されていない)、Webである程度の情報収集ができてしまう現代において、これは無理からぬことであろう。

さらに「OPACの著者名・件名・分類リンクによる芋づる式検索」について同じように尋ねてみると、「よく使う」という回答は7%に落ち、6割近くがこのような応用的検索手段を知らなかったことが分かる。Amazonなどを使い慣れていれば、「著者名をクリックすれば同じ人物が書いた他の本が見られる」程度の予想はしやすいが、図書館のOPACでは個々の本がどのようなテーマについて書かれているかに応じて付与された「件名」を用いて、本のタイトルや目次に含まれていないキーワードでも検索ができる点については、ほとんど知られていなかった。さらに日本十進分類法(NDC)によって分野別の番号が細かく振られ、そのリンクからも同じテーマの本を探せる点を紹介すると、自由記述欄には「これまで、単にキーワード検索の結果から参考になりそうな本を見つけて本棚に取りに行っていただけで、一つの本から類書へ幅を広げる発想は無かった」という主旨のコメントが多く見られた。蔵書データ作成の際におこなって来た膨大な「知識の紐付け」作業の蓄積には、やはり図書館ならではの価値があり、また、この点を意識していない利用者へのアピールが必要なことが分かる。

図書館がどのように資料を分類しているかについても、一般には理解されていない。NDCについて尋ねてみると、「よく使う」・「たまに使う」は0%(情報探しのために「使う」ものという認識ではないことが推測される)、「知っていた」35.7%、「予想していた」19.0%、「全く知らなかった」45.2%という回答であった。スクリーンにNDCの一覧表を示して「この世界の森羅万象を分類した、知識の地図の座標点のようなもの」と紹介し、さらに「北海道から沖縄まで、全国的に同じルールで探せる」ことを説明すると、「こんなに精密に分類されているとは知らなかった」、「今日までこれを知らずに勉強や仕事をして来たのが悔やまれる」などの感想が聞けた。

先行研究調査のために日本語の論文を探す上で最も基本的なDBの一つである「CiNii Articles」についても、「よく使う」との回答は僅か7%であり、「たまに使う」の9.3%を足しても利用率は2割に満たない。「全く知らなかった」が4割に近く、「予想していた」を含めると3分の2がこのDBの存在を認識していなかった。

このように「図書館スキル」は有職社会人の大部分にとっては未知の情報収集ツールであり、後述する「役立つと感じた度合い」からも、基礎的な講習が有益であることが分かった。

3.主題知識分野のガイダンス設計

ここで紹介した講習会はビジネス分野に特化した内容であったが、講師を務めた筆者には企業での勤務経験は無く、ニュースや新聞で一般的に得られる程度の主題知識しか無い。しかし、図書館スキルに加えてビジネス分野の研究テーマに応じた内容を盛り込む必要があった。

そこで、理工学部の図書館でオーダーメイド型講習を設計・実施した経験を応用した。中央大学の理工学部には10の学科に約100の専任教員が持つ研究室があり、それぞれの専門性は全く異なる。まず講習の前半はいずれの分野でも共通となる図書館スキルで構成し(ただしキーワードは最適なものを選んで用いる)、後半はその研究室ならではのニーズに応えられるよう、講習をおこなう前に「1.担当教員の著書・論文」を調査し、「2.現在の研究テーマおよびキーワード」・「3.重視しているジャーナルとDB4」について簡単なインタビュー(メールによる場合も有り)をおこない、取り扱うべき内容を洗い出した。

この手法を用いて、ビジネス系向けには以下のような内容を設計した。


【前半】全分野共通の「図書館スキル」
1)「図書館蔵書検索システム(OPAC)」(件名・分類番号リンク等を含む)
2)「NDC(日本十進分類法)の成り立ち」
3)「WebCatPlus」で本を探す。
4)「CiNii Articles」・「NDL-OPAC」で専門雑誌の記事・論文を探す。
5)「国立国会図書館サーチ」で書籍・記事・論文に加えて政府刊行物や電子資料を探す。
6)「著作権等」(書籍・雑誌・Web上の文献から引用する際のルールと表記法)
7)「国立国会図書館リサーチ・ナビ」で調べ方を調べる。

【後半】ビジネススクール向けDB等
1)「日経BP記事検索サービス
2)「東洋経済デジタルコンテンツ・ライブラリー
3)「ダイヤモンド D-VISION NET
4)「ProQuest」で海外専門誌や「Wall Street Journal」などの雑誌記事を探す。
5)「D1-Law」で現行法規・判例等を探す。
6)「政府統計の統合窓口e-Stat」で政府公開の統計情報を探す。
7)「電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ」で法令等を探す。
8)「地域経済分析システム(RESAS リーサス)」で産業・観光・人口・自治体比較情報を探す。

後半のDBについては、受講者アンケートの利用度・認知度がさらに下がる。例えば、「D1-Law」は一般には有料ながら在学中は使い放題にも関わらず「よく使う」・「たまに使う」が共に0%であった。省庁など公的機関の提供により誰でも無料で使えるオープンデータも研究にとって有用だが、その代表格の一つ「e-Stat」については、半数が「全く知らなかった」という回答であった。講習後、個別に「これまで業務上の企画書やレポートの数値的な裏付けとして、どのような統計情報を用いて来たか」を尋ねてみると、勤務先企業などが独自に費用をかけておこなった調査あるいは新聞・ビジネス誌の記事等に掲載されている既に加工済みのデータを使用している者が多く、このような生の公的オープンデータを自身で分析した経験のある者は少なかった。

後半のDBは、いずれも高度な主題知識が無くとも操作方法さえ習熟できていれば説明が可能であり、受講者側がそれぞれの興味関心に応じて応用的に使いこなしていく。図書館員として主題知識を磨き続けることは不可欠としても、講習ではまず「どのような情報を求めている場合には、どのDBを使うべきか」という知識が最も求められており、その点が満たされれば、高く評価されることを次章で述べる。

4.評価と改善

アンケートの最後に「この講習が研究に役立つか?」と尋ねたところ、「大いに役立つ」が88.9%、「ある程度は役立つ」11.1%、「どちらとも言えない」「あまり役立たない」「役立たない」はいずれも0%であった。回答が高評価に偏っているため有意な差は出にくいが、クロス集計をしてみると、やはり各ツールについて「知らなかった」と答えている受講者ほど「役立つ」と感じている傾向が見られた。また、受講生は20代の若手から60代の役員クラスまで様々であったが、この講習を「役立つ」と感じた度合いについて年齢および経験による差異は見られなかった。つまり、デジタルネイティブに近い新人世代であっても、業務上の経験を積んだ世代であっても、評価に偏りはなかった。

また、講習の難易度について尋ねると「ちょうど良い」が84.4%、「やや難しい」が15.6%と、概ね適正であった。アンケートには必ず自由記述コメント欄を設けて改善につなげているが、「動画として残して欲しい」という指摘が多かったため、在学生専用ポータルサイトに動画データを格納し、いつでも何度でも復習ができるようにした。

アンケートから、「利用者にとっての有用性」の高さを測ることはできた。しかし、そこで終えてしまっては親機関の長による過小評価の問題に対する解決策とはならないため、その結果を示す必要がある。ここで例としたビジネススクールにおける講習の場合は、データを分析して受講者コメントと共に教授会において全ての専任教員に報告した。すると、受講できなかった教員達から再度の開催を求められ、次の回には研究科長を含む未受講の教員も複数来場してガイダンスを直接見せることができ、さらに次年度以降も継続的な実施を求められるようになった。

このようなデータの分析・蓄積は、ガイダンスの内容改善に役立つのは当然のことながら、最終的に親機関の長に存在意義をアピールする上で、専門図書館が持っている「資料・情報」と「職員の支援力」が利用者の研究支援に役立っていることを示す際の客観的な論拠ともなるだろう。

5.まとめ

専門図書館員が主題知識を持つことは、確かに望ましい。既に「ヘルスサイエンス情報専門員」のように認定資格制度を設けて高度化を図っている例もあるが、予算と人的資源は限られており、また支援対象は多岐にわたるため、全ての分野において高度な主題知識を持った人材を備えることは難しい。

本稿では、図書館スキルそのものが専門職業人にとっては「調査研究のカギ」となる未知かつ有用なツールであることを指摘し、その上にニーズに応じたDBを積み上げることによって、必ずしも高度な主題知識が無くとも、また、支援対象の分野に関わらず「役立つ」と評価される講習が設計・実施可能であることを示唆した。その上で、アンケートを取って受講者の認知度・利用度とガイダンスの有用性を測って分析・蓄積することによって、より効果的な内容への改善を目指すこと、さらに、親機関の長にガイダンスの効果をデータで示すことにより、図書館と職員の存在意義の評価改善につなげることを提案した。

「頼られる図書館」を目指したガイダンスに向けて、新たな一歩を踏み込む勇気につながれば幸いである。

(うめざわ たかのり)

(本稿は、筆者が中央大学学事部学事課在籍中に執筆したものである。)

【図1】講習会アンケート(抜粋)
【図1】講習会アンケート(抜粋)
* 質問紙では「こういうツールがあるだろうとは思っていた」という選択肢を設けた。

  1. 本稿では「特定分野の業務遂行に求められる専門的な知識・能力を、教育や職業経験を通じて習得した職業人」と定義する。
  2. 本文末に「【図1】講習会アンケート(抜粋)」として集計結果の一部を掲載する。
  3. 前掲【図1】の注を参照。
  4. 理工系の場合は、「Web of Science」や「SciFinder Scholar」・「Science Direct」・「IEL Online」等を取り扱うことが多かった。

このページの先頭へ