コラム:書誌データ探検隊 これまた一筋縄ではいかない、"団体名の変化"を追いかけよう!

NDL書誌情報ニュースレター2010年3号(通号14号)
前回2010年2号(通号13号)では、団体名著者標目の選び方についてご説明しました。今回は、「団体名の変更」が発生したらどのようにするかについてお話します。
個人名の著者標目においては、「改名」や「改姓」があった場合、「をも見よ」参照(下記例の「→:」は「〜をも見よ」という意味です)します。たとえば、5年ほど前に歌舞伎俳優の中村勘九郎さんが中村勘三郎を襲名しましたが、このように表します。
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○中村, 勘九郎 (5世 1955-) →:中村, 勘三郎 (18世 1955-) ○中村, 勘三郎 (18世 1955-) →:中村, 勘九郎 (5世 1955-) |
しかし、団体名標目では少々様子が異なります。「名称」が変わった時の扱いかたは一とおりではありません。たとえば、当館で逐次刊行物書誌データを作成する場合には、かつての団体名に加え、新しい団体名の著者標目を立てることにしておりますが、それらを「をも見よ」参照する場合と、「をも見よ」参照しない場合とがあるのです。
単純に名称を変更しただけで、組織の構成や法的性格などには何ら変化が生じない場合は、個人名の変更と同じように、変更前の団体名標目と変更後の団体名標目を、「をも見よ」参照するようにしています。
ところが、団体の名称が変わる際には、「法人格・組織上の位置づけの変更を伴う」、「団体の合併・分離を伴う」といった事例が少なくありません。特にこの数年は、平成の市町村大合併、大手出版社の分社化、大学の合併などが多く見受けられます。当館では、このような組織改編等に伴う名称変更の場合は、「をも見よ」参照していません。
一口に名称変更といっても、組織の看板である名称を変更するに至る理由は様々であり、「をも見よ」参照する単純な名称変更と、「をも見よ」参照しない組織改編等を伴う名称変更を判断するのは簡単ではありません。標目作成者は、名称変更による団体名標目の関係に気を遣います。
では、団体名の変更が、「単純な名称変更」なのか、それとも「組織改編等を伴う名称変更」なのか-すなわち"団体名の変化の性質"を見分けるためにはどうしているでしょうか。具体的な事例をもとに考えてみましょう。
たとえば、「相模工業大学」は、1990年に「湘南工科大学」に名称を変更しています。相模工業大学の名称のときに刊行されていた「相模工業大学紀要」は、「湘南工科大学紀要」に改められています。
刊行物に団体の沿革や組織図、名称変更の経緯が記載されていることもありますが、そのような情報がない場合や、記載された情報だけでは判断できないこともあります。そのようなときは、ホームページからも有益な情報を仕入れることができます。湘南工科大学のホームページを参照すると、「平成2年(1990) 法人名及び大学名を湘南工科大学に改称」とあり、特に他大学と合併したなどの事項が記載されていないことから、単純な名称変更と判断できます。
これに対し、「東京都立大学」が「首都大学東京」になった事例を考えてみましょう。首都大学東京は、東京都立大学、東京都立科学技術大学、東京都立短期大学、東京都立保健科学大学が合併して開学した大学です。そのため、単なる名称変更ではないと判断することになります。このように大学名の名称が変わった場合でも、団体名の変化の性質によって結論は異なります。
では、次の事例はどうでしょうか。「歌謡曲」という雑誌を出版している「ブックメイツ」は、2003年に「ゲッカヨ・エンタテイメント」に社名を変更しました。「ゲッカヨ」とは一風変わった社名ですが、これは「月刊歌謡曲」を省略したものと思われます。
「歌謡曲」の319号巻末をみると、「今月から『ブックメイツ』ではなく『ゲッカヨ・エンタテイメント』がゲッカヨを作ることになりました。とは言えメンバーはいつもの仲間で、場所もスピリットも同じ。」という記述があります。とすれば、単なる名称変更と思われるかもしれません。
しかし、318号までの奥付には「編集・株式会社ブックメイツ」と記載されていたものが、319号奥付には「編集・有限会社ゲッカヨ・エンタテイメント」と表記されていることから、二つの会社の関係は、法人格が変わった際に名称を変更したものと判断できます。そのため、組織改編等に伴う名称変更と考え、「をも見よ」参照していません。なお、「歌謡曲」という雑誌は、417号 (2010年1月号)から「Gekkayo : hit song magazine」というタイトルに改題されています。
当館では、先の話を含め、次のような事例があります。
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○単なる名称変更と判断したもの 例1.平凡出版株式会社→マガジンハウス (1983年に社名を変更) 例2.相模工業大学→湘南工科大学 (1990年に大学名を変更) |
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○組織改編等を伴う名称変更と判断したもの ・組織の合併・分離・吸収があったうえで名称が変更する 例3.東京都立大学、東京都立科学技術大学、東京都立短期大学、東京都立保健科学大学 |
| →首都大学東京 (4つの大学・短期大学が合併して開学) 例4.図書館情報大学→筑波大学図書館情報専門学群、筑波大学図書館情報学系、筑波大学大学院図書館情報メディア研究科(一大学が他大学と合併して学部・研究科となる) 例5.大宮市、浦和市、与野市→さいたま市 (複数の市町村合併による新しい市の発足) ・組織の中での階層が変更する 例6:京都教育大学教育学部附属教育実践総合センター→京都教育大学附属教育実践総合センター (教育学部附属から大学附属へ変更) ・法人格が変更したうえで名称も変更する 例7.(株)ブックメイツ→(有)ゲッカヨ・エンタテイメント (株式会社から有限会社に変更した際に社名も変更) ・制度の変更を伴って名称が変更する 例8.東京帝国大学→東京大学 (旧制大学から新制大学へ移行) |
これらは調べやすかった事例であり、もっと手掛かりが少なく、刊行物中の文章内容、当該団体以外のインターネットサイト上情報などから推定しなければならないこともあり、見極めには悩まされることもあります。こういう場合、当該団体に問い合わせて沿革や正式名称の情報を入手することもあります。
次に、「単なる名称変更」とした事例と、「組織改編等を伴う名称変更」とした事例において、NDL-OPACにおける書誌情報の表示形式の違いを見比べてみましょう。
○単なる名称変更と判断したもの(上記例1)

この「Popeye」の出版者[1] は、平凡出版株式会社→マガジンハウスと変遷していますが、団体・会議名標目に「をも見よ」参照の表示(→:)があることで、この出版者が、会社の合併などを伴わない単なる名称変更であることがNDL-OPAC上の書誌情報から見て取れます。[2]
○組織改編等を伴う名称変更と判断したもの(上記例3)

一方、「小笠原研究」という刊行物の書誌画面を見てみましょう。この資料は、東京都立大学と首都大学東京の下にある組織が発行しています。団体・会議名標目の欄を見ると、「をも見よ」参照の表示(→:)はありません。これによって、単純に、東京都立大学が首都大学東京に校名を変更したのではないということがわかります。
最後に、当館では、より正確な団体名標目の作成のために、不明な事項がある場合や問題点が生じた際には標目作成担当者間での連絡・相談を行っています。そして、団体名の変化一つに対応するために、刊行物や参考図書という紙の情報、インターネット上の情報、そして人的協力、それらを駆使しているのです。
(NDL書誌情報ニュースレター標目探偵団)
[1] 当館が作成する逐次刊行物書誌データにおいては、編者の表記がない場合、必要に応じて出版者を著者標目にしています。
[2] 当館が作成する逐次刊行物書誌データにおいては、著者標目とする編者か出版者の名称が変わった場合、新旧両方の名称を著者標目としています。
NDL書誌情報ニュースレター(年4回刊)
ISSN 1882-0468/ISSN-L 1882-0468
2010年3号(通号14号) 2010年10月29日発行
編集・発行 国立国会図書館収集書誌部収集・書誌調整課
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