典拠の国際流通―バーチャル国際典拠ファイル(VIAF)への参加(3)

NDL書誌情報ニュースレター2013年2号(通号25号)
【はじめに】
バーチャル国際典拠ファイル(Virtual International Authority File、VIAF)への参加に関連したこの連載記事も、今回で最終回を迎えます。連載第1回目では、VIAFの概要や国立国会図書館がVIAFに参加した経緯等をお知らせしました。第2回目には、図書館の現場で活用できるVIAFの使い方を解説しました。最終回の今回は、VIAFの現在の状況および今後の計画等について、VIAF評議会の活動内容を中心にご紹介します。
【VIAF評議会】
連載第1回目でもお知らせしましたとおり、VIAFは2012年4月からOCLC(Online Computer Library Center, Inc.)が提供するサービスの一つになりました。ただし、VIAFの運営は、VIAF参加機関からの指導・助言等によって進められます。そのために、VIAF参加機関によって構成されるのが、VIAF評議会です。当館がOCLCと締結した協定によりますと、VIAF評議会は、VIAFの「方針、実践、運営に関する重要事項について、指導を行う」ものとされています。当館もVIAF評議会のメンバーです。
VIAF参加機関による会合は、これまでも定期的に行われてきたようですが、OCLCへの事業移管後の2012年、評議会という形での会議が初めて開催されました。IFLA大会開催に合わせて、8月にヘルシンキにおいて開かれました。[1]会場はフィンランド国立図書館でした。今後、VIAF評議会会議は毎年開催されます。2013年のVIAF評議会会議は、昨年同様IFLA大会の開催時期に合わせて、8月にシンガポールで開催される予定です。
ヘルシンキにおける評議会会議では、議長にヴァンサン・ブレ氏(Vincent Boulet、フランス国立図書館)が、次期議長候補(今期の副議長も兼ねます)にブリギッテ・ヴィーヒマン氏(Brigitte Wiechmann、ドイツ国立図書館)が、それぞれ選出されました。
【ISNIとの連携】
連載第2回目ではWikipediaとの連携について解説しましたが、VIAFはさまざまな機関等と連携を行っていきます。ISNI(International Standard Name Identifier)との連携もそのひとつです。ISNIは、コンテンツ産業に関係する団体に使われることもふまえた、広い範囲の創作者等の識別子で、ISO規格となっています[2]。
このISNIのIDは、VIAFのデータを利用して作成されています。ISNI側が、まず、そのベースとしてVIAFのデータを使います。そして、権利関係団体など他のリソースのデータとVIAFデータとの同定処理をします。そして、ISNIという識別子を、VIAFも含めた各データへ割り当てます。

図1 VIAF詳細表示画面におけるISNIへのリンク
ISNIの品質管理チームは英国図書館とフランス国立図書館で構成されています。両館ともVIAFの参加機関です。このISNI割当ての過程で判明したVIAFにおけるエラー(たとえば、VIAFクラスターにおける誤同定、個人名の生没年の誤り等)について、VIAF側へエラー・レポートとして通知されます。VIAFを主管しているOCLCから、VIAF各参加機関へそのエラーが報告されます。各機関がエラーを修正し、その修正がVIAFに反映されれば、その結果、VIAFの品質向上にもつながります。
【典拠の種類の拡充】
連載第1回目でご紹介したとおり、VIAFプロジェクトは1998年から、米国議会図書館(LC)、ドイツ国立図書館、OCLCの三機関により、コンセプト検証が開始されましたが、その当初は個人名および団体名の典拠からスタートしました。その後、2011年から統一タイトルへと典拠の種類を拡げました。今後拡充予定の種類として、地名典拠があります。国名等の政治的区域を表す地名典拠についてはVIAFクラスターが形成されていますが、山、川などの自然地名はまだ十分ではなく、今後の充実が求められます。また、ミッキーマウス、ダース・ヴェイダー[3]等フィクション上のキャラクター名の典拠も今後の拡充対象として挙がっています。
【ワーキング・グループの設置】
2012年8月のVIAF評議会で課題として挙げられたもののうち、その後、ワーキング・グループが設置されたものがあります。2012年10月にヴァンサン・ブレ評議会議長からVIAF参加機関へ向けて、二つのワーキング・グループ設置の連絡と参加への呼びかけがありました。
ひとつは、プライバシー問題について取組むグループです。特に、個人名典拠には、生年等の個人情報が含まれています。これらの情報は、VIAFにおける典拠の機械的な同定には欠かせませんので、データとしては保持するとしても、クレームがあったものについてはVIAF画面上表示しない、といった対応が検討されそうです。
もうひとつは、アドヴォカシーについて取組むグループです。VIAFについて、その存在意義や効果的な活用方法について広く周知し、VIAFへの支援や支持を得て、かつ、VIAFの利用を促進していきます。
なお、アドヴォカシーとも関連しますが、ヘルシンキにおけるVIAF評議会会議では、VIAFにおける非ローマン言語の典拠データの充実、特に、アジア諸国からのVIAF参加を促進することも今後の課題として挙げられていました。
【典拠の国際動向と当館】
2009年に刊行された“Functional Requirements for Authority Data”(FRAD)[4]において、利用者の視点から典拠データの考え方が整理されました。各国の典拠データは、FRADの概念モデルを参照して見直されていくでしょう。
また、図書館目録の中で培われてきた典拠データを、セマンティック・ウェブを志向しLinked dataとして提供する動きが、米国、ドイツ等各国で見られます。当館もこの動きに遅れることなく、Web NDL Authoritiesからウェブで使いやすい形で典拠データを提供しています。
このような典拠の国際的な動向の中で、連載第1回に今後の予定としてお知らせしましたように、当館は、VIAF参加を契機として、典拠データの提供に係る国際的な調整へ積極的に参画することを目指していきます。当館は、現時点では、VIAF評議会のもとのワーキング・グループへの参加を見合わせており、この点では積極的に参画しているとは言えませんが、一方で、VIAFの日本語版インターフェイス作成について、OCLCのVIAF担当者と協力して進めており、これによって日本国内におけるVIAFの利用促進に寄与できるものと考えます。日本語版インターフェイスが公開されましたら、本誌でお知らせします。
【おわりに】
典拠データを広く提供していく上では、そのデータの質と量が問われます。当館は「国立国会図書館の書誌データ作成・提供の新展開(2013)」(今号にその解説記事を掲載しています)の中で典拠の拡充を掲げました。今後、この方向性に沿って、日本発の典拠データをさらに充実させ提供していきます。
大柴 忠彦
(おおしば ただひこ 収集・書誌調整課)
[1]2012年8月のVIAF評議会会議の内容については、本誌2012年4号(通号23号)の第78回IFLA大会(ヘルシンキ)報告の中でも触れています。
http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/bib_newsletter/2012_4/article_03.html, (参照2013-5-16)
[2]ISNIについては、「カレントアウェアネス-R」でも紹介しています。
http://current.ndl.go.jp/node/19738など (参照2013-5-16)
[3]ちなみに、LCの典拠では、ダース・ヴェイダーの参照形としてアナキン・スカイウォーカーが記録されています。なお、当館では、フィクション上のキャラクター名の典拠は作成していません。
[4]当館収集書誌部は日本語訳「典拠データの機能要件:概念モデル」を作成し、ホームページに公開しています。
http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/frad_jp.pdf, (参照2013-5-16)
また、本誌前号にFRADの解説記事を掲載しています。
http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/bib_newsletter/2013_1/article_04.html, (参照2013-5-16)
NDL書誌情報ニュースレター(年4回刊)
ISSN 1882-0468/ISSN-L 1882-0468
2013年2号(通号25号) 2013年6月26日発行
編集・発行 国立国会図書館収集書誌部
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