びぶろす-Biblos
平成21年春号(電子化44号)
- 発行:国立国会図書館総務部
(National Diet Library) - ISSN:1344-8412

5. 裁判員制度について
近藤 和久
裁判員制度が5月21日に始まります。
裁判員制度は,皆さんに,刑事手続のうち第一審である地方裁判所で行われる刑事裁判に参加していただき,被告人が有罪か無罪か,有罪の場合にはどのような刑にするのかを裁判官と一緒に決めていただく制度です。原則として裁判員6人と裁判官3人が,一緒に刑事裁判の審理に出席し,証拠調べ手続や弁論手続に立ち会った上で,評議を行い,判決を言い渡します。
これまでの刑事裁判は,検察官や弁護士,裁判官という法律の専門家が中心となって行われてきました。そのため,専門的な正確さを重視する余り,審理や判決が,皆さんに理解しにくいものであったり,一部の事件とはいえ,審理に長期間を要する事件があったりして,刑事裁判は,近寄りがたいという印象を与えてきた面もあったと思われます。
そこで,「21世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし,国民がより利用しやすい司法制度の実現,国民の司法制度への関与,法曹の在り方とその機能の充実強化その他の司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議」するべく,内閣に司法制度改革審議会が設けられました。
http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/index.html(司法制度改革審議会のウェブサイト)
また,司法制度改革審議会の意見を具体化するべく,内閣に,総理大臣を本部長とし,全閣僚を構成員とする司法制度改革推進本部が設置されました。そして,この推進本部の「裁判員制度・刑事検討会」において,法律専門家以外の方がより直接的に司法へ参加する制度,すなわち裁判員制度の導入が具体的に検討されました。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/06saibanin.html(司法制度改革推進本部「裁判員制度・刑事検討会」のウェブサイト)
これらの検討等を経て,国会は,裁判官と裁判員が,それぞれの知識経験を生かしつつ一緒に議論をして結論を決めることにより,司法に対する国民の理解と信頼を高めることができるとの考えから,裁判員制度の導入を決めました。
皆さんに参加していただくことにより,刑事裁判はより分かりやすくなり,迅速なものになります。また,裁判員から質問や意見を出していただくことによって,裁判のプロセス,結果ともに,より深みのある内容となることが期待されています。さらに,裁判員として裁判に関与することを通じて,皆さんが,犯罪の少ない社会を作るきっかけをつかんでいただきたいという願いもあります。
すべての刑事裁判が裁判員制度によって行われるわけではなく,全国の地方裁判所刑事通常事件(第一審)のうち,約3パーセントの事件が裁判員制度の対象となっています。しかしながら,人を殺した場合(殺人罪),強盗が人に怪我をさせ,又は,死亡させた場合(強盗致死傷罪),人にけがをさせ,その結果,死亡させてしまった場合(傷害致死罪),ひどく酒に酔った状態で,自動車を運転して人をひき,死亡させてしまった場合(危険運転致死罪)など,法律で定められた刑罰が重い,いわゆる重大事件等については,原則として裁判員制度の下で審理,判決されることになっており,裁判員制度が,今後の日本における刑事司法の在り方全体を決定付けることになると思われます。
裁判員制度は,司法制度改革の大きな柱の一つであり,その実施が適正,円滑になされるように,裁判所は,検察庁や弁護士会と協力しながら,模擬裁判を実施するなどして問題点を洗い出し,今までの刑事裁判をより良い方向に変革する方法を議論しながら法曹三者で準備を進めています。そして,このような準備をする中で,皆さんの裁判員制度に対する疑問になるべく広くお答えし,裁判員制度のイメージを持っていただくことこそが重要であると,改めて考えています。
最高裁判所では,裁判員制度に対する皆さんの疑問にお答えするひとつの方法として,ウェブサイトに「裁判員制度Q&A」を掲載しています。
http://www.saibanin.courts.go.jp/qa/index.html
また,裁判員裁判の具体的なイメージをつかんでいただくために,広報用の映画も用意しています。
http://www.saibanin.courts.go.jp/news/video.html
これらの映画のうち,「審理」は,裁判員裁判の手続きのうち,審理の部分に重点が置かれ,「裁判員〜選ばれ,そして見えてきたもの〜」は,裁判員の選任手続の部分に重点が置かれています。また,「評議」は,裁判員制度のスタートに向けて,法律家が模擬の裁判を繰り返すことによって作り上げてきた,迅速で分かりやすい最新の刑事裁判のイメージをお伝えするため,評議の部分に重点が置かれています。
裁判員として裁判に直接参加される方だけではなく,広く皆さんが裁判員制度に注意を向けていただくことで,日本の刑事司法,ひいては司法手続き全体が変革を遂げることになると思われます。
(前最高裁判所事務総局刑事局付 判事補)

裁判員裁判が行われる予定の法廷の様子
東京地方裁判所ウェブサイト(http://www.courts.go.jp/tokyo/)より
