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トップ > 刊行物 > びぶろす > 平成21年冬号(電子化43号)

びぶろす-Biblos

平成21年冬号(電子化43号)

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412


3. IFLA2008 in Quebec レポート−メンターとメンティ、そしてイラクZaytun図書館−

竹内 ひとみ

竹内 ひとみ
(筆者)

 2008年のIFLAは8月10日から14日までの5日間、カナダのケベック市で開催された。ケベック市は今年、市政400年のお祭が開催され、大勢の観光客で賑わっていた。そのためIFLA大会参加者のホテルは満室に近い状況のようだった。
 IFLA参加を決め、ホテルを予約した当初時差のことをあまり考えずに、成田を8月8日の夕方5時に出発し、同日の夜7時にはケベックに到着するのだが、迂闊にもホテルの予約を翌日の8月9日からしかとらなかった。このことが判明したのが出発数日前で、もうその時は時遅しで全くお手上げの状況であった。ということでケベック到着の初日のホテルがとれないままに、成田を出発することとなった。
 当日は飛行機が霧で遅れ、夜9時近くにケベック空港に到着した。しかしラッキーなことに空港にIFLA事務局の方が出迎えてくれ、流暢なフランス語で冷蔵庫も電子レンジもある空港近くのホテルをとってくださりその上バスで送ってくれる親切振りである。しかしそうなるまでは、始めての土地に向かう間中不安一杯の気持ちで到着したが、IFLA事務局の方々の機敏な対応でなんとか初日にホームレスにならずに済んだ。唯々感謝の一言である。その時私と同じように空港でホテルを探していた、インドネシア国立図書館の方や、キューバの方達とはその後、IFLAの会場で会うと、10数年来の旧友に会ったように思えた。ということで「禍転じて福となす」幸先のよいスタートを切ることができた。
 私のこのIFLAレポートでは、参加したセッションの中から「女性と情報、図書館についてのディスカッショングループ」と、また年々盛大になっているポスター・セッションから韓国京畿道によるイラク図書館建設の2つについて報告する。


<女性と情報、図書館についてのディスカッショングループ>

 8月11日「女性と情報、図書館についてのディスカッショングループ」のセッションが開かれた。このセッションについては2年前の韓国ソウル大会で、今回のセッションの準備のためにいろいろと議論したことを思い出した。
 セッションは全体で2時間を1時間ずつの二部構成のワークショップ形式である。まず全体会が開かれ、英国のユニバーシテイ・カレッジのマリア・カテーラさんの司会で始まった。集まった参加者は三つの部屋を打ち抜いたかなり広い会場に約170名前後の参加であった。大半は女性だが、数名の男性が参加していた。司会者の挨拶の後、「これからリーダーシップに関連した幾つかのテーマに分かれてディスカッションしますから、ご自分の関心のあるテーマのテーブルについて下さい。」と言われた。私は、「メンターとメンティi」に参加した。
 この「メンターとメンティ」の会は10名ほどの参加者だった。まず参加者が自己紹介で一巡した後、そのグループの司会進行役の方から
 1. メンターとは何か?
 2. メンターになるにはどのようにしたらよいのか?
以上2つのポイントについてご自分の体験を踏まえた話をされた。彼女の場合は、ライブラリアンになる前に様々な職業を経験していた。その中でメンターになるにあたって有効だったのはファーストフード店のドライブスルーの店員と、ブティックでの販売員の経験が役立ったとのことである。それはこの二つの仕事とも「問題が起こった場合、限られた時間内に自分一人の力で問題を解決していかなければいけなかったので鍛えられた」とのことである。
 そして「メンターとは何か?」について、スポーツなどのコーチでは、ある特定の目標の元に、特定の技術を持った人を言うが、メンターの場合はメンター、メンティの双方がそれぞれの人生を通じての長い関係であり、この関係はライブラリアンという専門職のキャリアを積んでいく中で、メンティ、メンター双方にとって有益なものとなるような関係でなければならないとのことである。
 また、「メンターになるにはどのようにしたらよいのか?」に対して「メンターになるための3つのポイント」が紹介された。

(1)まず自分の長所と短所を明確に意識する。そのためにもっとも身近な職場の同僚に聞いてみるのも有効である。
(2)視野を広く持つこと。そのためには図書館界という一つの世界からだけではなく、様々な視点から考えられるようにすること。例えば、PRの仕事をすれば、マーケティングに強くなれるし、また付随して予算や財政問題への理解を深めることができる。
(3) 何ごとにもチャレンジする。例えば、毎日3つ以上新しいことにチャレンジする。例えば、自分が素敵だと思っている人に、「話しをしたい」と申し込んでみる。今まで一度も話したことのなかった人と会話をしてみる。新しい目標を持ってみる等、小さなゴールやポイントを作って新しいことにチャレンジしていく。
またメンターを依頼する時は、事前に履歴書や身上書を持っていくとよいとのことである。メンターとメンティは同じレベルの人でもよいし、同僚がメンターといった関係も推薦できるとのことである。また、ALA(アメリカ図書館協会)ではメンタープログラムを進めているとのことであるii

以上の話の後、これからいよいよディスカッションが始まるという時に、丁度1時間が経ちこの会は終了の声が聞こえた。ちょっと尻切れトンボのような気がしたが、すぐに後半のプログラムが待っていた。

 会の後半は英語、フランス語、スペイン語といった言語別に分かれて、「リーダーシップ」についてのワークショップである。
 この回も一テーブル10人前後のグループに分かれた。私は、元ALA(アメリカ図書館協会)会長のバーバラ・フォードさんがスピーカーの英語のグループに参加した。
 まず、スピーカーが「リーダーシップにとって大切なことは何か」をキーワードを上げながら話を進めた。
 1. “Vision 展望” どこに向って進んでいこうとしているのか。その方向性を明確にすること。
 2. “Empower 実力をつける” リーダーは組織目標のために、スタッフを選抜し実力をつける。
 3. “Diplomacy 外交的手腕” 特に多文化社会では相手に不快感を与えないことが重要。
 4. “Communication/Feed back コミュニケーション/フィードバック” リーダーは特に多文化社会においては、顧客、スタッフ、チームメンバーをよく観察しその話をよく聞き、前進するために学び、必要且つ効果的に情報を提供すること。
 5. “Risk Taking リスク” リーダーにとってリスクを恐れずに、積極的に新しいプロジェクトやプログラムを通して将来の可能性を見出していくことが本質的に求められている。スピーカーの場合はその一環として原書で本を読むことにしているとのことである。
 6. “Personal Style スタイル” 彼女の場合は背が小さいということが自分のスタイルであり、他の人から認識されるID的なものとなっている。個々人がリーダーとしてのスタイル(カリスマ型や楽天型等)を持つこと。
 7. “Curiosity 好奇心” 何にでも関心をもつこと。
 8. “Cultural Sensitiveness カルチャー” 例えば、「皆さんの社会では女性の年齢を率直に聞いてよい文化かどうか?」という質問が参加者に投げ掛けられた。「日本では一般的に、女性に対して面と向っては、してはいけない質問と考えられている。しかし最近は人にもよるかもしれない」と私が応えると、韓国の大学図書館長さん(女性)が「韓国でも反応は同じである」と応えた。その後アメリカのレディファーストの文化はどうなのか、参加者から思い思いのお国柄のでている話題で話が弾んだ。という間に1時間という時間があっという間に過ぎてしまった。

 このセッションが開催された次の日に、このセッションのまとめと次回のミラノ大会に向けての会議が持たれた。その内容は次のようなものであった。

  • 昨日のセッションには170名前後の参加者があり、大成功であった。
  • 2008年のダーバン大会で提案されたBig Sister, Little Sisterは現代の国際メンターシッププログラムとして発展しつつあるiii
  • このディスカッショングループはIFLAの組織ではマネジメント委員会の下に属し、財政的裏付けがないため、昨日の運営すべてがボランティアで運営されていた。また運営委員の一人はイギリスからの参加で、この会へはファンドからの助成金で参加しているとのことであった。それぞれの参加者の財政的な問題はかなり大きいようだ。
  • 言葉の問題はIFLAの普遍的問題といえるが、このセッションでも英語、フランス語、スペイン語で行われたが、会議での意思疎通はなかなかむずかしい。主に英語で進行するが、アフリカから参加したフランス語圏の参加者は、参加者の中で英語、フランス語のわかる人が同時通訳をやって意思疎通をはかっていた。

 このセッションが終了した直後、たまたまIFLA Express(IFLAの開催期間中の毎日と会議の前後に、参加者向けに刊行されたA4版の新聞)の記者の取材を受けた。このセッションの進行が、リラックスした雰囲気で、内容的にもおもしろかったということを話したら、そのことがIFLA Express第6号に掲載された。IFLAには何度か参加しているがIFLA Expressに名前が載るのは初めての経験ですっかり嬉しくなってしまった。


<ポスター・セッション:Zaytun 図書館−イラク アルビル市の新築図書館>

 2007年のIFLAダーバン大会に参加した時に、たまたま韓国京畿道のキョンジンさんという方と知り合いになった。彼女はソウルの周りに位置している地方自治体、京畿道の文化政策部の図書館担当官で、彼女が昨年イラクに行ったと聞き、「何故戦争をしているところに図書館員が出かけたのか」という私の素朴な質問から話が始まった。それは「イラク戦争が終結した時に、イラクに公共図書館があることがとても重要であると考えて、京畿道としてイラクに公共図書館を建設する援助をすることになった。また、イラクには図書館員養成機関がないため、イラクの図書館員を韓国に招聘し養成するための協定を締結するためにイラクへ行った」とのことであった。(韓国の新聞より 以下のとおり。)


「ザイトゥーンに図書館設立」—2007年3月10日、イラク・アルビル市に設立されるザイトゥーン図書館の運営及び発展に関する合意書にユン・ソンキュン京畿道文化局長らが署名している。

(「ザイトゥーンに図書館設立」—2007年3月10日、イラク・アルビル市に設立されるザイトゥーン図書館の運営及び発展に関する合意書にユン・ソンキュン京畿道文化局長らが署名している。)


「京畿道、イラクにザイトゥーン図書館建立」—京畿道は、アルビル市に図書館を建立し運営することでアルビル州知事らと合意。図書館運営を担当する現地スタッフを、韓国での実務研修(5月、9月に計18名)に招聘する。

(「京畿道、イラクにザイトゥーン図書館建立」—京畿道は、アルビル市に図書館を建立し運営することでアルビル州知事らと合意。図書館運営を担当する現地スタッフを、韓国での実務研修(5月、9月に計18名)に招聘する。)


「イラクにザイトゥーン図書館を作る」—関係者が現地で建立計画について説明を受けている。運営はアルビル州が、建立はザイトゥーン部隊が、スタッフの訪韓研修は京畿道が担当。

(「イラクにザイトゥーン図書館を作る」—関係者が現地で建立計画について説明を受けている。運営はアルビル州が、建立はザイトゥーン部隊が、スタッフの訪韓研修は京畿道が担当。)


「中東砂漠に‘韓流熱風’の礎石を固めた」—図書館は、アルビルの文化発展と、親韓化を通じた韓国企業の進出にも寄与するものと期待される。1階は複合文化空間として韓国の文化や企業広報、各種会議を行う多目的会議室、現地女性の雇用機会を提供する各種の施設が入る予定である。2階は、男女・子ども用の閲覧室を含む図書館、コンピュータ室などのマルチメディア活用空間、400席規模の公演施設が計画されている。

(「中東砂漠に‘韓流熱風’の礎石を固めた」—図書館は、アルビルの文化発展と、親韓化を通じた韓国企業の進出にも寄与するものと期待される。1階は複合文化空間として韓国の文化や企業広報、各種会議を行う多目的会議室、現地女性の雇用機会を提供する各種の施設が入る予定である。2階は、男女・子ども用の閲覧室を含む図書館、コンピュータ室などのマルチメディア活用空間、400席規模の公演施設が計画されている。)


 このプログラムの資金は京畿道と韓国軍で出資し、イラクの図書館員を18名ずつ、計2回招聘し、2008年5月にこのプログラムは完了したそうだ。
 そしてその図書館が、京畿道と「イラクに平和と再建のための韓国Zaytunディビジョン」の支援によって2008年10月にイラクのアルビル・センター・パークに、4,521平方メートルの2階建て建築としてオープンした。その中には読書室、書庫、コンサート・ホール、セミナー・ルーム、ハンドクラフト・ショップ等が入っている。
 このイラクのZaytun図書館建設とイラクの図書館員養成の企画とその運営を担当したキョンジンさんは、2008年のケベック大会ではポスター・セッションでこのプロジェクトの内容を世界の図書館界へ発信していた。また新築された図書館では英語、アラビア語、クルド語の本が足りないために本の寄付を訴えていた。


イラクZaytun 図書館パンフレット
(イラクZaytun 図書館パンフレット)


 図書館担当者として、イラク戦争が終結した後のことを視野にいれて、イラクへの国際貢献を実際に企画実行してイラクに図書館建設を実現するとともに、イラクの図書館員養成プロジェクトを実行したということにまず驚かされた。また、そのイラクの図書館で資料が足りないので、資料援助のための訴えをIFLAポスター・セッションで行うということを、韓国の女性図書館員がリーダーシップをとってやっているということにも驚かされた。日本では、なかなか聞かない話であったので、よけいにビックリした。このようなリーダーシップをとることのできる韓国の図書館界とはすごいなと思うとともに、国際貢献という言葉はよく耳にするが、具体的に日本の図書館界として何ができるのかと考えたこともなかったので、この韓国との違いは一体何なのか、考えさせられた。


<大会あらかると>

 IFLA大会初日のオープニングセッションでは多文化社会のケベックらしく大半がフランス語で進行し、フランス語がわからない人には私を含め、かなりきつい時間だった。
 また2日目の夕方に「ハリウッド・ライブラリアン・ムービィ」が上映された。アメリカ映画にあらわれた図書館員の映像をまとめた映画である。この中には映画「マリアンはライブラリアン」というアメリカ女性ライブラリアンの典型的イメージ(化粧をせず、髪はひっつめのポニーテールでメガネをかけている)のことも紹介され笑いを誘っていた。また「アメリカのイラクでの1日の戦費が、アメリカ図書館界の年間予算と同額」という字幕メッセージには、思わず現実に引き戻され、アメリカ図書館界の良心を見た思いがした。批判的な視点とユーモアをあわせもったお薦めの映画である。

 IFLAでは世界各国からの参加者といながらにして話ができ、元来ライブラリアンはフレンドリーなので、参加するたびにいろいろな方と知り合いになれ新しい発見があり、興味が尽きない。日本で人気のある『赤毛のアン』のふるさとカナダのプリンスエドワード島から参加したというライブラリアンと友達になり、本当に赤毛のアンのような心やさしい方だったので、プリンスエドワード島へ是非いってみたくなった。しかし彼女曰く、「プリンスエドワード島では『赤毛のアン』は読まれているが、単に他の児童書と変わりがなく、特に人気があるということはない」そうだ。しかしプリンスエドワード島には赤毛のアンのふるさととして毎年たくさんの日本の観光客が来るとのことだった。

 ケベック市は1608年に毛皮交易の基地として栄え、現在はユネスコの世界歴史遺産都市、城壁都市として旧市街はフランス的な街の佇まいである。また旧市街の広場では多種多様な大道芸人がたくさんの観光客を楽しませていた。また、城壁内のアッパー・タウン(崖上の街)とロウワー・タウン(崖下の街)をフェニキュラーというケーブルカーが結び、泊まった城壁内のホテルからほんの数分歩くと、眼下にセントローレンス川の雄大な景色を眺めることができた。この川沿いに100年ほど前に作られた板張りの遊歩道(テラス・デュフラン・プロムナード)を散策しながら、旅先でのゆったりした時間を楽しむことができたIFLAケベック大会だった。

(国立国会図書館調査及び立法考査局電子情報サービス課)


i人を育成、指導する一環としてメンターと言われる人が助言者、支援者、後見人、教育者等の役割を果たして、被育成者たるメンティに助言し、対話によってメンティ本人の自発的・自律的な発達を促すこと。

ii アメリカ図書館協会メンタープログラム
<http://www.ala.org/ala/mgrps/divs/llama/lamacommittees/divisioncomms/
LAMA_Mentoring_Committee/LAMA_Mentor_Fact_Sheet.cfm
>

iii 詳しくはIFLA2008paperhttp://www.ifla.org/IV/ifla74/papers/099-Roy-en.pdf参照

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