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コラム:書誌データ探検 団体名の標目―企業、大学、一筋縄ではいかない団体名標目の選び方

NDL書誌情報ニュースレター

NDL書誌情報ニュースレター2010年2号(通号13号)

 2008年4号のコラムでは個人名の著者標目について取り上げましたが、今回からは2回にわたりもう一つの著者標目である団体名の著者標目を探検してみましょう。

 標目を一言で述べると、書誌データを検索するための目じるしのこと。著者標目は、タイトルページなどに表示されている著者、訳者などから選び出します。それらの標目は「典拠レコード」としてデータベースに登録しておき、例えば、同じ名前を持つ著者標目が出てきたときに、同一のものか判断したりしています。著者標目は資料を的確に見わけるために、不可欠のデータです。

 ちょうど、ここに二つの本があります。これを例に団体名の標目を選んでみましょう。

二冊の本の表紙のイメージを表示しています

 左は、「設計測量関係標準示方書集」、パラパラめくってみると、NATM工法、底設導坑先進上部半断面工法・・・難解ですね。右は、「駅文化を考える」、こちらは1987年から2000年まで東京駅で開催されていたコンサート、通称「とうきょうエキコン」の誕生秘話など単なる停車場を超えた駅について熱く語っています。

 さて、タイトルページを見ると、最初の資料は「東日本旅客鉄道株式会社編」、次は「JR東日本編著」と記載されています。ですが、どちらも同じ団体です。うーん、どちらを団体名標目にするべきか悩みどころです。一般的にイメージしやすいのは「JR東日本」、とはいえ、正式名称の「東日本旅客鉄道株式会社」も捨てがたい。

 だったら、両方とも登録すればいいのでは? 個人名の場合、複数のペンネームを使っている作家は、それぞれのペンネームを標目に登録していたはず。確か、2008年4号のコラムにはそう書いてあった。カード目録の時代と違って、「をも見よ」参照でデータを連結すれば、双方の標目を漏らさず検索できるしね。仲良く「東日本旅客鉄道株式会社」も「JR東日本」も標目に登録し、これにて一件落着・・・といかないのが、著者標目の世界なのです。

 というのも、一人の人が本名やペンネームなど複数の名前を使っている場合、それらを著作の内容に合わせて意識的に使い分けていると考えられます。でも、団体名の場合、個人名と違ってそれぞれの名称が確信的に使い分けられているか、資料を一見しただけではわかりません。
 そのため、団体名標目では、対象となる団体ごとに一つだけ標目を作成する「統一標目」という考え方を採用しています。図書館員たるもの優柔不断はいけません、潔く「東日本旅客鉄道株式会社」か「JR東日本」のどちらかを選ばなければならない運命にあるのです。

 とはいえ、名称を統一するとしても、よく知られている名前にすべきなのか、最初に出てきた名前にすべきなのか、それともその団体の正式名称とすべきなのか、ルールが決まっていないと標目がばらばらになってしまいます。「あなたのお好みで」、とはいきません。

 そこで、当館では、団体名標目の選択について混乱が生じないよう、「団体名標目の選択・形式基準」というものを定めています。その3-2「名称と読み」には、「名称は、目録対象資料等から正式名称と判断した団体名を採用する。」と記載されています。

 先の例も、ようやく決着のときを迎えました。「東日本旅客鉄道株式会社」が勝ち名乗りを挙げたわけです。ごめんね、「JR東日本」さん、あなたの名前は私の胸の中に大切にしまっておきます・・・ということにはなりません。ご心配なく、先の基準3-2には続けて、「必要に応じて採用しなかった名称を「を見よ」参照とする。」と記載されています。喧嘩することなくお互い手をつないでいるのですね。ちゃんと「JR東日本」からも検索できます。

 これで迷うことなく次の仕事に邁進できると思いきや、団体名標目にはほかにも個人名にはない難所が待ち構えているのです。次の例を見てください。

  タイトル 責任表示
1 16歳からの東大冒険講座. 1(記号と文化/生命) 東京大学教養学部編
2 国際経済の諸問題 東京大学経済学部編
3 生理学実習 東京大学医学部生理学教室編
4 自己点検・外部評価報告書 : 東京大学大学院教育学研究科・教育学部 東京大学大学院教育学研究科・教育学部編
5 応用物理学実験  東京大学工学部応用物理学教室編
6 東大式現代科学用語ナビ : キーワードでわかるサイエンスの「いま」 東京大学理学系研究科・理学部編
7 近代中国の思想と文学 東京大学文学部

 これらの資料は、東京大学の学部が責任表示に記載されています。だったら簡単、団体名標目は「東京大学」にまとめてしまえばいい。「を見よ」参照すれば問題ないしね。

 うーん、本当にそうでしょうか。確かに、「統一標目」の考え方からすれば、「東京大学」という標目が適切だと思われるかもしれません。でも、これらを「東京大学」に統一してしまうと様々な学部の著作が混在することになります。例えば、「東京大学医学部」の資料を検索したい人には十分に絞り込むことができません。また、大学には学部以外にも図書館や大学病院、付属学校等さまざまな施設があります。これらも大学に統一するとますます著作が集中してしまいます。

 そこで、「団体名標目の選択・形式基準」では組織の種類ごとに内部組織のどのレベルまでを標目とするかも定めています。今回のような大学の学部は基準の4-10「大学」の[2]にて「大学の学部・学科およびそれらに準じる組織は、大学名を冠した学部名またはそれに準じる組織名を標目とする。」と定めています。よって、「東京大学医学部」や「東京大学教養学部」などの学部を標目に採用することになります。こうして探したい資料が検索結果に埋もれることを排除しているのです。

 と、ここまで駆け足ではありましたが、団体名著者標目の選び方をご紹介いたしました。次回は別の観点から、団体名著者標目の世界を巡ってみたいと思います。

(NDL書誌情報ニュースレター標目探偵団)

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NDL書誌情報ニュースレター(年4回刊)

ISSN 1882-0468/ISSN-L 1882-0468
2010年2号(通号13号) 2010年6月30日発行
編集・発行 国立国会図書館収集書誌部収集・書誌調整課
〒100-8924 東京都千代田区永田町1-10-1
E-mail: bib-news@ndl.go.jp (ニュースレター編集担当)