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書誌データの基本方針と書誌調整:書誌調整連絡会議

第3回書誌調整連絡会議報告

 平成14年11月25日(月)に「第3回書誌調整連絡会議」を開催しました。本会議は、書誌データの作成および提供に関する諸事項について関係機関と協議を行い、書誌データの標準化を図ることを目的とするものです。
 今回は「ネットワーク系電子出版物の書誌調整に向けて―メタデータの現況と課題―」というテーマで、インターネット上の情報資源の組織化について議論を行いました。参加者は、関連諸機関および研究者12名、当館職員7名でした(下表参照)。
 前半は、永田治樹筑波大学教授と杉本重雄筑波大学教授の発表、当館および国立情報学研究所からの報告があり、後半は、参加者全員によるラウンドテーブル形式の討議が行われ、議論のまとめを那須雅熙書誌部司書監が行いました。以下に、その主な内容をご紹介します。


<発表> メタデータをめぐる問題――図書館コミュニティの対応

永田治樹(筑波大学教授)

 ネットワークの世界では、異なるコミュニティ(業界)間をつなぐ相互運用性が重要である。メタデータの基準の一つであるダブリン・コア(DC)は、情報の発見・識別という観点から相互運用性を確保するための語彙(メタデータの記述要素)を定めるもので、DCMI(1)により維持管理されている。また、DCMIでは政府情報や博物館などコミュニティごとのワーキンググループがあり、DCに基づいた応用プロファイルを作成している。図書館コミュニティでも図書館応用プロファイル(2)を検討中であり、現在はドラフトの段階だが、だんだんと安定してきている。
 図書館コミュニティには、これまで発展させてきた目録技術のレガシー(遺産)がある。これは紙媒体を前提に作り上げてきたもので、ネットワークの世界で活用させるためには整理・拡充しなければならない。課題としては、FRBR(3)の試みに見られるような目録技術における語彙の再検討、人と機械が理解(処理)できるデータ構文(これまではMARCだった)の更新、主題情報の集積方式の見直しなどが挙げられる。また、情報を蓄積しアクセスを確保するアーカイビングや、OpenURL等の利用によるレファレンス・リンキング(4)など、利用・提供環境の変化に対応していく必要がある。



<発表> Dublin Coreの最近の話題から

杉本重雄(筑波大学教授)

 DCには、15要素から成るSimple DCと、限定子を含みより詳細な記述を可能とするQualified DCの2種類がある。Simple DCは米国、欧州で規格化されており、現在はISO(国際標準化機構)で審議されている。DCMIでは、現在、要素の属性間の関係を整理するための議論が行われている。
 様々なメタデータ規則が混在する状況では、相互利用のため、これらの規則を人間と機械(ソフトウェア)の両方に理解可能な形で提供するための標準的な形式が求められる。この役割を果たすものとしてメタデータ・スキーマ・レジストリ(5)があり、DCMIでは以前から取組みを進めている。
 2002年10月に開催されたDC-2002(DCMI他主催の国際年次会議)では、DCを長期的に維持管理していくために、DCMIの組織に関する検討が開始された。一方、内容については、地域や分野ごとのコミュニティから意見・要望を出し、交換することによって、グローバルな相互運用性が確保できる。日本国内においても、DCの定訳や正確な情報を提供する場、また、国内での応用を進めるにはどのような拡張が必要か等の議論を行う場が必要である。



<報告> 国立国会図書館におけるネットワーク系電子出版物の組織化

大幸直子(国立国会図書館)

 国立国会図書館でネットワーク系電子出版物への対応を考える基礎となる枠組みは二つある。一つは電子図書館事業で、今年度新たに、近代デジタルライブラリー、WARP、Dnavi(後述)の公開を開始している。もう一つは納本制度である。平成14年3月に、国立国会図書館館長から納本制度審議会に対して「ネットワーク系電子出版物を納本制度に組み入れること」について諮問した。平成16年度中に答申が出される予定で、その制度と収集範囲が検討されている(6)
 ネットワーク系電子出版物はこれまで図書館が扱ってきた紙媒体とは異なる問題が多く、組織化のルールづくりが必要である。国内外の動向および他機関の意見を参考にしながら、国立国会図書館としての基準を考えていきたい。まずその一歩として、WARP等の経験を踏まえ、平成13年3月に定めた「国立国会図書館メタデータ記述要素」(DCに準拠)(7)の改訂に取り組む。



<報告> 国立国会図書館のインターネット資源選択的蓄積実験事業(WARP)および
データベース・ナビゲーション・サービス(Dnavi)について

河合美穂(国立国会図書館)

 平成14年11月にネットワーク系電子情報を対象とする取り組み、WARP(http://warp.da.ndl.go.jp/)およびDnavi(http://dnavi.da.ndl.go.jp/)を公開した。WARPは、表層ウェブ(静的なHTML等で構成され、自動収集ロボットによって収集可能)を実験的に収集・蓄積し、Dnaviは、深層ウェブ(代表例はデータベース。アクセスのたびに動的に生成され、現在の技術では収集が困難)へのナビゲーションを行う。
 WARPでは、著作権者との許諾契約に基づいてウェブを収集する。現在のコレクション数は、電子雑誌コレクション400タイトル、ウェブコレクション10機関である。契約の際に、予め用意したタイトル、作成者、URL等の書誌的データについて、著作権者の確認を取る。そのほか、契約に関係する事項、収集範囲、ロボット動作条件、利用提供条件等、取り扱うデータは多岐にわたる。
 収集対象とする情報の単位(粒度)が定めにくいこと、タイトルごとに固定した情報が時系列で増えること等の問題があり、実用に耐える検索の仕組みは今後の課題となる。書誌データをとりまく課題を検討するためには、収集、提供、保存の各レベルでの技術的、法律的な課題にも目配りし、研究と実装を積み重ねる必要がある。



<報告> 国立情報学研究所のメタデータ・データベース共同構築事業について

杉田茂樹(国立情報学研究所)

 本事業は、平成14年3月に出された「学術情報の流通基盤の充実について(審議のまとめ)」(8)に基づき、大学等からの情報発信支援を主たる目的として実施するものである。全国大学図書館等(公立・専門図書館を含む)の共同分担入力により、ネットワーク上の学術情報資源のデータベースを構築する。平成14年11月20日現在、参加機関は152機関、登録データ件数は10,152件である。当面は、各参加機関が発信する情報資源をメタデータ作成の対象とする。国立情報学研究所の学術コンテンツ・ポータルGeNii(http://ge.nii.ac.jp/)の一環として、平成14年度内に公開の予定である。
 データ作成のマニュアル(9)では、収録対象、採録基準、DCに準拠した「NIIメタデータ記述要素」を定めている。入力にはWWWブラウザで利用可能なシステムを使用する。今後の課題としては、データ量の拡大、アクセスポイントの充実、参加機関での既存データ導入のほか、参加機関外リソースの扱い、外部同種事業との協調およびデータ交換が挙げられる。



<討議> 

 参加者から所属機関における取組みについて紹介があったのち、メタデータの標準化について質疑および討議を行った。主な論点は以下のとおりである。

  • 相互利用性と書誌調整を確保するため、データ内容と表現形式の最低限の標準が必要である。図書館の外で作られるメタデータが今後は増えると予測される。
  • 組織化の基盤である規則整備が遅れている。図書館のレガシーは、今きちんと整備しないと使いものにならないのではないか。たとえば主題情報について、日本では件名標目表が整備されていない。
  • 厳しい人員削減が行われている状況であり、データ作成の省力化が必要である。一例として、「米国議会図書館件名標目表」「日本十進分類法」「デューイ十進分類法」間の自動変換ツール等を開発できないか。
  • データ公開により発生するプライバシー侵害の問題にどう対処するか。
  • 国内におけるDC検討コミュニティが必要である。
 これらの課題を図書館界でどのように検討するかについては、当館にリーダーシップを求める意見と、大枠を定めたのちに、図書館界を越えて様々な試みから最善の道を探るという意見があった。

第3回書誌調整連絡会議



<討議のまとめ>

那須雅熙(国立国会図書館)

 我が国でもメタデータの作成・提供およびオンライン情報資源の書誌コントロールに関して本格的な取組みが開始された。図書館ではDCが普及しており、今後の相互利用性を考え、維持管理組織の設置について関係者間で相談したい。メタデータの作成については、今後も各機関で経験を積み重ね、粒度の基準づくりや主題検索の高度化を図り、利用者の検索の便益性を図ることが大事である。提供については、OPAC等を通じたナビゲーションを行い、ハイブリッド図書館として、資料種別・媒体を問わず検索ができることを目標にしなくてはならない。
 当館は将来のネットワーク系電子出版物の本格収集に向けて、メタデータの生成・流通・管理・蓄積の制度的、技術的基盤整備を検討し、発信者等が簡便にメタデータを作成できるような技術支援を行っていくことが必要だ。政府情報、学術情報、地域情報等の多様な情報は、分野あるいは地域ごとに責任をもってアクセス手段が確保され、それを全体で共有する資源共同利用のシステムが構築されることが望ましい。そのための基準作り、標準化を国内全体で進めるため、今後も継続的に協議を行っていく必要がある。その意味で本日の会議は、課題をお互いに認識するよい機会となり出発点となった。

*    *    *

 内容の詳細については、記録集を作成し刊行する予定です。
 今後とも、当館の書誌サービスや国内の書誌調整のあり方について、ご意見・ご協力をお願い申し上げます。

(書誌調整課総括係)

第3回書誌調整連絡会議 参加者
阿部真弓 東京都立中央図書館
入江伸 慶應義塾大学メディアセンター本部
尾城孝一 千葉大学附属図書館
鹿島みづき 愛知淑徳大学図書館
杉田茂樹 国立情報学研究所開発・事業部
杉本重雄 筑波大学教授、DCMI Board of Trustees委員
永田治樹 筑波大学教授、DCMI Usage Board委員、日本図書館協会目録委員会委員長
林賢紀 農林水産省農林水産技術会議事務局(農林水産研究情報センター)
牟田昌平 国立公文書館アジア歴史資料センター
村上泰子 梅花女子大学助教授
森山光良 岡山県総合文化センター
山崎博樹 秋田県立図書館
(以上敬称略、五十音順)
国立国会図書館からは以下の7名が参加した。
中井万知子 総務部企画・協力課電子情報企画室長
北山千代 収集部副部長
原田公子 書誌部長
那須雅熙 書誌部司書監
安嶋和代 書誌部書誌調整課長
大幸直子 書誌部書誌調整課課長補佐
河合美穂 関西館事業部電子図書館課ネットワーク情報係長

* 収集方針については収集部が策定することになっており、収集部が事務局である納本制度審議会で、ネットワーク系電子出版物を納本制度の対象に含めるかどうかについて現在審議中である。収集から利用・提供・保存に関する全体的な計画については、電子図書館計画の策定を行う総務部企画・協力課電子情報企画室が担当し、全館的な調整を行っている。書誌部書誌調整課では、書誌情報に関する事項やメタデータの内容の標準化を担当する。関西館事業部電子図書館課では電子図書館事業を担当する。

注(URLはすべて2003年2月4日現在)
(1) DCMI(Dublin Core Metadata Initiative) DCの標準化と長期的な開発を進めるため設置された組織。詳細はDCMIのウェブサイト(http://www.dublincore.org/)を参照。
(2) 図書館応用プロファイル(Library Application Profile)DCMIのウェブサイト(http://dublincore.org/documents/2002/09/24/library-application-profile/)を参照。
(3) FRBR(Functional Requirements for Bibliographic Records) IFLAの研究グループが提示した目録の概念モデル。目録の目的・機能を利用者の視点から再構成し、求める資料を、タイトルや著作者だけでなく媒体などからも簡単に選ぶことができることを目指す。詳しくは和中幹雄「AACR2改訂とFRBRをめぐって―目録法の最新動向―」『カレントアウェアネス』274号(2002.12)11-14頁を参照。
(4) レファレンス・リンキング 参照関係にあるネットワーク上の情報を直接リンクさせること。OpenURLは、メタデータをURLとして送信するための標準的な記述方法で、これを利用すれば、サーバ間でメタデータをやりとりし、自動的にリンクを構築することが可能となる。詳しくは増田豊「OpenURLとS・F・X」『カレントアウェアネス』274号(2002.12)17-20頁を参照。
(5) メタデータ・スキーマ・レジストリ メタデータの記述方式を登録し、人間および機械が参照できるようにする仕組み。
(6) 納本制度審議会では、「ネットワーク系電子出版物小委員会」を設置し検討を進めている。検討経過は当館ホームページの「納本制度審議会」(/jp/aboutus/deposit_council_book.html)を参照。
(7) 国立国会図書館メタデータ記述要素 当館ホームページ(/jp/library/data/ndlmeta.pdf)を参照。
(8) 文部科学省科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会情報科学技術委員会デジタル研究情報基盤ワーキング・グループ「学術情報の流通基盤の充実について(審議のまとめ)」 平成14年3月12日 (http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/toushin/020401.htm)
(9) NIIメタデータ・データベース入力マニュアル1.2版 NIIメタデータ・データベース共同構築事業のウェブサイト(http://www.nii.ac.jp/metadata/)を参照。会議の時点では1.0版(2002.10.1)であった。