びぶろす-Biblos
電子化48号(2010年5月)
- 発行:国立国会図書館総務部
(National Diet Library) - ISSN:1344-8412

1. 日本資料専門家欧州協会(EAJRS)第20回年次大会に出席して
藤巻 正人
2009年9月16日(水)から19日(土)まで英国(ノリッジ)で行われた日本資料専門家欧州協会(EAJRS)第20回年次大会に出席したので、その概要を報告する。
EAJRS第20回年次大会
EAJRSは、欧州域内の日本研究機関間の情報交換および日本からの情報入手促進普及の目的で1989年に創設され、毎年1回9月頃に年次大会が行われている。2009年の大会は、第20回という節目の大会であり、また、大会ホストのセインズベリー日本藝術研究所創立10周年という記念すべき年にあたっていた。大会の場所は、ロンドンの北東、鉄道で約2時間の距離にあるノリッジ(Norwich)で行われ、参加者の宿泊ホテルでもある、13世紀に建てられたメイズ・ヘッド・ホテルがメイン会場であった。参加者は、欧州および日本、カナダ、米国、台湾から、日本研究に関わる図書館員、研究者、出版関係者96名であった。

(会場であるメイズ・ヘッド・ホテル)
開会式
9月16日の開会式では、今大会のホストであるセインズベリー日本藝術研究所のエリザベス・エステベ・コル理事から歓迎の挨拶があり、セインズベリーおよびノリッジの歴史についての説明があった。続いて、EAJRSのウィリー・ヴァンドゥワラ会長から開会挨拶があり、今回の大会には欧州、日本、台湾、北米からの参加者があり、デジタルメディアへのアクセスが最近の重要な課題であるとの言及があった。
国立国会図書館からの報告
開会式に続くセッション1で、私から「国立国会図書館における新たなレファレンス・ツール ―リサーチ・ナビを中心として」と題して、2009年5月に公開された「リサーチ・ナビ」を中心に国立国会図書館の最近の活動について報告した。
リサーチ・ナビに関して、リサーチ・ナビは、調べるための手掛かりを提供してくれるのが大きな特徴であり、国立国会図書館が有する様々な資料を探すために役立つ情報を多角的に案内する便利な検索ツールであることを、実際にホームページを操作しながら報告した。また、最近の国立国会図書館の活動として、2009年度補正予算による資料のデジタル化の概要、インターネット情報の制度的収集の進捗状況、リンクリゾルバ連携などNDL-OPACのサービス向上点について紹介した。

(筆者の報告)
セッション
セッションでは、1報告30分程度であったが、報告者44名から三十数件の報告がなされ、かなりタイトなスケジュールであった。
報告の一部を紹介すると、国立新美術館(平井氏)から日本の展覧会カタログを海外へ送るプロジェクト「Japan Art Catalog (JAC) Project」の概要、オスロ大学図書館(マグヌスセン矢部氏)から北欧学術図書館の日本研究支援状況、国文学研究資料館から欧州の大学図書館・美術館などに所蔵されている日本の和装本の総合目録「コーニツキー版ユニオンカタログ」の現状、コレージュ・ド・フランス日本学高等研究所図書館(馬場氏)からフランスにおける日本関係資料のOPACの歴史と展望、英国図書館(トッド氏)からアーネスト・サトウなどの旧蔵書を含む同館所蔵日本古典籍コレクションの紹介、英国リーズ大学(ティニオス氏)からデジタル化による江戸時代の絵入本へのアクセス拡大の可能性、国際文化会館(林氏)から1952年に設立された同会館・図書室の歴史および使命、トロント大学図書館(ロシャ氏)から同大学と慶応大学との図書館員交換プログラムの活用状況と課題などについて報告があった。また、海外日本研究のための画像利用についてのパネルディスカッションなどが行われた。
今回のセッションでは、浮世絵など古典籍関係についての研究発表や資料紹介が多かったこと、資料のデジタル化およびデジタル情報・資料へのアクセスに対する期待が高いことが印象的であった。

(会場の様子)
ケンブリッジ大学図書館見学
9月18日の午後、大型バス2台でケンブリッジ大学図書館を訪問。同図書館東アジア閲覧室において、同図書館初めての女性館長Anne Jarvis氏の歓迎挨拶の後、日本部長の小山氏に同閲覧室、書庫および同図書館所蔵の平家物語、アーネスト・サトウ自筆ノートなどを見学した。同図書館は英国にある6つの納本図書館の一つで、700万冊の図書、120万点の定期刊行物を所蔵している。その後、同大学附属フィッツウィリアム博物館にて浮世絵のデジタル化プロジェクト「Utamaro Books Interactive」を見学した。歌麿筆「画本虫撰(えほんむしえらみ)」など3冊をデジタル化して、パソコンで頁をめくるように見ることができ、日本語本文の英訳や解説も表示され、インターネットで公開されている。
なお、2009年はケンブリッジ大学創立800年にあたり、キャンパス内の通りに創立800年を記念する幕がいたるところに掲げられていたのが印象的であった。

(ケンブリッジ大学図書館)
レセプション等
9月16日の夜、今大会の現地事務局であるセインズベリー日本藝術研究所においてレセプションが行われた。セインズベリー日本藝術研究所は、1999年にセインズベリー卿夫妻の支援により、日本美術および日本文化に関する知識の普及と理解の促進を目的として設立され、イースト・アングリア大学(UEA)、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)、大英博物館などと連携協力しており、同研究所内には、リサ・セインズベリー図書館がある。立食形式で軽食をとりながら、参加者とよい交流をもつことができた。
17日には、市庁舎にて、Evelyn Collishaw市長による歓迎昼食会が行われた。市長は伝統的服装で出迎えてくれた。市長の歓迎挨拶の後、EAJRS会長が挨拶をし図書を市長に贈呈した。その後、市議会議場を見学し、立食形式の昼食会が行われた。また、17日の夜には、伝統的英国料理の夕食会がメイン会場で行われた。テーブル着席形式だったので、参加者と落ち着いて意見交換・歓談するよい機会であった。

(市議会議場 中央が市長)
セインズベリー日本藝術研究所が毎月第三木曜日に、各分野の専門家を招き日本美術・文化関連の講義を行うレクチャー・シリーズがあり、17日の夕方、ホテルに近いBlackfriars Hallで行われレクチャーでは、ヴァンドゥワラEAJRS会長が「日本におけるドドネウス」と題して講演を行った。
また、大会最終日の19日には、総会が開かれ、2010年の大会日程を9月の第一水曜から土曜に行うことなどを決定した。総会後には、オプショナルツアーがあり、イースト・アングリア大学内にあるセインズベリー視覚美術センターを見学した。
今回のEAJRSの大会においては、会議以外にも、報告の合間のコーヒーブレイク、見学、レセプション等が、参加者とのよき交流の場となった。国立国会図書館のリサーチ・ナビ、2009〜2010年度に行われる補正予算による資料のデジタル化、2010年度から始まったインターネット情報の制度的収集の成果が、海外における日本資料専門家にも役立つことを願っている。
参考資料
・日本資料専門家欧州協会(EAJRS)第20回年次大会のプログラム
http://japanesestudies.arts.kuleuven.be/eajrs/programme_2009
・日本資料専門家欧州協会(EAJRS)
http://japanesestudies.arts.kuleuven.be/eajrs/
・セインズベリー日本藝術研究所
http://www.sainsbury-institute.org/
・ケンブリッジ大学図書館
http://www.lib.cam.ac.uk/
(国立国会図書館総務部支部図書館・協力課)
