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トップ > 刊行物 > びぶろす > 64号(平成26年4月)

びぶろす-Biblos

64号(平成26年4月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412
1. 【特集:危機管理-いざというときのために-】
この3年で防災への意識はどう変わったか -東北学院大学図書館の事例-

東北学院大学中央図書館 佐藤 恵

1. はじめに

2011年3月11日に発生した東日本大震災(以下「震災」という。)は、マグニチュード9.0、最大震度7を記録する激しい揺れと、広範囲を襲った巨大津波により、東日本一帯に甚大な被害をもたらした。

その未曾有の災害から3年が経過した。被災地の人々の心には、震災にかかる様々な出来事について「忘れてはいけない」と思う一方、「忘れたい」という相反した感情も存在する。前を向いて歩くために「忘れること」も時には必要であるが、「忘れてはいけない」記憶は後世に残し、検証することもまた必要なことである。

本稿では、これらの記憶を辿り、この3年間における防災意識の変化について、本学図書館の事例を元に振り返りたい。

2. 東北学院大学および東北学院大学図書館について

東北学院大学(以下「本学」という。)は仙台市・多賀城市にある3つのキャンパスに学生・院生約12,000名が学ぶ、私立総合大学である。図書館は中央図書館・中央図書館分室、泉キャンパス図書館、多賀城キャンパス図書館の3館1分室体制、職員総数54名(専任職員12名・委託職員42名)、蔵書数は全館合計で図書約114万冊、雑誌約1万6千種である(数値は2013年3月当時)。

3. 震災前の防災対策
(1)全学的取組

宮城県では1978年に発生した宮城県沖地震以来、震度5クラスの地震が頻発している。このことから大学全体で大規模地震を意識した備え・訓練がなされ、校舎の耐震補強工事、緊急地震速報装置・防災備蓄品の整備、安否確認システムの導入等も順次進んでいた。

(2)図書館における取組 -資料の落下防止対策を中心に

中央図書館では蔵書の9割が閉架書庫に配架されている。地震発生時には入庫中の利用者が書架から落下する資料の直撃を受ける危険性が非常に高いことから、震災直前までに閉架書庫の書架上段2-3段目に落下防止バー約9,200本が設置されていた(図1)。

このとき書架上段に限定して落下防止バーを設置したことで、震災後、書架の安全対策及び避難経路確保上の課題が浮き彫りとなった。(なお、設置の効果と課題については「7. 震災を経て-図書館の防災対策(3)書架の安全対策と避難経路の確保 -資料を「落とす」か「落とさない」か」の項で述べる。)


図1:書架上段2-3段目に落下防止バーを設置

そのほか、全館で行っていた対応は以下のとおりである。

  • (a)全学避難訓練への参加
  • (b)防災用品(拡声器・懐中電灯・手動式充電ラジオ・閉架書庫用非常時通知ブザー等)の準備
4. 震災発生時

宮城県では本震直前3月9日・10日にも地震が発生していた。その状況を踏まえ、委託職員業務引継書において、緊急時マニュアルの確認や、地震発生時の避難誘導、緊急連絡網の確認等の注意喚起がなされていた。

中央図書館では本震発生直後から、閲覧担当職員が大声で書架から離れ身の安全を確保するよう、利用者に対し指示・注意喚起を続けた。館内放送を利用せず肉声での対応となったのは、停電により機器類が使用不能であったことと、激しい揺れにより職員が放送ブースまで辿り着けなかったことが原因である。約3分にわたる揺れの中、閲覧担当職員10名は安全確保を呼び掛け続け、揺れが収束した時点で利用者に貴重品のみを持たせ、指定避難場所への避難誘導を行った。残った専任・委託職員6名は速やかに閉架書庫(積層式4層構造)へ向かい、停電による視界不良・通路全てが落下資料で埋め尽くされた状況下で、分担して全フロアの安全確認を行った。

併せてシステム面の危機管理にとって重要な電源対応も行っている。発災直後、コンピューター端末・サーバーは無停電電源装置により作動していたが、システム担当者は完全停電を想定して全てをシャットダウンし、通電時の事故防止のため周辺機器の電源も切断した。この行動はマニュアルにはないものであった。

今回の本震の特徴は、断層の破壊が連続して発生し、破壊のタイミングで長周波の揺れから突如激しい横揺れに大きく変化した点である。

後日、中央図書館内に設置された防犯用カメラの映像で発災時の利用者の様子を検証したところ、発災直後は驚き立ち尽くす様子が見られたが、地震波が変化した瞬間に書架から資料が一気に落下し、それと同時に全員が素早く机の下に隠れていた。こうして利用者自らが適切な防御行動を取っていたこと、そして閲覧担当職員自身も大きな恐怖に襲われながら、揺れが収まるまで大声で利用者への注意を呼びかけ続けたことは、大規模災害でありながら負傷者ゼロであった理由として特筆すべきことであろう。

5. 図書館被害状況

発災時は春季休暇中で各館とも館内利用者が少なかったこともあり、全館ともに人的被害はなかった。

ただ、柱、基礎ぐい、壁など建物の主要部分での致命的な損傷は見られなかったが、書架が受けたダメージは想像以上に大きかった。

中央図書館では、固定していなかった開架フロアの書架2台が倒壊した。閉架書庫の書架(スチール製)は天つなぎおよび床固定により転倒は免れたが、書架高層部分に設置した落下防止バーが機能したことにより、書架の低層部分(落下防止バー未設置)の資料は大半が落下、高層部分の資料はそのまま保持されたものの、重心が高い状態で約3分間大きく横方向に振られた。その結果、書架に莫大な負荷がかかり、上層階では全ての書架の解体・組み直しが必要となった(図2)。

また、泉キャンパス図書館の開架書架(木製)も固定により転倒こそ免れたが、ほぼ全ての書架について補修が必要となった。


図2:莫大な負荷がかかり歪んだ書架

蔵書については、本学中央図書館・中央図書館分室では全体の約60%、泉キャンパス図書館では約70%の資料が落下被害に遭っている。補修が必要な資料681冊(うち貴重書61冊)はほぼ全てが落下に起因する損傷であるが、東北地区大学図書館協議会による「東北地方太平洋沖地震による東北地区大学図書館協議会加盟館の被害状況調査」によれば、他大学図書館においては館内の配水管の損傷による直下に設置された書架にあった資料の水損被害も見られたようである。

6. 復旧作業

図書館の復旧作業は、全館共通の目標として2つの事項に主眼をおき、実施した。

  • (1)学生が安心して戻り、学ぶ喜びをふたたび感じることができる環境を作る
  • (2)全学授業開始日(2011年5月9日)迄に全館の閲覧サービスを再開する

である。

職員自身も被災者でありながら、全員が一丸となり、学生ボランティア・saveMLAKの協力を得ながら約2か月間に亘り作業が進められた(復旧作業の詳細については、国立国会図書館第23回保存フォーラム事例報告資料及び平成24年度私立大学図書館協会東地区部会研究部研修会報告資料を参照)。

7. 震災を経て-図書館の防災対策

図書館の最大の使命は資料収集・保存・提供であることは言うまでもないが、震災を経験し改めて強く思うのは、緊急時にまず最優先に守るべきものは利用者・職員の人命であり、資料保全は人命保護を大前提に考える、ということである。

資料保全の観点からの防災対策も当然重要であるが、人命・資料双方を同時に、完全に守ることはほぼ不可能である。

今回の震災によって、人命保護の観点からは「身近にあるものが凶器となる」危険性が図書館は他の施設よりも遥かに高いこと、資料保全の観点からは大規模災害発生直後の資料救済・補修には限界があることをそれぞれ痛感し、図書館職員としての意識の大きな転換を求められた。

これらを踏まえ、以下、本学図書館における震災後の防災対策の改善・整備状況について紹介したい。

(1)災害時のイメージトレーニング

災害時には通常の意思決定プロセスが機能せず、現場の判断で行動する場面が増える。特に図書館は事務室の他に、カウンター業務・イベント・書庫作業など、多彩な状況下での執務が想定される。それぞれの場所で災害が発生したら、利用者の安全確保のために最優先に選択すべき行動は何か、各自が日頃から具体的にイメージしておくことが、災害発生時の迅速な判断力を身に付ける訓練にもなる1

(2)緊急時マニュアル等の整備・避難誘導の工夫

本学図書館では大学共通の防災マニュアルに基づき緊急時対応を行っていたが、2008年の閲覧・整理業務委託導入に伴い、専任職員と委託職員との認識共有のために、図書館独自の緊急時マニュアルの整備を行った。内容は災害のほか、犯罪行為・気象状況の悪化による開館対応・図書館システムトラブル等の広範囲に亘り、常時改訂を重ね、現行では第9版が運用されている(2014年4月現在)。

このほか、地震対応に特化した「地震発生時スタッフ対応マニュアル」も整備、今回の震災での教訓として、緊急時マニュアルの設置場所についても明確化し、速やかに誘導対応できるよう情報共有を行っている(図3)。


図3:緊急時対応マニュアル保管場所一覧

なお、緊急時マニュアルについては、学内各部署(施設課・総務課・図書情報課)で個別に作成している内容を一本化し、全学的取組としてBCP(事業継続計画)2を策定する動きが出ている。

避難経路については、キャンパス内避難マップのほか、石巻専修大学図書館の「館内ハザードマップ(図書館地震対応マニュアル)」を参考に、書庫・開架フロア内の危険箇所と注意事項を明示した「地震ハザードマップ」を作成・掲示し、利用者にも周知を図っている(図4)。


図4:地震ハザードマップ

また、建物の大部分が閉架書庫で構成される中央図書館においては、災害時の巡回対象箇所が広範囲に及ぶ。そこで、あらかじめ担当ごとの災害時の役割を明確化した。具体的には、5階事務室に勤務する整理担当職員は閉架書庫利用者の誘導を担当する。このことで、閲覧担当職員は閲覧フロアの利用者誘導に専念できるようにした。

なお、中央図書館の閉架書庫においては震災以前から、利用者が入出庫する際に図書館システムによる記録を行っていた。今回のように停電で館内放送を利用できないケースでは、システムで把握していた入庫人数・氏名が、避難誘導を行う上で重要な情報となった。入庫記録は資料管理の一環として、利用者の動向を把握するために用いられていたが、震災を経験し、防災対策上の効果も極めて高いことを実感した。

そのほか、震災後には新たに(a)全職員へのヘルメット配布、(b)閉架書庫への懐中電灯・振動感知型常備灯3・非常口誘導用蓄光テープの設置4、(c)全学避難訓練への継続参加、(d)館内における避難誘導シミュレーション、(e)イベントでは、開始前に地震が発生した際の注意事項についてのアナウンスを必ず行う等の取組を行った。

(3)書架の安全対策と避難経路の確保 -資料を「落とす」か「落とさない」か

今回の震災を通して最も考えさせられたのは、まさにこの点である5。資料を落とせば書架に掛かる負荷は軽減されるが、下に人がいた場合は落下資料による負傷や床が資料で埋め尽くされ避難経路確保が困難になるリスクが高まる。落とさなければ後者のリスクは減少するが、書架全体への負荷は増大し、最悪の場合書架自体が転倒することも考えられる。

図5は、上段の落下防止バーが機能し、下段の資料も殆ど落下しなかった書架の写真である。満載の資料を抱えたこの書架が倒壊し、利用者がこの下敷きになっていたら、命が失われた可能性は高い。


図5:上段の落下防止バーが機能し、下段の資料も殆ど落下しなかった書架

震災前の防災対策では資料の落下対策を重視し、書架の転倒までは想定が及ばなかった。しかし実際にこの書架を目にして、資料の落下は書架転倒防止対策・避難経路確保とセットで考えるべきであることを強く認識した。

今回は地震と停電のみであったが、ここに火災が加わった場合、いち早く狭く暗い書庫から脱出することは相当な困難が伴う。この経験から、避難経路確保のために「資料を落とさない」場所も必要ではないかと考え、そのための対応を検討している。例えば、避難経路沿いに面する書架は(a)低層のみ配架、(b)書架の転倒防止を十分に講じた上で確実に落下防止対策を施す、(c)極力配架を減らす、などが考えられる。

資料配架のバランスは各図書館の収蔵能力にも関係するため一概には言えないが、本学では書庫内の避難経路沿いの書架について、全段に落下防止バーを設置した。


図6:「資料を落とさない場所」として避難経路沿いの書架は全段に落下防止バーを設置(床面に非常口誘導用蓄光テープを貼付。白く発光する。)

8. おわりに

大規模災害発生時は想定外の様々な事柄への対応に迫られるが、忘れてはならないのは「利用者の安全確保」、「避難経路の確保」、「二次災害の防止(自らの身を守る)」の3点を念頭に置いた判断を行うことである。迅速かつ的確な判断を行うためには、日頃から災害によって起こることをある程度予測しておくこと、減災を意識した環境を作っておくことも重要であろう。

最後に、我々の経験から得られた多くの気づきを、本稿を通じて館種・地域を越えて共有し、図書館全体の防災・減災に役立てていただくことにより、震災時に寄せられた多くの暖かいご支援に応えることができれば幸いである。

(さとう めぐみ)

  1. 本号:石川敬史「みんなで考え、その日に備える~小さな図書館でもできるシミュレーションの紹介~」でシミュレーションについて詳しく紹介している(編集注)。
  2. Business continuity planningの略。
  3. 中央図書館・中央図書館分室閉架書庫全フロア入口壁面に設置。
  4. 矢印型の蓄光テープを、中央図書館閉架書庫内の避難経路沿いの書架側面および床面に貼付。停電時でも蓄光テープの指す方向に避難することで、非常口に辿り着くことができる。
  5. 参考文献:柳瀬寛夫「4.家具類-本の落下対策を中心に」『第33回図書館建築研修会 東日本大震災に学ぶ』日本図書館協会,2012,p.75-82

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