びぶろす-Biblos
61号(平成25年8月)
5. ペトロナス石油リソースセンター― マレーシアの専門図書館を見学して
国立国会図書館総務部支部図書館・協力課
熊倉 優子
1. はじめに
2013年3月26日に開催されたアジア・オセアニア地域国立図書館長会議出席のためマレーシア・クアラルンプールを訪れた機会を利用し、マレーシアの専門図書館のひとつであるペトロナス石油リソースセンター(Petronas Petroleum Resource Center)を見学した。
ペトロナスは、1974年に創設されたマレーシアの石油及びガス等の供給を行う国営企業で、その正式名称は「Petroliam Nasional Berhad」という。本社ビルは、クアラルンプールの観光名所でもある88階建ての超高層ビル「ペトロナスツインタワー」として知られている。
ペトロナス石油リソースセンターは、ペトロナスツインタワーのタワー1の4階に位置しており、ペトロナスに設置された専門図書館であると同時に、社会に対し東南アジア地域の石油産業の情報を発信し、理解を促進する広報センターとしても機能している。

(ペトロナス石油リソースセンター入口)
2. ペトロナス石油リソースセンター概要
ペトロナス石油リソースセンターはペトロナス創業の1974年に設置された。企業内では「人材育成の場」として、人事部門に位置づけられている。今回、訪問した「本部」には石油及びエネルギー産業、ならびにビジネス、経営に関する資料が集められており、このほか支部として法律関連の資料を有する資料室(PRC Legal)、研究・技術関連の資料を扱う資料室(PRC Bangi)の二つがある。
対象とする利用者は、ペトロナスとその完全子会社の社員で、一般公開していない。
ペトロナス石油リソースセンターは米Innovative interfaces社の図書館パッケージシステムMillenniumを使用し、そのOPACはインターネットで利用可能である。
入室してまず目を引くのが、デザイン性が高く、機能的な内装だ。書架、閲覧机やレファレンスデスクといった図書館でお馴染みのスペースだけでなく、テレビ会議システムやPC、デジタルのホワイトボード等を備えた研修室、使い勝手の良さそうな小ぶりの会議スペース、音声・映像視聴スペース等の設備が整っている。仕事の合間や仕事帰りに勉強や調べ物に立ち寄りたくなるような居心地のよい空間づくりが心がけられている、そんな印象を受けた。

(書架と閲覧机)
3. 組織と取組
ペトロナス石油リソースセンターは、企画や予算等のいわゆる組織運営、コレクション構築を担当するリソースマネジメントセクションと、閲覧やレファレンス、図書館システム等を担当する情報マネジメントセクションの2つからなり、上級管理職レベルのプロフェッショナル8名、一般職レベルのサポート8名の計16名で運営されている。ペトロナスの能力評価の枠組みに基づき、リソースセンターにおいても職員に求められる能力が明確化されており、例えば、リソースマネジメントではコレクション構築、保存、図書館や情報センターのための企画立案等、情報マネジメントではナレッジ&情報源の評価、IT知識、図書館をより良くするためのマネジメント(Library Performance Management)等という項目が並ぶ。また、それらの能力を評価するため、アウェアネス、ナレッジ、スキル、アドバンスト、エキスパート、の5段階のレベルがある。職員によると、ペトロナス石油リソースセンターの多様な活動に対応するため、プロフェッショナル8名には、図書館情報学に限らず、PRや教育、企業の社会的責任(いわゆるCSR)といった幅広い知識が求められるそうである。
本センターでは、職員の知識と知恵、そしてアイディアを活用して、社員に図書館を利用してもらうため、遠隔地での研修や、廃棄する本を格安で販売するブックフェス、ラマダンチャリティ等の様々な取組を行っている。
先述の通り、残念ながら、ペトロナス石油リソースセンターは、原則的に一般公開されていない。しかし、広く社会に対して、ペトロナスの活動や東南アジア地域の石油産業の情報を発信し、理解を促進するために、本の寄贈や幼稚園に啓蒙ポスターを貼る等の活動も行っているそうである。
4. むすび
日本の企業内図書館を一度も訪問した経験がないため、単純に比較はできないが、ペトロナス石油リソースセンターは「専門情報機関総覧」等の数字上から見える日本の企業内図書館と比べると規模が大きく、業務上の調査支援の場としてだけではなく、人材育成の場として位置づけられ、利用者を増やすための取組を積極的に行っている点が強く印象に残った。
ペトロナスがこのような素晴らしい図書館を維持できるのは、私たちの生活に欠かせない石油やその他エネルギー資源を扱う国有企業であるからこそだが、図書館の職員ひとりひとりが、社員の自主的な学びの支援を通じて企業の業績に貢献すべく業務に従事する姿勢は、すべての図書館で働く者にとって示唆に富むものであろう。
最後に、お忙しい中、訪問の際に説明・見学を担当してくださったペトロナス石油リソースセンターの方々、また、本センター訪問を調整してくださったマレーシア国立図書館の方々に、この場をお借りして厚く御礼申し上げる。

