• 利用案内
  • サービス概要
  • 東京本館
  • 関西館
  • 国際子ども図書館
  • アクセス
  • 複写サービス
  • 登録利用者制度
  • オンラインサービス
  • オンラインサービス一覧
  • 国会関連情報
  • 蔵書検索
  • 電子図書館
  • 調べ方案内
  • 電子展示会

トップ > 刊行物 > びぶろす > 電子化52号(2011年5月)

びぶろす-Biblos

電子化52号(2011年5月)

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412

1.【専門図書館紹介】国連大学ライブラリーの紹介

松木 麻弥子

はじめに

 国連大学ライブラリーは、国連大学本部ビル2階に位置し、国連大学で働く学者、研究員、職員、大学院講座に参加する学生、国内外に所在する国連大学研究・研修所へ図書館サービスを提供しています。国連大学憲章は、国連大学の機構を「国際連合憲章の目的および原則を推進するための研究、大学院教育研修、知識の普及に携わる学者の国際コミュニティ」と定義しています。この国際コミュニティは現在、日本国内の2つの研究所を含め、世界各地に15の研究研修センター・プログラムから成り立っています。このコミュニティにかかわる人々が図書館サービスの対象者です。これら国連大学で働く人々は、国際連合とその専門機関が関心を寄せる人類の存続、開発、福祉に関わる緊急性の高い、地球規模の諸問題を、自然科学、社会科学、人文科学を統合した学融合のアプローチによって、政策の枠組みやあらゆるレベルの管理活動の発展と強化に貢献することに努めています。また、ライブラリーは一般公開もしており、どなたでも所蔵資料や契約している電子情報やデータベースの来館利用をしていただくことができます。館内には7台のパソコンが設置されているほか、WIFIも利用可能にしています。電話、FAX、Eメールでのレファレンスもお受けしています。国連公文書の調査、各種国連統計の調べ方、国連条約集などの検索方法、オンライン版データベースの使い方など、国連諸活動に関する調査研究を進めるための支援もしています。

写真1

左は渋谷区神宮前、青山通りに建つ国連大学本部ビル。丹下健三氏設計で完成したのは、1992年6月。「国連大学」創設構想をうけて、日本政府が建設を担当し、国連大学に無償貸与され、敷地も東京都から無償で提供されているものです。左右対称ピラミッド状の建築は地上14階、地下一階構造で、一階はエントランスホール、二階右翼全域約900平米に図書館が配置されています。(写真1)

写真2
利用者用コンピュータは、ガラス張りの壁面に沿って
エントランスホールを見下ろす場所に設置しています。
(写真2)

写真3
カウンターを背に、
レファレンス書架を奥に配置。(写真3)


国連大学の設立と世界規模の研究・研修ネットワークの現状

 ライブラリーの使命を遂行し、専門的な図書館として機能するためには、国連大学の設立経緯を理解しなければなりません。第24回国連総会(1969年9月15日)への年次報告において、国連事務総長ウ・タント氏は国連大学設置の構想を明らかにしました。その内容は「真に国際的な性格を有し、国連憲章が定める平和と進歩のための諸目的に専念する」、「多くの国々から集まった教授陣と、多くの国々からの、また異なった文化的背景をもつ若い男女の学生からなる」大学であり、「学生たちは国際的な雰囲気のなかで共に暮らし、学ぶことによって、誤解と不信の基といえる国家間や異文化の垣根を取り払い、互いに一層理解しあえる」と考えていたのです。そして「国連大学」創設構想については「ユネスコが詳細計画を練るに相応しい」とし、またウ・タント氏はその大学が、「寛容の精神と思想の自由について、定評のある国に設置されなければならない」とも述べました。事務総長提言を受け、その後国連とユネスコによる準備期間を経て、1973年12月6日に国連総会は「国連大学憲章」を採択し、国連大学の東京首都圏設置を承認するに至りました。日本への本部設立に熱心であった日本政府は、国連大学の設立とその後の運営のための「国連大学基金」として1億ドルの拠出、首都圏に恒久本部施設を無償で供与することなどを確約しました。1974年11月に初代国連大学学長として、二ューヨーク大学総長へスター博士が任命されました。続いて12月2日には、東京の帝国ホテル内に大学本部仮事務所が開設され、翌年6月には仮事務所が渋谷の東邦生命ビル(当時)に移されました。
 渋谷の仮事務所開設からおそらく2-3年後には、ライブラリーが設置され、専任職員も配属されるに至りました。

 国連大学憲章採択によって正式に設立が決定した国連大学は、「研究、大学院レベルの研修および知識の普及に携わる、学者・研究者の国際コミュニティ」(国連大学憲章第1条1項)であり、その機能は「企画および調整のための中枢機構ならびに先進国および開発途上国における研究・研修センターおよび研究研修プログラムのネットワークを通して」(同)果たされることになったのです。キャンパスも教授陣も、また学生も持たない国連大学の活動は、教育機関というよりは、学術研究機関であったのです。国連諸機関のためのシンクタンク、という説明も近年までよく使われていました。
 国連大学には学問の自由と自治が保障され、研究プログラムは「文化、言語および社会体制を異にする人びとの共存。国家間の友好関係ならびに平和および安全の維持。人権。経済的、社会的な変化および開発。環境保全および適切な資源利用。基礎科学研究ならびに人類の開発に則した科学および技術の成果の応用。生活の質の向上にかかわる人類の普遍的価値現」(同憲章第1条3項)の主題を含むものとされています。大学の財政および予算は、国連大学に対して「各国政府、国際連合、専門機関、財団、大学および個人を含む非政府財源」から自発的に供与される拠出金、およびその収益をもって賄う(同憲章第9条一項)とされています。この点は設立当初から現在に至るまで、恒常的な財政難をもたらしています。
 1975年当初、大学理事会が決定した優先研究領域は、世界の飢餓、天然資源、人間と社会の開発の三つでした。1970年代以降、研究領域の改変を経て、現在国連大学研究・研修ネットワーク組織の主要領域と所在地は下記のとおりです。

研究所・研修センター
  • UNU-EHS(ドイツ、ボン)
    国連大学環境・人間の安全保障研究所
  • UNU-IAS(横浜)
    国連大学高等研究所
  • UNU-IIGH(マレーシア、クアラルンプール)
    国連大学国際グローバルヘルス研究所
  • UNU-IIST(中国特別行政府マカオ)
    国連大学国際ソフトウエア技術研究所
  • UNU-INRA(ガーナ、アクラ)
    国連大学アフリカ自然資源研究所
  • UNU-INWEH(カナダ、オンタリオ州ハミルトン)
    国連大学水・環境・保健研究所
  • UNU-ISP(東京)
    地球変動とサステイナビリティ、平和と安全保障、国際協力と開発
  • UNU-MERIT(オランダ、マーストリヒト)
    国連大学マーストリヒト技術革新・経済社会研究所
  • UNU-WIDER(フィンランド、ヘルシンキ)
    国連大学世界開発経済研究所

国連大学研究連携プログラム
  • UNU-BIOLAC(ベネズエラ、ミランダ州)
    国連大学中南米バイオ技術プログラム
  • UNU-CRIS(ベルギー、ブリュージュ、ヨーロッパ大学院大学内)
    国連大学地域統合比較研究プログラム
  • UNU-FNP(アメリカ、イサカ州、コーネル大学内)
    国連大学人間・社会開発のための食料・栄養プログラム
  • UNU-FTP(アイスランド、レイキャビク、水産研究所内)
    国連大学水産技術研修プログラム
  • UNU-GTP(アイスランド、レイキャビクエネルギー庁内)
    国連大学地熱エネルギー利用技術研修プログラム
  • UNW-DPC(ドイツ、ボン、国連諸機関共同プログラム)
    国連水の10年・能力形成プログラム

新しい使命-国連大学が大学院を開設

 国連大学は教授も学生もいない「大学」、学術研究機関として活動をしていた国連大学に新しい使命が加わったのは2009年12月21日、国連総会が「国連大学憲章の改定」を承認した時から実現へと向かいました。大学院修士および博士の学位を授与することが承認されたのです (国連大学憲章第1条8項) 。それまでも1999年以降毎年開催されてきた「国連大学国際講座」の包括ともいえる大学院として、サステイナビリティと平和研究科が開設され、2010年9月に第一期生を迎えるに至りました。選考された修士課程一年生は、海外からの5名という少人数ではあるものの、気候変動などをテーマとした、国連と海外大学院連携による短期講座を組み入れるなどし、一年のうち数ヶ月は40名ほどの大学院生が参加する規模になります。

 ライブラリーも大学院のための図書館という新しい使命が加わり、講座ごとに指定書を並べるコーナーをカウンター後ろに設けたり、教授や講師陣と大学院授業や研究のための選書、電子情報の選定について相談をするなど、蔵書や情報アクセスの充実、サービスの向上に向けて動き出しています。

写真4
ライブラリーで談笑する大学院生
(写真4)

写真5
大学院講義用指定書の並ぶコーナー(写真5)

国連機関図書館との連携-国連システム・コンソーシアム

 インターネットを介しての情報サービスが盛んになり、商用データベースや電子ジャーナルへの移行が活発になりつつあった1997年半ば、国連諸組織の図書館は高額な情報サービスの費用分担や、幅広い分野の質の高い電子情報を活用する手段を模索していました。その年後半には、ニューヨーク国連本部ダグ・ハマショルド図書館が調整役となり、国連システム・コンソーシアムを発足することになりました。1998年1月以降、最も優先順位の高く、かつ世界数十カ国に及ぶ国連諸組織への電子情報サービス提供に合意できたプロバイダーが提供する電子ジャーナル、データベース、電子図書館サービスなどの契約が実現し、当ライブラリーも当初からのメンバーとしてコンソーシアムに参加しています。そのため、国連大学の研究所への電子情報サービスも可能となり、本部図書館として内外の研究所のための情報支援という役割を担い易い環境が整えられました。しかし、国連機関として学術分野への貢献、大学院教育を柱とする使命を担う稀な組織であり、他の機関とは需要の異なる分野も多く、独自に契約交渉をしなければならない場合もあり、小規模組織の欠点である少予算のため、契約を断念しなければならない経験も少なからずしています。国連コンソーシアムの限界もあり、今後の電子情報サービスには課題が多く残っています。

ライブラリーの専門性とは?

 国連と大学という二つの特徴を最大限に生かすことは、ライブラリーにとっても長年の課題となっています。国連の発行する公文書、出版物、そして膨大な内容と量の電子情報の中から、国連大学の研究と大学院教育のために必要な分野を選択し、収集整備すること、利用し易い体制を整え、一般にも公開することは使命の一つと捉えています。国連広報センターとの連携により、国連公文書、国連年鑑は1946年以降すべて収集し、利用に供しています。国連出版書籍、統計書、報告書、条約集などの収集の他、電子情報やデータベースもアクセスを可能にし、検索や文献調査の仕方について支援をしています。
 蔵書構成の主要なものは、研究や教育のための書籍選定、国連大学出版物の収集であるが、選定収集する資料については、専門的な分野を検索するために、全て分類し索引を付与し、蔵書管理システムに登録をしています。分類は内部で決めた小規模分類で、配架場所を速やかに決める手段にすぎません。しかし索引については、国連UNBISシソーラスという国連本部ダグ・ハマショルド図書館が開発運用している索引語システムを用いています。

写真6
国連UNBISシソーラスのオンライン・データベース表紙。
国連公用語6ヶ国語で作成されています。(写真6)

 UNBISシソーラスは、国連文書や他の資料の主題分析のために用いられる語彙階層であり、国連活動の全般に亘るおよそ7,000のキーワードが収められています。語彙の概念を上位、下位、関連用語、類義語などと比較したり、検索したりすることができるデータベースでもあります。国連公文書のすべてに付与されるキーワードは、ダグ・ハマショルド図書館の専門担当官が行う仕事の一つです。当ライブラリーでは、国連公文書のように既に本部図書館で付与された資料を除く、全ての収集資料にキーワードを付与し、資料や情報の主題検索を可能な限り的確にできる工夫をしています。

シソーラスの例)

 HEALTH POLICY (10.02.00 カテゴリー)

 Broader terms: (上位概念)
 SOCIAL POLICY

 Narrower terms: (下位概念)
 DRUG POLICY
 NUTRITION POLICY

 Related terms: (関連用語)
 HEALTH
 HEALTH ECONOMICS
 HEALTH INDICATORS
 以下略


 国連機関図書館の多くは、このUNBISシソーラスを用いていて収集資料や電子情報にキーワードを付与しています。国連出版物や公文書を調査するには、シソーラスのキーワード検索が大いに役立ちます。国連活動が刻々と動くと同じように、語彙も変化するものです。そこで、国連ではシソーラス委員会を継続的に維持し、語彙の変更、シソーラスの改定、シソーラス・データベースの更新を欠かさずに実行しています。

おわりに

 国連大学ライブラリーの使命は、憲章第1条4項で述べられている「世界に広がる教育研究のコミュニティにおける活発な相互交流を促進するため、自らの活動から得た知識を国際連合および専門機関、学者ならびに社会に普及する」に基づくといえます。研究活動や大学院教育の内容、研究者や大学院生の知識探求の方法や手段、そして情報伝達のための技術が向上し、図書館利用の方法も大きく変化した今日、図書館にはチャレンジすべきことが多くあります。また、かつては関連の無い分野と思われがちであった、図書館サービスと環境問題や地球温暖化に貢献する図書館活動なども、日常的に取り組むことが必要であると考え、全員で実践していくように心がけています。

写真7
館内に掲示されている大地図の前に立つ国連広報センターで働くインターンの方たち(写真7)

国連大学ライブラリーホームページ
http://unu.edu/hq/library/ (英語) http://unu.edu/hq/japanese/library-j.html (日本語)

参考文献

国連大学憲章http://unu.edu/hq/japanese/know/charter/index.html (英文Charter of the United Nations University http://unu.edu/hq/rector_office/charter.html)

Narasimhan, C. V. History of the United Nations University: a personal perspective. United Nations University Press, 1994.

相良憲昭著『国際的教育・研究機関のネットワーク ― 国連大学の意義と現状を通して』国連大学広報部、1995年

United Nations. General Assembly. Introduction to the annual report of the Secretary-General on the work of the organization. September 1969.

写真(1)(2)(3)(5)(7) 国連大学ライブラリー
写真(4)国連大学広報部
写真(6)United Nations. Dag Hammarskjold Library

(国連大学ライブラリー室長)