びぶろす-Biblos
平成20年秋号(電子化42号)
- 発行:国立国会図書館総務部
(National Diet Library) - ISSN:1344-8412

5. 平成20年度専門図書館協議会 全国研究集会に参加して
原田 明子
1 はじめに
平成20年7月24日・25日の2日間、京都で専門図書館協議会全国研究集会が開催されました。総合テーマは「京都からのメッセージ〜成長するライブラリアンへ」です。
今回私が参加した2日間の中でオプションの「同志社大学図書館見学会」と2日目の第2分科会、第6分科会について概要を簡単にご報告させていただきます。
2 同志社大学図書館見学ツアー
24日の全体会開催の前にオプションで約1時間同志社大学図書館見学ツアーが開催されました。同志社大学には、2つの図書館(今出川図書館、ラーネッド記念図書館)と情報関連施設(PC関連施設、情報メディア施設)によって構成される「総合情報センター」があり、知の情報化と充実した情報環境での学習・研究を支援しています。2班に分かれ、今出川図書館内のEU資料センター、特別コレクションの竹林文庫、閉架書庫、閲覧室等を案内していただきました。
EU資料センターとは、欧州委員会によって欧州統合関係文献専門の資料センターとして指定されたもので、日本では寄託図書館である国立国会図書館の他に19か所のセンターが各地の大学に設置されています。同志社大学のEU資料は一般にも広く公開されパンフレット類まで請求記号を付与し配架しています。イヤーブック等年々ネットや電子資料が増えているそうです。
竹林文庫とは、日本近代図書館史の研究者であった竹林熊彦氏のご遺族から寄贈を受けた彼の蔵書及び記録文書です。記録文書については1点ごとにアイテム番号、袋番号、箱番号を付与し貴重室に箱で配架しています。資料注記を付けた目録を作成しており、ホームページからも検索可能です。
同志社大学図書館 http://www.doshisha.ac.jp/library/
竹林文庫 http://elib.doshisha.ac.jp/japanese/digital/takebayashi_bunko.html
3 第2分科会
2日目午前に行われた第2分科会では「ライブラリー・エボリューション」をテーマに2機関3名の講師による講演が次のとおり行われました。(以下、概略です。)
(1)「松下電器産業・図書チームの取組み」
講師 松下電器産業 朝倉 和子氏
ネットワークの普及により多種多様な情報即時入手が可能になり、従来の書籍に加え、電子コンテンツも登場している。限られた予算で効率よくサービスを強化する力がポイントであると考えられる。
松下電器では、本社R&D部門は6地区に分散し守口地区の図書室は松下グループの全社図書室であるのに対し他の図書室は小規模であり部門内に情報格差が生じていた。さらに予算規模の縮小、人員、図書購入費の減少の中でネットワーク経由で提供できる技術情報、各々の利点を生かしたサービスを検討し取り組んできた。
拠点の統合化と効率化
各地区にあった図書室を閉鎖し守口図書室に統合した。各地区はネットワーク経由でのサービスを充実させ、定期的な説明会の開催、電子ジャーナルの説明や守口図書室の案内をするとともに要望を聞くなどコミュニケーションの充実を図っている。また守口図書室の全面改装を行い、地震対策やインターネットの利用できるPCコーナー、自習コーナー等をもうけ、書架も色側板を使った見やすい表示、気付きやすい配架にした。さらにICタグを導入して貸出しの迅速化、セキュリティの向上等を図った。
ストック(管理)からフロー(即時入手)へ
各地区で電子ジャーナルにアクセスし多様化する研究分野に対応できるよう、マルチサイト契約、Pay per View、冊子体の中止を基本方針とした。また図書の購入に関しても専門書の部署専用化とグループ内の所蔵情報の共有化を図り、相互協力の環境を提供した。
2008年3月にユーザーの満足度及び認知度の調査を行った。その結果、図書室のルールを再度わかりやすく公開し、どこに何があるのかを案内する事が最重要テーマとなった。また書籍についても年度毎にテーマのターゲットを決め、強化もしくは縮小のさらなる選別が重要だと考える。
(2)「トヨタ博物館・図書室の取組み」
| 講師 | トヨタ自動車 杉浦孝彦氏 |
| トヨタ自動車 中村由以氏 |
今回の講演は「トヨタ博物館・図書室」の2年間の活動記録であり、杉浦氏は管理者の視点から、中村氏は担当者の視点からの講演でした。
ア 管理者の視点から
トヨタ博物館の施設内に図書室があり、自動車関係の書籍、雑誌、AV資料、カタログ等約18万点の資料が保管されている。資料は年々増加するが、図書スタッフは当初より減少している。未整理状態の資料は収容能力の限界にきていたが「図書管理システム」の故障多発を機に担当者からSOSが発信され、有志による「緊急対策隊」が結成され、資料保管の量の把握、保管ケース設置、保存ルールの策定 や未登録資料の整理が行われた。
このような事態の原因は数年前から担当者が相次ぎ退任し図書室の基本コンセプトや将来のビジョンが途切れていた事が考えられたので、組織作りや業務改善を行った。図書室スタッフに「受付業務」中心から「資料整理業務」に重点を移行することを指示し、図書室業務を担当する「情報管理グループ」を新たに発足させ、組織の中で「人」「物」「費用」の獲得をしやすくした。
組織的な対策として業務分担を明確にするため「図書室受付業務」と「資料整理」を分けた。「資料整理」を重用視し、図書室の受付業務の派遣スタッフ達は「資料整理」に異動してもらい、定常的な「図書室受付」は業務委託としてアウトソーシングとした。スタッフも増員され組識として整った。
イ 担当者の視点から
まず資料整理の作業場の確保から始まった。
- 空きスペースを作業場所とした。
- 個人専用PCの設置、共用ファイルサーバを利用した。
各人の出勤日や勤務時間もバラバラなのでコミュニケーションの工夫をした。
- 社内共用システムを利用し全員のスケジュールの掲載
- 月に1回スタッフ・管理者全員のミーティング
- ホワイトボードの作業進行表を書き込む
- グループ中期計画で「図書・資料整理」全体像を確認
資料整理の成果として
- 雑誌「モーターマガジン」の合本公開
- 「自動車カタログ」閲覧サービス開始
- トヨタ自動車カタログ整理完了
- AV資料等整理完了
が挙げられる。
今後は資料整理の委託業務を行う上でスタッフの新リーダーを育成し、現在の担当者と新リーダーの業務の棲み分けを図る事と、図書室の将来に向けての新しいビジョンを持ち活動していく必要があると考えている。
4 第6分科会
2日目の午後国立国会図書館関西館で「NDLデータベース紹介in関西館」として国会図書館の各種データベースの中から実際の図書館業務で問題解決に役立つデータベースに焦点を当て各講師に解説していただきました。その後関西館の館内見学をさせていただきました。
第1部 インターネットでレファレンス
「テーマ別調べ方案内」 木村祐佳氏
あるテーマ/資料群についての「調べ物ガイド」。参考になる本や情報源、OPAC検索のコツ、データベース、インターネット情報をコンパクトに紹介
http://www.ndl.go.jp/jp/data/theme.html
「Dnavi(データベース・ナビゲーション・サービス)」
データベースに関するデータベース。深層webにある情報の入口まで案内
http://dnavi.da.ndl.go.jp/bnnv/servlet/bnnv_user_top.jsp
「AsisLinks(アジア関係リンク集)」
アジアに関するインターネットサイトのリンク集。日本を除くアジア全域と中東・北アフリカ。国/地域別、テーマ別に整理
http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/asia/link/asia_05link.html
「レファレンス協同データベース」 大貫朋恵氏
レファレンス記録や調べ方を協同でデータベース化。平成20年6月末現在458館参加
データ数 31,482件
http://crd.ndl.go.jp/jp/public/
第2部 広がるデジタルアーカイブの世界
「近代デジタルライブラリー」 岡田京子氏
国立国会図書館所蔵の明治期・大正期刊行図書を収録した画像データベース。
書誌情報、目次情報、本文情報(一次情報)本文はモノクロ画像
http://kindai.ndl.go.jp/
「WARP(インターネット情報選択的蓄積事業)」
インターネット情報選択的蓄積事業。政府、地方自治体、市町村合併、イベント、電子雑誌など約3,700タイトル
http://warp.da.ndl.go.jp/
「PORTA(デジタルアーカイブポータル)」
国立国会図書館所蔵コンテンツや国の機関、民間機関などへの広くナビゲートする総合的なポータルサイト。
http://porta.ndl.go.jp/portal/dt
5 おわりに
今年度から理事会と総会が別日程で開催となり、従来理事会が開催された1日目の午前中にオプションの図書館見学会がとり入れられ、また2日目の分科会でも多彩な見学会のプログラムがあり、特に国立国会図書館関西館はなかなか行く機会がなかったのでこのチャンスに是非と思い参加させていただきました。
全体会、分科会では図書館を巡る厳しい状況や課題、それに対処されたお話を伺いとても有意義で充実した2日間でした。講師の方々をはじめ今回の研究集会に関わったすべての方々にお礼を申し上げます。
(支部会計検査院図書館)
