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トップ > 刊行物 > びぶろす > 電子化54号(2011年11月)

びぶろす-Biblos

電子化54号(2011年11月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412
1.日本資料専門家欧州協会(EAJRS)2011年大会に出席して

岡久 慶

 2011年9月7日(水)から10日(土)まで英国(ニューカッスル)で行われた日本資料専門家欧州協会(EAJRS)2011年大会に出席したので、その個人的所感を報告する。

1.EAJRS第2011年大会

 EAJRSは、欧州域内の日本研究者、日本担当司書間の情報交換および日本からの情報入手促進普及の目的で1989年に創設され、毎年1回9月頃に年次大会が行われている。2011年の大会は、EAJRSの中心人物である日本研究者ラウラ・モレッティ氏が、日本研究教員として着任したばかりのニューカッスル大学に働きかけて実現したものである。
 ニューカッスルはイングランド北部、ロンドンから国内便で1時間の距離にある地方都市であり、大学はイングランド北部最大の言語学部を擁している。会場は現在学棟として使われている、旧図書館だった。参加者は、欧州および日本、カナダ、米国から、日本研究に関わる図書館員、研究者、出版関係者70名であった。

2.開会式

 9月10日の開会式では、今大会のホストであるニューカッスル大学言語学部部長代行のメア・クロス教授、東アジア言語研究科のジョアンヌ・スミス・フィンリー博士、学部付司書のルーシー・キーティング氏から歓迎の挨拶があった。続いて、EAJRSのウィリー・ヴァンドゥワラ会長から開会挨拶があり、今回の大会開催にモレッティ氏の多大な尽力と国際交流基金からの支援があったことの言及があった。

3.国立国会図書館からの報告

 開会式に続くセッション1で、私から「Great East Japan Earthquake and Libraries: Clearing up and Providing Support(東日本大震災と図書館:被害からの回復と支援策)」と題して、2011年3月11日に発生した東日本大震災が東北地方の図書館及び当館に与えた影響と、その後の図書館復興支援の動きについて報告した。
 支援策については、文部科学省による約87億円の補正予算計上の動き、日本図書館協会等が行っているHelp-Toshokanチームの派遣、義援金窓口としての活動、公衆送信権の一時的停止等について説明し、当館については汚損資料の修復活動、震災に関するウェブ情報のアーカイブ化、国会の審議のための報告書作成等を中心に報告した。

4.セッション

報告セッションは9つあり、1報告30分程度30件の報告がなされた。スケジュールはかなりタイトであった。
報告の中でも特に注目したものには以下のものがある。

  • 東京大学の長島教授が提唱し、文部科学省が学術研究の大型プロジェクトとして検討している日本語の歴史的典籍のデータベース(電子アーカイブ)の構築の紹介
     10年間で210億円の国費を投入する大事業で、今回の計画では、総数の把握と原本の所在が確認できている江戸時代末(1860年代)までの典籍(文書でなく書物)50万点強を対象としている。国内の数多くの大学や学会に協力を要請することになるが、中心となる機関は、国文学研究資料館と東京大学(大学院人文社会系研究科)を予定し、当館長尾館長からも協力の約束を取り付けているとのことであった。ただし事業の執行は「その時の[政治的]状況を文部科学省が判断して」のこととなり、現在はペンディング状態とのことである。
  • 立命館大学大学院の赤間教授が推進する、立命館大学アート・リサーチセンターにおけるデジタルアーカイブ事業
     研究者自らがデジタル画像撮影を含めたアーカイブ作業に当たりデータベースまで作成するノウハウを構築し、海外にもこれを広めている同センターの活動が紹介された。撮影の専門家ではなく、資料の専門家だからこそ、アーカイブ化に相応しい画像ファイルを作成でき、高速・大量のアーカイブ化が可能であるとの論点だった。
  • トロント大学の日本担当司書ファビアーノ・ロチャ氏による、北米日本研究調整協議会による日本の博物館・図書館・文書館(MLA)へのポータルサイトの紹介
     北米の図書館コミュニティで広く使われているLibGuidesを利用したシステムである。また報告に併せて、同大学において、北米日本研究資料調整協議会(NCC)主催、国際交流基金支援で行われる日本担当司書研修についての報告もあった。当館で行われる日本研究情報専門家研修に比べると若年司書を対象とし、講習が英語で行われることに特徴がある。
  • 当館で2011年2月に開催された日本研究情報専門家研修の報告
     フランス国立社会科学高等研究院・日本研究所日本研究所図書館司書のデュルスト康子氏及びプロイセン文化財団ベルリン国立図書館東アジア部日本専門家ウルズラ・フラッヘ氏から報告があった。
  • NACSIS-CATの利用の報告
     本報告は、1セッション(1時間40分)を使って行われた。まず国立情報学研究所の高橋菜奈子氏から同システムの最新動向についての説明があり、その後英国図書館司書の大塚靖代氏、セインズベリー日本藝術研究所リサ・セインズベリー圖書館司書の平野明氏から国立情報学研究所における同システムの研修、及び同システムに基くカタログ作成についての報告があった。このセッションは、特に大会に参加した日本人の日本担当司書にとって大きな関心の対象であり、外国の図書館において日本に関する情報、資料を提供する任を負う彼らにとっての、オンライン検索ツールの重要性を再認識させられた。
  • 古典籍の電子化・カタロギングに関するディスカッション
     参加した学識者の円卓会議の中で行われた議論で、今後の資料デジタル化に伴う書誌データの付与について、とにかく作成された画像に最低限の書誌を付けた状態でアップロードし、適宜情報を継ぎ足していくべきとする立場と詳細な情報なしではアップされた画像は役に立たないとする立場とで意見が交わされた。一方で、円卓の当事者ではない日本資料を担当する司書の立場からは、個別の資料に対する専門性を有さず、かつ広範な要望に応える司書の立場から、資料の入手性と使い勝手という面での中庸性を考慮してほしいとの意見も上がった。
  • その他
     多くの報告が行われたが、学識者の関心を反映してか、浮世絵など古典籍関係に関する研究発表が多い印象を受けた。

 以上のようなセッションに参加し、EAJRSにおける現在の関心事は、デジタル化された原資料への直接的アクセス(学識者サイド)と日本資料・情報を提供するためのツール(司書サイド)の2つではないかとの所感を得た。直接的関連性の薄いこういった報告が同じ大会で行われるのは、それだけ日本研究の裾野が狭いことを反映しているのかもしれない。

5.ニューカッスル大学言語学リソースセンター見学

 9月7日昼前に言語学リソースセンターを見学した。同センターは旧図書館内にある古式ゆかしい図書室で、日本語を始めとして各種言語の学習教材が揃えられていた。また興味深かったのは学生間の相互言語学習システムで、例えば日本人学生が日本語を教える代わりに英語を教えて欲しいという要望を掲示版に貼れば、それを見た日本語を学習したいイギリス人学生が接触を取り、お互いの言語を教え合うというものである。掲示板には多種多様な言語の申出/要望が貼られており、大学の国際的性格が如実に伺えた。

ニューカッスル大学言語学リソースセンター見学

6.ニューカッスル大学図書館見学

 9月7日の午後、ニューカッスル大学図書館を訪問した。開会式でも挨拶をされたルーシー・キーティング司書をはじめとするスタッフに、館内を案内していただいた。図書館は赤レンガ造りのモダンな建物だった。
 大学は折しも夏休みであり、内部改装の工事が行われていた。工事内容は書架を撤去し、閲覧スペースを確保するというもので、同大学が国内外から多数の生徒を集めている成功した大学であることが伺われた。また閲覧スペースもPC、OA機器がふんだんに設置され、会話をしてもいいスペース、果ては飲食も許可されるスペースが確保されており、進化し多様化する学生の需要に応える努力が伺えた。
 見学の最後に同館が所蔵する古い郷土資料の原本を直接見る機会を得た。資料の中には18世紀の民兵訓練マニュアル等非常に興味深いものがあった。

ニューカッスル大学図書館見学

7.おわりに

 今回のEAJRSの大会においては、会議以外にも、報告の合間のコーヒーブレイク、見学、レセプション等が、参加者とのよき交流の場となった。
 先述したEAJRSにおける関心事―デジタル化された原資料への直接的アクセス(学識者サイド)と日本資料・情報を提供するためのツール(司書サイド)―について、当館は大いに貢献できる立場にある。今後はそういった需要にあった専門スタッフの派遣によって、より大きな寄与をすることを期待したい。

参考資料
・日本資料専門家欧州協会(EAJRS)第2011年大会のプログラム 
http://eajrs.net/2011conferenceprogramme
・日本資料専門家欧州協会(EAJRS) 
http://eajrs.net/
・ニューカッスル大学図書館 
http://www.ncl.ac.uk/

(国立国会図書館総務部支部図書館・協力課)

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