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トップ > 刊行物 > びぶろす > 70号(平成27年10月)

びぶろす-Biblos

70号(平成27年10月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412
8. 【専門図書館紹介】
松竹大谷図書館の広報活動 ~クラウドファンディングを経験して 4年目の挑戦~

公益財団法人 松竹大谷図書館 武藤 祥子

【松竹大谷図書館について】

松竹大谷図書館(以下、「当館」といいます。)は、松竹株式会社創立者の一人、大谷竹次郎の文化勲章受章を記念し、昭和31年、演劇や映画に関する貴重な資料を後世に残し一般に公開したいという大谷の想いを形にして設立された、演劇・映画専門の私立図書館です。

昭和33年の開館当時は約2万点だった資料も、今では総数約45万点にも及んでおり、年間約8千点の資料が増加しています。演劇の上演台本や舞台写真、映画のシナリオやポスター、スチール写真などの市販されていない資料や、販売時期を過ぎると入手困難な劇場プログラムなど、当館ならではの所蔵資料を、閲覧室にて一般公開しています。


松竹大谷図書館の所蔵資料

当館は平成23年6月に公益財団法人へと移行登記をしましたが、その事がきっかけとなり、平成24年9月に初めて、ネットで広く支援を募るクラウドファンディング(以下、「CF」といいます。)に取り組むことになりました。それまでは、自館のWebサイトでの告知やニューズレターの発行以外、特に広報活動を積極的に行うわけでもなく、「知る人ぞ知る図書館」でしたが、CFのプロジェクトを通じた活動が広報となり、北は北海道から南は鹿児島まで支援者を広げることができました。また、それだけでなく、最近ではデジタル化にも積極的に取り組む図書館として、認知されるようになってきています。

本稿では今回で4回目となったCF を通じ、当館がどのように広報に取り組んできたか、報告いたします。

【クラウドファンディング実行のきっかけ】

公益財団法人は、移行後も毎年監督官庁に、公益性や事業の継続性、財政の審査をされますが、当館は図書館事業以外に収益事業を持たないので、常に財政が厳しく、毎年赤字決算になりがちな点が課題でした。

そこで、少しでも収入を増やして運営を安定させるため、寄附金を広く募る事を検討していた矢先、松竹株式会社でソーシャルメディアを担当している社員にCFという方法を紹介されたのでした。それが、現在当館が利用している"購入型"のCFサイトREADYFOR(レディーフォー)です。"購入型"とは、プロジェクトが成立すると、出資者に金銭以外のリターン、例えばサンクスメールやグッズなどがお礼の意味で渡されるタイプの支援金調達方法ですが、目標金額まで支援金が集まらず、プロジェクトが成立しなければ、実行者への支援も、出資者へのリターンも行われません。

READYFORは、日本で初めてCFを事業として採用したサイトで、当館に紹介された当時、立ち上げからまだ1年しか経っていませんでした。しかし、当初から障害者アスリート支援や東日本大震災の被災地支援を目的とした事業を中心に活動を広げており、時期的にもちょうど日本でもCFという言葉が少しずつ知られてきた頃でした。

当館のスタッフもCFについての知識が乏しく、READYFORのスタッフからプロジェクト紹介頁の構成(例えば、実行者が団体であっても、個人が自分のストーリーを語るようにプロジェクト内容を伝える方法など)を、一から教わりました。また、支援者からのメッセージやコメントには迅速かつ丁寧に対応するなど、インターネットを介するコミュニケーションだからこそ、人対人のやり取りが非常に重要であるとのアドバイスを受けました。

そして、平成24年9月3日、第一弾のプロジェクトがスタートしました。

【話題性で注目された第1弾プロジェクト】

■プロジェクト名:「歌舞伎や『寅さん』、日本文化の宝箱を守る。」

■実施期間:平成24年9月3日~10月23日(50日間)

■目標金額:200万円(平成24年度の運営資金の一部として)

■支援金額とリターンの設定

支援金額は3千円、5千円、1万円、3万円、5万円を設定し、リターンはそれぞれの支援金額に応じ、サンクスメール、当館のWebサイトへの支援者名の掲載、報告書の送付などのほか、金額ごとのグッズの提供も考えました。例えば、当館の所蔵資料の紹介も兼ねて、デザインに所蔵資料を使用したオリジナルポストカードを始め、1万円の支援には、当館所蔵の歌舞伎や映画台本のうち約180タイトルのリストからご希望の作品の台本カバー 1 に支援者の名前を記載する権利をリターンに付けました。


支援者のお名前を入れた台本カバー

また、5万円の支援には、普段は職員しか入れない書庫を案内して資料も紹介する見学会に御招待することにしました。

プロジェクトタイトルに入れた「宝箱」という言葉は、打ち合わせに来たREADYFORのスタッフが、当館の書庫を見て「まるで宝箱のようですね!」と所蔵資料の貴重さを褒めて下さった所から取りました。この言葉を聞き、プロジェクトでも当館の資料を紹介し、「この宝箱を守りたい」と思って貰えれば、支援してくれる人が必ずいるはず、と思いを強くしました。

【情報の拡散】

CFの成否は、フェイスブック(以下、「FB」といいます。)などのソーシャルメディアを利用して支援募集を呼びかけ、情報を拡散することにかかっています。しかし当館は、ソーシャルメディアを利用していなかったため、松竹広報室の協力を得て、プロジェクト開始に合わせ、READYFORと当館連名でプレスリリースを流してもらいました。同時に、当館からも関連団体にメールや手紙等で通知をしました。また、当館のWebサイトはもちろん、台本などの当館所蔵資料に関心のある読者が見込める松竹の映画FB 「シネマズ」、歌舞伎公式サイト「歌舞伎美人(かぶきびと)」にも支援募集の記事を掲載してもらい、他にも専門図書館協議会のブログやメルマガ、日本シナリオ作家協会のWebサイトなどにもお願いして、記事を掲載していただきました。

プレスリリースの効果と、専門図書館がCFを実行するという話題性もあって、「朝日新聞(夕刊)」「東京新聞」から取材を受けて記事が掲載されました。さらに開始約20日後、インターネットの情報配信サービス「銀座経済新聞」にも記事が掲載され、その日の夜には「YAHOO!ニュース」のトップに取り上げられました。その効果は大きく、当日中に目標額の200万円を突破する事ができました。

また、テレビでも複数の番組で取り上げられ、文化支援の新しい在り方として注目されました。

当館からもプロジェクトページにある「新着情報」で、プロジェクト実行中は週に1・2回、図書館の活動や館内展示の紹介、ニューズレター発行のお知らせや所蔵資料の紹介などを発信し続けました。また、プロジェクト成立後はリターン発送作業の進捗状況や見学会の報告、プロジェクト終了後は、月2回のペースで、展示紹介やニューズレター発行をお知らせしています。

CFを実行してみると、「まずこういう図書館があること、そして資料を保存するのにとても工夫していること、重要なことだと思います」「貴重な図書館だと思います。末永く運営できますように」「文化を守る大切な仕事」「いつか利用してみたい」など、日本各地から応援のコメントを頂き、当館の存在と活動に意義を感じて支援して下さったことを知り、スタッフも大変な感銘を受けました。

また、新聞やテレビで取り上げられたことで、インターネットを利用しない方にも当館の支援募集が広まり、直接当館に寄附を寄せて下さる方もありました。その結果、272人の支援者から、目標金額を大きく上回る357万9千円の支援金が寄せられ、第1弾のプロジェクトは無事成立しました。

【デジタル化に挑戦!第2弾プロジェクト】

■プロジェクト名:「【第2弾】歌舞伎や映画、大切な日本の文化を次世代に残す。

■実施期間:平成25年9月18日~11月6日(50日間)

■目標金額:250万円(平成25年度の運営資金の一部として200万円/雑誌『蒲田週報』 2 デジタル化の費用として50万円)

募集期間やリターンの内容は第1弾とほぼ同じでしたが、第2弾では目標金額を増やし、当館の運営資金に加え、所蔵資料のデジタル化の資金を募ったことが新しい点でした。


ブックスキャンによる『蒲田週報』のデジタル化

情報の発信やプレスリリースも第1弾と同じ規模で行いましたが、2回目とあって新鮮味が無くなったのか、前回ほどマスコミに大きく取り上げられなくなりました。それでも前回支援してくれた方一人一人にプロジェクト開始のお知らせメールを送るなど、地道な活動をすることで、リピーターを増やすことができました。

また、第1弾でも大きな力となった「歌舞伎美人」、「チケットWeb松竹」、日本俳優協会の「歌舞伎 on the web」など、歌舞伎関係のサイトやメルマガでの告知をお願いし、歌舞伎愛好家の支援を伸ばすことができました。結果243人の支援者から、目標金額を上回る291万円の支援金が寄せられ、当初の予算では諦めていた『蒲田週報』の脱酸性化処置も併せて行うことができました。業者による『蒲田週報』の修復、脱酸処理、デジタル化の作業はプロジェクトの「新着情報」や当館のニューズレターで、折々報告をし、支援者を中心とした一般利用者が普段目にする機会の無い作業を伝えることができました。

【アーカイブ公開計画!第3弾プロジェクト】

■プロジェクト名:「【第3弾】日本文化の宝・歌舞伎や映画の記憶を未来につなぐ。

■実施期間:平成26年9月9日~10月29日(50日間)

■目標金額:280万円(平成26年度の運営資金の一部として200万円/「芝居番付」5千枚のデジタル化費用として80万円)

第2弾のプロジェクトを実行した頃から、デジタル化に積極的に取り組んでいる図書館としての認知度が上がり、他機関との共同研究の形ではありますが、当館の演劇・映画雑誌 3 や義太夫正本 4 の所蔵目録のデータベース化が実現するなど、2年前までは、ほぼデジタル化に縁がなかった当館に、外部からもデジタル化事業の声がかかるようになりました。

そんな中、第3弾のプロジェクトでは、当館所蔵の幕末から明治・大正・昭和初期までの演劇資料「芝居番付」 5 約5千枚全てのデジタル化とアーカイブ公開に取り組みました。『芝居番付』は、あまり一般に知られていない資料ですが、プロジェクトを進めていく中で、どのような資料なのかを説明していき、当館の所蔵資料に興味を持ってもらうきっかけともしました。


九代目市川團十郎の『勧進帳』上演(明治32年4月歌舞伎座)を宣伝するための芝居番付

第3弾からは、前回まで松竹広報室に依頼していたプレスリリースを当館のスタッフが行うことになり、各社に送信の許可を取りながら、1件ずつメールやFAXで送りました。前回までの支援者の方へ個別メールを送ることも、プロジェクト公開日から取りかかりました。そして、これまでも館内限定で掲示していた自作のポスターを、デジタル化の共同研究で御縁のできた他機関や関係者にもお願いをしてポスターの掲示をしてもらい、手作りのチラシも、これまで以上に配付しました。

また、館内でもスタッフがカウンターで出納業務の傍ら、来館者に丁寧に説明をしてチラシを渡す事で、支援や応援の輪が少しずつ広がっていきました。

このように第3弾では、スタッフ全員が意識を持って広報活動を行い、当初は伸び悩んだものの募集終了2日前に目標金額を達成する事ができました。結果、263人の支援者から、296万5千円の支援金が寄せられ、「芝居番付」のデジタル化も進めることができました。

【CFを実行して】

以上のように、CFを実行する事によって、本来の目的である運営費等の調達だけでなく、当館の存在を広く知ってもらうこともできました。最近は、築地観光のついでに当館に立ち寄る利用者や、友達連れでお気に入りの映画のシナリオを読みに来る若者の姿も見るようになりました。また同時に、当館から情報発信を続けることで、当館独自の所蔵資料や活動の紹介をすることができ、結果としてより専門性の高い調査を行う利用者が増加し、お声掛けを受けてデジタル化事業へ参加する機会も増えてきました。

もちろん、メリットだけではありません。図書館の日常業務を行いながらCFの業務を行うことは、スタッフに大変負担が掛かります。また、CFを始めた当初は、運営資金の不足を広く宣伝することに、若干戸惑いもありました。

それでも、多くの方から実際に支援や応援コメントを頂き、当館の存在意義を認めてくださっている事が伝わってくるにつれ、スタッフの心の支えにもなり、当館での仕事に誇りを持って、より業務に積極的に取り組めるようになりました。

また、インターネットを介して始まった支援ですが、支援者の方が折々立ち寄っては労いの言葉をかけて下さったり、地方公演のプログラムなどの寄贈資料を持ってきて下さったりと、実際に来館して、別の形で応援して下さる機会も増えました。

【戦後70年の今年、GHQ検閲歌舞伎台本のデジタル化に取り組む第4弾、実行中】

そして10月現在、当館は第4弾プロジェクトを以下の通り立ち上げ、今まさに挑戦しています!


当館所蔵GHQ検閲歌舞伎台本の一部

■プロジェクト名:「【第4弾】歌舞伎や映画、日本文化の歴史を後世に伝える。

■実施期間:平成27年9月8日~10月28日(50日間)

■目標金額:250万円(平成27年度の運営資金の一部として150万円/「GHQ検閲歌舞伎台本」約300冊のデジタル化費用として100万円)


【第4弾】のリターン
台本の表紙デザインのオリジナル文庫本カバー
(それぞれ 奥:本物の台本/手前:文庫本カバー)

当館は、昭和20年から24年の約4年間にGHQの傘下機関である民間検閲局により検閲を受けた300冊以上の演劇台本を所蔵しています。その表紙には、認可番号印、検閲通過印の他、削除頁などの書込がありますが、これまで内容については細かく検証されてこなかったため、今回デジタル化を進めることができれば、検閲による削除内容の考証も可能となり、当時の検閲状況をより詳しく知る手掛りとなるでしょう。この貴重な歴史的証拠のデジタル化を進めるため、是非、プロジェクトページを御覧いただき、広めていただけましたら幸いです。


『菅原伝授手習鑑寺子屋』(昭和22年5月東京劇場上演)の検閲台本の表紙。
外題の右に「CCP(検閲通過)印」が押され、その下に「18頁削除」の書込がある。


18頁の該当箇所。若君の身代わりとなった子供の死に様が語られる場面で
「潔よう」「健気な」「手柄物」と、その死を讃える単語が削除されている。

(むとう さちこ)

  1. 台本保護のためにスタッフが手作りしている。
  2. 松竹キネマ蒲田撮影所の機関紙。当館では創刊号(大正14年3月1日号)から終刊の262号(昭和6年7月12日号)までをほぼ所蔵。松竹作品の紹介記事をはじめ、撮影状況や俳優情報などが細かく掲載され、当時の映画制作現場を知るための貴重な資料。
  3. 野上記念法政大学能楽研究所共同利用・共同研究拠点 能楽の国際・学際的研究拠点2014年度採択共同研究「演劇雑誌における能楽記事の調査研究」
    第43回(平成26年度)三菱財団人文科学研究助成金「日本映画資料所在調査およびデータベースの構築」
  4. 立命館大学アート・リサーチセンター開発及び開発「松竹大谷図書館所蔵 義太夫正本 検索・閲覧システム
  5. 芝居の演目、配役、場面の挿絵などが描かれた、今でいう演劇のポスターやチラシのような印刷物

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