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トップ > 刊行物 > びぶろす > 平成21年冬号(電子化43号)

びぶろす-Biblos

平成21年冬号(電子化43号)

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412


2. 政策分析力の充実・強化を図る議会図書館・議会調査局
カナダ議会図書館予算分析部門とアメリカ議会調査局(CRS)の現状

廣瀬 淳子

筆者顔写真
(筆者)

 2008年8月にカナダで開催された、IFLAの年次大会と議会図書館プレコンファレンスに参加した。また帰路にアメリカで議会調査局を訪問し、最新の動向を調査した。本稿では、特に政策分析の強化など調査能力の高度化を図っているカナダ議会図書館とアメリカ議会調査局の事例を紹介する。

カナダ議会図書館予算分析部門

 カナダ議会図書館は、カナダ議会の唯一の立法補佐機関である。2006年に議会図書館に創設された予算分析部門(Parliamentary Budget Officer: PBO)は、アメリカの議会予算局(CBO)をモデルにした組織で、国民から財政の透明性の向上を求める声がかつてなく強まったことと、政権交代を背景として設置された。
 その目的は、国の財政状況やその見通し、経済状況、財政支出等について議会の両院に独立、非党派の信頼できる分析や調査を提供することである。また、客観的な調査結果に基づいた、分析的な視点からの助言も議会に提供する。両院の財務、決算などの委員会の審査や行政監視の補佐も担当している。
 世界的にみても、議会における経済や財政の分析部門の例は、アメリカ、フィリピン、韓国、イギリスなどに限られている。IFLAのプレコンファレンスにおける報告では、政府が予算案を作成し、議会が対案を作成しない議院内閣制の国においても、議会に独自の予算や経済・財政の分析が可能な部門を設置することの重要性とその意義が強調されていた。


IFLAプレコンファランスの様子
(IFLAプレコンファランスの様子)


 PBOの調査や分析は、ファクトシート(2ページ以内)、ブリーフィングノート(5ページ以内)、レポートの3種類で刊行されている。PBOのスタッフは、各種の委員会で証言し、PBOは求めに応じてその見解や勧告も表明する。必要に応じて、外部の専門家とも協力して調査を行うという。
 政府側の持つ膨大な情報に比べ、議会側で入手できる情報は限られていること、また踏み込んだ分析や意見にわたる見解を、中立性を確保しながら提供することには、困難が伴うとのことであった。人材の確保についても、エコノミストや金融の専門家などは高待遇の民間金融機関と競合するため、困難があるとのことであった。


アメリカ議会調査局(Congressional Research Service: CRS)

 2008年12月15日付のニューヨークタイムズ紙一面には、CRS レポートの表題とその一部の内容の写真が大きく掲載されている。鉄道障害委員会の問題を、CRSレポートを引用して指摘している記事である。CRSの作成する報告書が連邦議会の法案審議だけでなく、メディアへも影響力を持っていることわかる。
 CRSは、組織上は議会図書館(LC)の一部局であり、会計検査院(GAO)やCBOと並ぶ連邦議会の立法補佐機関である。広範な政策分野の調査や政策分析、議員への立法情報の提供を主要な業務としている機関である。調査の結果は、CRSレポートとして連邦議会向けに刊行されている。
 CRSレポートは、政治的に中立で、客観性が高いこと、その内容の信頼性の高さに定評がある。多数のシンクタンクや研究者が政策研究を行っているアメリカにおいても、特定の政治的・政策的立場を主張することなく、中立的・客観的に政策分析を行っている機関は、少ない。人材の流動性が高く研究者個人に基盤を置くシンクタンクなどに比べて、人材が固定的で、しかも長期間、組織として知識や経験が蓄積され受け継がれていく点にも大きな特色がある。
 CRSにおいては、近年マルホラン局長の方針で、資料やデータの提供といういわゆるレファレンス業務から、議員の関心に添ったより深い政策分析を盛り込んだCRSレポートを、連邦議会の法案審議の動向に即してより迅速に作成し提供することと、より頻繁に最新の内容に更新することに業務の重点を大きく移している点が最も印象的であった。
 例えば、日本の福田首相が辞任した際には、その2週間後に「日本の政治的混乱」と題する報告書が刊行されている。
 インターネットの発達で、簡易なデータや事実の調査、新聞記事のコピーは、議会のスタッフがCRSによらずに自ら容易に入手可能となったことがこの背景にある。CRSも議員や議会スタッフ専用のHP上に仮想のレファレンスデスクを設けて、各種統計情報や政府機関に関する情報等を容易に検索できるようにしている。
 議会図書館の調査というと、伝統的には文献に基づく調査が中心であった。しかし、CRSでは、文献のみに基づく調査はもはや完全に過去のものとなっている。現在では、あらゆる手段を駆使して収集した最新の情報に基づく調査や分析が行われている。日本政治のレポートを書いたアナリストも、日本に留学経験があり、日本の政府関係者や研究者などからメールなどで日常的に情報を収集しているとのことであった。
 迅速さの追求にはもちろん批判もある。CRSの調査の強みはむしろ長期的視野に立つ、時間をかけた丹念な分析であり、迅速性を追求し、頻繁な報告書の更新にエネルギーを注ぐことは、逆に分析の質の低下を招くのではないかとの懸念は根強い。法案審議の動向に左右されずに、主要な政策分野の調査を恒常的に行ってゆくことは、調査の質を維持するには不可欠である。
 ひとつの政策課題について多面的に分析し、部門を越えた複数の担当者でCRS レポートを作成することも推進されている。これについても、分析の幅は広くなるが、深さが犠牲にされるのではとの懸念もある。
 CRSではより高度な調査のために、博士号を持ち高度な政策分析ができる人材の採用に力を入れている。CRSのアナリストには、大学教員から転身する人もいる。ワシントンという政治の中心で生の政治に触れて仕事ができる点や、アメリカでは研究分野によっては大学教員の待遇が恵まれていないため相対的に高い報酬、そして安定した雇用環境が大きな魅力ということであった。
 さらに、スペシャリスト等の上級アナリストを調査に専念させ、組織の管理業務の負担を軽減するため、これまではスペシャリストが輪番で担当してきた管理業務のために専任者を採用する試みも開始されている。


選択と集中へ

 議員の要望が多様化、高度化する状況で、いかにして議員のニーズを的確に把握して、その満足度を高めるのか、調査の高度化や質の向上、調査依頼への迅速な対応、先端技術の活用による情報提供等が、世界各国の議会図書館や議会の調査部門に共通する課題となっている。各国とも予算状況は厳しく、利用可能な人的資源は限られている。その中で業務の重点をどこに置くか、人的資源をいかに有効に活用するのか。業務の重点分野などの優先順位を明確にし、選択と集中によってこれらの課題に対応している事例は、我が国でも参考になろう。


参考資料
                 

(国立国会図書館調査及び立法考査局 主任調査員)

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