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トップ > 刊行物 > びぶろす > 電子化50号(2010年11月)

びぶろす-Biblos

電子化50号(2010年11月)

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412


3.平成22年度専門図書館協議会全国研究集会からの報告

竹内 英雄

1. はじめに

基調講演する松岡編集委員
基調講演する松岡編集委員

 平成22年6月24日、25日に東京都新宿区の日本青年館で平成22年度専門図書館協議会総会と全国研究集会が開催され、全国から210名が参加しました。今年度のテーマは「図書館の力をあなたに〜専門図書館の底力〜」です。図書館が冬の時代をむかえていると言われて久しく、図書館はその存在意義を問われています。図書館はあくまでユーザーのため、社会のために存在し、専門図書館は特にその母体組織の発展のために尽くすものでなければならないという原点に立ち戻って、図書館をユーザーと社会に届けるための知恵とスキルを点検し、図書館が持つ底力とは何かを問う集会となりました。

 まず、開会式に引き続き日本経済新聞社の松岡資明編集委員から「アーカイブと日本社会〜近代製鉄史を中心に〜」と題して基調講演が行われました。

 松岡氏は、記事を新聞に連載する際に取材した経験から、資料を保存することの重要性はもとより、資料を総合的な視点で読み解くことが資料本来の価値を発揮することであると感じられたそうです。

 近代製鉄の歴史は意外にもほとんど知られておらず、一般的に知られている八幡製鉄所以前に「黒船」騒動をきっかけとする幕末にその端緒がありました。以来、先人達の失敗と技術の蓄積により伝統的な「たたら製鉄」から近代的な「反射炉」による製鉄へと変革していきました。このことが一般に広く知られていないのは、製鉄の技術が前近代から近代へと続く歴史の連続性の中で語られてこなかったからであり、技術史・経営史の両面からアプローチをしないと事実は分からないということが原因でした。

 平成23年4月からは「公文書管理法」が施行(予定)され、今まで以上に各種の資料が確実に保存されることになることは第一義的に意味あることであると思いますが、さらには文書を保存するだけではなく系統的にかつ多方面からアプローチすることにより文書の価値をさらに高めることになると、改めて気付かされました。

 2日目は6つの分科会が企画され、私は第2分科会の「アーカイブズ学へのいざない」と第5分科会の「味の老舗のビジネス・アーカイブズ」に参加しました。

2. 第2分科会「アーカイブズ学へのいざない」の報告

 第2分科会ではまず、学習院大学の保坂裕興教授の講演がありました。同大学では、大学院人文科学研究科にアーカイブズ学専攻が開設されていますが、これは1)昭和62年の「公文書館法」制定にはじまる専門職養成への取り組み、2)平成15年にはじまる内閣府・国立公文書館を拠点とした公文書制度改革への活動、3)学習院大学自身を拠点とした教育研究上の取り組み、学会活動振興、授業科目の漸次増設、国際学術交流の推進という流れを経て平成20年にスタートしたそうです。

学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻パンフレット「記録を守り記憶を伝える」より
学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻パンフレット
「記録を守り記憶を伝える」より

 この専攻の開設により、アーカイブズ学の考え方を啓発・普及していく力、また団体組織や地域社会の中で整理、保存情報化を実践する力を育成しようとするものですが、2年を経て現実的な課題が明らかになりつつあるようです。課題としてあげられるのは、1)知識学習と実践学習、フルタイム学生と社会人学生などの間におけるバランス、2)教育・研究上の施設・設備、3)社会・国家の中でアーカイブズ活動をより一層積極的に位置づける法制度及び資格制度等の開発・創設がそれであり、「アーカイブズ学」としての難しさを教えていただきました。

 次に、国文学研究資料館の渡辺浩一教授の講演がありました。同資料館が実施するアーカイブズ・カレッジ(史料管理学研修会)は、アーカイブズ学研究の進展とアーキビスト養成問題に関わる運動とが関連して発展してきました。また、アーカイブズ・カレッジの第一期(平成14〜平成18年)では、歴史アーカイブズが重視されていましたが、平成19年にカリキュラムを大改訂し、アーカイブズ資源論が歴史アーカイブズ中心から脱却するとともにアーカイブズを取り巻く社会関係の科目を新たに設置しています。
 このように、時代に即したカリキュラムの変更がなされていますが、ここでも先の保坂教授と同様、研修生の多様性の問題や研修スケジュールの問題等があり、アーカイブスキルの向上に苦労されているようです。

 最後に、記録管理学会副会長の小川千代子氏の講演がありました。同学会の山崎会長が国立公文書館の雑誌『アーカイブズ』(第39号)に記録管理学会の紹介を寄稿し、その中で2000年以降の記録管理学会の研究大会での発表を内容分野別に分類整理していました。この分類整理によると、「人材育成」「教育・研究と記録管理」の2項目が総数70件のうち1割強を締めており、この分野はある程度厚みのあるテーマと捉えられているようです。
 講演の終わりに小川氏の個人的希望として、レコード・マネージャー、アーキビストといったカタカナ名ではなく、例えば「記録管理士」とか「保存記録師」といった日本語名称を付与することで、記録の管理保存が日本文化の中に明確に位置付けされ、記録保存の現場に専門家の存在を定着させることになると話されておりました。私も、ごく一部の専門家だけがその概念を理解できるカタカナ言葉よりも、目で見てわかる日本語名称のほうが万人に受け入れられやすいであろうと共感したところです。

3. 第5分科会「味の老舗のビジネス・アーカイブズ」の報告

虎屋文庫の展示の様子
虎屋文庫の展示の様子
パンフレット「虎屋文庫のご案内」より

 第5分科会ではまず、(株)虎屋 虎屋文庫研究主幹・担当部長の青木直己氏の講演がありました。企業アーカイブズの意義は、これまで社史との関わりで語られることが多かったのですが、社史とは違う視点でアーカイブズについて話されました。それは、アーカイブズは第一義的には親組織のために存在するとすれば、企業アーカイブズは、所属する企業の経営のために存在し、活動することを目的とするべきであるとして、虎屋文庫の活動を紹介されました。
 虎屋は室町時代後期の京都で創業し、480年の歴史を有しています。資料も1600年代以降明治に至る「虎屋黒川家文書」、明治以降株式会社となった時期までの「近代経営資料」、株式会社以降の「企業資料」などの他にも、菓子を中心とした食文化、儀式、有職故実、あるいは製菓道具、江戸時代に菓子を運搬した螺鈿作りの容器など、虎屋が使用した器物や寄贈を受けた道具類なども収蔵しています。
 昭和48年に開設された虎屋文庫の主要な業務は、和菓子文化の調査研究、社内文書の収集・保存・利用、機関紙の刊行などですが、長年の調査研究によって蓄積された和菓子情報や収集した社内外の記録資料を基に様々な情報を提供しており、昨年度は社外679件、社内773件の問合せを受けているそうです。
 また、虎屋では過去3000を超える菓子を作ってきましたが、その情報をデータベース化して業務に利用する一方、個々の商品(菓子)に関する情報を整理して、イントラネットで公開するなどしているとのことです。

 次に、月桂冠(株)広報室の木戸公司氏の講演がありました。1637年京都の伏見で創業したのが始まりで、明治38年に防腐剤入らずのビン詰めを発売するなどにより飛躍的な販売増となりましたが、根底には「品質第一」の酒造りがありました。月桂冠では、社員教育用として330年史、350年史、360年史を刊行していますが、社史を作るためには「原史料」を充分に取り揃える必要があり、江戸期から現在までの古文書資料を収集し、系統立てて調査・整理を行いました。
 社史編纂の基本的な考え方は、会社の真の姿を広く社会に理解してもらい、酒造業に対して正しく理解してもらうことを目的として、経営史、技術史などあらゆる角度から企業経営における思想のようなものを掘り下げたそうです。そして、月桂冠を担う社員達が、この社史を読むことによって現実を直視し、自分達の立場を理解し、どのように行動すればよいのか、さらには、未来へのメッセージを読み取れるようにし、誇りと自覚を呼び起こし勇気付けられことができる「社史」にしようとしたとのことです。
 また、月桂冠では、約100年前に酒蔵として建てられた建物を「月桂冠大倉記念館」として公開しています。同館では、「京都市指定有形民俗文化財」に指定された酒造道具を酒造りの工程にしたがって展示してあります。この記念館には年間12万人もの方が来館され、町の活性化にも一役買っていますが、最近では時に来館数のキャパを超えることもあり、近隣に迷惑をかけることがある一方で、冬場には閑散としており季節による差が非常に大きくなっていることから、来観客の平準化に思案しているとのこと。このような問題と取組みながら「大倉記念館」を地域とともに歩む施設として社会貢献ができる記念館を目指しているそうです。

 最後に、(株)中村屋CSR推進室の村上正人氏の講演がありました。中村屋は明治34年にパン屋として東京本郷で創業し、平成13年に100周年記念事業の一環として『中村屋100年史』を発行しましたが、資料整理・管理の責任者がそれまでいなかったため、各種の資料が分散し、社史発行まで大変な苦労があったそうです。
 中村屋では、創業者の経営哲学を伝承し実践することが会社及び社会のサステイナビリティを実現するものとしています。したがって「会社の歴史」は単に過去のことではなく、現在の行動の基軸になり、将来を確かなものとするツールとして活用しているとのことです。
 このことから、社員への歴史の伝承は非常に重要なものであり体系立てた教育が必要なため、2009年からCSR推進室主催による「社史講習会」を実施しています。講習の対象も管理職から一般職全員へと拡大し、さらには現場で働く契約社員、派遣社員へも広げ、中村屋に働く全員が社史を知るシステムとして確立しました。
 中村屋でのアーカイブズは中村屋で働く全ての人が未来を拓くために共有すべき財産であり、人員、予算面で厳しい状況はあるが集まった資料を系統立てて整理、保管していくことを目下の課題としているとの報告でした。

4. おわりに

 第2分科会では、アーカイブズあるいはアーキビストの養成の必要性は理解されているものの、実際に行うには法制度、資格制度等の課題が多数残されていることが示され大変勉強になりました。
 第5分科会では、それぞれ老舗が行っているアーカイブズについての報告があり、各社ともアーカイブズに対する目的がはっきりとしており、資料の整理・管理は企業経営に役立つもの、これからの企業活動の基となるものという意識を明確に持っていることに感嘆いたしました。私も専門図書館の一員として、組織に役立つアーカイブズに向けて努力していきたいと思います。
 最後に、このような有意義な研修会を実施された講師ならびにスタッフの方々に感謝いたします。ありがとうございました。

(支部国土交通省図書館 北海道開発局分館長)


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