びぶろす-Biblos
電子化47号(2010年2月)
- 発行:国立国会図書館総務部
(National Diet Library) - ISSN:1344-8412

3. IFLA2009ミラノ大会「これからの電子図書館(Digital Library Futures)」会議報告
佐藤 従子
2009年8月にイタリア・ミラノで開催されたIFLA年次大会においてIFLA専門家委員会とイタリア政府の主催で行われた電子図書館会議「これからの電子図書館(Digital Library Futures: User Perspectives and Institutional Strategies)」に参加したので、概要を報告する(注1)。
会議は、8月25日(火)終日にわたってミラノ大学構内で行われ、IFLAの部会・分科会関係者やCDNL(国立図書館長会議)をはじめとする図書館・情報機関の国際団体のメンバー等、200名以上が参加した。
プログラムは3つのセッションに分かれ、合計9つのペーパー発表と質疑応答が行われた。その中から印象に残った発表を2,3紹介する。
最初のセッションでは、最近の電子図書館利用者に関する調査研究に焦点を当てて、3つの発表があった。ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジのD.Nicholas教授からは、7年間の調査研究の結果あきらかになった研究者のネット上の行動についての発表が行われた。それによると、ネットユーザーは場当たり的、手当たり次第で、ネット上を跳ね回っている(bounce)。40%は一度訪れたサイトに戻ってこない。また検索の失敗をすぐに受け入れてしまう。読む(reading)より見る(viewing)傾向が強い。国や年齢などの属性によっても違いがあるが、しかし重要な点は、年を取った人々にも同じような傾向が見られる。つまり、インターネットは我々の情報のとらえ方、評価や利用の仕方を根本から変えつつあるが、それは若い世代にだけ表れ始めた将来の課題ではなく、既に現実に起きていることである(future is now)、ということだった。そのような現状の中で図書館等の情報専門職の果たす役割は何か、という問題提起がなされた。
その他には、欧州デジタル図書館”Europeana”における利用者からのフィードバックを取り入れる取組みについての報告、電子図書館の利用者調査に関する文献分析についての発表があった。

(電子図書館会議の様子)
次のセッションでは、コンテンツに焦点をあてて二つの発表が行われた。一つは作曲家グリーグの楽譜原本の電子化コレクションについての利用者の立場からの紹介で、もう一つは、電子図書館サービスの最先端を紹介した「いつ図書館は図書館でなくなるか(When is a library not a library?)」(S.Hasan氏:イスラエル博物館)と題した発表だった。Hasan氏は、前半で5つの国際的電子図書館プロジェクト(Project Gutenberg, Europeana, World Digital Library, The Internet Archive, Google Books)の概要を紹介し、後半ではFlickr、Delicious、FacebookなどのWeb2.0を利用したサイトやサービスを、図書館がどのように取り入れ利用しはじめているかについて紹介した。利用者の参加を受け入れ、積極的に促進する先進的な図書館サービスの姿が提示された一方で、図書館としてのプロフェッショナルな領域とどこで中庸を取るか、その線引きが課題として上げられた。
最後のセッションは、電子図書館時代の課題に対応する機関略をテーマとし、中国国内の電子図書館構築のための協力活動、イタリア政府機関による図書館だけでなく博物館、文書館も含む電子化プロジェクト、World Digital Libraryの取組み、国際出版社協会(IPA)会長による出版者の立場からの図書館との連携協力、の4つの発表があった。
そのうち、World Digital LibraryのディレクターであるVan Oudenaren氏(米国議会図書館)の発表では、現在の電子図書館をめぐる様々な課題とそれに対応する戦略、及びその具体化の一例としてのWorld Digital Libraryの紹介がなされて示唆的だった。
最後に、IFLA専門家委員会を代表してイタリアのTammaro氏が全体のまとめを行い、1)利用者との協力、2)電子技術の可能性を最大限に活用すること、3)文書館、博物館との国際的協力などを盛り込んだIFLAのヴィジョン声明案を提示して会議は終了した。
(注1)プレゼンテーション・ペーパーをはじめとする会議資料は、下記サイトにて公開されている。
http://www.athenaeurope.org/index.php?en/143/digital-library-futures-milan-25-august-2009

(筆者)
(国立国会図書館関西館主任司書)
