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トップ > 刊行物 > びぶろす > 61号(平成25年8月)

びぶろす-Biblos

61号(平成25年8月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412
1. 【特集:統計と図書館】
国際連合統計部の活動とは

国際連合経済社会局統計部
大崎 敬子

はじめに

 国際連合(以下、「国連」といいます)とは、国家で構成する世界機構であり、私たちの生活全般に影響する幅広い業務を遂行しています。ところが、安全保障から貧困の撲滅、環境保全、人道援助や人権問題に至るまで、その活動領域が多岐にわたるため、個々の活動の実態についてはなかなか理解されにくいのが実情です。そこで本稿では、国連の統計分野における業務を包括的に紹介することによって、国連業務の理解の一助となることを旨とします。ちなみに、国連システムの中では、国際労働機関(ILO)や国連教育科学文化機関(UNESCO)、世界保健機構(WHO)といった国連専門機関も独自の分野で統計業務を行っていますが、ここでは、主として国連本部事務局内にある経済社会局統計部(以下、「国連統計部」といいます)の活動に焦点を当てて紹介していきます。

1. 国連統計部の組織的位置づけ

 国連統計部は、国連設立直後、1947年に米国ニューヨーク市の国連本部内に創設された最も歴史の長い事務所の一つです。国連本部の中では経済社会局の下に置かれています。国連統計部職員数は一般職、専門職を合わせ120名程度。経済社会局にある11の部の中では、最も大きな事務所です。国連の特徴として、当然ながら、職員は世界中様々な国の出身者から構成されていますが、国連統計部の日本人職員は現在私一人です。

 国連統計部は、活動の全体を統括する部長を頂点として、経済統計部門(Economic Statistics Branch)、人口社会統計部門(Demographic and Social Statistics Branch)、環境エネルギー統計部門(Environment and Energy Statistics Branch)、貿易統計部門(Trade Statistics Branch)、統計サービス部門(Statistics Services Branch)の5つの部門によって構成されています。加えて、特別な統計事項について時限的に有志国が作業に加わる「議長の友人グループ(Friends of Chair Group)」や「都市グループ(City Group)」などが、国連統計部の仕事を側面から支援します。

2. 国連統計委員会への支援

 国連統計部は、国連統計委員会の事務局として、統計問題についてグローバルな見地から話合いをする場を提供しています。国連統計委員会は、1947年に国連経済社会理事会の機能委員会として設立され、国連加盟諸国の政府統計機関の連携を強化し、グローバルな統計システムを構築するにあたって中核的な役割を担っています。統計委員会は、国連加盟国の中から地域的分配に基づいて選出される24カ国からの代表によって構成されており、日本はこれまでにも幾度か、委員国として諮問的役割を務めてきました。2009年以降、日本は再びアジアを代表する委員国の一つに選ばれています。
 毎年2月末にニューヨークで開催される統計委員会の年次会議には、各国を代表する統計の専門家が参加します。統計という業務の重要性が認識されるに伴い、年々、参加国の数は増加傾向にあり、2013年2月末に開催された先の44回会議には、実に120カ国以上が一堂に会して賑わいを見せました。また、国連加盟国に加えて、統計業務を営む幾つかの国際機関の統計専門家たちも統計委員会の年次会議に出席します。

写真
年次会議の様子。多くの国の専門家が参加する。1

 年次会議の会期中は、限られた時間ながら、多岐にわたる統計分野における統計整備の進捗状況や、統計収集上の技術的な問題などがグローバルな視点から議論されます。国連統計部の業務に関する助言も行う一方で、どのような分野で統計の国際比較可能性を改善維持すべきか、といった問題も提起されます。また、委員会には多くの国が参加しますので、非公式な形ながらも、二国間の協力関係強化を促す場にもなっているようです。
 そのほか、統計委員会で議論される報告書と議事録は、過去のものも含めウェブサイトで閲覧が可能です。

3. 統計情報の収集と提供

 国連統計部の業務の根幹の一つは、加盟国各国から提供される統計の収集とその提供、統計利用の促進にあります。各国の政府統計機関は、国連統計部からの要請に基づいて定期的に様々な統計データを提供する取決めとなっています。国連統計部では、こうして提供された統計を出来うる限り国際比較可能な形で集積し、情報の共有化を図っています。その代表的な成果物として「Statistical Yearbook (国連統計年鑑)」「Demographic Yearbook (国連人口統計年鑑)」「Energy Statistics Yearbook (国連エネルギー統計年鑑)」などが挙げられます。
 これらの統計は、国が行政施策を立案する際の基礎資料として用いられるほか、研究機関や民間企業等によっても幅広く利用されています。また近年では、従来の印刷出版物に加え、収集された統計情報の多くをインターネット上で無料で提供することによって、より迅速に利用者にデータを提供することが可能となりました。例えば、人口統計年鑑商品取引年鑑などを提供しています。
 さらに、国連統計部では2008年にインターネット上でUNdata(UNデータ)を開設。国連統計部のみならず、国連専門機関等で維持されるデータベースを一元管理化し、単一のウェブサイトからのアクセスを可能にしました。現在、UNdataには34のデータベースがリンクされており、農業、犯罪、教育、エネルギー、環境、人口、保健、貿易、そして開発指標に至るまで様々な分野の統計の容易な検索が可能となりました。この画期的な試みは、クライアントに優れたサービスを提供した例として2010年の「国連プロジェクト21賞」2を受賞しています。

4. 統計の開発と国際標準化

 経済社会情勢の急速な変化に対応した有用な統計の基礎づくりも、国連統計部の大切な業務の一部です。また、新たに顕在化してきた事象をどのように的確に数値化するか、統計手法の開発にも力を注いできました。例えば、「女性に対する暴力」という現象について、世界的にも廃絶すべき重要課題であるとの認識は年々高まりつつありますが、その現象を把握するための基本概念が確立されていません。そのために、こういった事象がどの程度社会に蔓延しているのか正確に捉えにくいのが現状です。そこで、国連統計部では、この分野の専門家たちと協力して、「女性に対する暴力」の基礎概念を整備し、またそういった統計はどのような情報ソースから取得できるのか、ガイドラインを作り、その普及に努めています。
 また、様々な国で作られる統計に一貫性を持たせ、国際比較性を高めるために、事象の定義、分類、集計手順の標準化は極めて重要で不可欠な作業です。例えば、国連統計部では、1984年より長きにわたって国際標準産業分類(International Standard Industrial Classification of All Economic Activities, ISIC)の改訂に携わり、絶えず変化する経済構造に対応した産業分類の国際比較性を高めてきました。また、国民勘定システム(System of National Accounts, SNA)は、国際的に最も認知された統計基準であると言えるでしょう。国民勘定システムは、GNI、NNI、GNPなどの国民所得、国民生産および消費についての一本化された概念、分類、定義から構成されています。国連統計部は、2003年、環境およびアウトソーシングなど、グローバルな経済情勢に対応するための改訂を行いました。

5. 統計活動に対する技術援助

 国連統計部は、国際的な統計の改善や発展に貢献するため、統計能力が十分ではない国々への技術協力を優先課題の一つとし、積極的に推進してきました。具体的には、加盟諸国の統計官らを対象に、特定のテーマでセミナー、統計研修等を開催して、統計技術や統計行政の向上に務めています。また、要請ベースで統計専門家の派遣等を行ったり、統計能力の異なる近隣諸国間の交流を促して二国間の技術援助を支援することもあります。
 例えば、人口や世帯の実態を明らかにするために実施される国勢調査の分野では、調査に向けた国際的原則、ガイドラインを整備するともに、国勢調査実施のプロセスに即した専門的なマニュアルなどを発刊してきました。各国の国勢調査のスムースな実施を支援するために、Post Enumeration Survey (PES)、データ処理システム、集計値の評価など、特化したテーマの下、多くのセミナー、統計研修を行ってきました。その結果、開発途上国を含む全世界で継続的に国勢調査が実施されるようになり、そこから生み出される人口統計は開発計画の基礎資料として大切な役割を果たしています。
 国連統計部の技術援助活動は、近年、世界銀行や国連人口基金(UNFPA)、また統計業務に関心を寄せる国々からの助成を得てより拡大しています。2011-2012年度には、国連統計部主導で74の専門家会議、セミナー、統計研修を開催し、述べ3,400人以上の人材育成、技術の向上に貢献しました。こういった国際的な研修の場は、参加者同士の国際的なネットワーク、交流の基盤づくりにも大いに役立っているようです。

おわりに

 国際社会においても、近年、統計業務はますます注目を浴びるようになってきました。というのも、効果的な政策策定のためには、従来の経験則的な政策議論のみならず、エビデンス、すなわち数値的データとその分析に基づいた適切な判断が不可欠であるという考え方が、様々な分野で主流になりつつあるからです。国連においてこの傾向が最も顕著に体現された例の一つは、「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals (MDGs))」のモニタリングではないでしょうか。2000年に国連ミレニアムサミットで採択されたミレニアム宣言に沿って作られた8つの開発目標は、その後、数多くの数値的な目標ターゲットとして解釈され、国々の開発計画の策定と目標達成に向けての進捗状況を把握するのに大いに役立ってきました。同時に、開発途上国にとっては、ミレニアム開発目標という枠組みに基づいた開発戦略の達成度を国際社会に知らしめるために、関連する統計の整備、強化が必然となりました。こういった、統計に裏付けされた政策作り、それに伴う統計整備の重要性は今後ますます高まってゆくものと思われます。
 また、20世紀末から続くITの革命的な進歩は、より精度の高い統計を迅速に生み出すことを可能としてきました。その一方で、「ビッグデータ」と称されるように分析可能な統計は、官庁統計のみならず民間から放出されるデータの増加に伴って、膨大な量に膨れ上がってきています。果たして、このように市場に溢れる統計の質の管理を誰の責任において行うのか。統計的な名称や概念の統一化をグローバルなレベルでどのように図ってゆくのか。また、様々な統計の組合せが技術的に容易に可能となるなかで、個人情報の秘守をどのように維持してゆくのか。統計を取り巻く環境の急速な変化は、自ずと多くの新たな課題を呈しています。これまで、グローバルな統計システムの構築は、国連統計委員会といった場で、各国政府を代表する統計家たちが牽引役となって進めてきました。しかし、昨今の統計分野を取り巻く状況変化を考えれば、今後民間との協力強化の必要性は自明のことのように思われます。国連統計部においても、今後、こういった変化に迅速に対応した活動・業務が期待されているのは言うまでもありません。
(本稿は、筆者個人の見解に基づくものであり、国連の見解を代表するものではありません。)

写真
年次会議(右端が筆者)

  1. 写真出典サイト http://unstats.un.org/unsd/statcom/statcom_photos.htm
  2. 編集注:The UN21 Aword。1996年に国連事務総長により設立された賞。国連で行っているプログラムやサービスに関して、斬新で効率的かつ優秀な業績を残したスタッフやチームが表彰される。2010年の受賞は国連統計部にとって3度目の受賞となる。

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