びぶろす-Biblos
58号(2012年11月)
6. 【第78回国際図書館連盟(IFLA)ヘルシンキ大会(8/11-17)】
第78回国際図書館連盟(IFLA)ヘルシンキ大会に参加して~議会図書館分科会の活動を中心に~
国立国会図書館調査及び立法考査局政治議会調査室
山田 邦夫
フィンランドはかつてロシア帝国内の自治領であり、その時代にヘルシンキが首都となって今年は200周年を迎えた。これを記念してヘルシンキでは、年末まで様々なイベントが企画されている。
ヘルシンキは、この記念すべき2012年に、8月11日から17日までを会期とする世界図書館情報会議:第78回国際図書館連盟(IFLA)年次大会のホスト市となった。大会は、「図書館は今 - ひらめきを、驚きを、力を与えるもの」をテーマとして、当地のコンベンションセンターを中心に開催された。

会場のコンベンションセンター
1927年創立のIFLAは、そのホームページによれば、約150か国の1,500を超える機関が加盟し、毎年開催される大会には120余りの国から3,500名以上が参加するという。IFLAの本部はオランダのハーグに所在し、個々の活動は、いくつかの重要な戦略プログラム、40余の分科会、臨時的に特定事項を扱うために設けられるグループなどの形で行われている。
大会では、各々の活動や分科会ごと、あるいは相互にジョイントしてのオープンセッション、また各常任委員会の個別会合が行われる(今回、それらの数はプログラム上全部で218)。関係諸機関・団体・企業による展示やデモも83ブースが並んだ。その傍らでは各国からのポスター発表も行われていた。
国立国会図書館からは調査及び立法考査局長を団長とする8名の代表団が参加した。このうち筆者は、国会サービスに係わっている関係から、大会では「議会のための図書館・調査サービス分科会(Library and Research Services for Parliaments Section 以下、「議会図書館分科会」という)」の活動に参加したので、以下その報告をしたい。
分科会によっては、IFLA本大会の前に独自にプレ・コンファレンスが行われる。議会図書館分科会も、8月8日から10日まで、議事堂別館の円形の大講堂を会場として「プレコン」が開催された。事前登録者は72か国からの180名近くにのぼった。ここでのテーマは、「議会図書館 - 議会と市民に力を与えるもの」。
プレコンでは、まずフィンランド側から、フィンランド議会事務総長や議会図書館長をはじめとするスタッフが、憲法・政治制度、議会図書館、議会に対する調査サービス、国内図書館ネットワークなどについて説明した。議会の「未来委員会」委員長を務める国会議員も、その活動について紹介した。
分科会本体の側では、「議員を支える調査サービスの革新」と「市民に対する図書館・情報サービスの革新」を課題として、各国からの報告と討論が行われた。また、このたび完成した『ハンドブック:議会図書館における情報通信技術』も披露された。これは、同分科会が国連経済社会局および列国議会同盟と共同で作成したものである。
プレコンの合間には議事堂見学も行われた。ヘルシンキは、19世紀からのネオクラシックな建築物が街に統一感と一定のリズムを与えている。その中で1931年竣工の議事堂は、外見はどっしりしているものの、内部は意外に優美で繊細なアールデコ調である。本会議場は、よくあるように放射状の議席配置だが、全体の形はこれまた円形だった。

議事堂見学 - 本会議場
11日からの本大会においては、議会図書館分科会の常任委員会による会合が2回行われた。だれでもウェルカムとのことなので、常任委員ではない筆者も顔を出した。会合では諸々の報告やレビューのほか、来年シンガポールで開催予定の次回IFLA大会への対応、今後に予定されている関係会議、他の機関や他の分科会との協力について話し合われた。
同分科会のオープンセッションは、「議会図書館:民主主義を強くするもの」をテーマに13日午後に開催された。このほか、情報技術分科会、法律図書館分科会、政府機関図書館分科会、官庁出版物分科会といった他の分科会とのジョイントセッションも行われた。
13日午後のセッションで、筆者は「東日本大震災と国立国会図書館の国会に対する調査サービス」と題する報告を行った。まず大震災・原発事故とそれに対する政府・国会の対応を概略述べた後、筆者の属する調査及び立法考査局が行った一連の調査業務について紹介した。すなわち、震災直後に局内に震災調査特別班を設けて調査活動の推進・調整を行ったこと、国会に設置された原発事故調査委員会の活動にも寄与したこと、関連の議員向け刊行物を多数出版したことなどである。
筆者のほかに3名の発表があったが、とりわけ印象的だったのは、英国議会下院事務局からの報告だった。
英国議会では2008年以来、議会の仕組みや意義などについて市民の知識や関心を高めるため、全国的なアウトリーチ活動を展開している。そこでは下院図書館も重要な役割を果たしている。2011年には、522回のイベントを開催して2万人以上の参加者を得たという。時には両院の議長まで出動するらしい。
さすが近代議会制度発祥の国はやることが違うというべきか。他方で、投票率が低下しているのは本当だが、そこまでやる必要があるのか。下院図書館の方に尋ねたところ、義務教育には近年まで公民科目がなく、しかも「政治制度なんてなかなか教えようとしない」とため息まじりに言う。確かに初歩的な部分もあるが、活動内容はもっと魅力的だ。
プレコンのテーマにもあったように、議会図書館の市民サービスが今回のトピックのひとつになっていた。当館は国会サービスと市民サービスの両方を実現しているが、多くの国では両機能が分かれているため、議会図書館にとって市民サービスは必ずしも「当たり前」ではない。
そう考えると英国議会の取組みは、議会の情報公開とか議会図書館の一般開放というレベルを超えている。市民の政治参加を促すため、議会みずからが動き出したのだろう。

