びぶろす-Biblos
60号(平成25年5月)
2. 【特集:公開型専門図書館】
九州には“ビジネスに効く”図書館がある――会員制ライブラリー「BIZCOLI」オープンから1年
公益財団法人 九州経済調査協会 アシスタントマネージャー
清水 隆哉
1. 九州の「知の集積・交流・創造」拠点を目指して
「渡辺通には“ビジネスに効く”図書館がある」
これは、会員制図書館「BIZCOLI(ビズコリ)」が、昨年10月に交通広告を出したときのキャッチコピーだ。渡辺通は、福岡市の中心地・天神を南北に走る目抜き通りで、九州の経済・文化の要所。BIZCOLIはその南端にある電気ビル共創館に、昨年4月、オープンした。
BIZCOLIが目指しているのは、「九州経済への貢献」と、そのための「知の集積・交流・創造」の拠点である。施設名の「BIZCOLI」は、「Biz Communication Library」の略。意欲的なビジネスパーソンが集い、ビジネスにつながる知識や人脈を獲得する。そして、新たなビジネスを育むことで、九州経済に貢献する――そんな場にしたいという気持ちで名付けた。
2. 「九州の知恵袋」が運営
運営母体の「公益財団法人 九州経済調査協会(略称、九経調)」は、九州の経済を研究・調査する非営利の民間シンクタンクである。1946年、九州大学経済学部の教授で後に片山内閣で農林大臣となる波田野鼎を中心に、「日本と九州の復興には、客観的なデータをもとに政策や経済活動を行うことが必要である」という想いのもと設立された。以来、「九州の知恵袋」たるべく、九州の景気動向や産業動向を調査・研究し、その結果を官公庁や企業、メディアなどに提供することで、九州経済に貢献してきた。これらの事業の公益性を認められ、今年の4月から公益財団法人となった。
また、福岡経済同友会の運営に携わり、財界ともネットワークがある。現在、当会の活動・理念に共感いただいている賛助会員(企業・団体・自治体)は、約500に上る。
1957年、当会は、それまで蒐集していた地域経済のデータや書籍を会員企業・団体に公開する経済図書館をオープン。統計書などの閲覧・レファレンスに加え、研究員が専門家の立場から問合せに答えるというシンクタンクならではのサービスを行ってきた。しかし、近年、ウェブ上での官庁統計データの充実により、利用者数が減少の一途をたどっていた。2012年に当会が共創館に移転したのをきっかけに、“九州の「知の集積・交流・創造」の拠点”というコンセプトのもと、リニューアルをした。
3. 「ビジネス」と「コミュニケーション」を活性化
BIZCOLIは、「ビジネス」と「コミュニケーション」を活性化するために、様々な機能を備えている。
a. ビジネスの最新情報・アイデアの提供
統計資料やビジネス書を開架に約1万冊、閉架に約20万冊所蔵している。ニーズが多い統計資料や書籍は、スペースが許す限り表紙を正面に向け、利用者が分かりやすいように資料を紹介するPOPを付けている。
また、九州経済についての灰色文献の所蔵も多い。当会の研究員による発表資料や企業のプレゼン資料、経済団体の提言資料まで多岐にわたる。書籍になる前の最新情報がコンパクトにまとまっているため、来館者からも好評だ。シンクタンクと経済団体の二つの顔をもつ当会ならではの蔵書といえるだろう。帝国データバンクや日経テレコン21など、企業の与信や人事が分かる書籍・データベースを備えているのもポイントで、企業のマーケティング担当者や経営企画担当者がよく利用している。
さらに、思考を深め、アイデアを創出する仕掛けとして、「GINZA HANDS」内の「HANDS BOOKS」や「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」などの選書を手掛けたブックディレクター幅允孝氏の協力で、「ビジネスパーソンが仕事の原点を考える」というコーナーを設けた。アイデア発想法やアーティストの自伝、歴史書や古典など、バラエティに富んだ資料をラインアップすることで閲覧者の感性を刺激する。
b. ビジネス人脈の形成
BIZCOLIでは、会議室やロビースペース(交流ラウンジ)で、週に1~2回程度セミナーを開催している。「ハラルiビジネス」「九州のニッチトップ企業」などの九州経済のトピックから、「くまモンのひみつ」といったカルチャーまで幅広い内容である。セミナー終了後には、ロビーの「交流ラウンジ」で講師と参加者による交流会を催すことが多い。お酒を片手にセミナーの話題について語り合い、懇親を深めつつ人脈を広げる場になる。
c. スキルアップのための個室空間の提供
ビジネスパーソンが、長時間にわたって、誰にも邪魔されず作業や学習ができる場所は、意外と少ない。BIZCOLIでは、半個室のワークデスク15ブースを「マイデスクゾーン」として有料で提供している。企画書作成や資格取得の学習などに集中する空間として、書斎感覚で利用できる。館内には、無線LANと電源を完備し、ノートPCを持ち込みさえすれば、それだけでビジネス拠点としての利用も可能である。

マイデスクゾーン
d. 上質な空間デザイン
BIZCOLIの大きな特徴の一つに、その空間デザインが挙げられる。企画段階から、図書館が魅力的な「場」であるためには、機能面だけではなくデザイン面も重要であると考え、地元デザイナーの高須学氏を起用した。交流ラウンジは、通りに面している側が、床から天井まで窓になっていて開放感がある。

交流ラウンジ
ブロック張りの壁面は、本の背表紙が一冊ずつ飛び出していて、BIZCOLIの象徴となっている。

交流ラウンジの壁面
4. 毎月約1000名の利用者
BIZCOLIの開館時間は、平日は10時~22時までで、当会の賛助会員企業・団体の職員なら、デイタイム(10時~18時)は無料で利用できる。ナイトタイム(18時~22時)や土曜日は、個人で有料プランにご登録いただく。また、賛助会員企業・団体の職員以外の方には、デイタイムも含めて、有料の利用プランを用意している(デイタイム・月額9,000円)。土曜日の利用は、月額2,000円の有料オプションになる(3月31日現在)。
昨年の利用者数は、イベント参加者・会議室利用者などを含めると、延べ約1万人を超えた。昨年11月に行った利用者アンケートでは、来館の目的は、「統計・会社情報など、仕事の資料の閲覧」、「資格取得・昇進試験などの自習」、「書類作成など、仕事の作業」の3項目が同率で最も多く、仕事に直結する用途で御利用いただいていることが分かる。
来館頻度を聞いたところ、最も多かった答えが「週1回以上」(39%)で、リピーターも増えている。アンケートでは、設備や蔵書、サービスについても聞いているが、いずれも高評価であった。
BIZCOLIのオープンは、当会にとっても大きなチャレンジである。運営体制や書籍展示・分類、新規会員の獲得など、まだまだ解決すべき課題は多いが、九州のビジネスパーソンには、「“ビジネスに効く”図書館」として、まずは好意的に受け取っていただいているようである。
- イスラム圏で、食べても宗教上問題のない食品や医薬品に与えられる認証。

