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トップ > 刊行物 > びぶろす > 66号(平成26年10月)

びぶろす-Biblos

66号(平成26年10月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412
3. 【特集:大切な資料を守れ!-資料保存】
カビ発生後の当館での書庫管理について

支部農林水産省図書館農林水産技術会議事務局筑波事務所分館 伊藤 もも

1. はじめに

東日本大震災による当館の被害状況と被災直後の対応については、びぶろす電子化54号(2011年11月)において報告したところです。本稿ではその後の全国的な節電体制の下で発生した、カビへの対策について報告します。

当館では、室温30℃、来館者不在時は消灯といった節電対策を実行することになりました。そのためILL等の非来館での利用が中心の館内開架式書庫についても、暑さが厳しい夏中ほぼ終日消灯した状態でした。ようやく過ごしやすくなってきた9月下旬、何気なく書架を眺めてみると、そこかしこの資料にカビが発生しているのを発見しました。当時は書庫の温湿度管理についての知識もなく、カビに対してどのように対応していけばいいのか途方に暮れながら、手探りでの対策が始まりました。

2. 発生時の対応
(1)状況把握

館内資料を点検し、カビの発生場所を把握するところから始め、北側窓に近い洋図書中心に発生していることが確認しました。この付近に被害が集中したのは、寒暖差の影響で結露の発生しやすい窓に近く、また、空調等の関係で空気が滞りやすい環境であったことと推測しています。後にカビの被害は本だけではなく書棚などにも見受けられることを知り 1 再度点検したところ、ほぼ全ての木製書架や、館内の椅子、机の脚部にまでカビが生えていることが判明しました。

館内環境は、設置していた温湿度計がデータを記録するタイプではなかったため、経時的な変化を把握出来ていませんでした。問題発生から約半年後、データロガーを設置しましたが、それまでは日に2回各ポイントを周り、温湿度を記録することにしました。


(写真1)資料のカビ

(2)情報収集と対応方法決定

状況把握後、まず何をしたらいいのかノウハウがなかったため、その情報収集を行いました。

早速幾つかの参考となる資料 2 を確認したところ、生えてしまったカビを除去すると共に、再発防止のためには、適切な温湿度管理とカビの栄養源となるほこり防止対策として定期的な書庫清掃が必要であることが分かり、これらについて対策していくことにしました。また、国立国会図書館支部図書館・協力課を通して 3 同館資料保存課へカビ清掃の専門業者について相談したところ、IPM(総合的有害生物管理) 4 の基本的な考え方から国立国会図書館での対応事例を基にした実践的な対策 をご助言頂き非常に心強かったです。

3. その後の対応
(1)生えてしまったカビの除去

カビの除去は、専門業者への依頼も検討しましたが、予算的・時間的問題があり、図書館担当者が対応しました。カビは人体にアレルギーや日和見感染 5 を起こす危険性があるため、マスク・手袋の着用や作業後の着替え、作業環境として空気清浄機やHEPAフィルター付き掃除機を利用するなど、カビの吸い込みを最小限とするよう注意しながら作業を進めました。

作業は、まず上棚から順に資料をすべて取り出し、次にカビの発生した木製書棚の全ての側面を消毒用エタノールで拭き取り、最後に取り出した資料1冊1冊を点検しながらクリーニングし戻す順で行いました。この作業を通常業務の合間に1~2時間を目安として可能な限り毎日実施しました。湿度の低くなる冬になったことも幸いし、2~3ヶ月程度でほぼカビの除去は終了しました。

(2)館内清掃の見直し

カビの栄養源となるほこり対策として、館内清掃について見直しました。

まず、課内で清掃内容を検討した上で、施設管理担当者へ相談しました。内容によっては、実施時期が翌々年度までかかってしまったものもありましたが、相談の結果、清掃業者による館内床清掃の頻度を増やし、例年年末に職員で行っていた書棚の埃取り等を新たに業者委託出来ることになりました。

(3)専門業者への相談

今後もカビの発生をコントロール出来る程度に収めるため、専門業者に館内を一度見てもらうことにしました。

その助言を基に、館内東西南北4箇所の書棚最下段にデータロガーを設置し、年間を通しての温湿度観察を開始しました。

また、カビの発生源となる可能性があるということで、使用していなかった窓際のカーテンを外しました。その他、スペースに余裕のある書架については、湿度がより高くなる最下段の資料を上段へ移動するなど、図書館担当者で出来る対策はすぐに実施しました。

なお、当館の空調設備では出来ませんでしたが、取り込む外気の割合を調整できる空調であれば、雨の日は稼動を抑えるなどの対策も有効とのことでしたので、参考までにご紹介します。

様々な助言をもらえたこともさることながら、この時業者に相談し、当館の状況を既に把握頂いていたことで、後日、別の閉架式書架でカビが発生した際に迅速に作業を依頼することが出来、相談をしておいて良かったなと実感しました。

(4)館内温湿度の観察

初年度は、1ヶ月毎の結果をグラフ化し、課内に回覧し情報共有を行いました。6月~9月は相対湿度が高い傾向にあったため、施設管理担当課へグラフを提示し、土日も空調を稼動してもらうなどの対策を講じてもらいました。結果的に相対湿度を大きく改善させることは出来ませんでしたが、今後の相談体制を整えることが出来ました。

その後、冬場に居室と同レベルの加湿が行われていた際も、担当課に温湿度のグラフを提示することですぐに湿度を抑える対応をしてもらえました。また、年間を通して温湿度を把握することで、次年度以降6月~9月に注意して点検すべき箇所、秋~冬場に点検すべき箇所を把握出来るようになり、効率的な対応が可能となりました。

4. おわりに

カビ発生を機に始めた資料保存対策も3年目となりました。今年度も夏場は全体に相対湿度の高い傾向が続き、扇風機の位置を変更したり、除湿機の台数を増やすなど、四苦八苦しながら館内環境の安定に努めています。今のところ開架式書庫でのカビの再発はなく、小康状態を維持しています。

現在は、事務室を改修した閉架式書庫での清掃や環境改善に重点をおきながら、図書館全体の観察を続けています。書庫管理に終わりはありませんが、これからも課内および施設管理担当課など関係課と連携しながら様々な対策を組み合わせてカビ発生予防に努めていきたいと思います。

(いとう もも)


(写真2)データロガーで記録した当館の温湿度の状況

  1. 三浦定俊「IPMから見た図書館資料の保存」『PASSION』 VOL.33 2011
  2. 例えば次のような資料を確認した。
    国立国会図書館「カビが発生した資料をクリーニングする」
    木川りか「資料・書籍のカビとその対策」(東京大学東洋文化研究所講演会記録)
    『IFLA図書館資料の予防的保存対策の原則』エドワード・P. アドコック編集,国立国会図書館訳,日本図書館協会,2003<国立国会図書館請求記号UL755-H3>
    (編集注:以下、請求記号は国立国会図書館の請求記号)
  3. 行政及び司法の図書館は、支部図書館制度によって国立国会図書館と協力体制にある。
  4. 本号「図書館でのIPM(総合的有害生物管理)について」でIPMについて詳細に紹介しているので、参照いただきたい(編集注)。
  5. 国立国会図書館の資料保存対策やそのノウハウについては同館HPの「所蔵資料の保存」ページも参照(当館HP トップ > 国立国会図書館について > 資料の保存 > 所蔵資料の保存)。
  6. ふだんは病原性がないかまたはあっても毒性の弱い微生物が、宿主の免疫能力が低下したときに感染症を引き起こすこと。

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