書誌データの基本方針と書誌調整:書誌調整連絡会議
平成22年度書誌調整連絡会議報告
2010年11月19日(金)、国立国会図書館(東京本館)において「平成22年度書誌調整連絡会議」を開催しました。この会議は、国内の書誌調整に関する情報の共有と交換により、書誌データの作成および提供の充実と発展に資することを目的として、定期的に開催しています。 |
<平成22年度書誌調整連絡会議 出席者>
| 大向 一輝 | 国立情報学研究所准教授 |
| 高橋 菜奈子 | 国立情報学研究所学術基盤推進部学術コンテンツ課 |
| 谷口 祥一 | 筑波大学大学院図書館情報メディア研究科教授 |
| 渡邊 隆弘 | 帝塚山学院大学人間科学部情報メディア学科准教授 |
| (国立国会図書館) | |
| 網野 光明 | 収集書誌部長 |
| 石川 武敏 | 収集書誌部副部長収集・書誌調整課長事務取扱 |
| 大柴 忠彦 | 収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐 |
| 佐藤 尚子 | 収集書誌部司書監 |
| 原井 直子 | 日本図書館協会目録委員会委員長、国立国会図書館総務部司書監 |
| 横山 幸雄 | 収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐 |
| <聴講者> | |
| 木下 直 | 東京大学法学部・法学政治学研究科図書受入係 |
| 鴇田 拓哉 | つくば国際短期大学 |
| 平田 義郎 | 横浜国立大学図書館・情報部図書館情報課雑誌管理係 |
| 本多 信喜 | 東京都立中央図書館資料管理課 |
| (国立国会図書館) | |
| 相原 信也 | 収集書誌部外国資料課長 |
| 石渡 裕子 | 収集書誌部国内資料課長 |
| 小林 裕之 | 収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐 |
| 堀 純子 | 収集書誌部逐次刊行物・特別資料課長 |
| 山地 康志 | 収集書誌部主任司書 |
| (以上敬称略、五十音順) | |
*参加者の所属および肩書きは、すべて会議開催当時のものです。
【報告(1): 典拠コントロールをめぐる動向】
渡邊隆弘(帝塚山学院大学准教授)
現在の典拠コントロールの問題点として、「対象とする実体の問題」、「適用対象とする資料の範囲の問題」、「統一標目の相互運用性の問題」、「運用コストの問題」が挙げられる。標目がないと検索できない時代ではないため、あえて典拠コントロールを行うなら、完璧を期さなければ効果が薄いと思われる。
書誌コントロールの将来に関する米国議会図書館ワーキンググループ報告書に見られる目録作業効率化の流れの中でも、典拠コントロールはそれなりに重視されている。
新しい目録法の枠組みを示した国際目録原則[PDF File 452 KB]や英米目録規則第二版の後継として刊行されたRDAにおける典拠コントロールの位置づけは、以下の4点に整理できる。
- 1)典拠レコードが対象としてきたもの(個人、団体など)が書誌的実体として明確に設定された。
- 2)目録の集中機能については、「著者」「著作」「主題」という枠組みは概ね変わらない。
- 3)「表現形」の導入等により、著作のコントロールを精密化した形で重視する。
- 4)実体間のリンク(関連)として典拠機能は表現される。
典拠コントロールの今後の展望
典拠コントロールを図書館コミュニティの外へ開放することが求められ、そのためにはデータの相互運用性が重要である。文字列による識別を行う典拠コントロールの伝統的な手法の持続可能性について検討する必要がある。図書館活動の基盤となる書誌コントロールのアイデンティティを示すには、典拠コントロール、典拠データの可視化が重要である。
【報告(2): 次期NCRについて:標目の改訂方針】
原井直子(日本図書館協会目録委員会委員長、国立国会図書館総務部司書監)
資料の利用可能性の最大化、潜在的な利用可能性を顕在化するためには、厳密で豊富な検索結果の提供が必要である。その目的を果たすためのポイントは以下の3点である。
- 1)記述対象の多様化への対応
- 2)典拠コントロールの拡大:標目について全面的に見直すとともに標目を維持するための事務データという扱いから、典拠データ自体に利用価値があるという意識の変更が必要。
- 3)リンク機能の実現:標目、典拠を通じたリンク機能や、コード化情報、URIが重要になってくる。図書館以外のコミュニティの情報との連携も視野に入れる。
新しい国際標準との整合性、日本の目録の継続性を考慮しつつ、ウェブ環境に適合した規則とすることを目標に、検討を進めている。本格的な検討開始からほぼ1年が経過し、目録委員会の中で現在合意が得られている主な改訂事項は次のとおりである。
- FRBRモデルに対応し、体現形を書誌レコードの基盤としつつFRBR第1グループと第2グループの関連と位置づけを明確にする。
- 典拠コントロールに関する規定を重視する。
- 書誌階層に関する規定を関連全体の中に位置づけ、RDAを参考に、関連指示子について検討する。
目録委員会HP[1]、『図書館雑誌』10月号[2]に、改訂の方針に関する資料を掲載している。
2010年末までコメントを募集し、その後は、コメントを参考にして改訂を進めていく。
[1]日本図書館協会目録委員会『日本目録規則』の改訂に向けて
http://www.jla.or.jp/mokuroku/20100917.pdf[PDF File 24.0 KB](参照2011-01-14)
[2]日本図書館協会目録委員会「『日本目録規則』の改訂に向けて」『図書館雑誌』Vol.104(10).2010,p.686-688.
【報告(3): CiNii著者検索】
大向一輝(国立情報学研究所准教授)
CiNiiでは、国立情報学研究所(以下、NII)、大学等、科学技術振興機構、国立国会図書館(以下、NDL)、医学中央雑誌刊行会、出版社等からの各データベースを、バックエンドサーバで同定・結合し、検索・閲覧できるようにしている。
著者IDの付与について
著者IDは、研究者個人の業績管理、国際競争の点で重要である。国際的な動向では、Researcher IDを論文に付けて投稿するという流れになりつつある。しかし、著者情報は書誌の一属性でしかなく、著者名典拠という形で管理する体制もないので、一意にIDを付与することができない。著者IDを付与するには、既存のデータに手を付けるコスト、ワークフロー、完全性の保証の難しさ等の課題がある。
CiNii著者検索
CiNiiの著者名にIDをつけるために、NII独自の著者ID(NRID)の自動付与と、書誌IDとの対応付けを行った。これにより著者IDに基づく論文検索が可能になった。今のところ、1200万ID程度存在する。機械処理だけで100%の精度を得ることは不可能なので、間違いがあれば、研究者本人から直接システムに対してフィードバックができるようユーザーインターフェイスを設計している。
今後も、各種情報のID・パーマネントリンク化を進め、他の情報源とのリンクをはかっていく。
【報告(4): FRBR研究会の取り組み−著作同定作業の試みと統一タイトル典拠コントロール−】
谷口祥一(筑波大学大学院教授)
我が国の図書館目録へのFRBRの適用を考えた際の課題の1つとして、OPACのFRBR化を目指し、著作同定の試行を行った。
欧米における先行事例(OCLC WorldCat.org、FictionFinder)を見ると、MARC21フォーマットの書誌レコードに対して、著者標目、統一タイトル、典拠レコード等を活用して、機械的に同定し、FRBR OPACを実現しているが、欧米の図書館が持っている書誌・典拠レコードと日本が蓄積してきたレコードの違いが、日本におけるFRBR OPACの実現のハードルとなっている。
そこで、我が国の書誌レコードを用いて、典拠レコードがなくても機械的に同定できないか試みた。しかし、機械的同定には限界があり、特に古典著作については機械的な著作同定は困難を極めることが判明した。この点から、主に人手による著作同定作業が必要であるという結論に至った。
人手による著作同定作業の内容
J-BISC DVD版更新版(明治期〜2009年3月収録分)から、わが国の古典著作を対象に候補レコード群をJ-BISCの検索機能を用いて包括的に抽出し、個々のレコードに対して、人手により当該著作に該当するか否かを判定した。
著作同定基準として、FRBRの示す基準に整合させること、可能な限り既存の基準(目録規則その他)に整合させることを基本方針とし、細則については独自に設定した。
結果として、「源氏物語」の場合では、4000件の書誌レコードを対象に、人手で同定作業を行い、1044件が「源氏物語」に該当すると判定された。
今後の課題としては、「判定結果の妥当性の検証、質の保証」「同定作業体制の拡充」「JAPAN/MARC以外のレコードに対する同定作業」「古典著作以外の著作同定処理」などが挙げられる。
【報告(5): 国立国会図書館の活動:名称典拠の提供に向けて】
大柴忠彦(収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐)
2010年6月からWeb版の国立国会図書館件名標目表(Web NDLSH)をNDLホームページで提供している。Web NDLSHは件名の検索・参照ができるだけではなく外部システムとの機械的連携、多様な形式でのダウンロード機能を持ち、Web上での活用に適している。
2012年1月には機能を拡張し、現在は毎月PDFで公開している新設件名のRSS配信機能やデータの自動更新機能を備えることを予定している。
加えて、NDLでは名称典拠(個人名、家族名、団体名、統一タイトル、地名)をWebで公開する予定である。Web上で公開するデータ範囲の拡大に伴い、既に公開したWeb NDLSHを改め、Web NDL Authorities(仮称)を構築する。
Web NDL Authoritiesは「インターネットの世界」に存在する利用者に向けて、展開していこうとしている新しいサービスの一つである。これにとどまらず、さらに新しいサービスを展開していきたい。
【質疑および意見交換】
(1)CiNiiの著者同定のフィードバックについて
質問: CiNiiの著者同定のフィードバック機能について、指摘の根拠は確認しているのか。
回答: 開発後半年の間は指摘が来たものを目視でチェックすることにしていた。今後目視の労力をいかに軽減するかは課題である。
(2)NDLにおける著作のコントロールについて
質問: NDLでは著作のコントロールを今後どのように考えているのか。今後の方針・方向性を伺いたい。
回答: タイトル標目としての統一タイトルの典拠コントロールはしていない。今後Web NDL Authoritiesで、統一タイトルは件名典拠として公開していくが、タイトル標目としての典拠コントロールについて、予定は今のところない。
(3)著者・著作のコントロールにおける持続可能性について
意見: 著者・著作のコントロールの必要性について異論はないが、どのように持続可能性を持って実行していくのかが問題になってきている。何か機械的な前処理を施すなどしてタスクを減らさなければいけない。
意見: 多少の間違いがあっても、とにかく機械でマッチングして、可能な限りWebで公開していこうという考えがある一方で、典拠コントロールの問題点として、完璧を期さないと効果が薄いという問題もある。機械と人手でどのようにバランスをとっていくかが難しい。
(4)典拠公開にあたっての個人情報の扱い
質問: 人名典拠を公開していく際には、個人情報を公開する部分が出てくるので、デリケートにならざるを得ないと考えるがCiNiiでは著者IDをどのように取り扱っているのか。
回答: 公開された情報を組み合わせることで出てくる個人情報をどのように取り扱うべきか。CiNiiでは同姓同名が混在した状態で公開されていたものを改善することを目的としており、このような用途が許容されるかどうかについてフィードバックをいただきながら進めている。
(5)著作の典拠コントロールにどこまで人手をかけるべきか
質問: OCLCではある程度人手をかけて典拠コントロールがなされているが、それでもうまくいっていない面もあると聞いている。人手をかけて信頼性を高めても、それでも漏れがあるのであれば、どこまで人手をかけるべきなのか、伺いたい。
回答: OCLCでも典拠コントロールは、主要な著作にしかやっていない。同定漏れもある。ユーザーには、雑誌記事等のデータについては、ある程度漏れを許容する心づもりがあるのではないか。最終的には、何を目的として情報を出すかによって、信頼性と量のどちらを重視するかを決めていかなくてはならない。
(6)CiNiiのバックエンドの作業にどの程度の人手がかかるか
質問: CiNiiのバックエンドの作業で、記事の同定や、ユーザーからのフィードバックを得た際の評価・システムへの反映に、どの程度の人手をかけているのか。
回答: 外注できる内容なので、それほど難しいことはやっていない。バックエンドは機械的処理にかけて、必要なところだけに人手をかけている。1日あたり20〜50のコメントが来ており、一人で対応できる規模である。
(7)システムの信頼性を得るためのポイント
意見: ユーザーは、システムサービス自体が完全無欠であることは求めていない。しかし、何を持っていて何を持っていないか保有する情報を、はっきりさせてほしい、という要望は多い。ここは100%確実な情報で、ここはそうではないということを明示しながら、データを出していくということが、コストと信頼性のバランスのポイントになるのではないか。
(8)著作の典拠コントロールに関する基準について
質問: 著作の典拠について、どの著作までは典拠コントロールをやって、どの著作はやらないというような基準はあるのか。
回答: RDAでは特に何の制限も設けていない。文字通りであれば、全てに対してということになる。実際にどこまでやるかは運用上の問題。
回答: 難しい問題。NCRでどのように規定するか悩ましい。全部というのが理想ではあるが、NCRでそれが可能なようにはしておきたい。
回答: 規則で決める話ではなく、それぞれのデータベースを持つ機関で、どこに信頼性を置くかということにおいて決めることではないか。
【まとめ】
石川武敏(収集書誌部副部長)
近年、目録の危機といわれているが、これまで先人達が累々と目録作業の中で蓄積してきた経験というものが、今Webの中で花咲こうとしているのではないか。Webの中には玉石混淆の色々な情報が飛び交っているが、その中で確実な情報を探そうとした場合、こうした経験が、確実な情報を選び出す上で、非常に力になる。昨年は件名、今年は典拠コントロールをテーマとしたが、これらがもっと利用されるようになるには、全国の各機関、各図書館が一緒になって、協同して標準化などの作業を行っていく必要がある。今後もご協力をお願いしたい。
