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トップ > 刊行物 > びぶろす > 66号(平成26年10月)

びぶろす-Biblos

66号(平成26年10月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412
2. 【特集:大切な資料を守れ!-資料保存】
利用のための資料保存~カビ除去作業の外注について~

支部文部科学省図書館 松家 久美

1. はじめに

2013年4月、上司から梅雨までに書庫資料のカビ拭き取り作業を行うよう指示された。

それより前に支部文部科学省図書館(以下、「当館」という。)では、2012年7月に旧文部省庁舎にある書庫の資料にカビの発生を確認した。対象となる場所の環境とその特徴を把握するため、同年11月よりデータロガーによる温度・湿度計測を開始した。並行して職員による目視調査を行い、カビの発生が著しい資料を対象にエチルアルコール等を含んだウェットタオル 1 を用いたカビ拭き取り作業を試行していたところであった。

2. 原因と対策の検討

データロガーによる温度・湿度計測 2 は日々の温度・湿度の推移で環境を把握する目的があるので、本来通年実施することが望ましいが、2013年4月までに得られたデータだけを見る限り、非常に悪い環境とまでは言えなかった。他の図書館の事例やカビ発生の時期から、主に震災後の節電で空調を停止していた期間、特に梅雨から夏にかけてカビが発生、増殖したと推測できた。

また、当館書庫は、その後のデータから外気の温度・湿度の影響を直接受けることがわかった。これは、書庫に温度・湿度調整機能がなく、外気が直接入る構造になっているためであり、職員による目視調査においても外気吸気口周辺の棚の資料にカビの発生が著しいことから裏付けることが出来た。さらに、壁面の棚に密集して排架していた資料にカビの発生が著しいことから、換気が不十分であることがわかった。

以上から明らかになった当館の状況に加え、他の図書館の事例 3 4 、カビ対策に実績のある業者からの提言、図書、雑誌 5 6 、インターネット 7 8 、研修 9 10 等により情報を収集し、総合的に対策を検討した。

検討の結果、まず保存環境の改善が重要で、高温多湿にならないよう(資料周辺の相対湿度が60%未満)、除湿器とサーキュレータを設置した。さらに、発生してしまったカビ対策として、専門的なノウハウを有する業者にカビ除去作業を依頼することにした。

相当程度の広がりをもって発生しているカビに対しては、当初計画していた「カビの発生が著しい資料のカビを人海戦術で拭き取る」という対処療法的な作業だけでは不十分で、同じ環境に置かれている資料群全体に対してなんらかの作業を行う必要があった。ただし、満遍なくどれも丁寧に作業を行うことはコストと時間の観点から現実的ではなく、カビ被害の程度、資料の材質、所蔵館における資料の価値などから各対象資料に適した処置を選択することとなった。

また、資料にカビが生えているということは、棚等にもカビが生えていたり、胞子が付着していたりするので、棚板、床、ブラインド等もカビ除去作業を行う必要がある。

カビ除去作業について正しい知識と技術がなければその効果が疑わしいだけではなく、作業者の健康被害を引き起こす可能性がある。同時に、これ以上カビの発生を広げないよう、またカビ除去作業を行った資料に再度カビが発生しないように早急に保存環境を整え、集中的にカビ除去作業をする必要があった。

3. 事前準備
1) 作業対象資料の絞り込み(5月~7月中旬)

まず、カビ除去作業コストの抑制、保存環境の改善の2つの側面から廃棄作業を行った。選書も難しいが、それ以上に廃棄する資料を選択することは難しいうえに重要である。どの資料を保存していくかは、どのようなサービスをしていくか、どのような図書館にしたいかにつながる。ちなみに、当館は、文部科学省発行物や教育、科学技術、文化等の分野の行政事務遂行上必要となる資料を収集しており、いわゆる貴重書のようなものは少ない。それでも、文部科学省発行物は代替物ではなく原資料を将来の利用のために保存する必要がある。今回は、廃棄作業に充てられる期間が限られていたため、市販資料、最近の貸出実績、国立国会図書館所蔵の有無を考慮した候補リストを作成し、旧版や重複本、電子化されて代替可能な統計類を中心に約2,000冊の書庫資料の廃棄を行った。限られたスペースに必要な資料のみ所蔵することとは、書庫に程よい空間を確保でき、保存環境を整える効果もある。

2) 「仕様書」の作成(6月26日)

外注仕様書の作業内容は、カビ除去作業とカビ予防作業の2つに分けた。カビ除去作業では、原則的に資料の天・地・表紙・裏表紙・見返し・小口・あれば背全てについて消毒用エタノールを含んだ不織布等でカビを取り除くこととした。補足として、消毒用エタノールは消毒力が高い反面、水を含むため、資料の材質によっては大量に水分を含んで膨潤・変形してしまう恐れがある。そのような場合は、カビが認められる箇所のみ、あるいは無水エタノールを使用する等の手段でカビ除去作業を行うこととした。

さらに専門業者が書庫各所をサンプル調査したところ、意外にもブラインドが一番悪い値であったのでカビ除去作業の対象に加えた。

4. カビ除去作業(7月24日~8月22日)
1) 概要

当館所蔵資料のうち、カビ除去作業約8,000冊、カビ予防作業約33,000冊の資料と棚板、床、ブラインド等のカビ除去作業。

2) 作業内容
  • 第1書庫・第2書庫 13日間 64人日
  • 全体クリーニング 3日間 13人日
  • 検査 1日間 5人日

計17営業日 82人日

3) 作業手順
  1. 対象資料の状態を確認し、ブックトラックで書庫内の作業場所に運搬する。
  2. HEPAフィルター 付 11 掃除機でカビを吸い取る。
  3. カビ除去作業対象の資料は消毒用エタノールで表装のカビを拭き取る。
  4. 棚板を消毒用エタノールでカビを拭き取り、カラ拭きする。
  5. 処理済み資料を再排架する。
  6. 窓サッシ、ブラインド等の建具を消毒用エタノールでカビを拭き取る。
  7. 床をHEPAフィルター付掃除機で清掃する。


カビ除去作業

5. おわりに

これから、カビ除去作業の外注を検討される方に参考になるかもしれないと感じた3点を挙げる。

1) 組織(幹部や会計担当者)の理解

当初、カビ除去作業の外注と保存環境を改善するために必要な機器の購入については予算化されていなかった。幸い、情報収集の過程で課の幹部の理解を得、緊急かつ優先的に行うべき業務として必要な予算を確保することが出来た。さらに、予算執行のために必要な会計課への理由説明の際、データロガーの計測データが役立った。

2) 専門業者のノウハウの活用と対象資料にふさわしい対応策の選択 12 13

専門業者は常に資料保存研究を進めており、多くのノウハウを持っている。一方、貴重書と一般資料に行うカビ除去作業の方法は異なり、どの資料にどのような処理を行うかといった自館の資料保存マネジメントは当事者である図書館員にしかできない。業者によって得意とするところも異なるので、その特徴を理解し、良きパートナーとして協力関係を築きたい。

3) 保存環境の整備と定期観察

カビ除去作業からちょうど1年ほど経過したが、作業が終了したわけではない。建物の構造上、除湿機に排水管を設置することが出来なかったこともあり、梅雨から夏にかけて除湿機タンクに溜まった水を毎朝捨てることが新しい日常業務に加わった。それに伴い、書庫に立ち入る度に、溜まった水量、温度・湿度を確認することになり、日々書庫の保存環境を見守ることが出来るようになった。書庫の異変に出来るだけ早く気付き、カビの被害が限定的なうちであれば、外注せずに自分たちで対応することも可能である。さらに長いスパンで定期的に観測していきたい。

個人的な感想になるが、カビ除去作業は、自館にとって一番大切な資料は何か、どのようなサービスをしていきたいか、また、目指すべきかを見つめ直すきっかけになった。最後に、惜しみなく情報や知識を提供くださった図書館関係者、専門業者、特に夏の暑い書庫に籠って実際に作業を担当されたスタッフの方々に感謝したい。

(まつか くみ)

  1. 使用したのは「テックリンウェット
  2. 編集注:本号三浦氏記事に詳細あり(5.(1))。
  3. 国立教育政策研究教育研究情報センター教育図書館中央合同庁舎第7号館の6階にある教育専門図書館。2012年にカビ除去作業を外注。
  4. 飯野洋一「新聞縮刷版・製本原紙の黴拭き取り作業報告」『東京大学大学院情報学環社会情報研究資料センターニュース』第23号,2013.3,pp.255-257<国立国会図書館請求記号:Z21-2380>
    (編集注:以下、請求記号は国立国会図書館の請求記号)
  5. 中島尚子「国立国会図書館におけるIPM対策‐東京本館におけるカビ対策を中心に‐」『専門図書館』No.241号,2010.5,pp.12-20<請求記号:Z21-3>
    国立国会図書館東京本館でも平成19年に数千冊単位でカビの発生が発見された。専門業者に外注してカビを拭き取り、その場所にデータロガーを設置し、通年で温湿度を観察している。
  6. 槇野節雄「東京都立中央図書館のカビ対策」『ネットワーク資料保存』第104号,2013.6,pp.1-3<請求記号:Z21-1449>
  7. 文部科学省「カビ対策マニュアル」
  8. 国立国会図書館「カビが発生した資料をクリーニングする」
  9. 川越和四「平成25年度 第3回専門図書館協議会イブニングセミナー 図書館資料保存におけるIPM‐IPMの考え方によるカビ対策‐」(2013年6月19日 日本図館協会会館)
  10. 国立国会図書館の図書館員向け遠隔研修「資料保存の基本的な考え方」
  11. 定格風量で粒径が0.3 µmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタのこと(JIS Z 8122)
  12. 木部徹「特集:資料保存の10年 ゲタのはきかた、あずけかた」『ネットワーク資料保存』第65号,2001.9,pp.4-6
  13. 徳永結美ほか「特別コレクションの維持管理‐東京学芸大学附属図書館 平成21年度修復・保存事業を通して‐」『大学図書館研究』No.89号,2010.8,pp.10-19<請求記号:Z21-397>

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