コラム:書誌データ探検 アジア言語資料編

NDL書誌情報ニュースレター2011年4号(通号19号)
今回は当館におけるアジア言語資料の目録作成についてお話しします。
アジア言語資料の目録作成――そもそもアジア言語資料って?
当館では、「アジアおよび中東の言語による外国語資料」をアジア言語資料と呼び、東京本館内にある収集書誌部ではなく、関西館のアジア情報課で目録作成を行っています。
歴史をさかのぼると、もともと他言語の資料と同様、アジア言語資料の目録作成も当館の整理部門(現・収集書誌部)で行われていましたが、1986年にアジア言語資料の保管と閲覧を行う部署であるアジア資料課で目録作成も行うよう改められました。2002年の関西館開館とともにアジア資料課も移転して関西館アジア情報課となり、現在に至っています。
目録の作成方法――NDL-OPACで検索できない?
当館の目録電子化の歴史は遠く1970年代に始まりますが、日本語や英語と異なる文字を用いるアジア言語資料の目録電子化は大きく遅れ、1990年代までカード目録が使われていました。1998年には統合書誌データベースの開発に着手したものの、当時は日本語用の文字コードで構築された膨大なデータベースをUnicode(日本語を含めた世界中の多様な文字種を同時に扱うことができる文字コード)に置きかえることが難しく、アジア言語資料用の目録データベースとして、Unicodeを採用した多言語対応システムを別に導入することとしました。このため、アジア言語資料の蔵書検索では当館の「NDL-OPAC」を利用できず、「アジア言語OPAC」を提供してきたのです。
多言語対応システムは大学図書館の総合目録「NACSIS-CAT」の形式を採用しているため、アジア言語資料の目録作成ルールもNACSIS-CATのコーディングマニュアルに準拠し、当館独自のローカルルールを加味して運用してきました。ですので、基本的には大学図書館で行われているアジア言語資料の目録作成と同じことを当館でも行ってきた、と言ってよいでしょう。
中国語資料――「読み」と「ピンイン」
中国語はもちろん日本語と同じく漢字を用いる言語ですが、中国の簡体字、台湾や香港の繁体字という、日本語の漢字とは異なる字体を使用するため、Unicodeを採用したシステムでしか目録を作成できません。
日本語資料の目録では、タイトルなどの書誌的事項を資料に記載されたとおりの漢字仮名混じりで記述し、これに読みを付与して検索の便に備えます。中国語も同じようにタイトルに読みをふらなければならないわけですが、仮名読みにあたるものが、漢字の仮名読みと、中国で漢字の発音を表すのに使われるローマ字符号であるピンインのふたつあることが特徴です。

中国語データ例
中国語資料は利用が多く、当館でも鋭意収集に努めています。目録作成には中国語の学習経験があるアジア情報課の職員4人が当たっていますが、閲覧やレファレンスなどの他の仕事も行っているため、目録作成だけに時間が割けないのが悩みの種です。
朝鮮語資料――漢字とハングル
朝鮮語は日本語と同じく漢語が多く取り込まれた言語で、漢字と朝鮮語固有の文字であるハングルを組み合わせて表記します。朝鮮語資料の目録作成では、漢字の書誌的事項には、読みとしてハングルを付与します。

朝鮮語データ例
現代の韓国では、漢字仮名混じりが一般的な日本語と異なり、漢字はほとんど使われず、ハングルが主に用いられます。このため、資料の検索もまずはハングルを使うことになりますが、タイトルなどの書誌的事項には漢字を使用することがあり、読みの有無がOPACの検索結果を左右します。そこで、当館では漢字の書誌的事項にはタイトル以外でもできるだけ読みを付与するようにしています。
アジア諸言語資料――「原綴」と「翻字」
当館では中国語と朝鮮語以外のアジア言語をまとめて「アジア諸言語」と呼んでいます。アジア諸言語にはモンゴル語、チベット語などの東アジアの言語から、アラビア語、ペルシア語などの中東の言語までさまざまです。この中にもインドネシア語やベトナム語、トルコ語のようにローマ字のアルファベットを使っているものもありますが、多くはそれぞれの言語に固有の文字を使っています。毎日こうした文字をながめていると、アジアの民族の多様さ、文字文化の豊かさが感じられます。

アジア諸言語データ例(上からタイ語、ベトナム語、ウルドゥー語)
アジア諸言語の目録は、タイトルなどの書誌的事項を、資料にあるとおりの文字の綴り(つづり)(これを「原綴(げんてつ)」と言います)を写して記述し、その文字を発音にもとづいてローマ字に置き換えたもの(これを「翻字(ほんじ)」と言います)を読みとして付与することになっています。
しかし、いかんせんほとんどの文字が日本人にとってなじみの薄いものです。当館の職員もあらゆる文字に通じた語学の天才とは限りませんので、新しい言語がやってくるたびに、文字表と翻字表に首っ引きで格闘し、Unicodeの文字表から一文字ずつ拾い出しながらなんとか文字を入力することになります。
大学図書館では、先生方や学生に依頼して原綴と翻字を目録に入力しているようです。当館には残念ながら教師も学生もいないので、館外の専門家のお力を借りながら、毎年少しずつ目録の作成を進めています。
おわりに-そしてこれから
さて、このニュースレターのほかの記事でもお知らせしているとおり、当館は現在ちょうどシステムをリニューアルしているところです。新しいシステムのデータベースは文字コードにUnicodeを採用し、アジア言語資料の目録作成も、日本語や英語と同じシステム上で扱えるようになり、フォーマットは事実上の国際標準であるMARC21へと移行します。
2012年1月からは多言語に対応した新しいNDL-OPACが公開されます。長い間書誌データベースの違いから資料の検索方法がアジア言語OPACとNDL-OPACに分かれご面倒をおかけしてきましたが、いよいよ二つのデータベースが統合され、日本語とアジア言語が同じOPACで検索できるようになります。
林 瞬介
(はやし しゅんすけ 関西館アジア情報課)
NDL書誌情報ニュースレター(年4回刊)
ISSN 1882-0468/ISSN-L 1882-0468
2011年4号(通号19号) 2011年12月26日発行
編集・発行 国立国会図書館収集書誌部
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E-mail: bib-news@ndl.go.jp (ニュースレター編集担当)
