ドイツ国立図書館の書誌データ戦略―コルネリア・ディーベル氏を招いて

NDL書誌情報ニュースレター2013年2号(通号25号)
国立国会図書館では国内外の図書館協力活動の一環として、図書館業務に関連の深い有識者を海外からお招きし、講演会を開催しています。
2013年3月6日には、ドイツ国立図書館(DNB)のコルネリア・ディーベル氏(Ms. Cornelia Diebel)による講演会「電子情報の収集とメタデータ:電子納本に関するドイツ国立図書館の戦略」を開催し、館外からの参加者と当館職員合わせて約100名が聴講しました。
ドイツでは、2008年に新たな納本令が公布され、電子書籍、電子ジャーナル、電子学位論文等の電子情報がDNBに納本されています。講師のディーベル氏は、DNBのIT部門で、オンライン情報資源タスクフォース責任者として電子情報収集等の多くのプロジェクトに携わってこられました。そのディーベル氏のお話は、今年の7月からオンライン資料の制度収集を開始する当館のみならず、電子出版等に関心のある日本の関係者にとっても、たいへん示唆に富むものでした。講演の記録は、イベント・展示会のページに掲載しています。
講演会の翌3月7日午後、東京本館においてディーベル氏と当館職員の懇談会を行いました。懇談会の前半では、前日の講演会の内容について、オンライン資料制度収集に携わる当館職員から具体的・技術的な質問を行いました。後半では、書誌調整やメタデータの標準化を担当している当館職員が参加し、前日の講演会ではあまり話題にならなかった、DNBにおける書誌データ作成・提供の現状や方向性についてお話を伺いました。
本稿では、この懇談会の内容等を元に、DNBの書誌データに関する戦略についてご紹介します。
1. ドイツの目録政策
ドイツ語圏ではこれまで、標準として『アルファベット順目録規則』(RAK)を使用していましたが、RAKの維持管理を担う標準化委員会は、2001年、目録規則とMARCフォーマットをRAK・MAB2からAACR2・MARC21に移行する方向性を打ち出しました[1]。国際標準に対応することが、その目的です。しかし、データ交換用フォーマットとしてはMARC21を採用しましたが、目録規則についてはAACR2ではなく、その後継であるRDAに変更することを決めました。RAKからAACR2に変え、さらにRDAに変えるのは意味がないことなので、直接RAKからRDAに変更することにしたのです。
ドイツ独自のMAB2という交換用フォーマットからMARC21への変更にあたっては、国家プロジェクトを立ち上げました。MAB2が優れたフォーマットであったため、ドイツ国内の図書館からはMAB2からMARC21への変更が一歩後退であるように受け止められましたが、時間をかけて協議を行いました。
MAB2からMARC21への変更はすでに行われており、RAKからRDAへの変更は、2013~2014年を予定しています。
2. DNBにおけるRDA適用について
DNBもメンバーとして参加しているRDA開発合同運営委員会は、RDA適用の三つのシナリオを示しています[2]。
- シナリオ1:新しいフレームワークでRDAを適用(リレーショナル/オブジェクト指向データベース構造)。
- シナリオ2:MARC21でRDAを適用(リンクされた書誌レコードと典拠レコード)。
- シナリオ3:書誌と典拠をリンクしない(「フラットファイル」データベース構造)。
ドイツでは、RDA適用にあたっても国家プロジェクトを立ち上げ、そこで上記のシナリオのうちシナリオ2を選択することを決めました。
2012年夏から開始したこのプロジェクトには、ドイツの逐次刊行物総合目録の参加館や大学図書館等が参加し、DNBがイニシアティブをとって推進しています。現在は、逐次刊行物の目録について初号主義と最新号主義に関する議論や、内部フォーマットへの新しいフィールドの設置について検討しています。次の段階では、著作レベルでのFRBRモデルの実現や、タイトルと典拠ファイルとのリンクを検討する予定です。また、RDA適用について国内の図書館向けの研修や、国内の図書館がRDAを使えるようにするための準備も行っています。
3. 新たな書誌フレームワークBIBFRAMEについて
アメリカ議会図書館(LC)はMARCフォーマットに替わる新しい書誌フレームワークの構築に向けた取組みの中でBIBFRAMEを発表しました。DNBはBIBFRAMEの初期実験に参加しています。
現時点では、実験の内容について詳しく話せることはなく、まだ会議への参加と検討にとどまっています。もうしばらく様子を見る必要があります。
DNBは、BIBFRAMEは限界のあるMARCよりもよいものであると考え、歓迎しています。
4. Linked Dataについて
DNBは、書誌データ・典拠データともにLinked Dataの形式で公開(書誌データは2012年から、典拠データは2010年から)しており、ライセンスはクリエイティブ・コモンズのCC0を適用しています。これにより、営利・非営利を問わずDNBのデータ全体を無償で自由に利用可能となっています。
DNBでは以前、データを販売していましたが、「書誌データは無料で利用できるものであるべき」との考えに基づき、無償化することになりました。DNBの監督機関に諮問し、2年間かけて無償化することを決定しました。データ交換のために必要な開発なども行い、DNBの書誌データの変換を行いました。また、DNBの統合典拠ファイルであるGemeinsame Normdatei(GND)をセマンティックウェブに対応した形で提供するためのGNDオントロジーも開発しました。
データをオープン化した後は、国際会議等でこの活動のプロモーションを行っています。Wikipediaドイツ版による典拠とのリンクなど他機関によるデータ利用も、実験的な段階ですが始まりつつあります。
DNBとしては今後も、出版者からメタデータをできるだけ広く収集し、DNBのメタデータを使いたい人にはオープンに使ってもらえるようにしたいと考えています。
【むすびに】
約1時間にわたり、通訳をはさんで上記の四つのトピックについて懇談を行いました。
本稿ではDNBの書誌データ戦略についてご紹介しました。当館は、昨年度策定した「国立国会図書館の書誌データ作成・提供の新展開(2013)」(以下、「新展開2013」といいます)を当館の書誌データ戦略として公開しています。別稿で、その内容を解説しています。
国内の図書館と歩調を合わせたRDAへの対応、RDAやFRBRモデルの効果を十全に発揮するための新しい書誌フレームワークの構築、そして作成したデータのオープン化。懇談会で取り上げたトピックはいずれも、「新展開2013」の下に当館が今後取り組まなければならない課題であり、DNBではすでに方向性を定め推進しているものです。
「新展開2013」に基づいて検討を進め、また具体的な書誌サービスを実施していくにあたって、DNBをはじめとする先進的な国立図書館は、当館にとっての貴重な水先案内となります。今回、DNBでプロジェクトに関わってきた方から直接お話を伺えたことの意義はたいへん大きなものでした。「書誌に関することは自分の通常の業務ではないのだけれど」と言いつつも、当館からの質問に対してたいへん詳しく説明をしてくださったディーベル氏に、改めて感謝の意を表したいと思います。
(収集・書誌調整課)
[1]日本図書館協会図書館ハンドブック編集委員会 編. 図書館ハンドブック. 第6版補訂版. 日本図書館協会,2010.2. 673p
[2]RDA Database Implementation Scenarios. 2009.7,
http://www.rda-jsc.org/docs/5editor2rev.pdf, (参照 2013-04-15)
NDL書誌情報ニュースレター(年4回刊)
ISSN 1882-0468/ISSN-L 1882-0468
2013年2号(通号25号) 2013年6月26日発行
編集・発行 国立国会図書館収集書誌部
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