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トップ > 刊行物 > びぶろす > 68号(平成27年4月)

びぶろす-Biblos

68号(平成27年4月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412
5. 【平成26年度国立国会図書館長と行政・司法各部門支部図書館長との懇談会】
「電子書籍・雑誌の現状と図書館に示唆するもの」~植村八潮氏特別講演要旨~

国立国会図書館総務部支部図書館・協力課

1. はじめに

平成26年12月1日、国立国会図書館(東京本館)(以下、「当館」という。)において、標記懇談会が実施された。大滝国立国会図書館長の挨拶の後、当館から1件、支部図書館から2件の報告を行い、休憩を挟んで特別講演、その後質疑応答を行った。

当館からは、大塚総務部司書監から、支部図書館との連携、電子図書館サービスの進展、東日本大震災からの復興に関する取組、文化庁との協定、国内外の図書館等との連携などが報告された。

支部内閣府図書館からは、桐原図書館長から、図書館の沿革と中央合同庁舎第8号館への移転について報告がされた。

支部特許庁図書館からは、松下図書館長から、図書館の概要と最近のトピックスについて報告がされた。

特別講演では、植村八潮専修大学文学部教授から、「電子書籍・雑誌の現状と図書館に示唆するもの」と題した講演が行われた。

以下にその要旨と質疑応答を紹介する。

2. 特別講演要旨

1) 電子出版物の流通

電子出版物の流通は、米国はかなり進んでおり、出版流通額の15~20%を占めているが、ヨーロッパはさほど進展していない。日本は米国ほどではないが、ヨーロッパと比較すると進んでいると言える。

国内の電子出版物のタイトル数は、紙の出版物に比較すると多いとは言えないものの、増加の傾向にある1

ただ、電子書籍の流通コストについては、再生機器やOSの更新の都度、再生テストなどのメンテナンスが必要なことから、紙の書籍の流通コストよりも高い。また、現在の国内の電子出版(e-publishing)は、一度紙で出版された出版物のデータの二次利用が殆どで、出版に係る最大のコストである創作のためのコストを支払っていない。今後、創作のためのコストを盛り込むと価格は更に上がることが予想される。

なお、日本の場合、紙出版では書籍を雑誌及び漫画と同じ物流に乗せることで流通コストを下げて価格を抑え、書籍の書店取次というシステムを成功させてきている。

また、日本人は書籍を「使用するもの」ではなく「所有するもの」と認識する傾向にある。作家の作品をディスプレイで読みたいと思う読者は必ずしも多くないため、流通タイトル数が増えたからといって、簡単に電子書籍に移行するとは考え難い。

2) コンテンツとしての電子書籍

電子書籍はコンテンツであり、再生のために別途再生機が必要となる。


講演会レジュメより

従来書籍は紙と内容(文字情報)が不可分な関係であったが、電子書籍の登場により、内容(コンテンツ)のみがインターネットを通じて個別に流通するようになった。

この場合、流通チャネル2 がインターネットのみになって、パッケージがタブレットやPCに統一されると、雑誌・新聞・図書は文字情報として区別がつかなくなる。結果として、流通チャネルとパッケージがコンテンツに影響を与える事態が発生する。

3) 紙の出版と電子出版

紙資料の文字情報よりも電子での文字情報が圧倒的に多くなっており、見方によっては電子出版は既に紙の出版を越えている。

電子出版とは、紙の書籍を電子化するだけではなく、もともと無料で提供されていた電子情報をパッケージングして有料で提供することも含むが、こうした事業の拡大により、電子出版市場は爆発的に拡大していくことが見込まれる。

電子出版市場の拡大に、出版界の現在の体制では対応できないため、あらたな出版産業の育成策が求められることになる。出版文化を支える新たな制度設計に官民協働で取り組む必要が生じる。

また、「紙か電子」ではなく、「紙と電子」という組み合わせを考えていく必要がある。例えば、紙での出版→絶版→デジタルアーカイブによる提供等、クロスメディア・ハイブリッドにより、知識・情報をどう上手く流通させていくかを考えていく時代となっているといえよう。

4) 電子出版物の信頼性と図書館

一方、我々は、Web上の無署名の情報よりも、責任の所在が明確な出版物に信頼性があると感じる(紙の出版において作り上げられた信頼性プロセス)。このことから、今後、電子出版物にどのように信頼性を与えていくかということを、考えていかなければならない。

図書館は、今後も変わらず信頼性のある情報と読者を結ぶという役割を果たしていく必要がある。

3. 質疑応答

講演の後、参加者と講演者との間で活発な質疑が行われた。

以下に、主な内容について紹介する。(Q:参加者、A:特別講演者)

Q
本は単なる文字情報の羅列ではなく、表紙のデザインや紙質、におい、しわ、しみ、風合い、大きさ、重みなど、姿かたちを含めて「本」であると感じている。図書館に置かれる本も、デジタルではなく、様々な種類・年代のものがあってこそだと思うが、その点をどうお考えか。
A
日本人は書籍を「使用するもの」ではなく「所有するもの」と認識する傾向にある。一方、米国人は「使用するもの」と認識する場合が多い。その点が、日本と米国の電子書籍流通の進展の度合いを分ける要因となっている。日本で表紙デザインや形態を変えるだけで本が売れるのも、そうした日本人の価値観によるもの。また、書店や図書館で本を探す場合は、偶然の出会いが演出される。その出会いは電子書籍を検索する中では生じえない。「消費者が本と出会いながら、デジタルコンテンツを買っていく」という流れを作る「場」としての役割を図書館・書店は担っていくことになる。
図書館もデジタル化を進めないわけにはいかないが、今後も、本との出会いを演出する場としての図書館の役割はなくならないと考えている。
Q
紙の本の出版では、著者だけでなく、編集者が原稿を読んで校正し、著者と一緒に作り上げていった部分があると認識している。書店を通じた既存の流通とは状況が変わってきた場合に、そのような“編集にかかる経費”は、今後、デジタルコンテンツの流通で、賄うことができるものなのか。
A
日本の出版社をアメリカ型の書籍だけを扱う出版社にして、書籍を雑誌と同じ流通ルートに乗せずに書籍だけを扱うブックストアで販売するようにすると、大体定価はアメリカと同水準(現在の倍程度)になる。巨大な取次が流通コスト等をマージして価格を下げることで成功させてきた日本の書籍流通は、今後はこれまでのようには機能しなくなることが予測される。それを新しい体制にするために出版界は苦心しているが、変遷する産業構造に確実に対応することは困難である。プロデューサーや編集者が生き残る方途として、現在、デジタルプロデューサーやデジタルエディターが生まれてきている。
今後、電子出版物のプラットフォームを海外企業に全て持って行かれてしまうようなことになれば、価格競争等で国内産業が大きな打撃を受け、成り立たなくなるだろう。そうならないためにも、公的な取組により、国内プレイヤーが参入できる枠組みを構築していく必要があると考えている。
Q
米国では公共図書館でも電子書籍の導入が進んでおり、図書館向けプラットフォームが出来てきていると聞いている。そのあたりの状況についてうかがいたい。
A
米国の公共図書館の電子書籍サービスでは、利用者が地元の図書館のIDを持っていれば、自宅からアクセスして、図書館の提供する電子書籍を読むことが出来る。そのための仕組みを提供する会社が増えてきている。電子書籍は各社のサーバに置かれており、利用者は図書館のHPから各社のサーバ上の書籍に誘導する仕組みがうまくいっているようだ。米国の大手出版社が公共図書館向けサービスを開始したのは昨年のことで、ビジネスになると判断するまでは慎重にコントロールしていた。

(しぶとしょかん・きょうりょくか)

  1. 流通する紙の書籍は50万タイトルなのに対し、電子書籍は20万タイトルが出版されている。
  2. 商品、製品もしくはサービスをマーケティングするための、企業内部の組織、および企業外部の販売店および代理店、すなわち卸売業者および小売業者の組織構成を指す(全米マーケティング協会の定義より)。

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