びぶろす-Biblos
60号(平成25年5月)
3. 【特集:公開型専門図書館】
菓子資料室・虎屋文庫の紹介
株式会社虎屋 虎屋文庫
所 加奈代
菓子資料室・虎屋文庫は、和菓子文化の伝承と創造の一翼を担うことを目的として、昭和48年(1973)、株式会社虎屋の一部署として創設されました。現在、学芸員資格を持った6名の社員が在籍しています。
長年、御所御用を勤めてきた虎屋には、菓子の絵図帳や古文書、古器物などが多数伝えられています。虎屋文庫ではこれらを保存・整理するとともに、さまざまな菓子資料を収集しています。また、和菓子情報の発信として、年1回程度の展示開催(常設展示なし)や機関誌の発行を行なっています。
なお資料は非公開で閲覧サービスは行っておりません。
虎屋について
まずは虎屋について簡単に御紹介します。
弊社は室町時代後期に京都で創業し、和菓子の製造販売を行っています。
資料構成
虎屋関係の史料としては、江戸時代の御所御用記録を中心とした「虎屋黒川家文書」、明治時代以降、昭和22年(1947)の株式会社設立までの「近代経営史料」、昭和22年以降、現在までの企業資料があります。
一方、菓子関連資料は、菓子が描かれた錦絵などの絵画資料、菓子や食文化関連の古典籍、菓子を運搬する

元禄8年(1695)「御菓子之畫圖(おかしのえず)」
虎屋に現存する最古の菓子の絵図帳。
商品カタログの役割も果たした。
なお、自社に限らず、全国各地の菓子文化の情報収集に努め、地域出版の書籍や菓子に関わる研究論文も集めています。
資料は原則非公開ですが、京都の同志社女子大学図書館にて虎屋黒川家文書の一部を マイクロフィルムにて公開しています。
資料を収集することの大切さ
平成15年(2003)、社史『虎屋の五世紀~伝統と革新の経営~』(「通史編」「史料編」)を刊行しました。
近現代の執筆に際しては、社内の議事録や報告書類が記述のよりどころとなり、企業史料の収集保管の重要性を痛感しました。一方、昭和期の資料は、現本社ビル建築時等に廃棄されたものも多く、情報収集に苦労しました。
こうした経験から、社内に、「「今」の積み重ねが歴史になっていくのです。」と呼びかけ、現用資料は未来の歴史的資料であるという認識の周知に努めています。
現在、虎屋文庫は、社内文書の集積部署になっています。決裁書、報告書等の紙文書、社内イントラでの電子文書(紙に出力)を保管しています。パッケージ・ラベル等の包装材やパンフレットほかの販促物も保存しており、通常のアーカイブズが非現用文書を主に収集管理しているのに対して、現用文書の収集も積極的に行なっていることが特徴です。
※社史は各都道府県立図書館へ寄贈しているほか、社史・年史デジタル図書館「社史の杜」にて『通史編』(本文と年表)を公開。
和菓子情報の発信:展示
虎屋ギャラリー(赤坂・本社ビル2階、入場無料、展示期間中のみ開館)において年1回程度、和菓子の魅力を多彩な切り口で御紹介する展示を開催しています。
日頃の研究活動を基礎に、約半年をかけて調査・研究を行い、様々な史料を御覧いただけるよう努めています。
最大の特色は、必ず手作りの和菓子を展示することです。史料に説得力と楽しさが加わるとのお声も頂戴しております。

虎屋ギャラリー展示風景(2010)
昭和48年に開館。本年11月開催予定の「菓子を贈る(仮)」展で76回目となる。
平成23年(2011)「和菓子を作る 職人の世界」展では、江戸時代の菓子製法書から菓子を再現、虎屋の明治時代~昭和初期の製造風景写真をパネル展示しました。
また、昨年秋の「お宝満載!吉田コレクション 蘇る 江戸~明治の和菓子の世界」展では、個人コレクターの御所蔵品をお借りし、菓子関連の錦絵、版本・写本から、江戸時代の製菓道具まで多様な資料群を御紹介することができました。
なお、展示に関連した講演会やイベントも開催しており、好評を得ています。
和菓子情報の発信:機関誌『和菓子』
年1回、機関誌『和菓子』を発行しています。和菓子研究を深めることを目的に平成6年(1994)に創刊、本年で20号を数えます。「江戸と菓子」「甘味料をめぐって」等の特集テーマに沿って、様々な分野の方に論文を執筆いただいています。また、部員の論考を掲載することもあり、調査研究の成果発表の場ともなっています。
なお、創刊以来、毎号、所蔵史料の翻刻を掲載してきました。地道な作業ですが、所蔵文書を公開し、利用してもらうという点において重要な業務と考えています。
※『和菓子』は書店に流通していません。御購入御希望の方は虎屋文庫まで。
資料の活用:お問合わせ対応
和菓子に関する御質問に、電話・メール等でお答えしており、その件数は社内外あわせて年間約1200件 にもなります(問合せ先は本文末尾を参照)。一般のお客様をはじめ、マスコミ、研究者、学生の方、さらには外国の方からもお問合わせをいただいています。
全国でも珍しい菓子専門の資料室として、広く活動を知っていただき、今後も様々に御活用いただければ幸いです。
株式会社虎屋 虎屋文庫
〒107-8401 東京都港区赤坂4-9-22
TEL:03-3408-2402 FAX:03-3408-4561
e-mail:bunko@toraya.group.co.jp

