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トップ > 刊行物 > びぶろす > 64号(平成26年4月)

びぶろす-Biblos

64号(平成26年4月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412
2. 【特集:危機管理-いざというときのために-】
みんなで考え、その日に備える~小さな図書館でもできるシミュレーションの紹介~

十文字学園女子大学 石川 敬史

はじめに

地震や火災等の危機発生に対する訓練として、まず思い浮かぶのは避難訓練や消火訓練などである。

しかし、こうした訓練には実施する日時の調整をはじめ、他部署や関係機関との調整、シナリオの作成、訓練の参加者への協力依頼等、大がかりな準備を前提に考えてしまう。とりわけ小さな図書館や少人数の図書館の場合、こうした事前の調整・準備を考えると、訓練を企画し実行することに躊躇してしまうのではないかといえる。

本稿では、2013年3月8日に実施された「平成24年度行政・司法各部門支部図書館職員特別研修」における「読む・考える・行なう:行動に『つなぐ』図書館の地震対策」1をベースに、小さな図書館や少人数の図書館でも実施しやすい机上シミュレーションを中心にグループワーク式の訓練方法について、「読む」、「考える」、「行う」の3つに重点をおいて紹介する。

なお、本稿と「平成24年度行政・司法各部門支部図書館職員特別研修」のプログラム設計には、『みんなで考える図書館の地震対策』(日本図書館協会)編集チームと『こんなときどうするの?改訂版』編集チームの中沢孝之氏(草津町立図書館)、加藤孔敬氏(東松島市図書館)、鈴木史穂氏(福島県立図書館)、倉持正雄氏(文京区立真砂中央図書館)、金子恵子氏(君津市立中央図書館)、戸張裕介氏(調布市立図書館国領分館)から大きなご示唆をいただいた。

1. 読む

東日本大震災以降、図書館の復旧・復興、支援活動等の報告は『図書館雑誌』や『図書館界』の記事2をはじめ、『走れ!移動図書館』3、『3.11を心に刻むブックガイド』4にも紹介されているとおり、数多くの図書が刊行されている。研修会や講演会の記録も多数刊行され5、必死に行動した人びとの語りや記録から、私たちが学ぶべきことは数多くある6。加えて、図書館における危機管理マニュアル作成の手引き等も多く刊行され、例えば、以下のような資料がある。

  • 『こんなときどうするの?:図書館での危機安全管理マニュアル作成の手引き』(日本図書館協会、2005)7
  • 図書館におけるリスクマネージメントガイドブック』(文部科学省生涯学習政策局ほか、2010)
  • 『みんなで考える図書館の地震対策:減災へつなぐ』(日本図書館協会、2012)8

まずは「“その日”に備えて」9、個々人で文献を読むことにより、「震災について考えること」10が必要である。特に大学や官公庁などの附属図書館は利用対象者が限られている。加えて、危機管理に関する総務系の部署や警備室が同一敷地内にあるため、不特定多数が利用する独立館の公共図書館とは環境が大きく異なる。地域住民にとって大学や官公庁の施設は公共性が高いという点で共通しており、改めて地域に位置する公共図書館の視点から“その日”を考えることも必要であろう。具体的には、下記の視点が考えられる。

  • 危機発生時に警備室や他部署に判断を仰いでしまうこと、さらには連携が途絶えることもあるため、図書館単独での問題解決や情報収集することへの意識と備え。
  • 図書館が情報提供機関としての役割を考慮し、休館措置による利用者への不安や誤解を招くことのないような配慮や工夫11
  • 敷地内が広域避難場所に指定されている場合、避難所の設営や援助物資の配給に携わる意志とともに、地域住民に対する対応と心のケア、さらには職員自身のケア12
2. 考える

「危機管理時にどのように行動するのか」について、組織内の構成員と共に「考える」ワークショップは、中沢孝之氏や岡本真氏(ARG)等の精力的な活動をはじめ、多くの研修会で実施されている。この章では図書館の現場において、共に考える枠組みと方法について、文献を参考にしながら紹介していく。

(1)考える枠組み

東日本大震災後に検討された『東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議最終報告』(2012)では、危険を予測し回避するためには「主体的に行動する態度」を育成する体系的・系統的な学習の整備とともに、「防災文化」の形成の必要性が指摘されている。訓練や演習等の手法はこうした市民力を育む防災教育の枠組みで捉えることができ、具体的には下記の3点が指摘されている13

(1-1)
Survivorとなる防災教育
危機発生時における危険回避の判断力を養うほか、ハザードの知識、水・食料等を確保する方法、避難方法など、「被災地」において自分の命を守ることを目的とした教育である。
(1-2)
Supporterとなる防災教育
「被災地」における救出・救助作業、ケガの手当て、AEDの使い方、避難所の設営、心のケア、「被災地外」における募金活動、救援物資活動など、「被災地」と「被災地外」において人を支援することを目的とした教育である。
(1-3)
市民力を育む防災教育
情報に対する正しい評価、日常的なボランティア活動への参加、社会へ貢献する意識の醸成など、「被災地外」において、日常的に社会に参画する市民リーダーを育成するための教育である。

防災教育の対象も、「市民」防災教育、「学校」防災教育、「専門」防災教育に分類されている14。防災教育という用語からは、学校教育に限定された印象を有するが、防災教育には広く市民をはじめ、行政機関による専門的な防災危機管理研修も含まれ、対象が幅広いことがわかる。

(2)共に考える:シミュレーションの方法

防災教育や防災危機管理研修の方法として、例えば講義、実技訓練、討論型図上演習、対応型図上演習等がある15。このうち演習型の多くはグループワーク式によるシミュレーションであり、さほど労力をかけずに準備できる方法もあるため、小さな図書館でも負担なく実行できる。

その代表的な方法を下記に整理した。

(2-1)
危険予測型演習
地震発生時、大雨の通勤路、避難場所までの経路等、どのような危険があるのかをグループ内で予測し、対処方法、具体的な行動を共に考える手法である16
例えば、実際の図書館内のフロアマップを用意し、危険な場所、安全な場所、適切な避難経路、誘導方法等をいくつかの季節、時間等を想定することで、組織内で意見を出し合い情報を共有することができる。その他の方法として、図書館内が停電になった場合を想定し、共にシミュレーションすることにより、対処方法を共有することもできる。
(2-2)
DIG(Disaster Imagination Game)
グループで地図を囲み、危険個所を地図に書き込みながら行う災害図上訓練(演習)である17。具体的には、避難の方法や場所、帰宅困難者の流れ、駅付近の滞留者の状況、建物の崩壊の可能性など、危機発生時に考えられる事柄を共有する演習である。
例えば、図書館が立地する周辺地図を用意することで、危機発生時の状況の推測、外部の避難場所へ誘導するルートの検討、誘導後の職員の行動等を議論し共有することができる。
なお、実際の地図を使用すると、参加者の経験や土地勘が優先されるため、想定外の危機の共有が難しい場合もある。演習の目的によっては、参加者に左右されず仮想の地図を活用することもできる18
(2-3)
状況予測型演習
地震や火災等の危機が発生した後、2分後、5分後、10分後、30分後、1時間後、3時間後……等のように、時間の経過ごとに図書館内、図書館外で何が発生するのかを想定し、それに伴い具体的にどのように行動するのかを、グループで考える演習である19
もちろん、天候(晴、雨、雪)、時刻(夜間、専任職員不在の時間帯)、曜日(祝日、館内整理休館日)、季節(夏、冬)等の条件設定や条件の組み合わせをはじめ、館内のマップに基づき自館で発生しそうな状況や、想定外の出来事を事前にシナリオとして設定することにより、組織内でロールプレイングが可能である。
例えば、以下のような演習の手順とシナリオを設定することができる。
  1. グループ内一人ひとりが“その日”における出勤者となり、雇用形態(課長、係長、パート職員)を想定する。加えて、“その時”における館内の利用者(人数、性別、年齢等も含む)や、一人ひとりの職員の作業場所(カウンター、閉架書庫等)も設定する。
  2. 次に、事前に作成したスライドで、地震発生時、2分後、5分後、10分後…に館内で発生する数々の仮想の状況を時間の経過とともに説明する。スライドで示された想定外、想定内の出来事を踏まえ、参加者は時間に追われながら館内で実際にとるべき行動を出し合う。じっくり考えていると時間がすぐに経過してしまうため、危機が発生した際、どのように行動するのかを瞬時に判断する必要がある。時間の経過とともにスライドに掲載する館内の状況として、例えば下記のような事例がある。
    • 書架が将棋倒しになった。
    • 蛍光灯が割れて飛散した。
    • 集密書庫に1名の入庫記録あり。
    • 「倒れた書架に下敷きになった人がいる」という目撃情報が寄せられる。
    • 部長がトイレ行ったまま戻らない。
    • パニックになった利用者がいる。
    • 駅前の飲食店から大きな煙があがる。
  3. 最後に、地震発生時から○分後までをそのタイミングごとに振り返り、対応が良かったこと、悪かったこと、改善点をグループ内で議論する。
(2-4)
ゲーミング(防災ゲーム)
市販の情報カード等を用いたゲーム形式による問題解決型シミュレーションである。小学生対象のものもあるが、その特徴は単に正しい答えを確認するのではなく、防災・減災に対する参加者の主体性を促すと同時に、チーム内で共に対応を考えることにある。
  1. 「クロスロード」
    チームクロスロード(網代剛氏、吉川肇子氏、矢守克也氏ら)が開発した防災ゲームであり、多くの図書にゲームの目的や意義、方法が詳細に紹介されている20
    大まかなゲームの流れは、各グループ内で一人が問題カードを読み上げ、「イエスカード」か「ノーカード」を裏返しに置き、そしてグループ一斉にカードを表にする。多数派の場合は座布団を1枚もらい、最後に座布団の数を踏まえゲームを振り返る。ゲームには「神戸編」や「一般編」等がある。

    【問題カード例】21

    あなたは総務担当課長。被災後半日経過。庁舎の一部が自然発生的に避難所になり、500人程度の被災者であふれている。しかし、庁舎は本来の指定避難所ではない。避難者に出ていってもらう?
  2. 「ぼうさい駅伝」
    公益財団法人市民防災研究所の防災ゲーム研究会が制作したゲームである。2人1組になって、1人が「たすき」をかけた走者になり、走者がカードに記載された問題に回答し、正解すると前に進むことができる。区間が変わると走者も変わる。最大8人まで(4グループ)対応している。
  3. 「ぼうさいDoThrough(どうする)10」
    この防災ゲームも公益財団法人市民防災研究所の防災ゲーム研究会が制作した。その方法は、ある危機発生時にとるべき行動について10個の選択肢を用意し、グループ内でAからCのランクを検討し評価した後、採点と振り返りを行う22
    この他にも、同研究会は、「ぼうさいカルテット」23、「ぼうさい<ダ・ズ・ン>」等カードゲームの手法を使ったシミュレーションゲームを開発している。
  4. 防災カードゲーム シャッフル
    NPO法人プラス・アーツがプロデュースした防災ゲームである。応急手当や防災知識など12の領域から、例えば「消火器の使い方」に対する正しい手順について、カードを順番に並べていくという方法である。
(2-5)
対応型演習
やや大がかりな演習ではあるが、コントローラー(管理者)と複数のプレイヤーに分かれ、疑似的な災害状況下での対応を実際に行動してロールプレイングする方法である24。プレイヤーが仮想の被害情報を正しく収集し、管理者へトランシーバー等で伝達する。そして管理者が情報を整理し、意志決定を迅速かつ正しく行われるかを評価する演習である。実施の範囲として、図書館単独、もしくは複数部署などを設定できるが、事前に担当(管理者、救護担当、連絡担当等)や被害状況を設定する必要があり、やや準備に時間がかかる。なお、最後には模擬記者会見を行う事例もあるという。
(2-6)
防災まち歩き
防災・減災の視点にたって、グループで実際に地域(図書館周辺や避難ルート、通勤ルート等)、さらには図書館内を歩きながら、写真を撮る等して、危険な箇所や災害時の課題をグループで地図に記入し合い、共に危機を予測し、実際の改善につなぐ方法である。
3. 行なう(おわりに)

これらの方法以外にも、実技訓練として避難所設営や炊き出し訓練を行ったり、複数の演習を組み合わせることもできる。

重要なのは、こうしたグループワークや防災ゲームを実施した後、良かった点や改善点、課題を参加者と共にしっかりと振り返り、現場で主体的に行動できることを考えることにある。危機発生時には不確実性の高い状況下で時間的に切迫し、さらには被害の連鎖も広がる中で、的確な判断が迫られる25。そのためにも図書館構成員全員でシミュレーションや演習を行い、予期せぬ事態の洗い出しと危機発生時にとるべき行動の明確化は欠かせない。

正しい知識を有していても、実際に災害に遭った時、正しい行動ができるかどうかわからない。危険を予測し回避するためには、仲間と共に考えるプロセスが重要である。

(いしかわ たかし)

  1. 同様のグループワーク概要は下記にもある。
    石川敬史「『みんなで考える図書館の地震対策』を読む・考える・行なう」『SALA会報』21, 2013.3.<http://sucra.saitama-u.ac.jp/modules/xoonips/download.php?file_id=30119‎>
  2. 『図書館雑誌』<請求記号Z21-130>
    『図書館界』<請求記号Z21-131>
    (編集注:以下、請求記号は国立国会図書館の請求記号)
  3. 鎌倉幸子『走れ!移動図書館:本でよりそう復興支援』筑摩書房,2014.(ちくまプリマー新書、 208)
  4. 草谷桂子『3.11を心に刻むブックガイド』子どもの未来社,2013.11.<請求記号E1-L15>
  5. 例えば下記の資料がある。
    • 大学図書館問題研究会出版部編『震災そのとき、その後:震災と図書館について考える』2011.12(大図研シリーズ、30)<請求記号UL711-J21>
    • 日本図書館協会編『東日本大震災に学ぶ:第33回図書館建築研修会』2012.1.<請求記号UL521-L1>
  6. 加藤孔敬「復旧・復興出来たこと、出来なかったこと:挑戦・提案したいこと」『図書館界』64(2), 2012.7,p.82-89.<請求記号Z21-131>
  7. <請求記号UL511-H11>
  8. <請求記号UL511-J19>
  9. 中沢孝之「“その日”に備えて」『図書館雑誌』106(3),2012.3,p.156-157.<請求記号Z21-130>
  10. 鈴木史穂「3.11を心に刻むブックガイド推薦文」前掲4).
  11. 中沢孝之「図書館の力を信じて」『みんなの図書館』419,2012.3,p.1-4.
  12. 公務員連絡会地方公務員部会『1000時間後のあなたへ:東日本大震災で頑張ったあなたへ』2011.5,p24.
  13. 諏訪清二「第13章心の支援と命と防災教育」『教師のための防災教育ハンドブック』立田慶裕編,学文社,2013.9,p.164-184.<請求記号FC93-L42>
  14. 松尾知純「第2章命を守れる子どもたちと社会をつくるために」前掲10),p.20-32.
  15. 秦康範「災害危機管理訓練・演習の定義と体系」『災害危機管理論入門:防災危機管理担当者のための基礎講座』吉井博明、田中淳編,弘文堂,2008.4,p.306-318.(シリーズ災害と社会、3)<請求記号EG77-J37>
  16. 渡邉正樹編『今、はじめよう!新しい防災教育:子どもと教師の危険予測・回避能力を育てる』光文書院,2013.5.<請求記号FC93-L34>
  17. 数多くの文献があるが、例えば、小村隆史氏(富士常葉大学)のページが詳しい。<http://www.e-dig.net/>
  18. 前掲15)
  19. 坂本朗一「討論型図上演習」前掲15),p.313-318.
  20. 矢守克也ほか『防災ゲームで学ぶリスク・コミュニケーション:クロスロードへの招待』ナカニシヤ出版,2005.1,p.175<請求記号EG77-H176>
    吉川肇子ほか『クロスロード・ネクスト : 続:ゲームで学ぶリスク・コミュニケーション』ナカニシヤ出版,2009.7,p.223<請求記号EG77-J205>
    内閣府「災害対応カードゲーム教材「クロスロード」【チームクロスロード】」<http://www.bousai.go.jp/kyoiku/keigen/torikumi/kth19005.html>
  21. 前掲20),矢守ほか,p.109引用
  22. 中野直美「第6章「生きる力」に結びつく総合学習:ゲーミングを活用した実践的な防災学習」前掲10),p.70-96.
  23. カードゲームの一種。同じ種類のカードを4枚揃えたカルテット(4枚組)をたくさん作れば勝ちとなる。
  24. 坂本朗一「対応型図上演習」前掲15),p.319-325.
  25. 吉井博明「第1章災害危機管理とは」前掲15), p.18-31.

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