書誌データの基本方針と書誌調整:書誌調整連絡会議
平成19年度書誌調整連絡会議報告
- 会議記録(国立国会図書館デジタル化資料)[ [PDF File 582KB]
- 付録:書誌データの作成および提供:新しい方針の設定(検討用)(国立国会図書館デジタル化資料)[ [PDF File 61KB]
2007年11月16日(金)、国立国会図書館(東京本館)において「平成19年度書誌調整連絡会議」を開催しました。この会議は、国内の書誌調整および書誌データの標準化を図ることを目的に、書誌データの作成および提供に関する諸事項について関係諸機関と定期的に協議を行うものです。 |
<平成19年度書誌調整連絡会議 出席者>
| (関連諸機関) | |
| 相原 雪乃 | 国立情報学研究所学術基盤推進部学術コンテンツ課副課長 |
| 上田 修一 | 慶應義塾大学文学部教授 |
| 大串 純子 | 東京都立中央図書館サービス部資料管理課整理係目録管理担当係長 |
| 金中 利和 | 日本図書館協会分類委員会委員長 |
| 北 克一 | 大阪市立大学大学院創造都市研究科教授 |
| 柴田 正美 | 日本図書館協会件名標目委員会委員長 |
| 帝塚山大学心理福祉学部学部長・教授 | |
| 多田 智子 | 早稲田大学図書館資料管理課長 |
| 常世田 良 | 日本図書館協会理事・事務局次長 |
| 根本 彰 | 東京大学大学院教育学研究科教授 |
| 宮澤 彰 | 国立情報学研究所情報社会相関研究系教授 |
| 山崎 博樹 | 秋田県立図書館企画・広報班副主幹 |
| 米澤 誠 | 山形大学学術情報部学術情報ユニット長 |
| (国立国会図書館) | |
| 那須 雅熙 | 書誌部長 |
| 中井 万知子 | 書誌部副部長 |
| 倉光 典子 | 書誌部主任司書 |
| 本橋 修 | 書誌部書誌調整課課長補佐 |
以下に、主な内容をご紹介します。
【報告:館外、館内の動向の報告 (1) 国立国会図書館からの報告
書誌データの作成・提供―平成19年度の主な動き】
本橋修(国立国会図書館書誌部書誌調整課課長補佐)
2007年3月に国立国会図書館法が改正され、第七条「日本国内で刊行された出版物の目録又は索引の出版を行う」という文言が、「日本国内で刊行された出版物の目録又は索引を作成し、国民が利用しやすい方法により提供する」となり、状況に応じて適切な提供方法を選択できるようになった。それに伴い、冊子体の『日本全国書誌』を6月末に終刊し、ホームページ(以下「HP」)版へ一本化した。HP版は、現在は書誌データの一覧リストに留まっており、利便性の向上が課題である。例えば、検索機能やダウンロード機能の新設などが考えられる。
国立国会図書館件名標目表(NDLSH)2006年度版は、2006年9月にシソーラス化等の改訂作業を終え、2007年6月に改訂内容をすべて反映した改訂終了版として提供している。提供件数は、見出し数(「を見よ参照」を含む)としては、1991年の第5版冊子体の22,524件に比べ、約2倍の45,748件になっている。
2007年7月に「国立国会図書館ダブリンコアメタデータ記述要素(DC-NDL)」を「国立国会図書館メタデータ記述要素(2001年)」の改訂版として公表した。同時に、「NDLデジタルアーカイブシステム・メタデータスキーマ」(以下「DAシステム・メタデータスキーマ」)も公表している。こちらは、記述メタデータとしてMODS(Metadata Object Description Schema)を採用している。この結果、国立国会図書館(以下「NDL」)には二つのメタデータ基準が存在することになるが、DC-NDLは交換用メタデータ、DAシステム・メタデータスキーマは、保存用メタデータとして位置づけている。DC-NDLの使用例として、2007年10月15日から一般公開した「国立国会図書館デジタルアーカイブポータル(PORTA)」がある。現在、全20種類のアーカイブ内の情報が検索可能となっている。DC-NDL、DAシステム・メタデータスキーマは、2007年度末から2008年度にかけて見直しを行う予定である。
遡及入力については、通称「遡及計画2005」に基づき2006年度から3年計画で実施している。主な資料群は、地図資料、音楽録音資料・映像資料、国内博士論文などである。
【報告:館外、館内の動向の報告 (2) 第93回全国図書館大会第8分科会報告
「ネットワーク環境下の主題検索」
】
柴田正美(日本図書館協会件名標目委員会委員長)
全国図書館大会で資料組織化・情報組織化に関する分科会が開かれたのは、1992年愛知大会以来である。予想以上の参加があり、最終的な参加者は97名と聞いている。所属館種は公共図書館をはじめ各館種に及んでおり、「主題検索」が図書館界全般で大きな課題として認識されていることが明らかになった。
分科会では、以下の2つの報告の後、ディスカッションを行った。
「1 緑川信之報告 誰が“主題”を認識するのか」
「2 渡邊隆弘報告 主題検索ツールの将来」
渡邊先生の報告では、米国議会図書館の最近の話題を背景にして、今後の資料組織化の方向性は利用者指向型になっていくのか、それとも検索ツールを中心にしてOPACそのものを変えていくのか、という問題提起があった。
参加者によるディスカッションでは、主題検索で「件名システム」が利用されていないのでは、という意見があった。図書館の現場では、「キーワード」は「自由語=非統制語」としてタイトル等を検索していることが多い。このため、「件名」という「統制語」が認識されていないのではないか、また、利用者が考える「主題」と、提供する側が考える「主題」に食い違いがあるために件名システムや主題検索システムが使われないのではないかという意見が出された。
その一つの解決策が、緑川先生の報告にあるフォークソノミーで、それぞれの利用者が自由にタギングデータ(検索用のデータ)を入れていくと、それがいつの間にか統制語に近い形に収斂していくのではないか、というものである。
AmazonやGoogleについての評価は二分していた。結局、Amazon、Googleが提供する世界と、主題検索の考える世界とは両立または並行するものだという意識が必要で、それを踏まえて、利用者指向のシステムを考えていこう、というのが結論であった。
【報告:館外、館内の動向の報告 (3) IFLAダーバン大会参加報告】
中井万知子(国立国会図書館書誌部副部長)
2007年8月19日から23日まで、南アフリカのダーバンで開催されたIFLA大会の書誌データ関係のセッションに参加した。
書誌分科会常任委員会では、現在検討中の「デジタル時代の全国書誌ガイドライン」について報告があった。今後草案を作成し、2008年に世界レビューを経て完成させる予定である。また、来年の大会(カナダ・ケベック開催)のセッションのテーマ等が論議された。
第4部会(書誌コントロール部会)の公開セッションでは、FRAD(Functional Requirements for Authority Data:典拠データの機能要件)とFRSAR(Functional Requirements for Subject Authority Records:件名典拠レコードの機能要件)の検討状況について報告があった。
また、目録分科会の公開セッションでは、国際目録原則改訂に向けての動きとして、IME ICC5(第5回IFLA目録専門家会議)が南アフリカのプレトリアで開催され、IME ICCが五大陸を巡回し終え、現在、最終取りまとめの段階であるとの報告があった。
【報告:館外、館内の動向の報告 (4) 質疑】
司会:倉光典子(国立国会図書館書誌部主任司書)
宮澤(国立情報学研究所):
NDLの遡及入力計画は、全体としていつ終わる予定か。その結果NDLの書誌データすべてをカバーするのか。
本橋(NDL):
「遡及計画2005」は3年計画である。2008年度に終了した時点で、国内の戦後の出版物はほぼNDL-OPACで検索が可能になる予定である。ただし、国内のものでも博士論文など出版物ではないもの、また外国出版物については時間がかかるのではないかと思われる。テクニカルリポートは未入力のものが数十万件あり、こちらはさらに時間がかかるかもしれない。
上田(慶應義塾大学):
明治・大正期の図書の遡及入力は終了したということでよいか。
本橋(NDL):
現在図書資料の個体整備を行っており、その結果未入力分が発見されている。それに対応しているところで、この未入力分の整備が終われば戦前のものも含め、ほとんどデータが整備されることになる。
北(大阪市立大学):
PORTAは、「辞書による検索サポート」として「Wikipediaの検索結果へ遷移」の機能があるとされているが、内容の信頼性の問題もさることながら、フリーで出回っているものとリンクするということは、ある日突然リンク先が消えても代替手段が速やかに用意される体制がないと、とても怖いことだと考える。以前、NDLはこういった面にとても慎重だったが、大きな政策変更があったのか。
中井(NDL):
PORTAは電子図書館の一つの機能として作られている。NDL-OPACは横断検索や機能追加が難しいために、PORTAがNDL-OPACではできないことをやろうとしている。電子図書館サービスを開始したことで、NDLの政策が変わったと言えないこともない。
北(大阪市立大学):
検索エンジンやシステムとして公開されているGoogleやGoogle Earthなどでは、15分や1時間もあればリンクしてしまう。一方、デジタルアーカイブシステムを2009年度に実現という話を聞くと、実現した頃には世界が2回くらい変わっているのではないかという気がする。実証実験なら一週間か一月、半年くらいでやらないと意味がない。
根本(東京大学):
国立国会図書館法第七条の改正が行われたが、「出版物の目録又は索引」という文言は改正されていない。図書館情報学的には書誌と目録、索引は別定義である。全国書誌が出版物の「目録又は索引」であるという言い方には疑問がある。所蔵されたものという意味でよいのか。昔NDLは納本されていないものについても書誌を作っていた。それがいつの間にか目録だけになってしまった。
那須(NDL):
法律の文言については、恐らく当時翻訳されたときには財産目録という意味合いだったのだろうと思う。法律用語は厳密には我々にも理解しづらい。
全国書誌は書誌であり目録ではないという意識で作ってきた。一時は『全日本出版物総目録』を、名称は「目録」だが、全国書誌として出していた時代もあった。NDLが所蔵しているものを全国書誌として刊行していくべきだと考え、そういった信念でやっている。現実には諸問題があり、こういった矛盾は将来解決しなくてはならない。
根本(東京大学):
『日本全国書誌』と、JAPAN/MARC(以下「J/M」)と、NDL-OPACの関係はどう整理されているのか。
中井(NDL):
日本全国書誌』はカレントに受け入れたものを収録する一方、J/Mでは遡及分も収録している。NDL-OPACは基本的にすべて収録している。また、J/Mに収録しない、本当に検索用データしかないものもNDL-OPACでは収録している。NDL-OPACが一番データとしては大きく、次がJ/M、次が全国書誌ということになる。
【特集:「書誌データの作成及び提供:新しい目標・方針の設定」
書誌データの作成および提供:新しい方針の設定】
中井万知子(国立国会図書館書誌部副部長)
インターネットの情報サービスの進展は著しく、海外でも「目録の危機」に関する調査報告や提言が多くなされている。書誌データを今後どうしていくかNDLでも考えていかなくてはならない。2007年4月から班体制を立ち上げ、9月に一次案を作成した。
まず、NDLの書誌データの役割と条件から導き出される現状認識と課題を4点にまとめた。
| (1) | 『日本全国書誌』は、すべての出版物をカバーし切れていない状況がある。また、ネットワーク情報資源の書誌データの扱いが課題。 |
| (2) | J/MやJ-BISCは需要自体が減少しており、図書館の目録作成の効率化に寄与するという役割が充分に果たせていない。 |
| (3) | 蔵書検索の手段としてのNDL-OPACの公開により、直接利用されるようになったことは大きいが、NDL-OPACには柔軟性が不足している等の課題がある。 |
| (4) | Webの情報サービスの中で、図書館の書誌サービスはどう対応していくべきか。 |
| 以上の認識に立ち、5点の方針案を定めた。 | |
| 方針1: | データの開放性を高め、ウェブ上での提供を前提として、多様な方法で容易に入手、活用できるようにする。 |
| 方針2: | 情報検索システムをもっと使いやすくする。 |
| 方針3: | 電子情報資源も含めて、多様な対象をシームレスにアクセス可能にする。 |
| 方針4: | データの有効性・効率性を高める。 |
| 方針5: | 外部資源、知識、技術を活用する。 |
現時点で考えられる具体策として以下がある。
| (1) | NDL-OPACからの書誌データのダウンロードおよびAPIの実装。 |
| (2) | 検索機能の改善として、データの充実、検索範囲の拡大、NDLSHと分類の活用、電子資料とのリンク。 |
| (3) | NDL-OPACの他言語対応、アジア言語OPACとの統合あるいは連携。 |
| (4) | 雑誌記事索引から記事本文へ、雑誌の書誌情報から電子雑誌へのリンクなど、二次情報から一次情報へのナビゲート。 |
| (5) | 一般の書誌情報と電子ジャーナルとの横断検索。 |
| (6) | 書誌データの構造化、標準化を、RDAなど新しい枠組みを作ろうとする動きの中で検討。 |
| (7) | 外部MARCの導入。典拠ファイルおよび件名典拠ファイルの共同化。 |
ご意見をいただいた上で、この方針を2007年度中に策定し、2008年度から具体策を精査し、順次実行していきたい。
【特集:「書誌データの作成及び提供:新しい目標・方針の設定」
NACSIS-CAT/ILL次世代目録所在情報サービス検討状況】
相原雪乃(国立情報学研究所学術基盤推進部学術コンテンツ課)
NACSIS-CATは、1985年から稼動し、安定的に運用してきたが、時代の変化に伴い課題が出てきた。特に、「目録作成・維持・管理の体制の変化」、「電子情報資源の増加」、「技術・環境の変化」は大きな課題である。国立情報学研究所(以下「NII」)では「次世代目録ワーキンググループ」を設置し、2007年から検討を進めている。
課題は六つある。
| (1) | 運用方式:データの品質を維持しながら、減りつつある人員で効率的な入力を行うための新たな運用モデルの検討。 |
| (2) | 発生源入力:出版データを有効活用する発生源入力の検討。 |
| (3) | 電子情報資源:データベース(以下「DB」)の持ち方、運用方式などの検討。 |
| (4) | 新たな情報提示方式:API公開の要望に対して、大学等が共同で入力したデータをどの範囲で利用可能にするか等、運用方針を含めて慎重に検討。 |
| (5) | DB構造の見直し:目録規則の今後や、世界的な標準とどのように連携していくかを視野に入れた長期的検討。 |
| (6) | 図書館業務システムへの対応:図書館業務システムをNIIで用意し、ホスティングして提供すればよいという意見に対して、システム開発・ホスティングは、NIIの事業の範疇ではなく、図書館とベンダーの課題であるとの認識。 |
ワーキンググループでは、利用者・参加館の意見を取り入れながら、2007年度末まで検討を続ける。年度末に報告書を公開し、パブリックコメントを募集する予定である。
【コメント】
上田修一(慶應義塾大学教授)
外部からのNDLへの提言に、目録作成を外注すべきだという意見があった。外部リソースを使って内製するのは問題ないが、すべてを外部委託し、基盤を流出するようなことはすべきではない。
電子化の進展とネットワーク環境の中で、NDLは、ますます存在感を増しているというのが共通の認識だろう。NDLがWebで提供しているNDL-OPACや『雑誌記事索引』データベースは、国内外の不特定多数の利用者が様々なニーズで利用する、文字通りの全国的な情報基盤となっている。このたび登場したPORTAも、インターフェースやレスポンスに問題があるという感じを受けはしたが、Webには乏しい古い情報を統一したインターフェースで検索できるエンジンとして、存在意義はあるだろう。
OPACは、今や図書館利用の中心となるシステムとなっているが、図書館が想定しているOPACの利用者、そしてその使い方と実際の利用者の使い方の間にはかなり大きな隔たりがあるらしい。今のOPACは、出発点から間違っているのではないかという疑問を拭いきれない。
Marcia J. Batesが提案しているBibliographic Family(書誌的家系)は、改訂版や翻訳や異なるメディアでの表現などとリンクさせておき、ある著作を目録で検索したとき、その検索結果に、これらをまとめて示そうというものである。その実現にはこれまでの著作の一つ一つの関連著作を調べて関連づけをしていく作業が必要である。また、目録規則をはじめとする目録作成の再考も求められよう。OPAC2.0といった改善ではなく、目録データに付加価値を高める方向もあるのではないか。
【コメント】
北克一(大阪市立大学大学院教授)
大学1年生の情報検索の実態をみると、使用する検索エンジンは一つだけで、しかも簡易検索の検索窓が一つのところにキーワードを入れて使っている。OPACは在庫検索の感覚で、主題検索は検索エンジンのキーワード検索と同じ感覚のようだ。また、引用文献の書誌事項を読み解けず、合集のような資料の全体と論文著作との関係がわかっていない。
NDLには、J/Mや書誌という点では、ぜひ内容細目の構造化、構成書誌レベルでの構造化をして欲しい。論文単位の著者の典拠コントロールはなされていないと思うが、著者名典拠の共同DBの構想があるなら、基本的なこととして希望する。
PORTAが出てきて、NDLの数多くあるDBシステムが何とか一つに見えるようになりつつある。しかし、今後これらのシステムをどうするのかは課題であろう。
書誌ユーティリティ、デジタル情報のアーカイブを開発するのに5年間かかるというが、同じことを大学院生何人かとやればずっと安く作れるかもしれない。企画・予算確保・入札・調達を経た結果もはや使えないシステムだった、では時間がかかりすぎる。
一般の人からの「なぜGoogleにすべてのデータを預けないのか?」という質問に対して、図書館の視点での説明だけでなく、一般の人が理解できるようなきちんとした説明が必要である。国民一般向けの「カレントアウェアネス」のようなものはできないだろうか。
【コメント】
根本彰(東京大学大学院教授)
NDLのNational Libraryの部分がこの10年で随分進展した。インターネットや電子技術をうまく利用して、かつてNDL内部で蓄積してきた情報が一度に色々な形で出るようになったことは非常に大きい。
書誌コントロールの網羅性という点から、地域出版物を例にとってお話したい。昨年度、地域資料に関する調査研究を行った。図書・雑誌・新聞・地図などは地域資料として比較的所蔵されている。その他、新聞切抜きやコミュニティ誌等、色々な種類の地域資料が所蔵されていることがわかった。一方、整理状況をみると未整理のものがかなりあった。
OPACが地域書誌として使えるかどうかを調査してみると、都道府県はよい結果だが、市町村のOPACで地域資料のみを絞り込んで検索するのは難しい状況であった。
人手の問題にもなると思うが、資料を持っているにもかかわらず検索できない、OPACの仕様によって地域資料の書誌を絞り込めない状態である。
昔、NDLの依頼により、各県立図書館が地域資料の書誌的な調査を行ったことがある。いくつかの県立図書館では県内書誌を作っていて、一番熱心なのは青森県だったが、最近はOPACができ、専用のツールとしては作る必要がなくなったと考えられているようである。しかし、OPACが書誌の代替物になるかという点でみると、個別の検索ツールとしては使えるが、うまくリスト化できるようにはなっていない。書誌は何かのテーマで資料を列挙するためのものであり、改善が望まれるのではないか。
【コメント】
宮澤彰(国立情報学研究所教授)
書誌調整はそもそも一つの図書館のものではない。NDLはNational Libraryとして、県立・市町村立、大学、専門図書館を含めた国全体のライブラリー・システムのために何ができるかという視点を持って欲しい。
書誌調整の概念は、書誌ユーティリティの普及によってほぼ達成されたと思っている。その結果として、目録を作成するポイントが減少し、目録規則の重要性が低くなってきた。この傾向は、実際に使っている少数の人で目録規則を決めればよいという考えと、目録の作成から離れた利用の側からの考えに乖離してくる。RDAはこの乖離の中で迷走していると思う。NCRはそういう轍を踏まないように願う。
書誌調整に代わる、digital resourceを含めた、何か新しい概念を作り出さなくてはいけない。digital resourceにおける図書館コミュニティの役割は、どちらかというと保存にあるのではないか。Web上の情報は、機関リポジトリや電子図書館のようなところに固定され、そのデータが見られるように保存される体制があって初めて、かつての「出版」にあたる社会的な機能を果たしたことになるのではないか。
現代の書誌調整を超えた新しいビジョンの設定を課題とし、2008年度以降、図書館界全体で考えていくべきだろうと考えている。
【意見交換】
司会:倉光典子(国立国会図書館書誌部主任司書)
山崎(秋田県立図書館):
公共図書館の観点から見ると、基本的に、民間MARCのスピードを単にNDLに求めても難しいと思う。具体策の中では、書誌ダウンロードは段階的にでも実現して欲しい。NDL-OPACは図書館の外部にはわかりづらい。URL固定なども含めてやれば身近なものになるのでは。
NDLの色々なシステムに個々に入っていくのは不便である。近代デジタルライブラリーとNDL-OPACの連携のような方式は非常に有効だと考える。
大串(東京都立中央図書館):
都立図書館ではJ/Mを活用している。最近スピードアップを実感している。NDLの方針に、J/Mをもっと迅速にということで、対応も具体策の(7)にあるが、具体的にどのくらい早くしようという目標はあるのか。
中井(NDL):
J/Mと『日本全国書誌』はほぼ同じタイミングで、サービス基準に従い50日近くにまで縮めた。ただ、刊行までの手続き、システム的な問題があり、これ以上早く出すのは困難で、民間MARCと同等のスピードは不可能である。
打開策の一つは、記述と分類を一本化し、外部MARCを導入するなど、書誌作成のポイントを小さくしていくことがある。
米澤(山形大学附属図書館):
大学図書館の目録の現場では、実際の目録をとるときにJ/Mを使うことは少なくなってきている。おおもとであるNDLのDBやNDL-OPACに対して、J/M的、全国書誌的機能を付加すれば一本化できるのではないかという印象を受けた。
データを作るプロセス面の問題と、データを提供するサービス面の問題の切り分けが、この提言でははっきりしていない。
常世田(JLA):
NIIのDBや民間MARCと比べて、J/Mの成り立ちや内容の違いが、図書館の外部から見てわかりづらい。コスト削減のため一本化せよという流れになるとNational MARCが存続の危機に直面するので、付加価値をつけていく必要がある。
近年、図書館とは無関係な勢力が非常な勢いで発展してきた。訓練を積んだ司書が情報と利用者の橋渡しをできるかどうかが大事。それができれば、書誌、分類という図書館の資産も生き残れるのではないか。書誌そのものだけの議論をしていてもだめで、先ほどの地域資料の整理が進んでいない問題も、現場の専門職が減っていて時間がとれないことにも起因している。
多田(早稲田大学図書館):3点ほど、当館職員から意見、質問が出た。ご回答願いたい。
(1)総合目録ネットワークの所蔵データとNACSIS-CATとの関係について今後どのような考えなのか。このまま二つの基幹ネットワークを並行して運営していくのか、どこかで連携していくのか。
(2)総合目録ネットワークを今後は市町村立図書館でも利用できるようにしていくのか、あるいは現在の参加館の枠を維持していくのか。
(3)雑誌記事索引やNDL-OPACでは個人利用の文献管理ソフトへの対応は考えているか。
本橋(NDL):以下のとおり回答する。
(1)総合目録ネットワークとNACSIS-CATの関係について、今の段階では、公共図書館は総合目録ネットワーク、大学図書館はNACSIS-CATという枠組みを大きく変更することはできない。NACSIS-CATは分担目録だが、総合目録ネットワークは参加館から送信されたデータを統合して構築しているなど、DBの成り立ちにもかなり違いがあるため困難と考える。
(2)2001年から、市区町村立図書館も参加館として検索は可能になっている。2007年10月現在で市区町村立図書館836館が参加館となっている。
(3)今のところはまだ、ダウンロードの形式などを検討中の段階であるので、今後の検討課題とさせていただきたい。
金中(JLA分類委員長):
民間MARCは流通の段階から活用されるもので、NDLは迅速性では競争できない立場にある。大学図書館はNACSIS-CATでシェアリングしているので、それほどJ/M自体に迅速性は求められないだろう。収集・書誌を一つのユニットにすること、民間MARCを取り込んで納本と組織化をスピードアップすることなどで、ある程度の解決を図るのが現実的であろう。
官庁資料など、民間MARCにない資料の網羅性については、『日本全国書誌』の意義として宣伝不足ではないか。外部のMARCにありながらNDLに入っていないものをカバーするという点は、既存のMARCを活用し、納本漏れをこつこつと集めて欲しい。
山崎(秋田県立図書館):
地域資料のデータ作成時のMARC利用については、全体の図書館の34%(県立図書館だともう少し率が上がって50%近く)が独自にデータを作成している。独自作成の内訳として、J/Mにデータがないのか、民間MARCにデータがないのか、それとも外部データの有無は関係ないのか、そこまで深めて背景をもう少し調べればJ/Mの意味合いもわかってきたのかもしれない。
米澤(山形大学附属図書館):
メタデータの扱いやFRBRの扱いについて、書誌学的・図書館学的な研究があまり進んでいない印象がある。ぜひ大学図書館を巻き込んでその面の議論を活性化して欲しい。
中井(NDL):
メタデータについてはダブリンコアをはじめ色々な基準があるが、NDLでは基準を作っているだけで実践が伴わないことに悩みがある。外部との機関リポジトリとの関係では、基準を合わせる努力をしていかなくてはならない。
最後に、主催者のNDLから、本会議の議論をふまえた新しい方針を今年度中に策定し、実現に向けて努めていきたい、また、具体的な連携のテーマについて協同する体制を作っていかなければならないとのまとめを行い、会議を終了しました。
