書誌データの基本方針と書誌調整:書誌調整連絡会議
平成24年度書誌調整連絡会議報告
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2012年10月12日(金)、国立国会図書館東京本館において「平成24年度書誌調整連絡会議」を開催しました。この会議は、国内の書誌調整に関する情報の共有と意見交換により、書誌データの作成及び提供の充実と発展に資することを目的として、定期的に開催しているものです。 13回目となるこの会議においては、「書誌データの作成・提供の方針(2008)」 [PDF File 55KB]、「国立国会図書館の書誌サービスの新展開(2009)」[PDF File 420KB]の後継となる当館の書誌データ作成・提供に関する新しい方針(会議の中では「新方針」と呼んでいます。)の方向性、これからの書誌データのあり方等について、講演、報告及び意見交換を行いました。 この会議において関係機関の方々からいただいたご意見等を踏まえ、さらに検討を重ねた結果、2013年2月に、「国立国会図書館の書誌データ作成・提供の新展開(2013)」[PDF File 594KB]を公開しました。これは、今後おおむね5年を見据えた当館の書誌データ作成・提供の方向性を示すものです。 以下に、書誌調整連絡会議の内容をご報告します。 |
<平成24年度書誌調整連絡会議 出席者>
| 石川 博久 | JPO近刊情報センター技術委員会リーダー / 株式会社数理計画システム計画第三部部長代理 |
| 入江 伸 | 慶應義塾大学メディアセンター本部課長 |
| 大向 一輝 | 国立情報学研究所准教授 |
| 小野塚 伊津美 | 東京都立中央図書館サービス部資料管理課目録管理担当係長 |
| 粕谷 紳二 | 株式会社日販図書館サービス書誌部書誌課長 |
| 越川 順規 | 株式会社トーハン図書館事業部マネジャー |
| 佐藤 義則 | 東北学院大学文学部教授 |
| 三瓶 徹 | 日本電子出版協会事務局長 |
| 柴田 正美 | 日本図書館協会件名標目委員長 |
| 那須 雅煕 | 日本図書館協会分類委員長 / 聖徳大学人文学部日本文化学科教授 |
| 西野 一夫 | 日本図書館協会事務局長 |
| 藤原 秀之 | 早稲田大学図書館資料管理課長 |
| 松木 暢子 | 株式会社図書館流通センターデータ事業部データ部部長 |
| 吉田 幸苗 | 国立情報学研究所学術基盤推進部学術コンテンツ課図書館連携チーム係長 |
| 渡邊 隆弘 | 日本図書館協会目録委員 / 帝塚山学院大学人間科学部情報メディア学科准教授 |
| (以上敬称略、五十音順) | |
| (国立国会図書館) | |
| 金箱 秀俊 | 収集書誌部長 |
| 豊田 透 | 収集書誌部副部長 |
| 佐藤 尚子 | 収集書誌部司書監 |
| 石渡 裕子 | 収集書誌部収集・書誌調整課長 |
| 大柴 忠彦 | 収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐 |
| 清水 悦子 | 収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐 |
| 中山 正樹 | 電子情報部長 |
| <オブザーバー>(国立国会図書館) | |
| 田中 智子 | 収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐 |
| 堀 純子 | 収集書誌部国内資料課長 |
| 楢木 恵美子 | 収集書誌部逐次刊行物・特別資料課課長補佐 |
| 中渡 明弘 | 収集書誌部外国資料課長 |
| 大場 利康 | 電子情報部電子情報流通課長 |
| 上綱 秀治 | 電子情報部電子情報流通課課長補佐 |
*出席者・オブザーバーの所属及び肩書きは、会議開催当時のものです。
【開会挨拶】
金箱 秀俊(収集書誌部長)
ここ数年、国立国会図書館(以下、NDL)は平成19年度の書誌調整連絡会議で議論し策定した「書誌データの作成・提供の方針(2008)」、「国立国会図書館の書誌サービスの新展開(2009)」に基づき、事業を進めてきた。1月にシステムの大規模なリニューアルを行い、サービスも定着してきたところである。
前回(第12回)の会議では、次のステージを考えるにあたり、これまでの枠組みを超えた目録規則であるRDA(Resource Description and Access)をテーマとして取り上げ、NDLの課題等を整理した。
今回の会議では、NDLの書誌データの作成及び提供に関する新たな方針の方向性について忌憚のないご意見やご提案などをいただきたい。
【講演:書誌データの近未来】
大向 一輝(国立情報学研究所准教授)
書誌データの近未来
書誌データがこれからどうなっていくのか、どのような姿であるべきなのかについては、書誌データや資料そのものを深く掘り下げることも重要であるが、「書誌データ自体を使ってどのようなサービスを提供するか」がとても重要である。古くは箱に入れて引き出して探すために書誌データをカード目録の形にした。また、目録が電子化され、OPACが普及した裏にはMARCというコンピュータで扱いやすい書誌データの形がある。このように書誌データの姿とサービスは表裏一体のものといえる。
デジタル資料のように物質的な存在がないものに対してどういう目録を作っていくのか、全文情報が容易に入手できる時代の目録がどのような姿なのかを、サービス面から考えてみたい。
電子リソースの課題と取り組み
電子リソースは、紙のものとはかなり様相が異なり、アクセス権を一定期間買うというのが基本的な契約モデルのパターンといえる。このため、図書館が主体的に管理している資料群と実際にアクセス可能な資料群とのかい離が広がる傾向があるが、NACSIS-CAT/ILL参加館への状況調査アンケートによると、作業面や予算面などの問題で、ERMS(Electronic Resource Management System 電子情報資源管理システム)を導入して電子リソースの管理を行っている館は少ない。紙の資料の総合目録ではある程度分かっていた誰が何を持っているかという情報が見えなくなり、自分の大学のものしか管理できなくなってしまうわけである。そのため、国立情報学研究所(以下、NII)では、電子リソース管理データベース(ERDB)プロジェクトという取り組みを行っている。
ERDBプロジェクト
ERDBプロジェクトは、NII、大学図書館コンソーシアム連合(以下、JUSTICE)及び参加機関(12機関)で行っているプロトタイプ構築と検証のプロジェクトである。国内外の電子リソースの書誌、契約情報、利用条件、利用統計等のデータを集約・共有し、大学図書館の業務支援、利用者のアクセス支援を目的としている(図1参照)。

図1 ERDB概念図
発見とアクセスのためのデータ
図書館が担ってきたもの、それを支えるデータとは何かを抽象化したものが図2である。基本的に図書館とは、どんなものが存在するかを識別する機能があり、ユーザの要求によってどういうものがあるかを提示し、利用者が実際にアクセスして手に入れるまでをサービスする組織形態である。図2では、それを支えているデータを、アクセスレイヤーと発見レイヤーに分けて簡単にまとめている。

図2 発見とアクセスのためのデータ
図書館サービスの近未来
データを変えたいということは、裏表であると述べたサービスを変えたいということであろう。検索サービスは、中に書かれたものの意味は見ていない。レファレンス・サービスにおいては、人間対人間が、意味をみながら情報を提供しているわけだが、1日何万人というレファレンスには対応できない。検索サービスは意味を込めたレファレンス的なサービスに近づくべきであり、レファレンスは検索のように規模を容易に拡大できるものでなければ、利用者の要求は満たせない。理想とするサービスを実現するためには、必要なデータをどのように構築するのかが課題となる。
書誌データの近未来を考える時、今「目にみえている情報」をきちんと典拠や標目として書くということは非常に大事であるが、それに加えて今後は、人間には何となくわかっている「目にみえない情報」をいかに記述していくかということが重要になってくる。GoogleのPageRankの「ページとページの関係」のような「人と人の関係」、「主題と主題の関係」といった関係の明示が求められてくる。
まとめ
FRBR[PDF File 1.38MB]やRDAの中では、1つのレコードやリソースをきちんと記述することが強く表れているが、それ以上に、関係性やコンテキストをいかに実際の書誌データに載せていくかという点が、図書館としての勝負どころである。作業の自動化、多くの人や組織の連携あるいはユーザに参加してもらう等、色々な方法によって知的リソースを確保し、その関係性を定義することが、本当に提供したいサービスに繋がっていくと考える。
【報告(1):「国立国会図書館の書誌データの作成・提供の方針(2008)」、「国立国会図書館の書誌サービスの新展開(2009)」の成果及び課題】
清水 悦子(収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐)
2008年度から今年度までの書誌サービスの拠り所としてきた方針の内容を説明し、その評価と今後の新方針へ引き継ぐ課題を提示した。
ウェブ時代に対応して誰もが自在にNDLの書誌データを活用可能にすることを目指した現在の方針について総括を行った。2012年1月のシステムリニューアルまでに、書誌データ提供の改善、多言語対応、民間MARCの導入等によりいくつかの目標を達成したが、関係機関との連携協力については課題が残っている。NDLの書誌データ作成の効率化、迅速化を進め、開放性を高めるためにも、外部資源の活用など、関係機関との連携協力は継続課題である。
【報告(2):書誌データの作成及び提供に関する方針について】
佐藤 尚子(収集書誌部司書監)
「私たちの使命・目標2012-2016」に沿い、オンライン資料の制度収集開始等による電子的に流通する情報の増加や様々な情報環境の変化等に対応するため、当館が今後書誌データ作成・提供に関しどのような方向をめざすかという新方針を検討中である。新方針は8つの項目(図3参照)からなる。ここでいう「書誌データ」には、典拠データや電子情報のメタデータも含まれている。「紙」と「電子」を一元的に扱えるフレームワークの構築を、海外のMARCからの脱却などの動向を見つつ進めて行こうとしているものである。

図3 書誌データの作成及び提供に関する方針(案)
【新方針に対する意見・自由討議】
講演及び報告の後、出席者による質疑および意見交換が行われた。新方針の方向性に関しては出席者からおおむね賛同を得られたが、新方針に基づいた具体的な作業の進め方を早期に公開して欲しいとの要望を多くいただいた。また、関係機関と連携するには、書誌データや典拠データのIDの維持管理が重要であり、その点についてNDLに期待するという発言もいただいた。NDLからは、ご意見等をもとに検討を進めること、新方針に基づいた具体策について一部検討を開始していることなどを答えた。
以下に、討議内容の一部を紹介する(当館側の回答には冒頭に【NDL】を付与)。
(1)新方針の内容等全般について
- 新方針は、(1)資料と電子情報の書誌データを統合する、(2)典拠コントロールは各種書誌データを包含するものとする、(3)MARCとメタデータを新たなウェブ環境に対応した書誌フレームワークに基づき作成・提供するという基本的な考え方に貫かれており、歓迎できる。今後、メタデータのスキーマなどの具体的な検討において、主導性を発揮してほしい。
- 書誌データに関する方針ではあるが、例えばDOIの付与など、一次情報までのアクセシビリティ向上について言及する項があってもよい。
⇒【NDL】一次情報に到達するための書誌データであるということは充分認識している。DOIについては、ジャパンリンクセンターと協力していきたい。 - 電子的に流通する情報は、ボーンデジタル化だけでなくアプリケーション化、データベース化が進む。その技術的展開のスピードからしても、5年という期間にとらわれず、方針の改正は、柔軟に見直した方がよい。
(2)資料と電子情報の一元的な取り扱い
- 今後の書誌データ作成及び提供にあたっては、新たなメタデータの基本設計が必要となっており、求められる機能に即した概念モデル(FRBR等)をどうするか、データ項目はDC-NDLにするとしても、データ項目値(国際目録原則[PDF File 413KB]、RDA関連)の決定、メタデータをコンピュータシステムにおいてどのようなエンコーディングスキーマにするのか、Linked Open Dataによる提供には、どのような記述とURIが必要なのか、というような具体的な検討が必要になる。
- EDItEURのONIX for Books 3.0系についても、「紙の書籍」と「電子の書籍」 の情報を「容れ物」として区別しない方針で行っているので、同意できる。
⇒【NDL】LC(米国議会図書館)もMARC21とONIXのマッピングを行っている。出版情報と図書館の書誌では相違はあると思うが、何らかの連携ができることが望ましい。
(3)書誌データの作成基準について
- RDFやRDAへの準拠は、これまでの経緯や国際的な書誌データ流通に与える影響を考慮すれば、概ね妥当な措置と考える。しかしRDAに対応する書誌データ作成基準が示されなければ評価が難しいため、ロードマップや関連機関との合同テストといったような検討方法を示していただくとよい。
⇒【NDL】具体的な実施に向けての計画策定を進める。来年4月からLCの目録規則がRDAに変更されるために当館でもコピーカタロギングを行う洋書から検討を進めて適用細則を作ることになる。 - RDAへの対応についてはNDLが主導性を発揮して欲しい。日本図書館協会(JLA)目録委員会でも検討は行っているが進んでいないようなので、NDLから連携協力を行って欲しい。
- RDAに対応した書誌データの作成基準が挙げられている。「国内の動向などに留意しつつ」ともあるので、日本目録規則(NCR)も視野に入っているものと推量するが、少なくとも国内刊行資料に関しては、日本の標準目録規則であるNCRに引き続き対応いただきたい。
(4)典拠等の拡充について
- 「日本目録規則」の改訂においても、典拠コントロールに関する規定を重視することが表明されている。目録の今後の方向性から見ても「典拠の拡充」は高く評価する。
- 書誌データに関しては、内容細目などの構成レベルの拡充も行って欲しい。
⇒【NDL】構成レベルの充実はなかなか難しい。目次情報の活用なども考えて行きたい。 - 典拠データの一貫性(データ修正・更新)の維持のための仕組みを作るためには、労力・コストがかかる。充分な検討と関係者の協力が必要である。
(5)書誌データの開放性について
- 相互交換性の確保については、スキーマのマッピング、システム的な対応、商業出版社へのデータ提供などの問題を早く解決して欲しい。
- APIを充実し、その自由度を高めて欲しい。
- 国内の図書館情報環境を鑑みて、現在使用しているJAPAN/MARCフォーマットも継続して提供してほしい。
- データをどのようなフォーマットで提供されるのか、特にOCLC(Onlne Computer iLibrary Center, Inc.)との関係でどうやってデータが公開されていくかに注目している。LCなどでRDA化されていったとしても(影響があってもNDLにおいて)どのような環境でも使える形で提供して欲しい。
- 今後種々のデータをオープンにするための指針を早急にまとめていただきたい。
⇒【NDL】「電子行政オープンデータ戦略」(2012年7月4日IT戦略本部)の方向性をふまえながら、検討していきたい。
(6)関係機関との連携について
- 書誌データの作成及び提供を更に迅速化、効率化するためには、関係者の協力が不可欠である。
- 紙の目録作業コストを下げないと電子リソースの管理ができない。出版社やNDL、NIIが分担してそのままロードできる目録を作って欲しい。ONIXとMARCのマッピングも難しい。紙の資料の全国的な書誌流通を十分に行って欲しい。分担してデータを作るための作業のモデルを作ることが連携であると考える。
- 旧来はレコード単位でやりとりしていたので一方通行(NDL→他館)であったが、Linked Dataがでてきたので、逆方向、逆流が可能になった。例えばNDLが作成した典拠データを、補足、充実させることが可能となり、品質的に大きなメリットとなる。
- メタデータの議論は進んでいるが、日本ではリンク先の本体の電子化が進んでいない。特に学術書は全くなく、たまに電子化されたものがあっても誰もアクセスしない。別のビジネスモデルが必要と考えている。欧米の電子ジャーナルと同様、認証したら全て読めるような仕組みでいてビジネスになるように考えなければならない。
(7)NDLへの期待、その他
- ナレッジベース、知識インフラの実現に対してシステム的に実現できた部分(国立国会図書館サーチ、典拠等)はあるが、書誌データのサプライチェーンの構造が複雑であり、いわゆる書誌情報の一元化を阻害している。NDLに政策的な判断をお願いしたい。
- 徹底したデータチェック、データクリーニングを計画的に実行してほしい。
- 数年前はMARC21の話があったが、全く出てこないので進展が早いことが分かった。話は変わるが、デジタル化を考えた時に郷土資料への対応を考えたいと思っている。メタデータの中でも特に目次情報を提供できないかとも考えている。
- 図書館をある種のウェブ上の情報システムと考えた時に、ID(ウェブ上ではURI)が極めて重要であり、責任をもって付与して維持管理することが特に重要である。そのためにシステムのリプレースなどを超えてURIが残っているという体制が必要になる。デジタル世界では本についていたようなIDがない場合もあるので(例:iPadの電子書籍の中のあるページを外部から示す方法がない)、図書館側からIDを付与、保存するためのガイドラインなどの提案をしてもよいのではないか。
【閉会挨拶】
豊田 透(収集書誌部副部長)
当館では、将来構想について検討を進めており、その中でも資料組織化は大きなテーマであって、全館的な認識の下に進めている。この検討の中で具体的なところを主に収集書誌部が担当している状況である。
利用部門からみると、利用者の求めるもの(ニーズ)は意外にシンプルであり、偶然に支配されるようなところもあり、業務の求めるコストや合理化などとその接点を探ることは容易ではない。民間MARCを作成する方々を含め、単に広い範囲での連携協力でというだけではなく、真剣勝負になっていく気がする。本音と本音をぶつけ合っていいものを作っていきたいので、今後ともご協力をお願いしたい。
