びぶろす-Biblos
電子化51号(2011年2月)
- 発行:国立国会図書館総務部
(National Diet Library) - ISSN:1344-8412

2.IFLA2010ヨーテボリ大会に参加して
木藤淳子
2010年の世界図書館情報会議(第76回国際図書館連盟(IFLA)大会)は、スウェーデンのヨーテボリで開催された。ヨーテボリはスカンジナビア最大の港湾を擁する、首都ストックホルムに次ぐスウェーデン第二の都市で、大会開催中は8月という季節がら、夏休みで訪れた旅行者も多く見られ、野外コンサートなど様々な夏らしいイベントが行われていた。元々2010年の大会はオーストラリアのブリスベンで開催される予定であったが財政的な問題等で撤退、代替地としてヨーテボリが名乗りをあげ、通常よりも準備期間が短い中で実施にこぎつけたということだった。筆者がIFLA大会に参加するのは今回が初めてだったため、他の大会との比較ができないが、よくコーディネートされているという印象を受けた。
今大会は2010年8月10日から15日にかけて開催され、「知識へのオープンアクセス―持続的な発展の促進に向けて」というテーマの下、121か国から3,300名以上が参加した。筆者は特定の委員会等には属さず、今回多様なセッション等を聴講したが、その中から筆者が所属する国立国会図書館にとっても大きな課題である"デジタル化"に関わるものを幾つか紹介したい。

(主会場のスウェーデンエキシビション&コングレスセンター入口)
国立図書館分科会セッション
8月14日に著作権及び法的諸問題に関する委員会と共同で開かれたセッションでは、デジタル化が進む環境下でのオープンアクセスに関わる課題について、オランダ、カナダ、韓国、中国及びスウェーデンの5か国が報告した。
特に印象に残ったのは、「国立図書館にとってのオープンアクセスの諸課題」と題するオランダ国立図書館の報告と、韓国国立中央図書館の「知識社会における国立図書館の新しい役割」という報告であった。
オランダは自国内に国際的な大規模学術出版社を擁し、国立図書館でも出版社と連携するなどして、電子図書館の分野や電子化の進む学術雑誌の取扱いについて、早くから先進的な取組を続けてきたが、現在取り組んでいるオープンアクセスの仕組みについては、「これは新しいビジネスモデルであって、出版社に敵対するものではない。」と語っていたのが、オランダでも図書館の動きに対する出版業界の警戒心が高いことを逆に伺わせ、興味深かった。
デジタル状況への取組を精力的に進めていると見られる韓国の発表では、1990年代の財政危機が却って契機となって、ナレッジマネジメントの重要性が認識され、知識社会(ナレッジソサエティ)のための整備が進んだというのが印象的であった。出版社から提供されたデジタルファイルを点訳して視覚障害者に供する取組も紹介され、多角的なサービスの充実に目を見張った。
デジタル戦略のためのIFLA/CDNL同盟(ICADS)会議
8月15日に情報技術分科会と共同で電子化蔵書の長期保存のためのシステムに関するセッションが行われ、英国、オランダ、フランス、米国での取組について報告があった。 このうちオランダの報告は、国立図書館による電子納本(e-Depot)のストレージについてのものであった。オランダは2003年にe-Depotを始めたが、大容量化やフォーマットの多様化(将来的な可用性の確保も含め)等への対応を迫られている。2012年中に現在のストレージの保守契約が終了するため、更新に向けて2010年から2011年にかけて調達・開発を行うが、増大するデータ量や財政状況などを勘案して、すべてを同じレベルで保存するのではなく、資料群ごとの評価に基づき計画をたて、校正、付与するメタデータ、保存方法などについて優先順位を設けていることなどが紹介された。
米国の報告は、米国の有力な調査研究図書館が共同で取り組んでいるHathiTrust電子図書館についてのものであった。HathiTrust電子図書館は、参加機関の保有電子化コレクションを共有してアーカイブするもので、2008年に始まった。(報告時点で)既に500万冊分以上のデジタルデータを保有しており、2010年中に800万冊、2012年には1400万冊規模になる見込みという極めて大規模なものである。デジタルデータは、参加機関によって、グーグル社やインターネット・アーカイヴ社が電子化したものであったり、独自に電子化したものであったりと様々で、そういうことにとらわれず、共同で網羅性の高い仕組みを作っているということ、現在でもパブリックドメインのものが100万冊分以上あるということで、単に保存目的にとどまらずアクセスのオープン性も目指していることが刺激的であった。
IFLA大会では世界中の国の参加者から報告が行われるので、"デジタル化"への取組は、国によって大きな格差があることを改めて感じた。本稿では、日本と共通点の多い先進国の事例を紹介したが、ICT環境が未整備な国では、インターネット接続PCを配備するなど情報化の拠点としていわばネットカフェ的に図書館を活用する例なども報告され、ICT・デジタル化・ネットワーク化への対応が、各国・地域それぞれの状況に応じてであるが、世界の図書館共通の課題となっていることが実感された。
(国立国会図書館総務部管理課長)
