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トップ > 刊行物 > びぶろす > 平成20年秋号(電子化42号)

びぶろす-Biblos

平成20年秋号(電子化42号)

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412


2. SLA 2008 Annual Conference参加報告−Publisherの視点から−

林 和弘

1 はじめに

1-1 SLAの紹介
 SLAとは米国専門図書館協会(Special Library Association)のことで、1909年に創立された情報専門家のための国際的な非営利団体であり、現在75カ国から成る11,000人以上の会員数を誇る。また、日本では専門図書館協議会が対応する組織とされる。SLAでは毎年6月頃に年次総会が開かれ、過去にもいくつかの参加報告が本誌に掲載されている。今回筆者は国立情報学研究所のSPARC JAPAN事業として、SPARC JAPANパートナー誌のプロモーション活動(PR活動)を行ったので、この活動を中心に報告する。


1-2 SPARC JAPANと今回のミッション
 SPARC JAPANとは、和名では国際学術情報流通基盤整備事業と呼ばれ、日本発の国際的かつ健全な学術情報流通への支援を通して学術コミュニケーションの変革を目指す事業である。現在、主に日本の学協会発行の英文学術論文誌の電子ジャーナル事業と図書館を含む各関係者の情報リテラシー活動を支援している。現在支援対象の雑誌数は30を越え、それぞれのジャーナル活動の改善を図っているが、最近では特定の雑誌の個別支援から、包括的あるいは雑誌間協同の活動を支援する傾向にある。そして、これまで日本の学協会ではまず行われてこなかった対外的なPR活動を昨年度化学系の雑誌から始め、今年は科学全分野横断の形としては初めての試みとしてこのSLA年次総会に出展し、日本発の英文科学雑誌のPRを行った。
 以上のように筆者の今回のSLA年次総会の参加および出展の目的は、いわゆるPublisherとしてSLAの世界的なマーケットに対して日本の英文誌の存在、プレゼンスを示すことであった。従って通常本誌上で行われている図書館員もしくは情報部門担当者が執筆する会議参加報告とは趣旨と内容を異にする。この点をご了承いただきたいが、すでに複数のSLA年会報告が行われており、その大まかな構造は変わっていないことに加え、今回出展側という大会のもう一つの大きな役割からこの会議を報告することで、通常と異なる視点から読者の参考となる情報提供が行える可能性もある。さらに筆者としては、インターネットインフラの浸透によってこれまでの図書館-出版者の枠組みは良い意味で変わっていくと考えており、SPARCのミッションとしても、図書館と学会の交流増進というものも検討され始めている。このような状況下、編集部のご理解も頂き執筆の機会をいただいた。


(過去のSLA参加報告)
2002年 http://www.ndl.go.jp/jp/publication/biblos/backnumber/2002/07/index.html#p01
2004年 http://www.ndl.go.jp/jp/publication/biblos/backnumber/2004/04/index.html#p02
2005年 http://www.ndl.go.jp/jp/publication/biblos/backnumber/2005/01/index.html#p02
2007年 http://www.ndl.go.jp/jp/publication/biblos/backnumber/2007/10/index.html


2-1 開催地
 さて、2008年の年次総会はアメリカ西海岸北部のシアトルで行われた。シアトルはアメリカ人がもっとも好きな街として常に上位にランクしつづけていると聞くが、夜でも治安がよく、パイクプレイスマーケット近辺など市街でもゴミが少なく清潔で、夏でも比較的涼しいなど、筆者の滞在中だけでもその理由を十分感じ取ることができた。また、戦前日系移民が数多くいたことでも知られ、そのせいかどうかは定かではないが、食事も口に合うものばかりであった。余談から入ってしまったが、会場のSeattle State Convention & Trade Centerはそのシアトル市街の中心部やや北側にある非常に大きな建物であった。


会場の入り口が右側で、会場自体は両側の建物となっている
(会場の入り口が右側で、会場自体は両側の建物となっている)


シアトルパイクプレイスマーケットにあるスターバックス1号店。茶色で足(ひれ)まであるセイレーンのロゴは1号店のみのものである
(シアトルパイクプレイスマーケットにあるスターバックス1号店。茶色で足(ひれ)まであるセイレーンのロゴは1号店のみのものである)


2-2 規模について
 会期終了後の統計によると、今回の年次総会には5011人の参加があった。内訳は、まず有料参加者が2646人、展示会(INFO-EXPO)のみの参加者が414人、その他が270人で、総登録数としては3330人の参加であり、加えて出展者関係が1681人である。このうち841人が初参加とのことである。一方、毎年盛況の展示会の出展団体は282を数え、今回初めての出展は我々も含めて50団体/企業であった。


(表1)
表1. SLA2008年会参加状況
表1. SLA2008年会参加状況
*ブース単位は10フィート(約3メートル)四方


レジストレーションの様子
(レジストレーションの様子)


 また、ここ10年の参加者数の推移を図1に示したが、ここ数年は漸減の傾向にある。ごく最近の減少はアメリカのサブプライム問題に端を発したアメリカの景気後退の影響を指摘する声も運営側より挙がっていた(後述するBreakfast Meetingにて)。しかし、それでもなお、図書館業界系で5千人の参加者を誇る大規模な国際会議であることに変わりはない。


(図1)
図1. SLA年会開催地と参加者数
図1. SLA年会開催地と参加者数


2-3 講演について
 まず、今年の 基調講演はGoogleのVice PresidentのVinton G. Cerf氏によるものだった。氏はインターネットの標準プロトコルであるTCP/IPの開発者の一人として名を馳せ、「インターネットの父」と呼ばれる。その他ディビジョンごとに行われる各セッションは早いもので午前7時からスタートし、遅いものでは午後11時過ぎまで発表と討論が行われる。今回も27を超えるディビジョンが4日間で30-40のセッションをこなしたとSLA関係者から聞いた。筆者は基本的に展示会場内出展ブースに張り付いていたので、残念ながらその詳細はおろか概要を自ら報告することが適わない。しかし、個人的な縁であるセッションの講師、ワシントン大学のJevin West氏と新しいジャーナルパフォーマンスであるEigen Factorについて懇談できる機会があり、これが図書館、出版社双方に非常に影響のある話題であるので今回それを紹介する。


2-4 Eigen factor
 Eigen factor とは、ジャーナルパフォーマンスを表す新しい指標で、インパクトファクター(IF)のような被引用数単一のデータに基づく指標ではなく、IFのベースにある引用被引用の要素も含んださまざまな指標をニューロネットワークの技術などを使って総合評価したものである。まず、被引用―引用の関係についてはGoogleのランキングと似たアルゴリズムを採用して、そのジャーナルが引用した/引用されたジャーナルという1次的かつ単一な引用関係の情報だけではなく、2次的、3次的な関係やいわゆる「良い雑誌から引用される雑誌も良い雑誌である」というGoogleのリンクに基づく評価手法も考慮したものとなっている。続いて、雑誌の価格も評価の指標として考慮している点が注目に値する。続いて対象リソースも115000種のジャーナルや雑誌を含み、社会科学、科学技術などと分野を分けることなく総合的にまた分野別の引用頻度の違いもある程度ノーマライズして評価され、引用データを5年の範囲で解析している。以上のように多数の指標を処理するのでIFのような簡単な数式で表すことや簡単に計算できるものではないが、このデータは無料で誰でもアクセスできる。(http://www.eigenfactor.com/) そして、このサイトで分野別にジャーナルランキングを見ると、単なるランキングのほかに、ある分野の研究者が1日あるいは1年のうちの何%をその雑誌を読むのに利用するかと言った統計指標も表示される。このようにしてIF以外のまた、IFに欠けているところを補うような雑誌評価指標が現れたことは、図書館―出版者双方に大きなインパクトがあると考えられ、引き続きこの指標が与える影響を追跡する必要があると考える。


3 Info-EXPOについて

3-1 概要
 さて、ここから筆者自身としては本題の展示についての報告となる。先に述べたようにINFO-EXPOでは282の団体/企業が10フィート四方のブースを400以上借りて、つまりときに1団体が何ブースも借りる形で行われる。特筆すべきことは、参加人数に対して展示数およびスペースが非常に広いことである。筆者の専門分野である化学の最大の年次大会で参加者数が1万人を超えるアメリカ化学会の大会と比較した場合、参加者数が半分にも満たないのに対して、展示スペースは、1.5倍くらい広い印象を受けた。後でも述べるがSLAが抱える経済規模の大きさを目の当たりしたと言える。展示はSLAの会期に合わせる形で4日間行われた。(表2)


表2. INFO-EXPO展示会スケジュール
表2 INFO-EXPO展示会スケジュール


3-2 自ブースの準備と反応
 さて、SPARC JAPANブースについて報告する前に、SLAの展示会に関する展示側の準備がいつから始まるかご存知だろうか。実は開催の1年以上前から、ブースの設置場所の確保という形で競争的に始まる。つまり場所取り争いのようなものである。今回の我々の場合はSPARC JAPANの支援を確定させる関係で直前まで参加申し込みができなかったが、これが残念ながらブースの設置場所選択で不利な結果を招くこととなった。すなわち人通りが多そうな良い立地はもちろん、そもそも空いている場所が少ないのである。しかし、幸いScienceを発行しているAAAS(the American Association for the Advancement of Science)やオープンアクセス活動の先鋭であるBioMedCentral付近の「出版物に関心がある人が通りそうな」場所を取ることができた。

 また、場所取りだけではなく、パンフレットならびにノベルティを作成し、あらかじめ冊子サンプルなどと一緒に送付しておく必要もある。今回、日本をわかりやすく印象付けるものとして、化学系PRでも好評を博した実績のある団扇を用意した。団扇には「科学」と書き、裏には団扇代を提供した有志学会のジャーナルの表紙を並べた。その他には、説明用カタログや見本誌を用意した。このような物資を展示会会期の前日までに送り、前日に半日くらいかけて準備を行う。したがって、出展者にとって大会が始まる前に展示会活動の山を一つ越えると言っても良い。
 さて、このようにしてできたブースであるが、30誌を超える分野横断の学会ジャーナルを並べて海外の図書館向けにPRすることは間違いなく日本初のことであり、数の力と呼べるものを実感した。というのも、2004年から筆者は日本化学会2論文誌のPRを開始したが、当時はあるいは今も化学会単独ではたかだか2雑誌のPRとなり、ブースの装飾一つとっても苦労した経験がある。今回、雑誌のタイトル数が多ければそれだけで十分ブースを飾ることができ、魅力あるブースを作ることが実証されたと言え、いわゆるパッケージ化の一つのメリットを実感することができた。


SPARC JAPANブースの様子
(SPARC JAPANブースの様子)


今回配ったパンフレットやノベルティグッズ
(今回配ったパンフレットやノベルティグッズ)


 さて肝心の反応であるが、やはり団扇のアイキャッチ効果が大きく、これで人を引き寄せて会話を始めるというパターンで我々の活動をPRした。都合300程度のパンフレット類を配ったことになる。


3-3 他の主な出展者やサービス
 INFO-EXPOでは出版者、データベースベンダー、新聞社、そして図書館など様々な情報提供者のブースが並ぶ。個々の説明は省略するが、全般的に企業図書館向けということもあって概ね大規模で派手な出展が多かった。また、アメリカ物理学会、アメリカ化学会に象徴されるように、学会系非営利出版団体でも3-4ブース以上を借りて大々的にPRを行っていた。一方、Euclidなどのより非営利色が強いとされる数学系のジャーナルのPRも、代理店を通じてではあるがあることがわかり、営利・非営利を問わない広報活動の重要性を再認識した。また、これまで経験してきた対科学系研究者向けの大会には無い特徴は人文・社会学系の展示も多かったことである。Wall Street JournalとNew York Timesのブースが競うようにして並び、あるいは、経済、法律系のデータベースの宣伝も多く見られた。各ブースではそれぞれの製品のPRが第一であるが、お茶にお菓子、中にはお昼ご飯を提供するところもあり、もっとも変わったものとしてはマッサージサービスもあるなど、参加者の気を止める、あるいは社交活動を促す様々な工夫がこらされていた。さらに、SLA展示全体でスタンプラリーともいえるパスポートプログラムも行われていた。これは、参加者に配られたパスポート風のスタンプ帳に各ブースに配られたハンコを一定数以上集めて応募すると、来年のSLAの旅費が当たると言うイベントであり、我々のブースでも沢山のハンコを押した。


参加者の「パスポート」にブース来訪証明をしているところ。左下に見える赤いものがスタンプ
(参加者の「パスポート」にブース来訪証明をしているところ。左下に見える赤いものがスタンプ)


INFO-EXPO会場の様子 IEEE, ACSやWileyの間にBloombergが入っているのがSLAならではと言えるだろうか
(INFO-EXPO会場の様子 IEEE, ACSやWileyの間にBloombergが入っているのがSLAならではと言えるだろうか)


 また、就職斡旋コーナーなども充実していたようであり、人の交流を積極的に促す運営側の姿勢が随所に現れ、参加者もそれをうまく活用していると言える。さらに、Cyber Connectionsと称して、SLAのプログラムの検索とプリントアウトができるコーナーが用意されていた。ここでは発表者が事前に登録していればプレゼンテーションファイルを入手することも可能であった。


Cyber Connectionsコーナーの様子
(Cyber Connectionsコーナーの様子)


3-4 Breakfast Meeting
 展示会の3日目の朝には、展示会運営側と展示業者の有志参加者からなるBreakfast Meetingが行われた。筆者の経験上ではアメリカでよく行われる類のものであり、展示会の運営側もしくは請負業者が大体展示日程の後半もしくは最終日にクローズドのミーティングを行う。このミーティングでは、展示会の中間的な総括とフィードバック、ならびに来年に向けた宣伝とディスカッションを行う。出展側にとっては気が付いたことを積極的に聞いたり提案したりする場であるが、SLAのBreakfast Meetingはどちらかというと貢献者の慰労や来年の開催地であるワシントンDCをPRするビデオが流されるなど、セレモニー色が強いものであった。


Breakfast Meetingの様子
(Breakfast Meetingの様子)

4 Annual Conference参加の意義

4-1 対面の非公式情報収集
  SLAに限らずいわゆる年次総会に足を運ぶ重要な目的は対面での情報収集である。インターネットの時代になっても対面交流の重要性が変わらないことは広く言われていることであり、インターネットで事前に情報を収集した上でディスカッションに臨むことでより密度を高めて大会参加の価値も高めることができる。また、思わぬ出会いから始まるコミュニケーションが発生することもある。例えば今回では、法律、経済のデータベースを扱う方から、たまに科学論文を参照したいときがあるのだが、特に日本の場合どこを見ればよいかわからない、といった小さいけれども確実なニーズを発見することができた。これはいわゆる科学系の大会では見つからないニーズと言える。
  さらに、筆者の経験上、旅先での開放感がそうさせるのかどうか定かではないが、こういった場では関係者から普段聞きにくいことを聞くことができるし、向こうも割りとすっと答えてくれることが多い。サイトを見ても書いてない、メールを打っても杓子定規の返事しか返ってこない、そういった話題に関してはこういった場を使うことが有効である。先に紹介したeigen factorのエピソードはまさに非公式の対面から本来のセッションでは聞けないことまで突っ込んだ話を聞いたものであり、まさに、このような紙面には書きにくい大変興味深い話も実際聞けたのである。


4-2 参加しないでなるべく安く楽しむ方法
 また、webインフラの発達に伴って参加しないでもある程度雰囲気を味わうことができる。すなわちSLA blog(http://slablogger.typepad.com/sla_blog/)の活用である。このblogの2008年6月の記事(http://slablogger.typepad.com/sla_blog/2008/06/)を見ると会期中の様子が随時更新の形で報告され、ライブ感のあるものとなっている。しかしこれはあくまで補足的なものであり、筆者としては改めて対面によるコミュニケーションと非公式情報の重要性を強調したい。


5 経済のおはなし

 さて、以上のように活発な議論と情報交流を可能にするSLAであるが、日本の方が参加しようとするとその参加費の高さに驚く(会員で$325-$625)。出展側も同様で、ブース代金(場所代)の相場は例えば国内の標準的な料金の少なくとも2倍以上であり、筆者の知る化学系の欧米の国際会議の相場よりも高い。
 さらに、各セッションの講演も大会参加費とは別にセッション単位で課金され、高いものはSLA会員でも1セッションごとに$500近くかかるのも決して珍しくなく、非会員では$1000近いものも存在する。これらの価格体系を単純に高いと嘆くのは簡単であるが、学術的で元来非営利な側面を含む情報流通の仕組みの一つとして、このような高い価格帯や相場で何十年も会議が繰り返されてきたわけである。つまり、このようなサービスに基づく多額の経済のフローが存在しているという現実は直視しなければならないだろう。これは、価値ある情報には相当の対価を支払う枠組みが当てはまっていると考えられ、そのようなカルチャーが特に強いと考えられる法律・経済系データベースの出展がSLAでは少なからずあることも影響していると考えるのは浅薄すぎるであろうか。いずれにせよ、SLA年次総会に漂っていた「空気」は、昨今流行っているオープンアクセス運動の「空気」とは明らかに異質のものであり、オープンアクセス的な情報流通活動をどのように効果的に実現させるかについて改めて考えさせられる結果となった。


おわりに

 2009年のAnnual ConferenceはワシントンDCで開催され、めでたく100周年を迎えるSLA。今回は日本の図書館系の方々の参加が少なく感じ、また、それが本稿を筆者が執筆する遠因ともなったが、まずは、今回報告させていただいたような出版者側あるいは学術情報提供側の側面が伝われば幸いである。また、来年は是非日本の図書館の方々ができるだけ多く参加し、聴講参加だけでなく発表するなどして情報交流を深めることが重要と考える。そして、今回の出版のケースと同様に、日本のライブラリアンのプレゼンスを示す機会が来年持てることを祈念しつつ、通常とは異質の今回のSLA参加報告の筆を置きたい。

 

(日本化学会学術情報部、SPARC JAPAN運営委員)

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