書誌データの基本方針と書誌調整:書誌調整連絡会議
平成20年度書誌調整連絡会議報告
2008年11月28日(金)、国立国会図書館(東京本館)において「平成20年度書誌調整連絡会議」を開催しました。この会議は、書誌調整に関する情報の共有や意見交換を目的として、関係諸機関と定期的に協議を行うものです。
今回は、「書誌データの作成・提供の方針:次のステップへ」をテーマとして意見交換を行ったほか、書誌データに関する当館および国内外の取り組みの報告を行いました。
| (関連諸機関) | |
| 上田修一 | 慶應義塾大学文学部教授 |
| 大串純子 | 東京都立中央図書館サービス部資料管理課整理係目録管理担当係長 |
| 金中利和 | 日本図書館協会分類委員長 |
| 北克一 | 大阪市立大学大学院創造都市研究科教授 |
| 柴田正美 | 帝塚山大学心理福祉学部長・教授 |
| 日本図書館協会件名標目委員長 | |
| 白髪正代 | 横浜市中央図書館調査資料課資料係 |
| 多田智子 | 早稲田大学図書館資料管理課長 |
| 根本彰 | 東京大学大学院教育学研究科教授 |
| 細川聖二 | 国立情報学研究所学術基盤推進部学術コンテンツ課図書館連携チーム専門員 |
| 宮澤彰 | 国立情報学研究所情報社会相関研究系教授 |
| 渡邊隆弘 | 帝塚山学院大学人間文化学部文化学科准教授 |
| (以上敬称略、五十音順) | |
| (国立国会図書館) | |
| 田屋裕之 | 収集書誌部長 |
| 吉本紀 | 収集書誌部副部長 |
| 児玉史子 | 収集書誌部司書監 |
| 中井万知子 | 収集書誌部司書監 |
| 日本図書館協会目録委員長 | |
| 相原信也 | 収集書誌部主任司書 |
| 本橋修 | 収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐 |
*参加者の所属および肩書きは、すべて会議開催当時のものです。
【報告:館外、館内の動向の報告】
(1) 国立国会図書館からの報告−書誌データの作成および提供−平成20年度の主な動き
本橋修(国立国会図書館収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐)
国立国会図書館の書誌データの作成・提供の方針(2008)[PDF File 55KB](以下、新方針)を策定した。新方針の策定については、平成19年度のこの会議で議論させていただいたが、その後2008年3月に方針として取りまとめた。詳しくは当館からの報告「国立国会図書館の新方針の進め方」の中で取り上げる。
方針の策定に関連し、2008年2月に米国議会図書館(LC)の収集書誌アクセス部長ビーチャー・ウィギンズ氏(Beacher Wiggins)を招へいし、講演会を開催した。『LCの書誌コントロールの将来に関するワーキンググループの報告書』[PDF File 442 KB](以下、On the Record)や組織再編についてご講演いただき、意見交換を行った。
2008年4月には収集書誌部が発足した。これは、収集業務と書誌業務の一体的遂行による事務の合理化、効率化を目指し、これまでの収集部と書誌部を統合したものである。国内図書、逐次刊行物、外国資料については受け入れから整理まで同一の課で処理するように組織を改めている。
また、国内刊行図書業務の再編も進めている。業務フローの見直し、民間MARCの活用、外注範囲の拡大などにより、2009年1月から新しい業務体制に移行する。民間MARCの導入についてはNS-MARCを使用する。
データを作成する方法としては、オリジナルに作成するものと、民間MARCを修正して作成するものと2通りのものがあるため、民間MARCの基準と当館の基準を包含するよう、記述やタイトルの読み等については、従来よりも緩やかな基準を適用する。しかし著者標目、分類標目、件名標目については今までと変更ない。
遡及入力は、現在、2005年に策定した「遡及計画2005」に基づき実施している。平成20年度の主な実施資料群はテクニカルリポート、博士論文、雑誌記事索引の自然科学編である。遡及計画2005は平成20年度で終了するが、今後の計画については改めて検討を行う予定である。
NDL-OPACの改修については、NDL-OPACから検索結果の集合をTSV形式でダウンロードする機能を2009年2月にリリースする予定である。そのほかにプランゲ文庫、日本占領関係資料を、2009年4月からNDL-OPACで提供する予定である。
2008年12月からは、雑誌記事索引新着情報のRSS配信を予定している。配信データ内のリンクからNDL-OPACの詳細表示画面を表示することも可能で、配信データを元にさまざまな利用ができるのではないかと思っている。
2009年2月には、公開講演会「目録の現在とこれから−“目録の危機”の時代からの展望−」を開催予定である。
(2) 国内の動向
日本図書館協会(JLA)の委員会からの報告[1]目録委員会からの報告
中井万知子(JLA目録委員長)
現在、日本目録規則(NCR)200X年版の検討に入ることになっており、そのために国際的な目録規則の改訂の動向を調査して、方向性と課題を議論している。2008年は、「国際目録原則覚書」と「RDA(Resource Description and Access)」という大きな二つの規則の改訂作業が最終段階に入っている。
国際目録原則覚書は、「国際目録規則に関する国際図書館連盟(IFLA)専門家会議」(IME ICC)にて検討が行われてきたもので、FRBR(Functional Requirements for Bibliographic Records: 書誌レコードの機能要件)[PDF File 1.4MB]モデルに基づいている。2008年4月10日に最終草案が公開され、世界的レビューが行われたが、目録委員会ではこれに対し、コメント付きの賛成票を送付した。その後、2008年10月31日付の最終版に対してIME ICC参加者による投票が行われ、目録委員会からは2名が投票を行った。最終版は、2008年中には最終決定する予定である。最終決定後、国立国会図書館(NDL)で日本語訳を作成する予定である。
RDAは、もともとは英米目録規則第2版(AACR2) の改訂版として、2004年から改訂作業が行われている。ドラフトが公表される度に、目録委員会ではレビューを実施している。2008年1月に、『On the Record』にて「改訂を休止すべし」という勧告が出るようなこともあったが、ようやく2008年11月17日に全ドラフトのPDF版が公表された。特徴は、国際目録原則覚書と同様にFRBRモデルや、FRAD(Functional Requirements for Authority Data: 典拠データの機能要件)モデルに基づいているという点である。また、ダブリン・コア抽象モデル(DCMI Abstract Model)のようなメタデータのデータモデルを採用し、セマンティック・ウェブへ対応しようという意図を持っている点も特徴的である。
現在のNCRは、FRBRに基づく国際目録原則やRDAの考え方とはかなり異なっているため、今後それらの動向を注視しながら、NCRの改訂のあり方を検討していきたい。
日本図書館協会(JLA)の委員会からの報告[2]分類委員会からの報告
金中利和(JLA分類委員長)
現在、「日本十進分類法(NDC)新訂10版」の検討を進めている。2004年4月の『図書館雑誌』に、NDC10版作成の基本方針3項目を挙げている。
- 「9版の改訂方針」(『NDC本表編』解説2.9参照)を踏襲する。
- 新主題の追加を行う。
- 解説、分類項目、注記、参照、例、補助表、相関索引など、全般にわたって必要な修正・追加を行う。
現在、3、2、7、0、5、4、1、8、9、6類の順で、改訂試案を公表するべく作業を進めている。3類は既に公開済みで、その後2か月ごとに試案を公表する予定である。あわせて「解説」や「相関索引」も見直すつもりである。「相関索引」については、基本件名標目表(BSH)や国立国会図書館件名標目表(NDLSH)の言葉を利用して語彙数を増やし、ウェブ上で公開し、数多くの語彙からそれに対応するNDCへたどりつけるような仕組みを考えている。NDC10版が確定するまではあと3、4年かかる可能性が高いが、審議は着実に行っている。
また、「日本の図書館調査」の付帯調査として「図書の分類に関する調査」を、公共図書館および大学・短大図書館を対象に2008年4月1日現在で実施した。その結果は『図書館雑誌』と分類委員会ホームページ上でお知らせする予定である。
日本図書館協会(JLA)の委員会からの報告[3]件名標目委員会からの報告
柴田正美(JLA件名標目委員長)
2007年から、全国図書館大会で、整理技術に関する皆さま方の考え方を集めるということを2回続けて行い、件名標目を中心とした検索についての論議が相当、進んできたのではないかと思っている。検索エンジンが普及している今、件名検索がどうあるべきかについて、今後検討していかなければならない。
BSHについては、件名標目委員会で事前結合方式の件名標目表として作成してきた。しかし、J-BISCにおける件名検索の方式は事後結合方式である。このように、JLAの中でBSHと異なる動きが出てきているため、BSHのような事前結合方式の件名標目表を作成することの意味を考えていく必要があるのではないか。
図書館からの報告[1]
大串純子(東京都立中央図書館)
「都立図書館改革の具体的方策」に基づいて重点事業を展開している。重点事業の一つとして「蔵書の充実」があり、資料費が順調に増えている。その中で業務の一元化を行い、効率化を図っている。また、現在施設改装工事中の中央図書館は、2009年1月4日の13時にリニューアルオープンする予定である。
書誌データの作成は、全資料同一レベルを原則としている。また、重点的情報サービスの健康・医療情報コーナーで闘病記文庫を展開しており、通常の件名に加え、病名の件名を付与している。
今後は、さらに業務の効率化を進めるために、業務マニュアルの平準化や、業務体制の見直しを行っていかなければならないと考えている。
また、ウェブ情報への対応については、東京都ホームページのコンテンツにメタデータを付与する実験を行っている。
図書館からの報告[2]
多田智子(早稲田大学図書館)
早稲田大学図書館システム「WINE」では、図書をはじめ、e-Journal、eBook、学位論文、古典籍を扱っている。e-JournalやeBook等の電子情報資源については、書誌を所蔵なしでWINEへ取り込んでいる。そのため、所蔵数よりも書誌の数の方が多くなっている。また、学位論文は、概要書等と全文そのもののPDFを付けて提供している。
古典籍については、古典籍総合データベースを展開している。2008年の図書館総合展でブースを設けており、大変盛況である。しかし、予算確保が難しいという面もあり、経常費の予算の中で業務を維持していけるよう、再検討の時期へ入っている。
また、和書データを毎月OCLCへ送付している。
今後の課題としては、遡及入力と未整理資料への対応、電子情報資源の管理、業務委託化の中での職員のスキル向上などが挙げられる。
(3) 海外の動向−IFLAケベック大会参加報告、IFLA書誌分科会ワーキンググループによる「電子時代の全国書誌のためのガイドライン」について
中井万知子(収集書誌部司書監)
大会前日の2008年8月8日にRDA のサテライトミーティングが行われ、その中で、RDAとメタデータの語彙間の相互運用に関する報告があった。RDAをセマンティック・ウェブ環境で利用するために、RDAの語彙をSKOS(Simple Knowledge Organization System) を用いて表現しようという方向で進んでいるそうである。このSKOSというデータ表現形式は、今図書館界で注目されているようである。
それとともに、RDAのオンライン版のデモも行われたが、「オンライン版が有料であること」と「RDAをセマンティック・ウェブ環境でオープンにして利用してもらうこと」との間に矛盾があるのではないかという指摘があった。
また、ケベック大会から始まった「図書館とWeb2.0ディスカッショングループ」のセッションは、図書館の持つデータのオープン化をテーマとした内容であった。データのオープン化に関する取り組みの紹介とともに、「サスティナビリティ(持続可能性)をどのように保証していくかという視点も重要である」という意見もあった。
「電子時代の全国書誌のためのガイドライン」[PDF File 511 KB]については、2008年6月に草案が公開され、世界的レビューが行われた。ガイドラインとして何を打ち出すのかがあいまいで、ガイドラインとして使えるよう、指針をもっとしっかり示すべきではないかという指摘が強くあったと書誌分科会で報告があった。ガイドラインは、2009年中に完成する予定で、完成した際はNDLで日本語訳を作成する予定である。
なお、IFLAケベック大会の参加報告と、「電子時代の全国書誌のためのガイドライン」の詳細については、NDL書誌情報ニュースレター2008年3号(通号6号)で取り上げている。
【書誌データの作成・提供の方針:次のステップへ】
(1) 国立国会図書館の新方針の進め方
吉本紀(収集書誌部副部長)
2008年3月に策定した新方針は、六つの基本方針、七つのカテゴリー、28の方策からできており、2008年から5年間ぐらいでこれらを詳細化して実現していこうと考えている。
六つの基本方針は次のとおりである。
- 書誌データの開放性を高め、ウェブ上での提供を前提として、ユーザーが多様な方法で
容易に入手、活用できるようにする。 - 情報検索システムを一層使いやすくする。
- 電子情報資源も含めて、多様な対象をシームレスにアクセス可能にする。
- 書誌データの有効性を高める。
- 書誌データ作成の効率化、迅速化を進める。
- 外部資源、知識、技術を活用する。
平成20年度は、この新方針に基づいて外部MARCの導入、NDL-OPACの改修、雑誌記事索引のRSS配信機能の公開を実施している。これらを実施する背景には、2008年8月にデータベース提供方針を改正し、検索結果の複製やデータベースとの機械的な連携が可能になったことがある。
新方針の今後の進め方と課題は次のとおりである。
1. 書誌サービスの全体枠でとらえるべき方策
全国書誌、総合目録、蔵書目録の関係、位置づけについて、平成19年度から館内で議論している。館としての方針はまだ確定していないが、全体的な視点として、総合目録、蔵書目録、日本全国書誌を一体的に利用できるようにすること、図書館との協力によること、書誌情報等のデータ、インターフェース、システム基盤を可能な限り共有できるようにすることの3点を基盤に、サービスを統合していく方向である。
2. 次期システムで実現すべき方策
現在の基幹システムのリプレース時期が近づいている。次期システムを導入する際に、多言語化や、情報検索機能の向上、電子情報資源との連携等を実現したい。あわせて、現在別システムとなっている総合目録ネットワークシステムを基幹システムへ統合することも考えている。
なお、次期システムは独自開発ではなく、既存の総合図書館システムパッケージを導入する方向で検討している。
3. 書誌調整として実現すべき方策
まず、目録やメタデータの国際的な動向に対応していくことである。国際目録原則やRDAがFRBRを基本にする中で、NDLの書誌データ、また日本の書誌データがどのような対応をしていくべきか、本腰を入れて検討していく必要がある。また、当館の持つ書誌データや典拠データ等を、新しい形式によって提供することも必要である。現在、NDLSHをSKOS形式で表現し、セマンティック・ウェブ環境で提供することを検討している。
現在、収集書誌部が扱っている資料のほとんどが紙媒体の資料だが、今後は電子情報資源も扱っていかなければならない。それらのメタデータ管理のあり方や、紙媒体資料とのシームレスな検索の実現を検討する必要がある。収集部と書誌部が統合したことにより、出版流通段階のデータを目録の作成にどう活かしていくか等、書誌と出版流通の世界との関係を収集の突端から考える機運ができてきている。そういった統合のメリットを活かしながら、新方針の内容を実現していきたい。
(2) 次世代目録所在情報サービスをめぐって
細川聖二(国立情報学研究所)
現在、国立情報学研究所(NII)では、次世代の目録所在情報サービスに向けた検討を行っており、2008年3月に中間報告[PDF File 416 KB]を発表し、パブリックコメントの募集を行った。最終報告は平成20年度末に公開する予定である。
次世代目録所在情報サービスのあり方について、課題となっている点は以下の点である。
1. 電子情報資源への対応
出版社や書誌作成機関等のデータを活用し、電子ジャーナルや電子ブックをNACSIS-CATに取り込もうと考えている。また、ERMS(電子情報資源管理システム) の実証実験を大学図書館と協力して行っており、その成果についても盛り込んでいきたい。
2. データ構造
当面は、目録規則やメタデータ・スキーマの動向を把握することに努め、システム的な変更は行わない。
3. API(Application Program Interface)
大学図書館側から、現在のデータ提供方式以外のさまざまなAPIを利用して、検索システム内でいろいろ工夫をしたいとの要望が高かった。参加館、大学図書館と一緒になって、どういうAPIを用意するべきかを検討し、開発を進めていく。
4. 外部データの活用
参照MARCからダイレクトにNACSIS-CATのデータベースに書誌を入力することで、参加館での書誌作成業務の効率化につながるかどうか、実験を行っている。
5. 共同分担方式の最適化
書誌レコードの品質のばらつきや、参加館の登録行動の二極化等の課題がある。大学図書館を取り巻く環境の変化等の現状に合わせて、共同分担方式の見直しが必要である。
たとえば、目録センター館を作って書誌作成はそこの館が中心になって行う、あるいは書誌作成に貢献した館に対して何らかのインセンティブを与える等の提案があるが、これらの実現可能性についてはこれから参加館と一緒に検討していく。
まずは、電子情報資源への対応や、外部データの活用等、比較的運用面やシステムを変更しなくても対応できるものを優先して行う。少し検討に時間がかかるものについては、もう少し長いスパンで行う予定である。
また、2009年2月にNACSIS-CAT1億件突破記念講演会を開催する予定である。
【コメント】
上田修一(慶應義塾大学教授)
NDLは、「国立国会図書館法」[PDF File 242KB]第7条に基づいて、標準的で信頼性の高い網羅的な目録を作成し、NDL-OPACとして提供している。これだけ質と網羅性の高いデータを提供しているにもかかわらず、図書館や一般の人々にはほとんど使われていない。
図書館で使われていない原因は、新刊書の納本から目録作成までに時間がかかり過ぎていることにある。公共図書館でニーズが高いのは新刊書であり、迅速性の面で優れている民間MARCが存在している以上、各図書館がNDLの書誌データを使うことは望めない。書誌コントロールのあり方という点からみれば、各図書館の目録を、全国書誌作成機関であるNDLが作成したJAPAN/MARCに置き換えることが望ましいが、各図書館にとって利点は感じられずこれも難しい。
NDLの目録は、基盤的な情報として、本の探索ばかりでなく書誌データの確認や文献リスト作成など広い用途が考えられる。これが一般の人々に使われていない原因は、NDL-OPACのウェブ上での知名度が低いといった点にあるのではなかろうか。ウェブ上での知名度を上げるのは簡単ではないが、「NDL-OPAC」という名称を改めるなど、もう少し方策が考えられよう。
北克一(大阪市立大学大学院教授)
NDLホームページに掲載されているデータベースは、階層構造が複雑で、またそれらの関係性も分かりにくいため使いにくい。ユーザーとしては、それが何のデータベースであるかは関係なく、一元的に調べたいのではないか。内部にしか見せないシステムのあり方と、外部へ公開するシステムのあり方を、切り分けて考えたほうが良い。
総合目録については、JAPAN/MARCとNACSIS-CATの将来的な連携もしくは統合を目指すべきではないか。現在のゆにかねっと(総合目録ネットワークシステム)とNACSIS Webcatの統合となるのか、もしくはもう少し範囲を広げてPORTAのような方向性になるのかは分からないが、統合する際は、PORTAのような情報技術寄りのシステムと、ゆにかねっとのような従来の図書館目録寄りのシステムとの親和性や統合性を考える必要がある。
NCRについては、FRBR、RDAの全体的枠組みとはなじまないのではないか。NCR1987年版の世界を全部捨てるならともかく、FRBRやRDAの概念をそのまま持ち込むことには無理があると思う。
NDLには、トライアルや、ベータ版という発想が乏しい。そういうプラットホームをもっと作って、Web2.0やLibrary2.0に関する実験などをいろいろ行ってほしい。
根本彰(東京大学大学院教授)
ボーンデジタルのコンテンツのどこまでを「文献」の範囲とするのか、考えなければならない。電子ジャーナルや電子ブックのようなものもあれば、ブログやインターネット掲示板のようなものもある。それらのうちのどこまでをNDLで対象にしていくのか、今すぐ答えを出すことは難しいが、考えておく必要はあるだろう。
書誌コントロール政策については、書誌コントロールにかかわるさまざまなツールの費用負担、開発費用の負担を、誰がどう負担するのかが課題である。日本の書誌コントロールの基本的な部分をNDLに依存していいのかどうか、あるいはそういう方向でものを考えたほうがいいのかどうか、NDLや、NII、JLA等の図書館関係団体が、相互にどういう関係で、どう書誌コントロール政策を作っていくのかを考えておく必要がある。
書誌コントロール教育については、資料組織論の部分が縮小される傾向にある中で、どこでどういうふうに学ぶのかについて考えなければならない。図書館の現場でアウトソーシングが進むと、目録作成のノウハウを持つことになるのはアウトソーシング側である。書誌コントロールにかかわる全体のノウハウがどこにどういうふうにあって、そのノウハウを今後どのように教えていくべきかという大きなプランを持たなければ、人材の育成が不安である。
宮澤彰(国立情報学研究所教授)
日本において、書誌調整の体制は大筋で完成したと考えている。細かい問題はあるが、目録をとることに昔よりはるかに人手も時間もかからなくなり、効率化が実現している。ただし、効率化という面で成功したことで、その分だけ目録に対する意識が希薄になりつつあるとも言える。書誌調整は、個別の図書館で行う一般向けのサービスではなく、個別の図書館のサービスを裏で支える、全国的、国際的なインフラストラクチャーであると考えている。注目はされていないが、おろそかにしてはいけない。
ウェブは、書誌調整に非常に影響してきている。今後の書誌調整のあり方として、二つの方向が考えられる。一つは、「紙媒体の資料だけに特化し、100%のカバー率と等質なデータを保証する」という方向である。ただし、提供はMARCではなく、ウェブサービスやRDF(Resource Description Framework)を用いたセマンティック・ウェブ形式での公開等、新しい方法で行うことが必要である。
もう一つの方向は、「ウェブ上の資源を含め、知的発表物すべてのメタデータを作る」という方向である。しかし、この方向は解決しなければならない問題が非常に多く、日本の国立図書館としてやれる範囲ではないと思う。現段階ではまったく実験的なことしかできないだろう。もし、この方向に行ったときは、これまで紙媒体の資料を整理して積み上げてきた書誌データや典拠データと、ウェブ上の資源のメタデータを同時に利用するためにどのようなデータ内容を記録するべきなのかを考えなければならない。
今はどちらの方向に進むか、答えは見えないが、どちらにせよ、ウェブの動向を無視することはできない。結局は、紙媒体の資料だけではなく、ウェブ上の資源の組織化も少しはやるという方向に行くのではないか。
渡邊 隆弘(帝塚山学院大学准教授)
LCの『On the Record』の大きな方向性は、目録作成作業の集中から分散協調へということである。その一つとして挙げられる、出版流通段階のような図書館外にあるデータの活用については、わが国でも問題意識を共有できるだろう。もう一つの、LCに集中している責任と負担の分散ということについては、わが国の現状を考えるとむしろ集中目録の方向に向かったほうが良いのではないか。次世代のNACSIS-CATについて共同分担方式の最適化が必要だという話があったが、これは共同分担方式という原則は続けながらもある程度の集中化をはかる方向と言えるのではないか。
目録作成の集中化を志向するとなると、NDLの書誌データは、わざわざ民間MARCのデータに手を加えて品質のいいものを作ろうとしているのだから、もっと各図書館に使ってもらえる方向を目指すべきではないか。ただし、新刊本に対する書誌データ作成のタイムラグを劇的に減らすことは難しいため、民間MARCからできていく各図書館のデータとNDLの書誌データ(JAPAN/MARC)を、何らかの識別子によって容易に置換できる体制が必要である。今回の民間MARCの導入により、JAPAN/MARCに入っていく民間MARCの番号を用いて、後日各図書館のデータをNDLのデータに置換することや、総合目録を構築する際の書誌同定をより確実に行うことが可能になるのではないか。
また、典拠レコードについても、NDLの典拠レコードを各図書館へ無償で提供できるような形があるべきではないか。公共図書館のうち、金銭的な理由で民間MARCの典拠レコードを取り込むことのできないところでは、標目による検索に欠陥のあるOPACが少なくない。NDLは、一般利用者だけではなく対図書館という関係においても、典拠データ等を無償で円滑に提供できる方策を考えるべきである。
【質疑および意見交換】
報告、コメントのほか、出席者による質疑および意見交換が行われました。ここでは、話題となった項目について、出席者の発言の概略をまとめて掲載します。

1.NDLからの報告に対する質疑応答
(1) NDLの国内刊行図書業務の再編について
| 質問: | 国内刊行図書業務の再編によって目指しているのは、質の向上とスピードのどちらなのか。また、民間MARCは、JAPAN/MARCと比較すると記述部分に違いはほとんどないが、著者、分類、件名等標目の部分にはかなり違いがある。民間MARCの導入にあたって、各MARCの評価や選定はどのように行ったのか。 |
| 回答: | 業務再編の一番大きな目的は合理化である。少ない要員でできるだけ大きなアウトプットを得ようということである。また、納本から書誌データの提供までのタイムラグを縮小できれば良いとも考えているが、どこまで短縮できるか見極めが付いていない。 民間MARCの選定方法については、ある一定の要件を満たしているものについて最低価格による入札で行った。提示した要件は、データの詳細度や迅速性等である。その結果としてNS-MARCに決まった。 民間MARCとJAPAN/MARCは標目部分のデータに違いがあるが、標目部分については、民間MARCのデータを使わず、これまでNDLが適用してきたルールに沿って引き続き付与するため変更ない。 |
| 質問: | 民間MARCは、出版社から本を持ってきた時点でデータを作っているためデータの作成が早いが、NDLの場合、納本されるのはその本が出版されて1、2か月後であると思われる。その状況でのタイムラグの縮小、スピードアップは可能なのか。 |
| 回答: | 当館に資料が納入されてからNDL-OPACやJAPAN/MARCの形で目録を提供するまで、今だいたい50日ぐらいかかっている。したがって、私どもの作業プロセスの中でもまだ改善する余地があると思っている。また、NDL全体として業務の合理化が求められており、その一環として、国内刊行図書業務の効率化を図ることとなったという背景がある。 |
| 質問: | 今回、NDLでNS-MARCを導入することに決まったが、今後、それが変わる可能性はあるのか。 |
| 回答: | 今回の民間MARCの導入は、通常の契約の枠組みの中でやっている。したがって、将来行う入札の結果によっては、導入MARCが変わるということはあり得る。 |
(2) NDL-OPACの書誌データダウンロード機能
| 質問: | NDL-OPACの書誌データをダウンロードできるという話があったが、そのデータの対象はどの部分か。たとえば、図書館でMARCにない書誌データをNDLのデータから取り込む、といったことを想定しているが、そういうことではないのか。 |
| 回答: | ダウンロードできるデータの対象については、基本的には資料群による制限がない。テクニカルリポートのようにダウンロード項目に違いがあるものもあるが、基本的にすべての資料にダウンロード機能を付け、ダウンロードした書誌データを自由にご利用いただけるようにすることを考えている。 また、各図書館のシステムの中に、NDL-OPACの書誌データをダウンロードして取り込むようなことも可能であると考えている。ダウンロードするデータの形式はTSV形式だが、図書館システムのパッケージの調査結果等を見ると、TSV形式のものでも取り込めるものがかなりあったので、TSV形式でもある程度はご利用いただけるのではないか。 |
(3) NDLSHとBSHの統合
| 質問: | NDLSHとBSHを統合したNSH(日本件名標目表)を作る気はあるか。 |
| 回答: | そのようにやりたいという方向性は持っているが、具体的にどのようにして統合するかというところまでは行っていない。これについては新方針の具体策として挙げているので、今後具体化していくつもりである。 |
2. NDL-OPACのアクセス数と検索数
ご指摘をいただいた、NDL-OPACが本来はもっと使われるべきなのになぜ使われていないのかという点、NDLのいろいろなシステムが使いづらいという点は、常々考えているところである。そこで、2008年3月に業務システム最適化計画[PDF File 704 KB]を策定し、データベースやシステムを統合し、より使いやすい形にしていこうと検討をしているところである。また、2008年3月からは、NDL-OPACで、URLを直接指定して検索しに行けるようした。このように、より使ってもらえるよう努力はしている。
NDL-OPACトップページへのアクセス数は、平成19年度で年間約412万件、検索数は年間約1700万件である。1700万件という検索数が多いか少ないか分からないが、本来ならばもっと検索数が多くても良いと思う。(NDL)
3.NCRの改訂とRDA
| 質問: | NCRを改訂する予定であると考えて良いのか。RDAが本当に使えるものになるかはまだわからないが、もしRDAが優れたものであれば、それを使っていくという選択肢もあるのではないか。 |
| 回答: | RDAがどうなるかに関係なく、NCRを改訂する予定である。その検討と並行して、RDAが本当に使えるものなのかどうか確認していきたい。その検討段階で、RDAを使っていくという結論になることも可能性としては考えうる。 また、RDAを日本語訳してそれで済めば楽かもしれないが、これまでのNCRの伝統を捨て去ってしまって良いのかという見方もある。NCRの独自性の大きなものとして、「非基本記入制」と「書誌構造(書誌階層)」がある。書誌構造が表現する全体部分関係は、FRBRとの相性があまりよくない。FRBRで全体と部分の関係をどう扱っていくかというのは、IFLAのワーキンググループでもなかなか結論が出ない鬼門のようになっている。ようやく根付いた書誌構造の概念を今後も引き継いでいこうとするならば、来るべき新しい規則もRDAに頼るだけではなくある程度独自に考えなければいけない。現時点ではまだ方向性を述べられる状況にはない。(JLA目録委員会) |
4.全国書誌と総合目録の関係整理に対する期待
NDLで収集書誌部が発足した意義は、全国書誌と総合目録の関係が整理されるかもしれないということではないか。これは、NDLが開館してから60年、ずっと議論があった点である。収集部門と書誌部門が一つの組織になって、これらの関係が整理されることを期待している。
最後に、主催者のNDLから、今後ともこのような場を借りていろいろとご意見を伺いながら、より使いやすいシステムや、そのシステムの構築を含めた書誌コントロールの実現というものを考えていきたいとまとめを行い、会議を終了しました。
(収集・書誌調整課)
