「国立国会図書館の書誌データ作成・提供の新展開(2013)」について

NDL書誌情報ニュースレター2013年2号(通号25号)
【はじめに】
前号でお知らせしましたとおり、国立国会図書館は「国立国会図書館の書誌データ作成・提供の新展開(2013)」(以下、「新展開2013」といいます)を公表しました。「新展開2013」は、当館が2012年7月に定めた「私たちの使命・目標2012-2016」に沿っておおむね5年を見据え、当館の書誌データ作成・提供の方向性を示すものです。
「新展開2013」は、八つの項目からなります。全体的な構成は下図のとおりで、第1項が「はじめに」、第8項が「むすび」のような位置づけです。第2~第4項は書誌データの作成に、第5・第6項は書誌データの提供に、それぞれ主に関係しています。第7項は作成・提供の全体にかかる内容です。

図1 国立国会図書館の書誌データ作成・提供の新展開(2013)構成図
本稿では、「新展開2013」の八つの項目それぞれを解説します。また、すでに具体的な準備が進んでいる項目については、現在の進捗状況も報告します。
(趣旨)
1 国立国会図書館が収集した図書及びその他の図書館資料(以下「資料」という。)並びに電子的に流通する情報(以下「電子情報」という。)のいずれにも利用者が迅速、的確かつ容易にアクセスできるよう、また広く書誌データの利用を促進するよう、書誌データの作成及び提供を行う。
ここでいう「書誌データ」には、典拠データ及び雑誌記事索引データ並びに電子情報の書誌データ(メタデータ)も含める。
「新展開2013」の第1項では、
(1)利用者が資料と電子情報のいずれにも迅速、的確かつ容易にアクセスできるようにする
(2)書誌データの利用を促進する
の2点を、当館における書誌データ作成・提供の目的として掲げています。なお、ここでいう「資料」は図書など紙媒体を主とする有体物を、「電子情報」は今年の7月から制度収集を開始するオンライン資料をはじめとした電子的に流通する情報を、それぞれ指しています。
(1)の「いずれにも」は、さりげない言葉ですが大きな意味を持っています。「新展開2013」では、資料と電子情報を一体として扱い、いずれにも利用者が同じように迅速、的確かつ容易にアクセスできるようにすることを述べています。このことから、「新展開2013」でいう「書誌データ」には、典拠データや雑誌記事索引データだけでなく、電子情報のメタデータも含めています。
(2)は、当館の書誌データは当館の蔵書を利用する利用者のみならず、書誌データそのものを利用する利用者のためにも提供することを述べています。利用できる時間や場所、利用対象に制約のあったカード目録や冊子体目録の時代と異なり、現在のウェブ環境では、さまざまな機関の書誌データを容易に入手し活用できるようになっています。当館の書誌データが、図書館等での業務に、あるいは個人の調査研究に資するため、そのほか多様な目的で広範囲に、そして迅速、的確かつ容易に、利活用されることを目指します。
(資料と電子情報の一元的取扱い)
2 資料と電子情報の書誌データを一元的に扱える書誌フレームワークを構築する。
「書誌フレームワーク」とは、書誌データの記録・流通・交換のための「容れもの」である。従来扱ってきた資料だけでなく、電子情報も一元的に扱うためには、MARCフォーマットでは限界があり、Linked Open Dataに対応する等ウェブ環境に適したフレームワークを構築する必要がある。例えば米国議会図書館では、MARCフォーマットに替わる新しい書誌フレームワークの開発が計画されている。こうした動向に注意を払いつつ、日本の言語環境等に適したフレームワークを見極め、これを構築していく。
書誌データの作成・提供において資料と電子情報の書誌データを一体として扱うためには、それに適した書誌データの「容れもの」が必要です。この書誌データの記録・流通・交換のための「容れもの」を、「新展開2013」では「書誌フレームワーク」と呼んでいます。
図書館において伝統的に書誌データの流通等に用いられてきたMARCフォーマットには、柔軟性や拡張性に欠けるところがあります。そこで、米国議会図書館(LC)はすでに新たな「容れもの」の検討を始めました。2012年11月、LCは、約半世紀にわたって使われてきたMARCフォーマットに替わるデータモデル“BIBFRAME”を提案しました。“BIBFRAME”は、Linked Dataを強く意識したウェブ時代に適した新たなフォーマットのためのデータモデルです。
一方で当館は、国立国会図書館サーチの書誌データを、国立国会図書館ダブリンコアメタデータ記述(DC-NDL)で記述しRDF(Resource Description Framework)形式で提供しています。これも、Linked Dataに対応した形式であり、ウェブ環境に適したものです。
今後も引き続きLC等の動向を注視して、当館が情報資源の組織化および利用提供のためのメタデータ標準として定めてきたDC-NDLをふまえながら、新しい書誌フレームワークを構築していきます。
(書誌データの作成基準)
3 資料と電子情報のそれぞれの特性に適した書誌データ作成基準を定める。
上記2のフレームワークに格納する書誌データを作成するためには、「国際目録原則覚書」等の国際標準や「日本目録規則」改訂等の国内の動向などに留意しつつ、特に“Resource Description and Access(RDA)”に対応した書誌データの作成基準(適用細則等)を定めることとなる。その際に、資料と電子情報のそれぞれの特性を見極め、利用者の検索に役立つ有意なアクセスポイントを付与できるものとする。
第2項では、資料と電子情報の書誌データを一元的に扱える「容れもの」、すなわち新しい書誌フレームワークを構築することを述べました。それとともに、新しい「容れもの」に適した書誌データの「作り方・容れ方」、すなわち新しい書誌データ作成基準を定めます。
これを裏返すと、資料と電子情報の書誌データを一元的に扱えるように新しい書誌データ作成基準を定めるので、その基準で作成される書誌データに適した新しい「容れもの」を構築する、となります。ウェブ環境に適した書誌データ作成・提供を展開していくためには、書誌データの「作り方・容れ方」と「容れもの」の両方を相まって考えていく必要があります。 なお、本稿ではこの後、「作り方・容れ方」を短く「容れ方」とまとめて表記します。

図2 「新展開2013」第2項および第3項の関係
書誌データ作成基準を定めるにあたって、ポイントとなるのが“Resource Description and Access”(RDA)です。RDAは、利用者の視点から従来の目録法を見直し、また、電子情報のメタデータとの調整を行った、これまでの目録規則の枠組みを超えた新しい書誌データ作成基準です。したがって、現在の目録規則よりも、資料と電子情報の書誌データを一元的に扱うのに適しています。また、セマンティック・ウェブやLinked Dataを視野に入れたRDAは、「新展開2013」が示す方向性と合致するものです。
当館は、従来は『英米目録規則第2版 Anglo-American cataloguing rules 2nd Edition(AACR2)』を適用していた洋図書等の資料群に対して、2013年4月1日からRDAの適用を開始しました。一方で、和図書等の全国書誌収録対象となる資料群については、これまでどおり『日本目録規則(NCR)』を適用しています。
このNCRを適用している資料群についても、RDAに対応した書誌データ作成基準を定めます。ただし、RDAをRDAのままで適用するのではなく、日本の目録慣習や出版慣行等もふまえ、国内に広く受け入れられるものとするよう進めていきます。そのために、国内の関係機関、特にNCRの改訂作業を行っている日本図書館協会目録委員会と連携を図り、具体的な協議を行います。
さらに、電子情報についてもRDAへの対応を実現できるよう、書誌データの内容等を検討する予定です。なお、当館が提供している電子情報は、現状では資料とは別々の「容れもの」(DC-NDL)に、別々の「容れ方」(デジタルアーカイブシステム用の記述のガイドライン)でデータを作成し提供しています。
ただし、資料と電子情報を「一元的に扱う」とは言っても、何もかもいっしょくた、ということではありません。資料と電子情報それぞれに、さまざまな種別ごとの特性をふまえて、利用者にとって利便性のある書誌データを作成するための基準を定める必要があります。「最上位の原則は利用者の利便性である」(「国際目録原則覚書」)からです。
第1項から第3項をまとめると、
「資料と電子情報を一元的に扱います。それを実現するための新しい『書誌データの容れもの』(書誌フレームワーク)を構築し、新しい容れものに合わせた新しい『書誌データの容れ方』(書誌データ作成基準)を策定します。」
となります。
(典拠等の拡充)
4 信頼性及び効率性の高い検索に資するよう、典拠データ作成対象の拡大並びに主題情報及び各種コード類付与の拡充を行う。
利用者が効果的な検索を行えるようにするために、以下を検討する。
(1) 典拠データの作成対象を、日本語以外の外国刊行資料、博士論文、雑誌記事索引、電子情報等に拡大すること。
(2) 典拠データの種類を統一タイトル、ジャンル形式等に拡充すること。
(3) 現状において「国立国会図書館件名標目表(NDLSH)」や「日本十進分類法(NDC)」による標目付与を行っていない資料群への付与を行うこと。また、コード類及び標準識別子等の運用を拡充すること。
関係機関との協力も視野に入れ、実施に当たってはコストとのバランスを勘案する。
典拠データは、図書館が提供する書誌データの信頼性を裏付け、また効率的な検索の助けとなります。従来の典拠データは標目を統制するための、いわば裏方的な存在でしたが、現在のウェブ環境においては、データ間のリンクを支える仕組みとして活用されるようになっています。「新展開2013」の第4項では、この典拠データの拡充に力を入れていくことを述べています。
典拠データの維持管理には、多大なコストがかかります。書誌データ作成・提供を迅速に行うこととはトレードオフの関係にあり、資源が限られているため一部を犠牲にせざるを得ない状況にあります。しかし、典拠データをもとに書誌データの質を高め、また典拠データ自体も利活用しやすい形で提供することは、当館に求められる役割であると考えます。今後も費用対効果を勘案しながら、可能なところから少しずつ典拠データの拡充を図ります。
実施を予定している事項から、いくつか例をお示しします。
2012年8月から、日本語以外の外国刊行図書で著者が日本人の場合、かつ、すでに典拠データが存在する場合に、書誌データと典拠データのリンクを開始しました。今年度からは、日本の団体が著者である外国刊行図書についても同様に、すでに典拠データが存在する場合には書誌データと典拠のリンクを行います。
当館は、「国の蔵書(ナショナル・コレクション)」を構築するため、国内出版物に加え国外で発行された日本関係資料の収集に力を入れています。外国刊行図書の書誌データについても典拠データとのリンクを行うことで、たとえば、ある著者の日本語資料とその外国語版を同時に検索しやすくなる等の効果が期待できます。
また、主題情報の拡充の一環として、現在は国立国会図書館件名標目表(NDLSH)による標目付与を行っていない地図資料について、日本語の地図資料へのNDLSH付与を開始する予定です。
さらに、典拠データの種類を拡充するため、統一タイトル典拠やジャンル形式典拠について、関係機関が作成したデータを当館で活用できるかどうか検討を開始します。
前述のRDAでは「関連」が重視されています。資料とその著者との「関連」や、資料同士の「関連」などです。この「関連」を表すための仕組みとして、典拠があります。RDAに対応した書誌データ作成基準を策定するならば、その効果を十全に発揮するには典拠データの拡充が不可欠です。また、「関連」を重視する新しい書誌データ作成基準に適した書誌フレームワークは、書誌と典拠を「関連」させつつ一体として提供できるものとなることが考えられます。したがって、第1~3項と第4項は、相互に密接に関係しています。

図3 「新展開2013」第2項、第3項および第4項の関係
(全国書誌の提供)
5 国立国会図書館法第7条に規定する「日本国内で刊行された出版物」に相当する電子情報の書誌データを、新たに全国書誌として提供する。
国立国会図書館法の改正により平成25年7月から収集を開始するオンライン資料等、「日本国内で刊行された出版物」(国立国会図書館法第7条)に相当する電子情報も、全国書誌に収録し提供する。これに先立ち、IFLAガイドライン「デジタル時代の全国書誌」等を参考に、提供範囲や方法等を整理する。
当館は、日本で唯一の全国書誌作成機関であり、これからもその役割に変わりはありません。
さらに、これまでは全国書誌の収録対象としてこなかった電子情報の書誌データを、全国書誌として提供します。
当館は2012年4月から、国等の公的機関のウェブサイトを網羅的に収集しています。また、2013年7月からは、納本制度に準じ、民間で出版された電子書籍、電子ジャーナル等を収集・保存します(当面、無償かつDRM(技術的制限手段)のないものに限ります)。これらのオンライン資料は、従来は全国書誌に収録していませんでしたが、平成26年度からは、当館が作成した書誌データを全国書誌として提供します。
なお、従来の資料を収録した全国書誌は、現在 (1)国立国会図書館サーチ(NDLサーチ)からのRSS配信 (2)国立国会図書館蔵書検索・申込システム(NDL-OPAC)の「全国書誌提供サービス画面」 (3)機械可読版であるJAPAN/MARCという三つのルートで提供しています。
資料と電子情報の全国書誌データを一元的に、機械的連携も含めウェブで利活用しやすい形で提供するため、オンライン資料の全国書誌データは(1)のNDLサーチで提供します。(2)および(3)はこれまでどおり、従来の資料を収録対象とします。
(書誌データの開放性)
6 利用者が書誌データを多様な方法で容易に入手し活用できるよう、開放性を高める。
上記2に掲げたウェブ環境に適したフレームワークは、一方で、国内外の図書館の情報環境に対応してMARCフォーマットやテキストファイル等の各種形式への変換も容易なものとするよう留意する。このフレームワークによる書誌データの提供を促進し、ウェブ環境で利用者が利活用しやすいものとする。また、国立国会図書館の書誌データの国際的流通を一層促進する。
新しい書誌フレームワークを構築した後も、すぐにMARCフォーマットがデータ交換のために用いられなくなることはないでしょう。また、図書館等に限らず個人の利用者にも書誌データを活用していただけるようにするには、MARCフォーマットよりも、テキスト形式や、あるいは文献リスト作成などさまざまな目的に適した形式で提供する必要があります。一方、コンピュータを書誌データのユーザとしてみるとき、機械的連携(API)を用いてデータを送受する方法があります。すでにNDLサーチのAPIを利用して、当館の書誌データがさまざまに活用されています。
当館は、固定的な形式でパッケージ化した書誌データを提供するやり方から、標準的なフォーマット、標準的な仕様で自由に書誌データを取得できる環境を整備する方へ、シフトしていきます。その方が、書誌データを有効に活用していただけると考えているからです。
また、当館の書誌データの国際的流通を促進します。当館では昨年度までに、OCLCへの単行資料の書誌データ(JAPAN/MARC(M))提供やバーチャル国際典拠ファイル(VIAF)への参加を実現しました。今後も、日本の国立図書館として、当館が作成する書誌データが国内のみならず世界においても広く活用されるよう努めます。今年度からは、OCLCに逐次刊行資料の書誌データ(JAPAN/MARC(S))や雑誌記事索引データも提供する予定です。
(関係機関との連携)
7 出版・流通業界、関係機関等と連携の上、様々な資源、知識、技術を活用する。
関係機関等との連携・調整を図ることにより、国立国会図書館における書誌データ作成及び提供を更に迅速化、効率化する。特に、国立情報学研究所(NII)とは技術面も含めた協力を推進する。
前述の新しい書誌データの「容れもの」である書誌フレームワークは、ウェブ環境に適したものであると同時に、関係機関との連携に適したものでなければなりません。MARCフォーマットは図書館界では有効なデータ交換用フォーマットでしたが、出版・流通業界、類縁機関等との連携には向かないものでした。広く関係機関のデータを当館で活用しやすく、当館のデータを関係機関で活用しやすい状況に結びつくような「容れもの」を構築する必要があります。
また、新しい書誌データの「容れかた」となる書誌データ作成基準は、前述のとおり、当館一館のルールにとどまらず日本国内で共通に適用できるものにするため、関係機関と調整を行います。
さらに、第1項の解説でも述べたとおり、当館が提供する書誌データが、多様な目的で広範囲に利活用されることを目指します。特に、図書館等の関係機関による全国書誌データ利活用を促進するための取組みを、イベントの開催や広報などを通じて進めてまいります。
このように、「新展開2013」は全体を通して、関係機関との連携・調整を重要視しています。
(改正等)
8 利用者の要請、出版物の多様化、情報通信技術の発展等に対応するため、必要に応じて見直しを行う。また、各項の具体的な実施に向けて、有効性と費用対効果を考慮し、必要な計画を別途作成する。
「新展開2013」は今後おおむね5年間の方向性を示すものですが、環境の変化や国際動向などを注視しつつ、必要があれば5年以内であっても適宜の見直しを行います。
また、第1項~第7項では、それぞれ大まかな方向性を述べています。いつまでに何をどのように、といったことは、それぞれ、有効性と費用対効果を考慮しながら具体的な計画を立てて、着実に実施していきます。
以上、「新展開2013」の各項目にそって、当館の書誌サービスが目指すことについて、ご紹介しました。
書誌データに関するお問い合わせやご要望をお聞きしていますと、当館が作成し提供する書誌データはこれまで予想もしていなかったほど多数の利用者の目に触れている、ということを痛感します。そして単に利用者数が多いだけではなく、書誌データを利用する目的や書誌データに対するニーズは多岐にわたっています。
当館は、さまざまな書誌データ利用者のさまざまなニーズに対して何ができるのか、どこに注力すべきかを見極め、「新展開2013」に示した方向性に則して取り組んでいきます。
よりよい書誌サービスを提供するため、図書館および関係機関、出版・流通業界等、書誌データに関心のある皆さまからご意見やご指導をいただければ幸いです。ご協力のほど、よろしくお願いいたします。
「新展開2013」にかかる進捗状況や成果は、これからも本誌等を通じて適宜お知らせいたします。
(収集・書誌調整課)
NDL書誌情報ニュースレター(年4回刊)
ISSN 1882-0468/ISSN-L 1882-0468
2013年2号(通号25号) 2013年6月26日発行
編集・発行 国立国会図書館収集書誌部
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