国立国会図書館職員を目指す皆さんへ
利用者サービス部人文課地図係長 小林 芳幸
- 平成12年4月
- 入館、図書部図書閲覧課(現 利用者サービス部図書館資料整備課)
- 平成15年4月
- 総務部情報システム課(現 電子情報部)
- 平成19年10月
- 総務部人事課
- 平成22年4月
- 主題情報部人文課(現 利用者サービス部人文課)
はじめに
私はこれまで主に利用提供の現場である司書部門と総務の仕事に携わってきました。これらは国立国会図書館の仕事のほんの一部にすぎませんが、そこで経験し、感じたことを記します。これから(再び?)社会に出るみなさんの参考になればうれしく思います。
利用提供の「現場」
最初の配属は、図書資料を提供・保管する部署でした。カウンター業務、利用案内、書庫出納などです。もともと膨大な蔵書(書庫)のイメージに魅かれるものがあったのですが、入館後すぐその書庫内を駆け回る仕事についたわけです。しかし2年目の途中から、書庫出納の外注化、新しい閲覧システムの導入作業に関わり、いわば「身をもって資料や書庫に親しむ」式の仕事とは別の仕事も経験することになりました。そのころから、職員の仕事は、レファレンスなど知識や経験を要する業務や、業者管理などの管理業務にシフトしつつありました。
情報システムの開発と運用
情報システム課では4年半にわたり館内基幹システムの開発・運用を担当しました。前半は、館内データベースの統合、オンライン申込みサービスを目指した全館的なプロジェクトに参加しました。情報システム課職員の仕事は、現場から業務要件を吸い上げ、開発業者の協力を得てそれをシステム的に実現することでした。乱暴に言ってしまえば、開発業者は図書館がわからず、図書館はITがわからない。そのため、両サイドと信頼関係を築き、コミュニケーションをはかる必要があるわけです。一緒に働く仲間は若く活気があり、開発業者からも刺激を受ける楽しい職場でした。
また後半は、開発を終えた基幹システムや端末の運用業務(システムを正常に稼動させ続けるために必要なあらゆる活動)を担当しました。開発メンバーなど当のシステムに詳しい職員がいなくなった後もノウハウが継続するように、館内に常駐するシステム運用管理業者や関連部署の協力のもと、運用設計(ルール化・ドキュメント化・標準化)を実施しました。どんなドキュメントを作って誰と何を共有すればよいか。自ら考え、自ら動く機会を与えてもらったことが、貴重な経験になったと思っています。
地図室で「レファレンス」を考える
人事課ではじめて係長を経験した後、平成22年7月に今の部署に異動しました。地図室は利用提供の現場であるとともに地図資料を扱う専門室です。利用者の調べものの手伝いをし、的確な道案内をすることが求められます。研究者、マスコミ、不動産関係者など利用者はさまざまで、「住宅地図」を調べに来る人もいれば、「外邦図」を求めて来室する人もいます。当館の所蔵資料では不足する場合もあり、インターネット情報にも留意して、幅広い案内を心がける必要があります。地図室歴が浅い私はベテラン職員に頼ることもしばしばですが、それでも紹介した資料を利用者が複写し、「お陰でいいものが手に入ったよ」などと喜んでもらえたときはやりがいを感じます。
ところで、当館には数十年に一度しか使われない資料がたくさんあります。それは図書館がもつ蔵書構成上の「遊び」です。「遊び」が図書館を豊かなものにしています。敷衍すれば、すぐに役立つとは限らないレファレンサーの頭の中の「知の引き出し」も一種の「遊び」でしょう。一見無駄に見えるそれら「遊び」をいかに編集するか。「遊び」を持つことと能率的に働くことはどういう関係にあるか。そんなことを考えながら日々仕事をしています。
おわりに
大学時代、自分なりに文学を大事に考え、そのことを中心に生活していました。その結果(?)、大学を終えフリーターとなって、比較的自由な時間を過ごしましたが、いつしか自立した生活をしたいと強く感じるようになりました。当館に就職が決まったことをゼミの担当教授に報告したとき、「おめでとう。地味で気の長い仕事だぞ」と言われました。あれから十数年、図書館をとりまく社会的な環境ががらりと変わったとは言え、当館にはいまだ地味で気の長い(それゆえ大切な)仕事がたくさんある、と自戒をこめて思います。みなさんと一緒に働くのを楽しみにしています。
