びぶろす-Biblos
電子化55号(2012年3月)
2. 【特集:補助金による研究成果報告書】
競争的資金制度による科学技術研究助成事業とその成果報告書
恩田 裕之
国立国会図書館(以下、当館)では、競争的資金制度による科学技術研究助成事業の一覧・成果報告書を所蔵している。また、国立国会図書館蔵書検索・申込システム(NDL-OPACでは、報告書等をタイトルの一部等から検索することができる。本稿では、競争的資金制度による科学技術研究助成事業の特徴や、その一覧・成果報告書の調べ方について紹介する。
競争的資金制度とは
競争的資金とは、国の第3期科学技術基本計画の定義によると、「資源配分主体が広く研究開発課題等を募り、提案された課題の中から、専門家を含む複数の者による科学的・技術的な観点を中心とした評価に基づいて実施すべき課題を採択し、研究者等に配分する研究開発資金」のことを指す。また、このような競争的資金による助成事業を総称して競争的資金制度と呼ぶ。
現行の第4期科学技術基本計画では、競争的資金制度の改善及び充実を目指すことが盛り込まれ、「競争的資金制度は、競争的な研究環境を形成し、研究者が多様で独創的な研究開発に継続的、発展的に取り組む上で基幹的な研究資金制度であり、目的や特性に応じて多様な制度が設けられている」とされている。
研究者の自由な発想で研究開発課題を提案できるものや、国の重点政策に基づいた提案を求められるものなどがあり、多種多様なテーマの研究開発の支援が行われている。
競争的資金制度の予算額(平成23年度)
内閣府とりまとめによると、平成23年度予算総額は、約4,500億円で、主な所管省庁は、文部科学省約3,663億円(科学研究費補助金約2,633億円、戦略的創造研究推進事業約567億円など)、厚生労働省約422億円(厚生労働科学研究費補助金約376億円など)、経済産業省約144億円(省エネルギー革新技術開発事業約102億円など)、環境省約142億円(環境研究総合推進費約80億円など)である。
主な制度の特徴と採択課題一覧・報告書を調べるには
以下に主な制度の特徴と調べるためのツールについて述べる。
○ 科学研究費補助金
文部科学省及び日本学術振興会が資源配分主体となっている補助金である。人文・社会科学から自然科学までの全ての分野にわたり、あらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)を対象としている。研究の多様性を確保しつつ、独創的な研究活動を支援している。
国立情報学研究所(NII)が文部科学省、日本学術振興会と協力して作成している「KAKEN:科学研究費補助金データベース」で、採択課題、実績報告および成果概要等のデータを調べることができる。昭和40年以降の採択課題のデータ(配分額等)、平成10年以降の成果報告書などが公開されている。研究課題、研究種目、研究代表者や課題番号のほか、研究分担者、研究概要、キーワードなど、データベースの全文から検索できる。
当館所蔵の文部科学省(または文部省)科学研究費補助金研究成果報告書には、「Y151」で始まる請求記号を付している。また、以下の当館所蔵資料(1)~(6)に、研究種目、研究分野ごとの課題名・研究代表者一覧表が収録されている(【】内は当館請求記号)。
(1) 『文部科学省科学研究費補助金採択課題・公募審査要覧』平成13年度-【Z41-994】
(2) 『文部省科学研究費補助金採択課題・公募審査要覧』昭和63年度-平成12年度【Z41-994】
(3) 『文部省科学研究費補助金採択課題一覧』昭和55-59年度【AZ-612-25】昭和60-62年度【Z41-994】
(4) 『学術月報』増刊号 昭和54(1979)年度以前【Z21-50】
(5) 『文部省科学研究費等の配分結果 昭和33年度(学術月報別冊資料第1号)』【377.7-M753m】
(6) 『科学技術制度史 第1分冊 科学研究費(昭和21−34年度)資料編』【377.7-N684k】
○ 戦略的創造研究推進事業
科学技術振興機構が資源配分主体となっている競争的資金である。科学研究費補助金が、個々の研究者の自由な発想に基づく研究提案をもとに実施されるボトムアップ型の事業であるのに対して、戦略的創造研究推進事業は、国の政策目標である科学技術基本計画をもとに、研究領域・研究総括等が設定され、産業や社会に役立つ技術シーズの創出を目的とした、トップダウン型の事業である。研究の遂行形態等によって複数の事業に分かれており、CREST(チーム型研究)、さきがけ(個人型研究)、ERATO(戦略的創造研究推進事業・総括実施型研究)、ALCA(先端的低炭素化技術開発)、RISTEX(社会技術研究開発)などがある。
当館所蔵資料(7)(8)に、CRESTによる研究経過が収録されている。
(7) 『研究年報 戦略的創造研究推進事業チーム型研究CREST』平成16-18年度 (※年度によって当館請求記号は異なる。)
(8) 『科学技術振興事業団年報』1998-2003【Z74-B121】
平成10年度以降の研究年報はCRESTのホームページ内で公開されているほか、CREST以外の事業の研究領域、研究成果は各ホームページに掲載されている。
○ 厚生労働科学研究費補助金
厚生労働省が資源配分主体となっている補助金である。行政政策は適切妥当な科学的根拠に立脚する必要があることから、産官学の協力によって、そのための新しい知見を生みだすことを目的として行われている研究である。(1)行政政策研究分野、(2)厚生科学基盤研究分野、(3)疾病・障害対策研究分野、(4)健康安全確保総合研究分野の4分野に分類されており、専門家や行政ニーズに基づく課題が設定され、公募によって研究課題・研究班が募集される。
平成9年度以降の研究課題の研究成果は、国立保健医療科学院研究情報センター図書館が作成している厚生労働科学研究成果データベースに掲載されている 1 。当館で所蔵している研究成果報告書には、「Y155」で始まる請求記号を付与しており、「厚生労働科学研究費補助金研究・事業報告書」(または「厚生科学研究費補助金研究・事業報告書」)という文言が含まれる。
○ 環境研究総合推進費
環境省が資源配分主体となっている競争的資金である。環境問題を解決に導くための政策に、調査研究による科学的知見の集積や環境分野の技術開発等を通じ、貢献・反映を図ることを目指している。
環境研究総合推進費は、平成22年度に「地球環境研究総合推進費」と「環境研究・技術開発推進費」を統合して創設された制度で、平成23年度にはさらに「循環型社会形成推進科学研究費補助金」が統合された。「循環型社会形成推進科学研究費補助金」とは、平成12年までは厚生科学研究費補助金の一部であったが、平成13年に環境省が資源配分主体の「廃棄物処理等科学研究費補助金」となり、さらに平成21年に名称変更したものである。
当館で所蔵している研究成果報告書のタイトルには、「環境研究総合推進費」もしくは統合前の制度名称である「地球環境研究総合推進費」、「環境研究・技術開発推進費」、「循環型社会形成推進科学研究費」、「廃棄物処理等科学研究費補助金」のいずれかの文言が含まれる。また、「循環型社会形成推進科学研究費補助金研究・事業報告書(廃棄物処理等科学研究費補助金研究・事業報告書)」については、「Y157」で始まる請求記号を付与している。
環境省ホームページ内の「成果報告書データベース」で、廃棄物処理等科学研究費補助金、環境研究総合推進費、地球環境研究総合推進費の概要・成果報告書を検索・閲覧することができる。また、「実施課題一覧」で、平成11年度以降の実施課題・終了課題の一覧を閲覧することができる。
(国立国会図書館利用者サービス部科学技術・経済課)
- 厚生労働科学研究成果データベースについては、今号に掲載の磯野威「厚生労働科学研究成果データベース(MHLW-GRANTS)」を御参照下さい。

