びぶろす-Biblos
電子化55号(2012年3月)
6. 支部気象庁図書館談話会に参加して―お天気キャスター、図書館を語る!―
大森 健吾、藤戸 敬貴
1.はじめに
平成23年10月3日(月)、支部気象庁図書館閲覧室において、お天気キャスターの木原実氏を講師に迎えて、「お宝は図書館に眠る」と題した同館主催の談話会が開催された。同館の御厚意により、『びぶろす』の取材を許可いただいたので、本号で報告する。

(気象庁のキャラクター“はれるん”が運動会の装いで迎えてくれた)
今回、支部気象庁図書館では、庁内職員(気象庁本庁職員及び東京管区気象台職員)に図書館を知ってもらい利用増につなげたいとの思いから、著名キャスターを講師に迎えた談話会を企画したとのことである。当日は、会場となった同館閲覧室に用意された約70席が全て埋まるほどの盛況であった。
講師の木原氏は、俳優、声優として活動される傍ら、平成7年に気象予報士試験に合格され、ニュース・情報番組やテレビドラマ等で幅広く活躍されている。現在は、日本テレビ系列の夕方のニュース番組「news every.」にお天気キャスターとして出演(月~金曜日)されている。
木原氏の講演では、支部気象庁図書館に眠る「お宝」資料を紹介しながら、本や図書館にまつわる思い出、御自身の著書を執筆する際に心掛けていること、お天気キャスターになるまでの遍歴などをユーモアたっぷりにお話しされた。
「お宝」として紹介された資料は、16世紀ヨーロッパのラテン語で書かれた科学書 1 、江戸時代の絵入りの気象書 2 などであった。このうち江戸時代の書物の挿図は、「天使の梯子 3 」と呼ばれる気象現象や竜巻について、科学的に非常に精確に描いているとのことであった。
御自身の読書体験として、少年時代に学校の図書館の百科事典で読んだ「チェレンコフ光 4 」についての記述が、福島第一原発の事故報道を聴いているうちに鮮明によみがえったこと。H.G.ウェルズのSF小説『透明人間』を読み、科学に感銘を受けたが、少年探偵団シリーズの『透明怪人』をその続編と勘違いして読んだため、怪人二十面相のトリックが出てきて困惑したこと。そのような経験の影響か、今でも気象に関する数式はあまりわからないが、生じている現象を物語のように感覚的にとらえられるようになったことなどをお話しされた。また、国立国会図書館所蔵のマイクロフィルムで、第5代中央気象台長であった藤原咲平 5 博士の登場する新聞記事を読み、気象知識の啓蒙に尽力した先達に思いを馳せたことも述べられた。
講演後、会場からは、「天気を伝える際にキャスターとして心掛けていることは何か」、「大きな被害を出した台風12号・15号について、報道する際にどのような点に気を付けていたか」など活発な質疑があり、庁内参加者の関心の高さがうかがえた。

(伊勢湾台風当時の天気図を広げる木原氏)
所属機関の職員に図書館の存在や機能を認知してもらい、活発な利用を促すための広報活動が支部図書館各館の課題となっている。今回のような試みは、他館においても参考になるのではなかろうか。国立国会図書館が昨年度及び本年度に実施した、支部図書館職員特別研修「図書館広報をもっと魅力的に!―少人数職場ならではの即効変身術―」(電子化54号に参加報告あり)においても、仁上 幸治 講師(帝京大学総合教育センター准教授)が「オリエンテーションに意外性を」、「講習会を面白く」、「図書館員は明るく」といった点を強調されていた。今回の談話会においては、その分野の著名人を招き、参加者の関心の高い話題を上手に図書館の広報と結びつけており、さらに企画に携わった図書館職員からも楽しみながら運営している様子がうかがえた。図書館広報を魅力的にするためのポイントが実践された好例と言え、参加者にも図書館の意義がよく伝わったものと思われる。素晴らしい取り組みであり、今後ともこのような取り組みが続けば、図書館という存在が潜在的利用者にまで広く浸透していくのではないかと感じた。
最後に、このように有意義な企画に参加する機会を与えていただき、また本誌の取材も許可して下さった支部気象庁図書館に感謝申し上げたい。

(支部気象庁図書館の新着図書コーナー。“はれるん”や、職員手作りの紹介文が目を引く。)
(国立国会図書館総務部支部図書館・協力課)
- Taifnfierio, Ioanne著Opusculum perpetua me ; moria dignissimum, de natura magnetis, et eius effectibus
- 著者不詳、『天文異変記』
- 別名「ヤコブの梯子」とも呼ばれる気象現象で、雲の切れ目から太陽光が帯状にのびて見える。
- 荷電粒子が物質中を、その物質中での光の速度よりも速く走るときに光の放射を起こす現象。1937年、チェレンコフが発見。(『デジタル大辞泉』より)
- 明治-昭和時代の気象学者。明治17年10月29日生まれ。中央気象台にはいり,大正13年から母校東京帝大の教授を兼任し,昭和16年中央気象台台長となる。岡田(武松)・藤原学派を形成。雲,渦動の研究をつづけ,天気予報の現場にあって「お天気博士」としたしまれた。大正9年音の異常伝播の研究で学士院賞。昭和8年日本ではじめてグライダーをとばした。昭和25年9月22日死去。65歳。長野県出身。著作に「雲」「雲を掴(つか)む話」など。(『日本人名大辞典』より)

