NDL書誌情報ニュースレター
ISSN 1882-0468

2009年3号(通号10号) 2009年10月15日掲載 [PDF版 1.03MB]
目次
- 今号の紹介
- おしらせ NDL-OPACから外部データベースへのリンクを開始しました
- おしらせ 国内刊行のISSN登録済オンラインジャーナルリストが利用可能に
- 動向 世界図書館情報会議―第75回IFLA大会(イタリア・ミラノ)に参加して
- 動向 国際規格の現場へ―ISO/TC46会議 ナイロビ大会報告
- 動向 ウェブ時代の目録のあり方とは?―TP&Dフォーラム2009参加報告
- 動向 雑誌記事索引の遡及入力を終了しました―科技編作業の概要
- コラム 書誌データ探検 件名(2) NDLSH メイキング―件名標目新設の現場
- 掲載情報紹介
- 書誌調整 ISSNオンラインジャーナル書誌データの提供を開始
- 海外の動向 “On the Record” の日本語訳を掲載
- 海外の動向 「中国における書誌作成の現状―CIliと全国書誌―」を掲載
- 統計 更新:統計からみた書誌データ
- liORTA XML出力による国立国会図書館件名標目表(NDLSH)の試験提供を開始
- 分類・件名 国立国会図書館件名標目表(NDLSH)2008年度版追録(2009年6-8月)
- 分類・件名 更新:国立国会図書館分類表(NDLC)
- 雑誌記事索引 更新:雑誌記事索引採録誌一覧(9月更新分)
- 編集後記
今号の紹介
夏が終わり風の匂いも変わってきましたが、今号では夏真っ盛りに行われたイベントに関する記事をはじめ、ホットな話題をご紹介します。動向としてお知らせするのは、2009年8月に開催された第75回国際図書館連盟(IFLA)大会とTP&Dフォーラム、5月にナイロビで開催されたISO/TC46会議への参加報告、雑誌記事索引の遡及入力の概要の4本です。
最近開始しました新しいサービスについてもお知らせします。一つは9月から開始しましたNDL-OPACから外部データベースへのリンクについて、もう一つは7月から利用可能となりましたISSN登録済オンラインジャーナルリストについてです。前号から始まったコラム「書誌データ探検件名編」も佳境に入ってまいりました。
書誌データや目録の世界で起きる国内外さまざまな動きと、当館の書誌サービスについて、今後もできるだけ早くお伝えしていきます。
おしらせ
NDL-OPACから外部データベースへのリンクを開始しました
2009年9月1日から、インターネット版の国立国会図書館蔵書検索・申込システム(NDL-OPAC)から外部データベースへ、リンクリゾルバ[1]によるリンクを開始しました。これにより、リンクをたどるだけで外部データベースにあるフルテキストや他館の所蔵情報等を確認できるようになりました。リンクリゾルバにはEx Libris社のSFXを使用しています。
外部データベースにリンクするのは、「一般資料の検索」(和図書、洋図書、和雑誌新聞、洋雑誌新聞、博士論文が対象)および「雑誌記事索引の検索」の検索結果です。
リンクリゾルバの仕組みは下図のようになっています。

図:リンクリゾルバの仕組み
検索結果の詳細表示画面に表示された「よむ!さがす!」ボタンをクリックすると、標準番号やタイトルといった書誌情報がOpenURL形式[1]でリンクリゾルバへ送信されます。リンクリゾルバは、受け取った書誌情報に応じて外部データベース(リンクターゲット)を選択し、Database Linker(リンクリゾルバ中間窓)に表示します。Database Linker上のリンクをクリックするとリンクターゲットで検索が行われ、結果が表示されます。
リンクターゲットには、当館の契約データベース(ScienceDirect、ProQuestなど)、オープンアクセスジャーナル、機関リポジトリ、二次情報データベースなどを設定しています。契約データベースは館内の電子情報提供サービス端末や同じデータベースを契約している機関の端末でご利用いただけます。
(収集・書誌調整課)
[1] リンクリゾルバ、OpenURLについては以下の記事をご参照ください。
増田豊. OpenURLとS・F・X. カレントアウェアネス. 2002, 274,
http://current.ndl.go.jp/ca1482,(参照 2009-9-30)
おしらせ
国内刊行のISSN登録済オンラインジャーナルリストが利用可能に
2009年7月17日からISSN日本センターのホームページ上で、ISSN登録手続の完了した国内刊行オンラインジャーナル約700件の書誌データのリストをご利用いただけるようになりました。
当館はISSN日本センターとして、1998年から国内刊行オンラインジャーナル(有償・無償を含む)へのISSNの付与および書誌データの作成を行っています。これらの書誌データを広く利用していただくため、このたび試験的に提供を開始しました。ぜひご活用ください。
書誌データのリストは、タブ区切りのテキスト形式(TSV形式)で、3か月に一度更新する予定です。データの内容は、原則としてISSNを登録した時点のもので、現状とは異なる場合があります。今回の提供は試行ですので、みなさまからのご意見・ご指摘をふまえて、データの修正や今後の提供方法を検討してまいります。
お問い合わせ先:
国立国会図書館 収集書誌部逐次刊行物・特別資料課整理係
TEL:03-3581-2331(代表)
(逐次刊行物・特別資料課)
動向
世界図書館情報会議―第75回IFLA大会(イタリア・ミラノ)に参加して
「世界図書館情報会議(WLIC)―第75回国際図書館連盟(IFLA)大会」が、2009年8月23日から27日までイタリアのミラノで開催されました。国立国会図書館の代表団(長尾館長以下7名)の一人として、主に書誌データ関係のセッションに出席しましたので報告します。

写真1:2009年IFLA大会看板
【2000〜2009年を締めくくる大会】
大会を通じて抱いた感想を一言で述べるなら、「この10年を締めくくる大会であった」と言えます。これには二つの意味があります。一つはこれまでのIFLAの組織が今大会の後変更になるということであり、もう一つは書誌関連の多様な標準が出揃い、刊行されて区切りがついたということです。同時に、各標準がセマンティック・ウェブへ対応するなど、時代が動き続けていることを感じさせる大会でもありました。
【IFLAの組織変更について】
2009年からIFLAの組織を変更することはすでに決定されていましたが[1]、今大会での各会議・セッションは旧組織によって開催され、大会終了後から新組織による活動が始まります。書誌関連の組織については、これまでは書誌調整部会(Division 4)のもとに各分科会(section)がありました。新組織では、書誌調整部会のもとにあった分科会は、図書館サービス部会(Division 3)に書誌以外の分科会と共にまとめられます。書誌調整部会の単位でセッションが開催されるのは、今大会が最後となりました。
【多様な標準の揃い踏み】
書誌調整部会セッションの4本の発表は、(1)FRAD(Functional Requirements for Authority Data:典拠データの機能要件)、(2)電子時代の全国書誌のためのガイドライン、(3)多言語シソーラスのガイドライン[2]、(4)国際目録原則覚書(ICP)の内容を紹介するものでした[3]。
(1)から(4)は、いずれも今年刊行されたものです。刊行を祝して、部会セッション閉会後にシャンペンとクッキーが振舞われました。

写真2:書誌調整部会セッション終了後
1. FRAD
FRADは、IFLAの書誌調整部会に属している「典拠レコードの機能要件と典拠番号ワーキング・グループ(IFLA Working Group on Functional Requirements and Numbering of Authority Records)」がFRBR(Functional Requirements for Bibliographic Records:書誌レコードの機能要件)モデルを典拠データに拡張して作成したものです。FRBRの第2グループの実体について、FRBRと同様の手法を用いて典拠データの機能を分析したものといえます。
FRBRと異なる点としては、実体として個人(person)、団体(corporate body)のほかに家族(family)を追加したこと、利用者タスクに(1)発見する(find)、(2)識別する(identify)、(3)関連性を明確に示す(contextualise)、(4)アクセスポイントとしての名称選択の理由を説明する(justify)の4点を挙げたこと、利用者として一般利用者(library patrons)のほかに典拠レコード作成者(authority data creators)を挙げたことなどです。
2. FRSAD
分類・索引分科会セッションで、草案の世界的レビューの段階にあるFRSAD(主題典拠データの機能要件:Functional Requirements for Subject Authority Data)について発表がありました。FRSADはFRBRの実体第3グループを扱ったもので、“thema”、“nomen”という新しい用語を導入していることが顕著な特徴です。また、SKOS(Simple Knowledge Organization System)、OWL(Web Ontology Language)などにFRSADモデルを適用できるのも興味深い点です[4]。
3. FRBR family
書誌データのFRBR化について、各セッションで多様な発表が行われました。単なる書誌データのFRBR化の試みに関するものから、FRBR化以前のデータと以後のデータ(born FRBR data)をまとめてどう扱うべきかという視点を持つものまであり、FRBRがすでに書誌の世界において常識的な概念モデルとなっていることがうかがえました。FRBRに加えて、今大会ではこれまで登場の待たれていたFRAD、FRSADがいよいよ姿を現し、FRBR familyが出揃いました。
【資料種別】
目録分科会では多くのワーキング・グループが活動していますが、とりわけ国際標準書誌記述(ISBD)については、テーマによって研究グループが設置されており、研究グループの活発な活動内容について報告がありました。
資料種別についての研究グループ(MDSG:Material Designation Study Group)からは、資料種別に関する新しい書誌的事項「エリア0」を準備版として刊行することになったことと、「エリア0」のおもな内容について発表がありました[5]。資料種別は、10年以上に渡って関係者の間で議論が行われてきた課題で、図書館以外のコミュニティや、RDA(Resource Description and Access)、MARC21と連携しながら検討が進められています。細部が決着するまで、まだ動きは継続すると思われます。

写真3:目録分科会のメンバー
【セマンティック・ウェブへの対応】
ISBD/XML研究グループ(ISBD/XML Study Group)は、ISBD/XMLスキーマ・プロジェクトを企画するグループで、2008年のケベック大会中に立ちあげられ、IFLA専門委員会に2008年12月に承認されています[6]。ISBD/XML研究グループでは、XMLエキスパートとしてボリス・ボサンシッチ氏(Boris Bosancic)、セマンティック・ウェブ・コミュニティと連携するためのコンサルタントとして、ゴードン・ダンシャー氏(Gordon Dunsire)から助力を得ることでプロジェクトを進めています。
ゴードン・ダンシャー氏から、セマンティック・ウェブ環境にISBDを置くためには、単なるXML化ではなくてRDF/XML化を目指すべきと提案があったのを受けて、研究グループはプロジェクトの方向を変更することとしました。
ゴードン・ダンシャー氏は、本大会のUNIMARCセッションでも「UNIMARC、RDA and Semantic Web」と題する発表を行っていました。各標準が相互に関連し、影響しあいながらセマンティック・ウェブ対応が否応無く進行している状況を感じました。
【所感など】
今大会のテーマは「図書館が未来を創る:文化遺産を礎に」でした。書誌関連の発表でも、博物館や文書館の所蔵品のデータと書誌データがどのように連携できるかといった発表が何本もありました。図書館の枠組みを越えようとする動きが、理念を越え実際的な活動となってきたと感じました。
大会のプログラム、発表ペーパーの一部は以下のウェブサイトに掲載されています。
http://www.ifla.org/annual-conference/ifla75/programme2009-en.php
この記事に関連するプログラムは以下のとおりです。
プログラム番号:プログラム名
77: Bibliography
107: Cataloguing
135: Unimarc
200: Classification and Indexing
215: Division 4 - Bibliographic Control
原井 直子
(はらい なおこ 収集書誌部)
[1] IFLAの組織変更については、NDL書誌情報ニュースレター2008年3号(通号6号)で取り上げています。
中井万知子. 2008年IFLA大会(カナダ・ケベック)――書誌データ関連のセッションに参加して:書誌データは境界を越えるか?. NDL書誌情報ニュースレター. 2008, 2008.3.
http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/bib_newsletter/2008_3/index.html#03, (参照2009-9-30).
[2] 多言語シソーラスのガイドラインの原文(英語)は、以下のウェブサイトに掲載されています。
Working Group on Guidelines for Multilingual Thesauri. “Guidelines for Multilingual Thesauri”. World Library and Information Congress: 75th IFLA General Conference and Assembly.
http://archive.ifla.org/VII/s29/pubs/Profrep115.pdf, (accessed 2009-9-30).
[3] 国際目録原則の原文(英語)および19言語(日本語を含む)の訳文がIFLA目録分科会のウェブサイトに掲載されています。
IFLA Meetings of Experts on an International Cataloguing Code. “Statement of International Cataloguing Principles”. IFLANET.
http://www.ifla.org/en/publications/statement-of-international-cataloguing-principles, (accessed 2009-9-30).
[4]SKOSついては、NDL書誌情報ニュースレター2009年2号(通号9号)に解説があります。
白石啓. 図書館のセマンティックウェブ化―第36回ディジタル図書館ワークショップ参加報告. NDL書誌情報ニュースレター. 2009, 2009.3.
http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/bib_newsletter/2009_2/index.html#05, (参照2009-9-30).
[5] International Federation of Library Associations and Institutions ISBD Review Group. “Worldwide review: Proposed Area 0 for ISBD”.
http://www.ifla.org/VII/s13/isbdrg/ISBD_Area_0_WWR.htm, (accessed 2009-9-30).
[6] ISBD/XML Study Group. “ISBD/XML Study Group”. IFLA Website.
http://www.ifla.org/en/events/isbdxml-study-group, (accessed 2009-9-30).
動向
国際規格の現場へ―ISO/TC46会議 ナイロビ大会報告
2009年5月11日から15日まで、ケニアのナイロビで開かれたISO/TC46の大会に参加しましたので、ご報告いたします。

左:ケニア大会の横断幕/右:総会風景
【ISOとは?】
世の中のさまざまなものに「規格」「標準」が定められています。たとえば、ネジの大きさや形が世界中でばらばらだと、ネジの代替が利かず大変不便ですが、規格が決まっていれば、他社製品でも利用することができます。このような規格を工業やサービスの分野で策定しているのがISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)です。
ISOはスイスに本部がある非政府組織で、2009年現在160か国が参加しています。ISOには、「ねじ」や「原子力」といったそれぞれの分野を担当する専門委員会(TC:Technical Committee)が200あまりあります。ISOは、17,000件以上の規格の維持管理を行っていますが、規格の追加も行っており、毎年約1,000件もの規格を追加しています。
【TC46(情報とドキュメンテーション専門委員会)】
TCのうちの一つ、TC46には各国の図書館や情報関連機関などが参加し、図書館や情報に関する規格を扱っています。各TCの下には、より詳細に規格の策定などを行うSC(Subcommittee)があり、TC46には以下四つのSCがあります。
- SC4:技術的な相互運用性(Technical Interoperability)
- SC8:品質−統計と評価(Quality-Statistics and Performance Evaluation)
- SC9:情報源の識別と記述(Identification and Description)
- SC11:アーカイブと記録管理(Archives / Records Management)
筆者はSC9の委員であり、今回は年に1度開かれるTC46の総会およびSC9の各会議に参加しました。TC46およびSC9の総会は前回会議以降の経緯や現状の報告などが中心で、SC9のテーマごとの会議でより具体的な議論が行われました。
【SC9各会議の内容】
SC9は、ISBN(International Standard Book Number)やISSN(International Standard Serial Number)といった識別子をおもな対象としています。現在SC9が力を入れているのは、各識別子間の連携です。
これまでは、図書にはISBNを付与し、楽譜にはISMN(International Standard Music Number)を付与するなど、分野によって異なる識別子が与えられ、個々に管理されてきました。しかし近年は、紙媒体で発行された雑誌がオンラインジャーナルとして提供されたり、ある個人が作家としても音楽家としても創作活動を行ったりするなど、分野同士の関係が近くなっています。現行の識別子の運用では、異なった分野での情報を関連付けるのが困難であり、識別子の連携が必要とされるようになってきました。
ナイロビ大会では、このテーマを検討するために、WG6(ISNI:International Standard Name Identifier)およびIIG(Identifier Interoperability Group)の会議が開催されました。
ISNIは、分野を問わず「創作者」(著者・編者・演奏者等)に与える識別子です。ISNIが運用されると、ある人物が書いた図書、講演が掲載された雑誌、演奏したCDなどが、一つの「創作者」というデータにリンクされることになり、検索や管理が便利になります。図書館の世界では、各国の典拠ファイルなどを統合したヴァーチャル国際典拠ファイル(VIAF)の作成が進んでいますが、ISNIはVIAFのデータを取り込みながら、音楽情報や映像情報など図書館ではカバーするのが難しい分野にまで対象を広げる計画です[1]。
IIGの会議では、FRBR(Functional Requirements for Bibliographic Records:書誌レコードの機能要件)やトピックマップなどの新しい概念や技術を使って識別子を関連付ける方法や、今後SC9で扱われる可能性がある識別子の紹介など、幅広く「今後のSC9の進め方」について話し合いが行われました。多種多様の分野の資料を整理するという点では図書館に経験の蓄積があるため、図書館に関連する話題も多くなりました。情報量が増大する現代社会では、資料の特定や資料間の関連付けに有用な識別子の重要性が高まっていくだろう、との印象を受けました。
次回のTC46大会は2010年5月に韓国で行われる予定です。

写真:レセプションパーティーでの民俗芸能
[1] ヴァーチャル国際典拠ファイル(VIAF)については、以下の記事をご参照ください。
鈴木智之. “バーチャル国際典拠ファイル―その試みと可能性―”カレントアウェアネス. 2004.6.20, No280.
http://current.ndl.go.jp/ca1521, (参照 2009-9-30)
河合 将彦
(かわい まさひこ 収集書誌部収集・書誌調整課)
動向
ウェブ時代の目録のあり方とは?―TP&Dフォーラム2009参加報告
ウェブ時代の目録のあり方を考えるにあたっての重要な視点は、「URI(Uniform Resource Identifier)による情報の識別」と「利用者志向」にあると言えそうです。
2009年8月29日と8月30日に、TP&Dフォーラム2009が東京都文京区にある鳳明館森川別館にて開催されました。TP&Dフォーラムとは、全国各地の整理技術・情報管理に関心を持つ研究者や図書館員などが集い、発表や意見交換を行い、交流を深めることを目的としたフォーラムです。
19回目を迎える今回のフォーラムには、計39名が参加し、3本の研究発表と、発表に対する質疑や意見交換が行われました。以下、概要を報告します。
【研究発表の内容】
1. オントロジーとファセット分類法
8月29日の一つ目の発表は、近畿大学の田窪直規教授によるものでした。オントロジー[1]、ファセット分類法[2]、主題組織法の関係について、関連文献の内容と今後の展望について発表がありました。
発表の中で「ファセット分類法の考え方は時代遅れになりつつあるが、オントロジーとファセット分類法の考え方には共通点も多い。ファセットの枠組みをオントロジーの考え方で捉え直すことにより、主題組織法理論に新たな展開がもたらされるのではないか」という主張が述べられました。
2. モデルと言語,目録とオントロジーの間 : 目録の将来像を考える
8月29日の二つ目の発表は、国立情報学研究所の宮澤彰教授によるものでした。
発表では「今日までの目録は、日本目録規則(NCR)という本則があり、その下に細則があり、さらにその下に各種基準があるといったように、いわば法学的な枠組みで捉えられてきたが、それでは利用者に役立つ目録とはならない。今後は、利用者の知りたい情報を迅速かつ丁寧に提供するためにはどんな目録であるべきかという、ジャーナリズム的な思考で目録を捉え直す必要がある」、「目録の標準化は、カード目録においては必要性があったが、ウェブの世界ではあまり意味をなさない。各所で作られた目録をURIで結びつけられれば、目録の質にばらつきがあっても問題はない」などの主張が述べられました。
3. Subject-centric Computing: トピックマップ及びPSIとNDLSH等への応用
8月30日の発表は、株式会社ナレッジ・シナジーの内藤求氏によるトピックマップに関する発表でした。
トピックマップは、情報や知識を分類、体系化し発見しやすくするための技術で、対象領域における主題をトピック(topic)、主題間の関係を関連(association)、関連する情報リソースとの関係を出現(occurrence)という構成要素でモデル化し、コンピュータ処理を可能とするものです[3]。トピック・関連・出現の関係をグラフィカルに表示することもできます。
発表では、当館が提供している「国立国会図書館件名標目表(NDLSH)2008年度版テキストデータ」を基に作成したトピックマップのデモが行われました。NDLSHの標目にURIを付与して識別していること、「国立国会図書館分類表(NDLC)」との関係性を表せること、Wikipediaへリンクを貼り、NDLSHの構造に基づいたWikipediaの体系化も可能であることなどの紹介がありました。
【所感:フォーラム全体を通して】
目録作業の外注化の進展やフルテキスト検索が可能なウェブ情報の増加など、目録の存在感が薄れていく中で、維持すべき目録の姿とは何なのか。重要な示唆や試みが提示された有意義なフォーラムでした。特に、宮澤教授によって示された目録の将来像は、今後の目録のあり方を考える上で重要なものであると感じました。
これまでの目録の世界では、資料への確実なアクセスを保証するために、さまざまな規則や基準によって目録の均質化・標準化が図られてきました。しかし、目録作成者によってデータのばらつきはどうしても発生してしまいます。
ウェブでの情報検索が主流となりつつある今、情報は「均質であること」以上に「リンクでつながること」が重要な要素となってきます。同時に、大量の情報の中で、「何が求める情報であるかを確実に判断できること」も重要です。「質の異なる目録の存在を許容し、URIを基にして目録を結び付け、個々の目録へのアクセスを保証する」、「資料の特性に合わせて、利用者が求める情報を的確に表した目録を提供する」など目録への考え方を転換し、図書館の資産をウェブ上でより利用しやすくしていく必要があると感じました。
また、今後の目録を考えていく上で鍵となるのは「URI」です。内藤求氏の発表にあったトピックマップにおいても、件名標目をURIによって識別することの重要性が述べられました。URIによって情報が識別可能であれば、トピックマップのデータをセマンティック・ウェブの表現形式であるRDF(Resource Description Framework)へ変換することが容易になります。「データ変換」の点でも、URIの重要性を改めて感じました。
発表内容は、2010年春に論集としてまとめられる予定です。また、来年のフォーラムは関西で開催される予定です。
TP&Dフォーラムの概要については、以下のページでご覧いただけます。
TP&Dフォーラム
http://tpd.eplang.jp/
白石 啓
(しらいし けい 収集書誌部収集・書誌調整課)
[1] オントロジーの定義は研究者によって異なり、定まっていないのが現状です。
日本図書館情報学会用語辞典編集委員会編. 図書館情報学用語辞典.第3版, 丸善, 2007, 286p. では、オントロジーは「対象世界にかかわる諸概念を整理して体系づけ、コンピュータにも理解可能な形式で明示的に記述したもの」と定義されています。
[2] 図書館用語辞典編集委員会編. 最新図書館用語大辞典. 柏書房, 2004, p.643. によれば、ファセット分類法は「インドのランガナタンによって考案された主題分析法で、図書分類法としては、コロン分類法と称されているもの。図書の複合主題をいくつかの要素に分解し、各類の中をファセット(面)と呼ぶ共通のカテゴリーに区分した表の中から一致するものを取り出して、一定の原理によって組み立ててゆくもので、列挙型分類法における主題分析の限界を打ち破り、複合主題の主体表現をめざした、いわゆる分析合成型分類の代表的なものである」と定義されています。
[3] トピックマップについては、以下の文献にて詳しく紹介されています。
内藤求ほか. トピックマップ入門. 東京電機大学出版局, 2006, 240p.
動向
雑誌記事索引の遡及入力を終了しました―科技編作業の概要
NDL書誌情報ニュースレター2009年1号(通号8号)の「おしらせ―雑誌記事索引の遡及入力が終了しました」でお知らせしたとおり、「雑誌記事索引」(以下、「雑索」といいます)の遡及入力を平成20年度で終了しました。今号では平成16〜20年度の遡及入力作業の概要をご紹介します。
1.はじめに
当館では1948年9月(1949年2月発行)から冊子体で雑索の提供を開始しました。1975年からコンピュータによる冊子体の編集を開始し、その後、電子データによるデータベース化を行ってきましたが、1974年以前についてはデータベース化されておらず、国立国会図書館蔵書検索・申込システム(NDL-OPAC)上で検索することができませんでした。
雑索の冊子体には人文編と科技編があり[1]、このうち人文編は平成9〜11年度に遡及入力を行いました。平成16年度から、残る科技編の遡及入力を行い、平成20年度に雑索冊子体の遡及入力をすべて終了しました。
2.遡及入力の対象
平成16〜20年度までの遡及入力の対象となったのは、科技編冊子体の1〜25巻(1950〜1974年)までの、計240冊です[2]。雑誌タイトル数は約2,800件、記事件数は約121万件に及びました[3]。この作業により、NDL-OPACで提供する雑索記事の件数は、900万件を突破しました(2009年8月現在で約942万件)。
3.遡及入力の作業
雑索の冊子体に掲載された記事情報をテキストデータ化し、これを当館の雑索データ入力用システム(雑誌記事索引オンライン処理システム)に登録しました。遡及入力は以下の工程で行われました。
- (1) データ入力:雑索冊子体からのテキストデータ入力
- (2) データ整備:入力したデータの確認・訂正・変換
- (3) データ登録:データベース登録・NDL-OPAC公開
データ入力には、当初OCR(Optical Character Recognition:光学式文字読取装置)を利用しましたが、誤入力が多かったため、同じ内容を複数の作業者が入力し、その結果をつき合わせて入力の誤りをチェックするベリファイ入力を採用することにしました。
作業期間は、平成16〜20年度までの5年間でした。全体を4期に分け、発行年の新しいものから順次遡及入力を進めました。各期の作業期間を2年とし、1年目にデータ入力、2年目にデータ整備とデータ登録を行いました。2年目の作業と次期の1年目の作業を並行して行っています。
| 作業期間 | 入力対象 (科技編冊子体) |
入力件数 | 作業年次 | |
|---|---|---|---|---|
| データ入力 | データ整備/登録 | |||
| 第1期 | 23〜25巻 (1972〜1974年) |
約18万件 | 平成16年度 | 平成17年度 |
| 第2期 | 16〜22巻 (1965〜1971年) |
約42万件 | 平成17年度 | 平成18年度 |
| 第3期 | 10〜15巻 (1959〜1964年) |
約26万件 | 平成18年度 | 平成19年度 |
| 第4期 | 1〜9巻 (1950〜1958年) |
約35万件 | 8〜9巻は平成19年度 1〜7巻は平成20年度 |
平成20年度 |
4.今後に向けて
今回の遡及入力により、これまで冊子体での利用に限られていた約121万件の雑誌記事が、NDL-OPACで検索できるようになり、検索した記事を収録する資料の貸出や複写の申込みが、NDL-OPAC上で簡単に行えるようになりました。この実現を受けて、当館では雑索を含む情報提供サービスの今後のあり方について、引続き検討を進めてまいります。
(逐次刊行物・特別資料課)
[1] 正確には、人文編は「人文科学編」(1948〜1964年)または「人文・社会編」(1965年〜1995年)、科技編は「自然科学編」(1950〜1964年)または「科学技術編」(1965〜1995年)にそれぞれ分かれています。なお、これらとは別に「医学・薬学編」を1979〜1983年に刊行しています。
[2] 科技編は、初め月1回発行で、1953年1月から1960年6月までは3か月ごとに1回、その後は、再び月1回発行となっています。
[3] 遡及入力の対象となった雑誌タイトル数につきましては、雑誌記事索引遡及入力対象雑誌一覧[PDF File 493KB]をご覧ください。
コラム 書誌データ探検 件名(2)
NDLSH メイキング―件名標目新設の現場
助手: 先生、本日はどのようなNDLSHを作ってくださるのでしょうか(以下、国立国会図書館件名標目表の件名標目を「NDLSH」といいます)。
先生: はい、今が旬の「クラウドコンピューティング」を作ってみましょう。ちょうどこのテーマを扱った図書が到着しました。これを「文献的根拠」としてNDLSHを新設します。
助手: 「文献的根拠」でございますか。いきなり難しいことばが出てまいりましたが。
先生: お料理に食材が必要なのと同じように、NDLSHを作るうえで「文献的根拠」は欠かせません。NDLSHを新しく作る場合、目録対象資料にその主題が出現している、という根拠が必要です。裏を返せば、まずある主題を扱った資料が存在し、利用者がその資料を主題から検索できるように、NDLSHを作るわけですね。
助手: まずは文献ありき、ですね。では、先生、何からはじめましょうか。
先生: 念のため、「クラウドコンピューティング」を表すNDLSHがすでに存在していないか、件名典拠ファイルを検索しましょう。件名典拠ファイルとは、これまでに作成してきたNDLSHをデータベース化した基本台帳のようなものです。同じものを二つも作ってしまっては大変ですからね。
助手: 先生、「コンピュータネットワーク」や「インターネット」というNDLSHがすでに存在しますが、これらで代用してはいけないのでしょうか。
先生: 一般的に、件名標目を付与するにあたっては「特定性」の原則があります。簡単に言えば、資料の主題を過不足なく的確に表す件名標目を付与すべきということです。
後ほど確認しますが、「クラウドコンピューティング」という主題は、「コンピュータネットワーク」や「インターネット」と似てはいるけれど、それらとは異なる新しい主題であると考えられます。ですから、この主題を的確に表現できるように件名標目を新設しましょう。
助手: 新しく出現する主題に積極的に対応して、NDLSHは次々と生まれていくのですね。作成にあたって準備するものは何でしょうか。
先生: まず、「文献的根拠」となる目録対象資料、そして、これも欠かせないのが、別の意味で根拠となる参考図書類です。
助手: そういえば、先生のお近くには人文、社会、科学技術分野のさまざまな辞典類がございます。
先生: そう、NDLSHを作る際に、まず、用語を決めなければいけません。また、その用語の定義を把握する必要があります。ですから、必ず参考図書類での取扱いを根拠とします。
助手: つまり、用語を勝手に捏造したり、いい加減に概念を決めたりしない、ということですね。
先生: あら、飲み込みが早いですね。そのとおりです。
他に準備するのは『国立国会図書館件名標目表(NDLSH)作業指針』 [PDF File 644KB](以下、『作業指針』といいます)、これはマニュアルです。そして、『日本十進分類法』(NDC)と『国立国会図書館分類表』(NDLC) の2種類の分類表。隠し味に米国議会図書館件名標目表(LCSH)の典拠ファイル、これはインターネットで検索できます(Library of Congress Authorities)。
では、「クラウドコンピューティング」ということばやその意味について調べてみましょう。
助手: このことばは『現代用語の基礎知識』『イミダス』などの新語辞典やコンピュータ・IT関連の辞典に載っています。意味は「ネットワークを雲(クラウド)のように見立ててコンピュータを分散的に利用する形態やサービス」といったところでしょうか。「コンピュータネットワーク」や「インターネット」についての新しいとらえ方のようです。
先生: そのようですね。では、こうした調査をもとに、実際に件名典拠ファイルに「クラウドコンピューティング」のデータを作成していきましょう、と行きたいところですが、残念ながら、本日はあまりお時間もないようですので、あらかじめ準備しておきました完成形をご覧いただきましょう。お見せするのは、国立国会図書館蔵書検索・申込システム(NDL-OPAC) の「件名検索」の画面です。

助手: 「上位語」や「関連語」というのがありますが、これはどういうものでしょうか。
先生: NDLSHを新設するときには、他のNDLSHと相互に関係づけます。これには上位語(BT = Broader Term)、下位語(NT = Narrower Term)、関連語(RT = Related Term)の3タイプがあり、詳しい基準については『作業指針』に記載されています。
たとえば「クラウドコンピューティング」の場合、概念的にコンピュータにおける分散処理の一種ととらえられるので、上位語として「分散処理(コンピュータ)」と関係づけているのです。NDLSHを関係づけることで、利用者を関連する他のことばへナビゲートすることができます。
助手: “Cloud computing”という英語もありますが。
先生: これは、個々のNDLSHに対応するLCSHです。英語圏で広く使われているLCSHとの対応関係を示すことで、将来的には多言語シソーラスの構築も夢ではないかもしれません。その話はまたの機会があれば。
それから、画面には出ていませんが、件名典拠ファイルにそれぞれのNDLSHに対応するNDCとNDLCの記号も入力しています。NDLSHが分類表の索引のような役割も果すわけです。
助手: さて、NDLSH「クラウドコンピューティング」が完成いたしました。ではここで、NDLSHを新設したことによる効果をNDL-OPACを使って確かめてみましょう。次の二つの画面のうち、最初の画面はタイトルで「クラウドコンピューティング」と検索した結果、二番目は件名検索で「クラウドコンピューティング」と検索した結果です。


先生: 効果は一目瞭然ですね。「クラウドコンピューティング」ということばがタイトルに出現していなくても、NDLSHを使って、資料の内容から検索できるようになりました。
助手: NDLSHを新設することによって、より質の高い検索が実現できるのですね。さて、先生、次回は何を紹介していただけるのでしょうか。
先生: 次回は少し趣を変えまして、「事前結合方式」をご紹介する予定です。
大柴 忠彦
(おおしば ただひこ 収集書誌部国内資料課)
掲載情報紹介
2009年 7月1日〜2009年10月15日に、国立国会図書館ホームページに掲載した書誌情報に関するコンテンツをご紹介します。
・書誌調整 ISSNオンラインジャーナル書誌データの提供を開始
ISSN登録手続の完了した国内刊行オンラインジャーナル約700件の書誌データをご利用いただけるようになりました。
詳細は、今号の記事「おしらせ:国内刊行のISSN登録済オンラインジャーナルリストが利用可能に」でご覧いただけます。
(掲載日:7月17日)
・海外の動向 “On the Record” の日本語訳を掲載
2008年1月、米国議会図書館(LC)に提出された「On the Record:書誌コントロールの将来に関する米国議会図書館ワーキンググループ報告書」および2008年6月にLCから発表された報告書に対する回答書の日本語訳を掲載しました。
(掲載日:7月16日)
・海外の動向 「中国における書誌作成の現状―CIPと全国書誌―」を掲載
『アジア情報室通報』(第7巻第2号)に、新聞出版総署情報センター(中国版本図書館)と中国国家図書館における書誌作成の現状を紹介する論文を掲載しています。
(掲載日:7月11日)
・統計 更新:統計からみた書誌データ
平成20年度の書誌データ作成統計、典拠データ提供統計を追加しました。
(掲載日:8月24日)
・PORTA XML出力による国立国会図書館件名標目表(NDLSH)の試験提供を開始
PORTAでNDLSH2008年度版のXML形式での試験提供を開始しました。
(掲載日:7月7日)
・分類・件名 国立国会図書館件名標目表(NDLSH)2008年度版追録(2009年6-8月)
2009年6〜8月に更新した件名標目のリストです。各月に新設した件名には以下のものがあります。
2009年6月:「オタク」「カット野菜」「民間軍事会社」など
(掲載日:7月8日)
2009年7月:「歴史観」「排出抑制(廃棄物)」「批判的思考」など
(掲載日:8月7日)
2009年8月:「環境的に持続可能な交通」「ゲンジボタル」「水底遺跡」など
(掲載日:9月17日)
・分類・件名 更新:国立国会図書館分類表(NDLC)
Y表(児童図書・簡易整理資料・教科書・専門資料室資料・特殊資料)の一部を改正しました。
(掲載日:7月30日)
A表(政治・法律・行政)の一部を改正しました。
(掲載日:9月17日)
・雑誌記事索引 更新:雑誌記事索引採録誌一覧(9月更新分)
当館が作成している雑誌記事索引に、現在記事を採録中もしくは過去に採録したことのある雑誌の一覧です。2009年9月15日現在の採録誌総数は19,173誌で、そのうち、現在採録中のものは10,049誌、廃刊・採録中止となったものは9,192誌です。
(掲載日:9月24日)
編集後記
IFLAミラノ大会、ISO/TC46ナイロビ大会、TP&Dフォーラム、と書誌をめぐる最新の動向をお伝えする記事が続きましたが、いかがでしたでしょうか。
新しい標準にいかに対応していくか、ウェブ時代に求められる「目録」にいかにアプローチしていくか、検討すべき課題はつきませんが、いろいろ頭を悩ませつつ、一歩でも理想の姿に近づけるよう尽力していけたら、と一編集委員として感じました。
次号のニュースレターは12月末にお届けする予定です。次号でも最新の動向として、ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DC2009)、第34回ISSNナショナルセンター長会議の模様をお伝えします。今後ともご愛読のほど、よろしくお願いいたします。
(青大将)
NDL書誌情報ニュースレター(年4回刊)
2009年3号(通号10号)2009年10月15日発行
編集・発行 国立国会図書館収集書誌部収集・書誌調整課
〒100-8924 東京都千代田区永田町1-10-1
E-mail: bib-news@ndl.go.jp (ニュースレター編集担当)
