びぶろす-Biblos
56号(2012年5月)
5. 【特集 なんだろう、支部図書館】
司書の目で見た支部図書館
国立国会図書館利用者サービス部科学技術・経済課
東 朋子
はじめに
平成24年2月某日。国立国会図書館の『びぶろす』編集担当者より「司書の目で見た支部図書館」と題した原稿の執筆依頼がありました。聞けば、行政の支部図書館では図書館を専門に異動する職員はほとんどなく、更に文部科学省図書館は、代々、大学図書館からの出向者が赴任していることから、大学図書館と比較して思ったところを書いてほしいとのこと。筆者は文部科学省図書館に赴任して2年目、その前は某大学図書館に10年以上正職員として勤務しており、司書資格も大学在学中に取得しているので、確かに少しはこのテーマに即したことが書けるかも……と、今回の依頼を引き受けることにしました。
以下、筆者が司書として見た大学図書館と支部図書館の違いを、特に図書館サービスの視点から述べたいと思います。
1 図書館サービスの違い(1)参考調査業務
文部科学省図書館は行政府である文部科学省内にあり、省内の職員に対して図書館サービスを提供することがその使命です。一方、大学図書館の使命は、その大学の教職員および学生に対して図書館サービスを提供することにあります。この両者の違いは、サービスの内容や質の違いにも如実に現れており、その最も大きなものが“参考調査業務”(図書や雑誌・新聞などの紙媒体をはじめ、DVDやCD-ROM、インターネットで公開されている本文や画像、データベースなど、様々な形態の資料を駆使して利用者の求める情報を利用者に提供する業務)です。
文部科学省図書館の場合、サービスの対象者は主に省内の職員であるため、図書館職員は、時に国会答弁の原稿作成のための資料を探して提供したり、過去に成立した法案の起案原稿や各種委員会で審議された内容が掲載されている資料を調べて印刷したりと、利用者の求めている回答そのものを提供します。しかし、大学図書館は学生などの教育支援が目的であるため、図書館職員は基本的には回答そのものは提示せず、どのデータベースを使えばそれが調べられるのか、どのようにしてその資料を探せばよいのか、というプロセスやツールを示すにとどまることが多く、利用者が自ら資料を探し出せるように支援することが求められます。

カウンター内から見た文部科学省図書館閲覧室。筆者はこの目線で日々の図書館業務を行っている。
2 図書館サービスの違い(2)他館との相互協力業務
大学図書館と文部科学省図書館とでは利用者が求める資料の範囲も異なります。
文部科学省図書館では主に国内における政策や法律に関する資料の需要が高く、各省庁の発行する報告書類を取り揃え、必要に応じて国立国会図書館や他府省庁にある各支部図書館と連携をとって相互に貸出や複写を行っていますが、大学図書館は学術書や論文など研究に直結する資料を中心に収集しており、その範囲は海外にも及ぶため、国内の大学図書館や研究機関に限らず海外の各図書館にも依頼して文献を取り寄せ、逆に海外の図書館へコピーを送ったり資料そのものを貸し出したりしています。文部科学省は科学技術の分野も管轄しており、その分野の研究者である調査官もいることから、今後、海外から文献を取り寄せる必要が生じた時、大学図書館での海外依頼のノウハウが役に立つと思っています。
おわりに
本稿では主に図書館サービスの視点から違いを述べましたが、その他にも、研修制度やその内容、図書館としての活動など、文部科学省図書館は大学図書館と異なる点が多く、とてもここでは紹介しきれません。
ただ、利用者のために必要な資料を揃えて提供する、という存在意義はどちらも共通しており、利用者が満足するサービスを提供できたときの喜びはどの図書館でも同じです。現在、文部科学省図書館は支部図書館として、大学図書館は教育や研究を支援する図書館として、それぞれ独自のネットワークでサービスを行っていますが、図書館としての使命や目的が違っても、いつかその垣根を越えて双方が協力し合う体制をつくることができれば、より一層、利用者の満足のいくサービスを提供できるのではと考えつつ、筆をおく筆者なのでした。
(本稿は、筆者が支部文部科学省図書館在職中に執筆したものである。)

