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トップ > 刊行物 > びぶろす > 66号(平成26年10月)

びぶろす-Biblos

66号(平成26年10月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412
9. 【支部図書館紹介:ご自慢の一品】
特許庁の特別コレクションについて~高橋是清遺稿集、荒玉義人文庫を中心に~

支部特許庁図書館 佐々木 吉正

I. はじめに

特許庁図書館の源流は、明治20年(1887年)の特許局官制(勅令73号)をもって農商務省特許局庶務部内に図書館が置かれ、そこで図書の閲覧、特許登録品の陳列を行ったこととされております。しかし実質的には、明治17年(1884年)6月の商標条例の施行に伴い、農商務省工務局内に商標登録所が設置された際、同所に置かれた図書掛に遡ります。

このような長い歴史を有する特許庁図書館では、その時代々々の法改正等に際し蒐集した資料や、膨大な参考文献等を寄贈いただくことも多く、これを個人文庫として特別コレクションコーナーを設けて配架し、閲覧に供しています。その中でも、特許法・商標法創設時の貴重な資料である『高橋是清氏特許制度二関スル遺稿』と現在の特許法の基礎を確立した当時がわかる『荒玉義人文庫』を中心に、当館が管理・提供している特別コレクションについて紹介することとします。

II. 高橋是清氏特許制度二関スル遺稿

我が国で最初の特許法である「専売特許条例」が公布・施行されたのは明治18年、「商標条例」が公布されたのが、その1年前の明治17年でした。当時初代特許局長としてこれらの立法及び制度運営の指揮をとっていたのが、高橋是清氏です。

大正12年(1923年)の関東大震災により、特許局図書館(当時)に所蔵していた資料・文献は一切消失してしまいましたが、昭和9年、特許法施行50周年記念事業を機に、氏が所蔵していた条例草案、上申書、通知書、講演草案等の貴重文献が特許局に寄贈されました。その『高橋是清氏特許制度二関スル遺稿』(以下「遺稿集」といいます。)は、我が国の産業財産権制度の歴史を知る上で非常に貴重な資料となっています。遺稿集は全7巻で構成されていますが、その中でも特に興味深い内容が記載されているものについて、以下、紹介します。

(1)第1巻では、昭和9年10月30日に氏が商標条例、専売特許条例及び意匠条例等の立法関係資料を特許局に寄贈するにあたって、特許局と取り交わした取り決めが詳細に記述されています。具体的には、氏からは①原本は特許局が保管すること、②出版に際しては前後矛盾しないよう年代順に編纂すること、③出版の際は一部寄贈すること等の希望条件が提示された一方、出版に関しては一切を当局に委任される等としています。

(2)第4巻では、氏の明治41年発明協会での講演「我国特許制度の起因」(工業所有権雑誌 1 第32号(明治41年6月3日発行))が収録されていますが、同講演の中で、特許・商標制度に関心を持つきっかけとなった事件に言及しています。

明治7年頃のこと、氏はヘボン博士の「辞書」の版権を得るため特許に関する調査を行っていました。その際に、モーレー博士 2 から、「日本には版権はあるが、発明や商標を保護する規定がない。外国人は日本人が外国製品をまねたり、商標を盗用して模造品を販売していることに非常に迷惑している」 3 と指摘され、その時、初めて特許・商標制度を知ったとのことです。

その後特許等の調査の経験を買われ、明治14年に農商務省に異動となり、商標条例や専売特許条例に携わった氏は、①商標条例制定時の「商標とのれん 4 」との違いを理解してもらえずに苦労したこと、②専売特許条例制定時には、先だって明治4年頃に発明専売規則が発布されたものの、翌年に実施を中止した経緯があったため 5 、反対が多かったこと等が述べられています。なお、専売特許条例は、森有礼氏の賛同と協力で、参事院 6 を通過し明治18年4月18日に無事公布されました。この日は現在でも「発明の日」と定められています。

講演の最後には、当時の井上馨農商務大臣からの外国人への特許・商標権付与のため条約改正をすべきとの命令に対し、外国人への権利付与は将来の不平等条約の改正の取引材料として留保すべきと強く拒み、大臣も「それならば」と、改正はせずにおくこととした、との歴史的な証言がみられます。

(3)第6巻では、制度導入から数年後の明治23年、氏が初代の特許局長官として、特許局の将来の方針を述べた「特許局将来の方針に関する意見の大要」が収録されています。内容について、いくつかご紹介します。

  • 「特許意匠商標三条例の基因及び効果を叙述し以て将来の方針を論ず」
    特許条例が我が国殖産上及ぼした効果と、商標条例が欧米法の使用主義によらずドイツ法の登録主義を採用した理由が述べられています。
  • 「審判及び審査に関する現今の制度並びにその得失を論ず」
    将来にわたっても審査主義を維持する必要性が述べられています。
  • 「特許局の組織局員の待遇法及び事務執行の方法を論ず」
    特許局を独立の組織として収支相償を旨とした事業を行うべきこと、審査官の独立性確保の必要性が説かれています。

以上、3点ご紹介しましたが、これらの考え方は現在の特許制度に引き継がれています。

なお、特許庁図書館では寄贈された原文献をタイプ浄書したものを編纂し、複写製本及びマイクロフイルム化して閲覧に供しています。


<高橋是清氏特許制度二関スル遺稿(第一巻)>

III. 荒玉義人文庫

荒玉義人文庫は、元特許庁長官・荒玉義人氏が制度改正審議室長として、昭和34年の法改正に携わった当時の資料を中心に収録した文庫です。34年改正法は、現在の特許法の基礎を確立したものであるため、我が国産業財産権制度の歴史を知る上で大変貴重な文庫です。

文庫の主な資料として、①現行工業所有権法昭和25年~34年、②工業所有権制度改正審議会特許・意匠・商標部各会議事要録読会、③特許・意匠・商標法案審議会用・同法制局用、国会提出資料(衆議院・参議院)、④自由民主党特許法改正調査小委員会関係資料、⑤米国法、⑥英米法、⑦ドイツ法、⑧世界共通制度、⑨リスボン関連資料、⑩現代法学全集第1巻から第39巻、⑪勤務発明答申書等、の貴重な資料が保管されています。

なお、34年改正法では、①特許法の目的規定、②発明等の定義規定、③保護対象を「工業的発明」から「産業上利用できる発明」へと改正、④発明の進歩性についての要件の新設、職務発明規定の改正、⑤判定制度の新設、⑥特許権存続期間を出願から20年を超えないこととする規定の新設、⑦審判一審制の導入等が主な改正点としてあげられます。

また、特許庁図書館では原文献一部を、複写製本及びマイクロフイルム化して閲覧に供しています。


<荒玉義人文庫>

IV. 最後に

特許庁図書館では、上記に紹介した以外にも個人文庫・コレクションを配架 7 しています。特許法・商標法等の産業財産権制度が創設された当時からの貴重な関連文献や、それらに含まれる苦労話・エピソードを所蔵し、明治・大正・昭和及び平成と125年以上に遡って法改正等の調査・研究のための資料の提供等のサポートができる体制を整えています。また、産業財産権専門図書館として、日本国内のみならず、国外の産業財産権に関する資料についても収集しております。皆様方のご来館をお待ちしています。

(ささき よしまさ)


<特許庁図書館内書架>

  1. 特許庁図書館蔵
  2. 当時高橋是清氏は、文部省でモーレー氏の通訳を担当。
  3. 週刊『日本の100人』099号 2008年1月1日 p.24(株)デアゴスティーニ・ジャパン
  4. 明治以前からあるのれん分けは奉公人や家人に同じ屋号の店を出させる(出すことを許可する)こと。
  5. 当時は発明を審査できる人が国内におらず、多額の予算で外国人を雇ったにもかかわらず、期待できる発明品も現れなかった。このため、同様のことが懸念された。
  6. 明治14年(1881年)に太政官内に設置された機関で、法律の制定・審査や行政官と司法官、地方議会と地方官の権限争いの裁定などにあたった。同18年、内閣制度創設により廃止。
  7. その他の個人文書・コレクションとしては、①工業所有権関係の内外の古書、旧植民地・被占領地関係、経済法と工業所有権の関係、行政手続きに関する図書を中心とする佐藤文雄文庫、②著作権に関する内外の図書・雑誌類を中心とする川添不美雄文庫、③物質特許多項制に関する法改正資料を収録する社本一夫コレクション等があります。

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